5 / 60
定例の交流会にて
定例の交流会にて・4 ◇長男レオナルド視点
しおりを挟む
あぁ、もういい。クソ馬鹿らしいったらねぇや。
食おう。せっかくの食事会だ。コッチを見ない相手の事なんぞ気にしても仕方ねぇ。
決意を固めたオレは、遅ればせながらフォークを手に取った。
サラダすら食い終わってない辺り、自分でも笑えて来る。
しばらく黙々と食ってたんだがやっぱり……どうしても気に…なって、な。
チラッとぐらい、ジェフリー殿下を見てもいいじゃねぇか、と。
正面からじゃなく、ちょっと皇帝陛下の方を見る振りして、視界の中に入れればいいんじゃねぇか、と。
皇帝陛下と親父の会話を聞いてる振りしてるんだから、バレねぇだろ、と。
そう考えて顔を上げたんだが、やっぱり止めておけば良かった。
どうにも間の悪い事に、第一皇子のクリスティ殿下と目が合っちまった。
別に後ろ暗いわけでもないのに、つい内心、ギクッとしたのが悪かったんだろう。
クリスティ殿下の視線が、オレの何かを探るようなものになり。それからジェフリー殿下へと目線を流した。
おい、どうした? 自分の弟に何か用があるなら、さっさと話せよ。
何故そんな無言で、ジッと自分の弟を見詰める?
まさか、オレがジェフリー殿下をずっと見てた事に気付いて……いや、まさかな。
それとも実は、オレが気付いてないだけで……、さっきからのオレの様子はしっかりバレてた。とか、じゃねぇだろうな?
おい、まさかそれを、ジェフリー殿下本人に知らせる気か。
違うよな? そんな話を伝えた所で、アンタには何の意味も無いハズだ。
例えオレがジェフリー殿下を見てた事を告げられたとしても、それだけで特に何かが分かるはずも無い。
そう自分に言い聞かせながら、同時にオレは、上手い言い訳を必死に考えた。
考えながら、つい視線はジェフリー殿下に向かう。
そしてオレは、残酷な現実を見た。
ジェフリー殿下はサラダから一瞬たりとも、その綺麗な紺碧色の瞳を移さなかった。
一切、全く、微塵も気にされてねぇ……か。
そりゃそうだ、何かを喋ったんでも無いからな。
気配ごときじゃあ、目線がピクリとも動かねぇかねぇよな。
元から何の興味も無いんだ。分かってたさ。
分かってたのに今更、落ち込むとか……あり得ねぇよ…………。
* * *
皇帝陛下と親父の雑談は、海釣りという単語から、姉の話へと移り変わってた。
姉のロッザ(ロザリンド)は半年前から、第一皇女であるディアーネ殿下の外遊に同行させて貰ってる。
ちょっと前から小国連合に属する海沿いの国に滞在してるって話だから、恐らくあと半年は戻って来ない予定だ。
その姉が、滞在先から素晴らしい釣竿を送って来た、ってわけだ。
オレは釣り竿の事はよく知らねぇが、どうやら姉が送って来たのは海釣りに特化した物らしい。嬉しそうな顔した親父には正直ムカ付いた。
散々喋って、自慢して、興奮して疲れたんだろう。
お互いに咽喉を潤そうとグラスに手を伸ばしたタイミングが重なり。
ふと、会話に隙間が出来た。
そこに入り込んで来るのがクリスティ殿下だ。
「流石はロザリンド嬢だ。実に相手の事を考えた、心の暖かい贈り物ですね。」
いつも、こうだ。何か言わなきゃ気が済まねぇのか。
黙ってれば綺麗な皇子サマなんだがなぁ。
口を開いた今だって、よ。
本人からすりゃ、嫌味の一環で冷笑を見せ付けてるツモリなんだろうが。薄い色の金髪と青系の瞳は、相当綺麗に作り込まれた人形みたいだ。
話がこれで終わるなら普通に美形、だな。何も知らねぇ奴なら見惚れるだろうさ。
だが……わざわざコッチを見て来たって事は。
こっから本格的に嫌味か罵りが始まるんだろう。そう思えばちっとも可愛くねぇ。
「好き嫌いを無くしてやろうと気遣ったロザリンド嬢から、大嫌いな物を山ほど投げ付けられた事も……良い思い出になりますね?」
「ぐっ……。」
その言葉に、驚いたオレは危うくむせ返る所だった。
台詞の文字面だけは、穏やかで親しみやすい丁寧さだ。
だからこそ、そこに。クリスティ殿下の静かな怒りが表れているようだった。
咄嗟に歯を食いしばり、難を逃れる。無意識のうちに拳を強く握ってた事にも、オレは気付いてなかった。
もしかしたら。常識的に考えれば、あり得ねぇ事だが。
だが、あの悪魔オンナなら、……オレ達にしたのと同じ事をクリスティ殿下に対して、絶対にやってないとも言い切れねぇ。
過去に、実際に起こってしまったのかも知れない、姉貴の『やらかし』を想像して、オレはちょっとゾッとした。
食おう。せっかくの食事会だ。コッチを見ない相手の事なんぞ気にしても仕方ねぇ。
決意を固めたオレは、遅ればせながらフォークを手に取った。
サラダすら食い終わってない辺り、自分でも笑えて来る。
しばらく黙々と食ってたんだがやっぱり……どうしても気に…なって、な。
チラッとぐらい、ジェフリー殿下を見てもいいじゃねぇか、と。
正面からじゃなく、ちょっと皇帝陛下の方を見る振りして、視界の中に入れればいいんじゃねぇか、と。
皇帝陛下と親父の会話を聞いてる振りしてるんだから、バレねぇだろ、と。
