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定例の交流会にて
定例の交流会にて・11 ◇第二皇子ジェフリー視点
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「私は今、クリスティ殿下と話しているのだが?」
「お困りだろぉが。もう止せ。」
「あぁ、レオナルド様? どうか、気にしないでください。私は全く困ってなど、いませんからね……ふふっ。」
普段なら、クリスとレイモンド様は二人で話し込んでいました。
今日はそれにレオ様も参加しています。
楽しんでいるクリスが無駄にお喋りなのは、まぁ置いておくとして……。
あぁ、いえ、駄目です……いつもの事ですが、決して良くは無いです。
だって……何をのほほんと笑っているんですか、クリス!
軽々しく笑わないでおこうね、と。僕達は約束したじゃありませんか!
「宰相閣下のご自慢の御子息方と、こうして……。………」
「でん…、クリスティ殿下が構わないなら、オレは……、まぁ………。」
クリスが皇子らしからぬ顔になってしまわないか、僕が一人でハラハラしています。
さっきのクリスの笑顔は、皇子としてかなりギリギリでしたよ。
せっかく人々から『人形』と称される程の整った顔が、ちょっと崩れかけているように見えましたから。
またやったら、今度は。今度こそ僕が一言、モノ申してしまいそうです。
自分の表情筋が緩いという事を、クリス本人も自覚しているハズなんですが、いつもクリスはそれをウッカリと忘れてしまうようなんですよ。
僕も自分の顔が崩れやすいという自覚は有るので、気を付けているつもりです。
本当にもう、クリスと来たら。
僕は今、そんな事に神経を使っている暇など無いというのに。
「レオナルド様もご存知でしょうけど、私はお喋り好きなので。…クスッ……、……」
「い、いや、決してそんな意味では…」
「それは良かった。楽しい晩餐の邪魔をしているのではないかと、……そうであれば少しは反省をせねばと、思った所ですから、……ねぇ?」
クリスのお喋りに振り回されたレオ様が、少々困ったように呟きました。
常に自信に満ち溢れた力強い声を出しているレオ様なのに、この時の声はとても……年下の僕が言うのは失礼な事かも知れませんが、とても可愛くて。守ってあげたくなるような声でした。
ああぁ……! クリス、さっきは御免ね! クリスは良い仕事をしましたよ!
滅多に聞けるものではありません。
思わずクリスを拝む所でした。見直しました。
レオ様と会話出来るクリスの事が羨ましくないと言えば、正直、嘘になりますが。
僕は今、この場に、近くに存在するだけで精いっぱいなんです。
自分も参加するなんて……、とっ…とても出来ません。
そんなの無理です、死んじゃうッ……!
そう思いつつ、ふと、思い描かずにはいられませんでした。
この僕が、レオ様と視線を絡ませて。
ふっと悪戯っぽい眼差しで笑みを零す、男らしさ満載のレオ様が「では……クリスティ殿下とレイに代わって、今度はオレとジェフリー殿下だけで話そうか?」なんて囁く所を。
もちろん、囁くのは僕の耳元で、なんですが……。
………。
……やっ、ちょ……、……やあっ、いやっ、無理……そんなの、気絶する!
自分でした妄想に動揺した僕は咄嗟に、震える手でワイングラスを掴みました。
たまたま残り僅かだったものを一気に煽った……ちょうど、その時です。
本当にいつもタイミングが悪いクリスから、僕が話し掛けられたのは。
「…ですから、今日は四人で話しましょうか。……ねぇ? ジェフ?」
「ぶぇ……っ!」
さっき見直したばかりですが、クリスを見損ないました!
ワインが引っ掛かって、変な声が出たじゃないですか!
危うく吹き出す所でしたよ! 口からも、鼻からも!
大体っ、僕がレオ様と、楽しく会話なんてっ、出来るわけがないでしょう!
そんな…っ、そんな恥ずかしい……
……あ、…あれ……?
本当に鼻の奥から何かが垂れて来そうです。
僕は俯いて自分の口元を手で押さえました。
「ジェフ……? どうしたんだ?」
顔から余計な笑みを消したクリスが、僕を覗き込もうとします。
真顔になったクリスは、ちゃんと綺麗でした。
ですが、今の僕にはそれを褒めてあげる余裕はありません。
妄想で興奮した所為なのか、頭に血が昇った所為なのか、分かりませんが……鼻血が出ているような、そんな気がします。
まさかの、このタイミングで。
クリス以上の間の悪さです。
「……失礼します。」
レオ様との食事会を途中で抜けるなんて、有り得ません。
そんな失礼な事をするなんて……でも、血で汚れた姿を見せるなんて、そっちの方が有り得ない!
