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定例の交流会にて
定例の交流会にて・14 ◇第一皇子クリスティ視点
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「おや? レイモンド様ともあろう御方が? 何も知らない、だなんて……私よりも良~く知っているかと思っていました。」
「生憎と私は、子供の頃から好き嫌いや苦手なものが無かったもので。殿下のように、姉から嫌いな物を投げ付けられるという稀有な経験を味わう機会も無かったのですよ。」
俺が喋ると、ほんの僅かな隙間に言葉を捻じ込んで来るようにレイも喋る。
タイミングも本当に絶妙で、レイは俺の言葉を遮らない。声を重ねて邪魔になるような事が無い。
なのに、話が途切れちゃうような、微妙な気持ちになる空白の時間も全く無い。
それにレイは、声も凄く良い。
ちょっと硬めで男っぽいのはもちろんだけど、すっごい知性的で、低音過ぎない。
レイの唇から流れ出す声がまるで音楽みたいに、俺の耳に心地良く滑り込んで来る。
「なるほど。確かにレイモンド様は昔から何事も優秀でしたね。………。」
おおっと、危ない危ない。
ついウッカリして、さら~っとレオの方を見ちゃった。
こんな風にレオを見たりしたら、嫌味っぽいじゃないか。
いかにも「何事も優秀な弟のレイと比べて、長男のレオと来たら……」って言い出しそうな感じになるトコだったぞ。
まぁ……ちょっとは思わないでも、なかったけど。
好き嫌いが無かったらしいレイと比べたら。
レオはなんかメチャクチャ好き嫌いばっかりだったらしいじゃん? レイ達のお姉さん……ロッザに聞いた話だけどさ。
レオが食べられる野菜は、いも類と、キャベツと、トウモロコシだけ。って話には、俺もかなりビックリしたぞ。
今日だってサラダに入ってるプチトマトを相手に、一苦労してるっぽかったもん。
「ですから、殿下のお話にはとても興味をそそられます。殿下は一体、何が苦手だったのですか?」
あぁ……やっぱりソコ、突っ込んで来る? 来ちゃうヤツ~?
意外とレイ、過去の面白エピソードとか好きなんだな。
面白い話なら俺も嫌いじゃないけど。
でもなぁ……えっと、どうしよっかなぁ。
別に俺は話しても良いんだけど、俺のじゃなくってレオの昔話だからな。
子供の頃の話とは言えさ、勝手に話しちゃったら流石にマズイよなぁ。
いくらレオが大人だからって、もし嫌だったら怒らせちゃうもんな。
……ゴメン。せっかく広げてくれた所、悪いんだけど。
その話はパス、な?
また別な機会に、この話題になった時に。話しても良いかどうかをレオに確認取れてから、にしよう。
じゃあ今、他にどんな事を話そうかな……?
せっかくだから、レオも知ってる事がいいよな。
食事中にむせさせちゃった事と、好き嫌いって弱点をさらけ出す羽目になり掛けた事への、俺なりの罪滅ぼしだ。
あっ、そうだ。騎士団で今度あるイベント…
現在、ネタになってる話題を潰そうってからには。
責任もって、代わりになる次の話題を提供しなきゃ。
そう思ったから、頑張って話題を見繕ってたのに。
「殿下のような大変お美しく完璧な人物に『苦手なもの』があったとは、お可愛らしい所もあるのですね。」
何を言われたのか、一瞬、理解出来なかった。
……なぁ~んて言う程、俺は純粋でも素朴でもない。
きゅ…っ。
明らかな俺への誉め言葉に、緩みそうになった口元を引き締めた。
それでも足りなくて、唇の内側を噛む。
一応、俺は第一皇子だ。外から見て、唇を噛んでるのがバレるような事はマズい。
なのに口角が、頬骨が勝手に上がってくみたいだった。
分かってる。別にレイは、真剣に褒めたワケじゃないって事ぐらい。
レイにとっては社交辞令にもならない、ほんの挨拶程度にしか意味はないんだろうけど……それでも、俺には充分だった。
レイが俺の事を……美しい、…って……。
俺の…聞き間違いじゃ、ない。
どう、しよう……、……嬉しい……っ!