そう考えて顔を上げたんだが、やっぱり止めておけば良かった。
どうにも間の悪い事に、第一皇子のクリスティ殿下と目が合っちまった。
別に後ろ暗いわけでもないのに、つい内心、ギクッとしたのが悪かったんだろう。
クリスティ殿下の視線が、オレの何かを探るようなものになり。それからジェフリー殿下へと目線を流した。
おい、どうした? 自分の弟に何か用があるなら、さっさと話せよ。
何故そんな無言で、ジッと自分の弟を見詰める?
まさか、オレがジェフリー殿下をずっと見てた事に気付いて……いや、まさかな。
それとも実は、オレが気付いてないだけで……、さっきからのオレの様子はしっかりバレてた。とか、じゃねぇだろうな?
おい、まさかそれを、ジェフリー殿下本人に知らせる気か。
違うよな? そんな話を伝えた所で、アンタには何の意味も無いハズだ。
例えオレがジェフリー殿下を見てた事を告げられたとしても、それだけで特に何かが分かるはずも無い。
そう自分に言い聞かせながら、同時にオレは、上手い言い訳を必死に考えた。
考えながら、つい視線はジェフリー殿下に向かう。
そしてオレは、残酷な現実を見た。
ジェフリー殿下はサラダから一瞬たりとも、その綺麗な紺碧色の瞳を移さなかった。
一切、全く、微塵も気にされてねぇ……か。
そりゃそうだ、何かを喋ったんでも無いからな。
気配ごときじゃあ、目線がピクリとも動かねぇかねぇよな。
元から何の興味も無いんだ。分かってたさ。
分かってたのに今更、落ち込むとか……あり得ねぇよ…………。
* * *
皇帝陛下と親父の雑談は、海釣りという単語から、姉の話へと移り変わってた。
姉のロッザ(ロザリンド)は半年前から、第一皇女であるディアーネ殿下の外遊に同行させて貰ってる。
ちょっと前から小国連合に属する海沿いの国に滞在してるって話だから、恐らくあと半年は戻って来ない予定だ。
その姉が、滞在先から素晴らしい釣竿を送って来た、ってわけだ。
オレは釣り竿の事はよく知らねぇが、どうやら姉が送って来たのは海釣りに特化した物らしい。嬉しそうな顔した親父には正直ムカ付いた。
散々喋って、自慢して、興奮して疲れたんだろう。
お互いに咽喉を潤そうとグラスに手を伸ばしたタイミングが重なり。
ふと、会話に隙間が出来た。
そこに入り込んで来るのがクリスティ殿下だ。
「流石はロザリンド嬢だ。実に相手の事を考えた、心の暖かい贈り物ですね。」
いつも、こうだ。何か言わなきゃ気が済まねぇのか。
黙ってれば綺麗な皇子サマなんだがなぁ。
口を開いた今だって、よ。
本人からすりゃ、嫌味の一環で冷笑を見せ付けてるツモリなんだろうが。薄い色の金髪と青系の瞳は、相当綺麗に作り込まれた人形みたいだ。
話がこれで終わるなら普通に美形、だな。何も知らねぇ奴なら見惚れるだろうさ。
だが……わざわざコッチを見て来たって事は。
こっから本格的に嫌味か罵りが始まるんだろう。そう思えばちっとも可愛くねぇ。
「好き嫌いを無くしてやろうと気遣ったロザリンド嬢から、大嫌いな物を山ほど投げ付けられた事も……良い思い出になりますね?」
「ぐっ……。」
その言葉に、驚いたオレは危うくむせ返る所だった。
台詞の文字面だけは、穏やかで親しみやすい丁寧さだ。
だからこそ、そこに。クリスティ殿下の静かな怒りが表れているようだった。
咄嗟に歯を食いしばり、難を逃れる。無意識のうちに拳を強く握ってた事にも、オレは気付いてなかった。
もしかしたら。常識的に考えれば、あり得ねぇ事だが。
だが、あの悪魔オンナなら、……オレ達にしたのと同じ事をクリスティ殿下に対して、絶対にやってないとも言い切れねぇ。
過去に、実際に起こってしまったのかも知れない、姉貴の『やらかし』を想像して、オレはちょっとゾッとした。
10
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
・作者が話の進行悩み過ぎてる

皇帝の立役者
白鳩 唯斗
BL
実の弟に毒を盛られた。
「全てあなた達が悪いんですよ」
ローウェル皇室第一子、ミハエル・ローウェルが死に際に聞いた言葉だった。
その意味を考える間もなく、意識を手放したミハエルだったが・・・。
目を開けると、数年前に回帰していた。


主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

【側妻になった男の僕。】【何故か正妻になった男の僕。】アナザーストーリー
selen
BL
【側妻になった男の僕。】【何故か正妻になった男の僕。】のアナザーストーリーです。
幸せなルイスとウィル、エリカちゃん。(⌒▽⌒)その他大勢の生活なんかが覗けますよ(⌒▽⌒)(⌒▽⌒)

もういいや
senri
BL
急遽、有名で偏差値がバカ高い高校に編入した時雨 薊。兄である柊樹とともに編入したが……
まぁ……巻き込まれるよね!主人公だもん!
しかも男子校かよ………
ーーーーーーーー
亀更新です☆期待しないでください☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる