人形皇子は表情が乏しい自覚が無い

左側

文字の大きさ
上 下
16 / 60
定例の交流会にて

定例の交流会にて・15  ◇第一皇子クリスティ視点

しおりを挟む
「はぁ~っ……。私は今、クリスティ殿下と話しているのだが?」
「お困りだろぉが。もう止せ。」

流石はレイ。すぐさま、俺を庇ってくれてる。
レオの方はなんだか、居心地が悪そうな表情になってた。

怒ったり呆れたりしてる、って事じゃないみたい。
言葉をそのまま鵜呑みにしても良かったら。
レオにはオレが困ってる、ように見えてるのか。


だったら、なんだろ?
あ、もしかして……。
俺の油断した顔を見ちゃって「コレはマズイ」とか思ってるのかもな。



「あぁ、レオナルド様? どうか、気にしないでください。私は全く困ってなど、いませんからね……ふふっ。」

大丈夫だよ~、マズくないよ~。
困ってたんじゃなくって、浮かれてただけだから。
レオは是非、気にしないでくれ。

つ・ま・り。
オレも気にしないから、レオも早く。一刻も早く忘れて、ってアピール。


「ご覧のとおり、私は気分を害してなどいません。楽しんでいますよ。」

ちょっとジェフから不穏な雰囲気がしてるのが怖いんだけど。
だってもう、笑っちゃったんだからさ、仕方ないでしょ。


「宰相閣下のご自慢の御子息方と、こうして会話が出来る貴重な機会ですから。私はいつも楽しみにしているんです。………」

ジェフとの約束を破っちゃった事については俺が悪いと認めよう。
その上で、その事についてはもう諦めよう。

考えてみたらさぁ、今、俺が相手してるのって、レオとレイの二人だろ。
今更そんな、気取らなくたって良い相手じゃないか?
レオだってさ。俺がちょっとやそっと、実に締まりの無い顔をした所でどうって事もないよな?


「特に……レイモンド様には毎回、私の下らない戯れ言に根気よく付き合って貰っていますから。有難い事だと思っていますよ。」

あ……でもちょっとだけ。レイに「間抜けな顔だ」って思われるのは嫌だなぁ。
レイにだけは見栄を張りたいって気持ち、俺にもちょっとはあるんだから。


「でん…、クリスティ殿下が構わないなら、オレは……、まぁ………。」

それはそれとして、さ。
今日のレオは割かし良く喋るなぁ。

待てよ? 今まで俺、レオはあんまり喋らないって思ってたけど、もしかしてそれって俺の勝手な思い込みだったのか?
ただ単に、俺やレイよりもレオのテンポが遅いだけで。本当はレオも結構、お喋り好きだったりしたのかも。
それなら今まで、ちょっと悪い事しちゃってたな。
怒ってるかな? 謝っておいた方が良いか?
うぅ~ん……分からないな。だったら素直に聞いてみようか?


「レオナルド様もご存知でしょうけど、私はお喋り好きなので。…クスッ……、ついつい気安さからレイモンド様と話し込んでしまって。私達ばかりが話していて退屈でしょう?」
「い、いや、決してそんな意味では…」
「それは良かった。楽しい晩餐の邪魔をしているのではないかと、……そうであれば少しは反省をせねばと、思った所ですから、……ねぇ?」

良かったあ~っ、レオ、怒ってるんじゃなかった。
今までも別に、我慢して黙ってくれてたってワケじゃないんだよな?
ちょっとドキドキしちゃった。良くない意味で。

これまでの食事会じゃずっと、俺とレイばっかりが喋ってる感じだからさ。
もし今までの食事会の全部で我慢させてたんだったら、俺とレイは、レオにメチャクチャ謝らなきゃいけなかったもんな。



俺達、二人揃ってレオから叱られなくて良かったな!
……って気持ちで、俺はレイを見た。

あぁ、そうだな。
……って雰囲気で、レイが小さく頷いてくれた。
なんだか苦笑してるっぽいのは、きっと、たぶん、レイも俺と同じように、微妙に『てへぺろ』を感じてるからなんだろう。


俺とレイって結構、気が合うんだよなぁ。




そうだ。珍しくレオがいつもより喋ってるんだから、ジェフだって頑張れるかも。
冷静で自信ありそな見た目の割に、緊張屋さんのジェフだけど、勇気を出すんだ!


「…ですから、今日は四人で話しましょうか。……ねぇ? ジェフ?」
「ぶぇ……っ!」


そんなツモリは無かったのに、ジェフが何か、咽喉詰まりしたような声を出した。
ジェフは俯いて、自分の口元を手で押さえてる。


あぁっ! ……ゴメン。なんか俺、またタイミングが悪かったみたいだよ。
さっきはレオをむせさせちゃったし、いや、本当にゴメンな。ワザとじゃないだ。



すぐに治まるかと思ったのに、ちっともジェフが顔を上げない。
軽く考えてた俺でも、流石に心配になって来た。


「ジェフ……? どうしたんだ?」
「……失礼します。」


俺がジェフの顔を覗き込もうとした時。
それを避けるように、ジェフはいきなり立ち上がる。
凄くギクシャクした動きで皆へ会釈をすると、そのまま食堂から出て行った。



「すみません、私も少々、失礼しますね。」

立ち去るジェフの後を、俺はすぐに追い掛けた。
食事の途中で立ち上がるのは恥ずかしかったから、ちょっと我慢してたんだ。
せっかくジェフが作ってくれたチャンスを、俺は遠慮なく利用する。



ナイス! ナイス・タイミングだ、ありがとう、ジェフっ! 助かったぞ!
俺もトイレに行きたかったんだよなぁ~。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・話の流れが遅い ・作者が話の進行悩み過ぎてる

皇帝の立役者

白鳩 唯斗
BL
 実の弟に毒を盛られた。 「全てあなた達が悪いんですよ」  ローウェル皇室第一子、ミハエル・ローウェルが死に際に聞いた言葉だった。  その意味を考える間もなく、意識を手放したミハエルだったが・・・。  目を開けると、数年前に回帰していた。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

王道にはしたくないので

八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉 幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。 これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

【側妻になった男の僕。】【何故か正妻になった男の僕。】アナザーストーリー

selen
BL
【側妻になった男の僕。】【何故か正妻になった男の僕。】のアナザーストーリーです。 幸せなルイスとウィル、エリカちゃん。(⌒▽⌒)その他大勢の生活なんかが覗けますよ(⌒▽⌒)(⌒▽⌒)

もういいや

senri
BL
急遽、有名で偏差値がバカ高い高校に編入した時雨 薊。兄である柊樹とともに編入したが…… まぁ……巻き込まれるよね!主人公だもん! しかも男子校かよ……… ーーーーーーーー 亀更新です☆期待しないでください☆

処理中です...