嬉しいよぉ……。
あ、ダメだ、俺、たぶん、今、物凄く、ヘラヘラ、しちゃいたい。
……我慢、我慢だ。本当に洒落にならないから。
ジェフにはハッキリ言われてるじゃないか。
俺の笑顔は「気持ち悪い」んだからっ。
せっかく褒めてくれたのに幻滅されたくないよぉ。
「……もう、止めろ。」
叱られちゃった。
ただ、意外な事に。
俺を叱ったのはジェフじゃなくて、レオだったけど。
ハイ、ゴメンナサイ、調子に乗ってましたぁ~。
……って、この謝り方自体が調子に乗ってるよなっ。
「生憎と私は、子供の頃から好き嫌いや苦手なものが無かったもので。殿下のように、姉から嫌いな物を投げ付けられるという稀有な経験を味わう機会も無かったのですよ。」
俺が喋ると、ほんの僅かな隙間に言葉を捻じ込んで来るようにレイも喋る。
タイミングも本当に絶妙で、レイは俺の言葉を遮らない。声を重ねて邪魔になるような事が無い。
なのに、話が途切れちゃうような、微妙な気持ちになる空白の時間も全く無い。
それにレイは、声も凄く良い。
ちょっと硬めで男っぽいのはもちろんだけど、すっごい知性的で、低音過ぎない。
レイの唇から流れ出す声がまるで音楽みたいに、俺の耳に心地良く滑り込んで来る。
「なるほど。確かにレイモンド様は昔から何事も優秀でしたね。………。」
おおっと、危ない危ない。
ついウッカリして、さら~っとレオの方を見ちゃった。
こんな風にレオを見たりしたら、嫌味っぽいじゃないか。
いかにも「何事も優秀な弟のレイと比べて、長男のレオと来たら……」って言い出しそうな感じになるトコだったぞ。
まぁ……ちょっとは思わないでも、なかったけど。
好き嫌いが無かったらしいレイと比べたら。
レオはなんかメチャクチャ好き嫌いばっかりだったらしいじゃん? レイ達のお姉さん……ロッザに聞いた話だけどさ。
レオが食べられる野菜は、いも類と、キャベツと、トウモロコシだけ。って話には、俺もかなりビックリしたぞ。
今日だってサラダに入ってるプチトマトを相手に、一苦労してるっぽかったもん。
「ですから、殿下のお話にはとても興味をそそられます。殿下は一体、何が苦手だったのですか?」
あぁ……やっぱりソコ、突っ込んで来る? 来ちゃうヤツ~?
意外とレイ、過去の面白エピソードとか好きなんだな。
面白い話なら俺も嫌いじゃないけど。
でもなぁ……えっと、どうしよっかなぁ。
別に俺は話しても良いんだけど、俺のじゃなくってレオの昔話だからな。
子供の頃の話とは言えさ、勝手に話しちゃったら流石にマズイよなぁ。
いくらレオが大人だからって、もし嫌だったら怒らせちゃうもんな。
……ゴメン。せっかく広げてくれた所、悪いんだけど。
その話はパス、な?
また別な機会に、この話題になった時に。話しても良いかどうかをレオに確認取れてから、にしよう。
じゃあ今、他にどんな事を話そうかな……?
せっかくだから、レオも知ってる事がいいよな。
食事中にむせさせちゃった事と、好き嫌いって弱点をさらけ出す羽目になり掛けた事への、俺なりの罪滅ぼしだ。
あっ、そうだ。騎士団で今度あるイベント…
現在、ネタになってる話題を潰そうってからには。
責任もって、代わりになる次の話題を提供しなきゃ。
そう思ったから、頑張って話題を見繕ってたのに。
「殿下のような大変お美しく完璧な人物に『苦手なもの』があったとは、お可愛らしい所もあるのですね。」
何を言われたのか、一瞬、理解出来なかった。
……なぁ~んて言う程、俺は純粋でも素朴でもない。
きゅ…っ。
明らかな俺への誉め言葉に、緩みそうになった口元を引き締めた。
それでも足りなくて、唇の内側を噛む。
一応、俺は第一皇子だ。外から見て、唇を噛んでるのがバレるような事はマズい。
なのに口角が、頬骨が勝手に上がってくみたいだった。
分かってる。別にレイは、真剣に褒めたワケじゃないって事ぐらい。
レイにとっては社交辞令にもならない、ほんの挨拶程度にしか意味はないんだろうけど……それでも、俺には充分だった。
レイが俺の事を……美しい、…って……。
俺の…聞き間違いじゃ、ない。
どう、しよう……、……嬉しい……っ!
嬉しいよぉ……。
あ、ダメだ、俺、たぶん、今、物凄く、ヘラヘラ、しちゃいたい。
……我慢、我慢だ。本当に洒落にならないから。
ジェフにはハッキリ言われてるじゃないか。
俺の笑顔は「気持ち悪い」んだからっ。
せっかく褒めてくれたのに幻滅されたくないよぉ。
「……もう、止めろ。」
叱られちゃった。
ただ、意外な事に。
俺を叱ったのはジェフじゃなくて、レオだったけど。
ハイ、ゴメンナサイ、調子に乗ってましたぁ~。
……って、この謝り方自体が調子に乗ってるよなっ。
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