ぼくは絶望的な気分で席を立ちました。
会釈をするのが精一杯で、レオ様の方に顔を向けられませんでした。
「お困りだろぉが。もう止せ。」
「あぁ、レオナルド様? どうか、気にしないでください。私は全く困ってなど、いませんからね……ふふっ。」
普段なら、クリスとレイモンド様は二人で話し込んでいました。
今日はそれにレオ様も参加しています。
楽しんでいるクリスが無駄にお喋りなのは、まぁ置いておくとして……。
あぁ、いえ、駄目です……いつもの事ですが、決して良くは無いです。
だって……何をのほほんと笑っているんですか、クリス!
軽々しく笑わないでおこうね、と。僕達は約束したじゃありませんか!
「宰相閣下のご自慢の御子息方と、こうして……。………」
「でん…、クリスティ殿下が構わないなら、オレは……、まぁ………。」
クリスが皇子らしからぬ顔になってしまわないか、僕が一人でハラハラしています。
さっきのクリスの笑顔は、皇子としてかなりギリギリでしたよ。
せっかく人々から『人形』と称される程の整った顔が、ちょっと崩れかけているように見えましたから。
またやったら、今度は。今度こそ僕が一言、モノ申してしまいそうです。
自分の表情筋が緩いという事を、クリス本人も自覚しているハズなんですが、いつもクリスはそれをウッカリと忘れてしまうようなんですよ。
僕も自分の顔が崩れやすいという自覚は有るので、気を付けているつもりです。
本当にもう、クリスと来たら。
僕は今、そんな事に神経を使っている暇など無いというのに。
「レオナルド様もご存知でしょうけど、私はお喋り好きなので。…クスッ……、……」
「い、いや、決してそんな意味では…」
「それは良かった。楽しい晩餐の邪魔をしているのではないかと、……そうであれば少しは反省をせねばと、思った所ですから、……ねぇ?」
クリスのお喋りに振り回されたレオ様が、少々困ったように呟きました。
常に自信に満ち溢れた力強い声を出しているレオ様なのに、この時の声はとても……年下の僕が言うのは失礼な事かも知れませんが、とても可愛くて。守ってあげたくなるような声でした。
ああぁ……! クリス、さっきは御免ね! クリスは良い仕事をしましたよ!
滅多に聞けるものではありません。
思わずクリスを拝む所でした。見直しました。
レオ様と会話出来るクリスの事が羨ましくないと言えば、正直、嘘になりますが。
僕は今、この場に、近くに存在するだけで精いっぱいなんです。
自分も参加するなんて……、とっ…とても出来ません。
そんなの無理です、死んじゃうッ……!
そう思いつつ、ふと、思い描かずにはいられませんでした。
この僕が、レオ様と視線を絡ませて。
ふっと悪戯っぽい眼差しで笑みを零す、男らしさ満載のレオ様が「では……クリスティ殿下とレイに代わって、今度はオレとジェフリー殿下だけで話そうか?」なんて囁く所を。
もちろん、囁くのは僕の耳元で、なんですが……。
………。
……やっ、ちょ……、……やあっ、いやっ、無理……そんなの、気絶する!
自分でした妄想に動揺した僕は咄嗟に、震える手でワイングラスを掴みました。
たまたま残り僅かだったものを一気に煽った……ちょうど、その時です。
本当にいつもタイミングが悪いクリスから、僕が話し掛けられたのは。
「…ですから、今日は四人で話しましょうか。……ねぇ? ジェフ?」
「ぶぇ……っ!」
さっき見直したばかりですが、クリスを見損ないました!
ワインが引っ掛かって、変な声が出たじゃないですか!
危うく吹き出す所でしたよ! 口からも、鼻からも!
大体っ、僕がレオ様と、楽しく会話なんてっ、出来るわけがないでしょう!
そんな…っ、そんな恥ずかしい……
……あ、…あれ……?
本当に鼻の奥から何かが垂れて来そうです。
僕は俯いて自分の口元を手で押さえました。
「ジェフ……? どうしたんだ?」
顔から余計な笑みを消したクリスが、僕を覗き込もうとします。
真顔になったクリスは、ちゃんと綺麗でした。
ですが、今の僕にはそれを褒めてあげる余裕はありません。
妄想で興奮した所為なのか、頭に血が昇った所為なのか、分かりませんが……鼻血が出ているような、そんな気がします。
まさかの、このタイミングで。
クリス以上の間の悪さです。
「……失礼します。」
レオ様との食事会を途中で抜けるなんて、有り得ません。
そんな失礼な事をするなんて……でも、血で汚れた姿を見せるなんて、そっちの方が有り得ない!
ぼくは絶望的な気分で席を立ちました。
会釈をするのが精一杯で、レオ様の方に顔を向けられませんでした。
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