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定例の交流会にて
定例の交流会にて・7 ◇次男レイモンド視点
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「流石はロザリンド嬢だ。実に相手の事を考えた、心の暖かい贈り物ですね。」
父親達の雑談に区切りが付き。口火を切ったのは、やはりクリスティ殿下だった。
この人は昔から、こうしたタイミングを計るのが上手い。
「あの人は昔から優しくて、能力も秀でている。優秀とは彼女の為にあるような言葉ではないですか。ロザリンド嬢に支えられる事は、姉にとっても国にとっても心強い事でしょう。」
柔らかで心地の良い声に耳を傾ける私の視線の先には、緩やかに唇で弧を描き、完璧な微笑を浮かべるクリスティ殿下がいた。
冷たく凛とした氷を思い起こさせる薄水色の瞳は、他の追随を許さぬ美貌をより際立てている。
こちらを振り向いた時に、ふわりと揺れる艶やかな白金色の髪。細く渦巻いて室内の照明を反射し、光の波を作り出した。
欲を言えば、その言葉が私にのみ向けられたものであれば良いと思う。
しかし、クリスティ殿下の視線は兄へと向いており、その視界の中に私も含まれているというだけだ。
それでも時折目線が揺れ、僅かにでも私の方へ向くように感じる。
これではまるで。学園時代、目立つ人物に群がっては「今こっち見た、私を見た」と言い張っていた勘違い生徒達と……同じではないか。
全ては願望のなせる業だというのに。
だが彼等とは違い。
私は目当ての相手に話し掛ける事が出来る。その状況と、立場にある。
「好き嫌いを無くしてやろうと気遣ったロザリンド嬢から、大嫌いな物を山ほど投げ付けられた事も……良い思い出になりますね?」
いつも通り、クリスティ殿下が声を掛ける相手は兄だ。
見詰められる兄は、殿下を見返しながらも無言でいる。
視線を絡め合いながら、和やかに言葉も交わし合う。という状況を見ずに済んだのは有難い。
その反面。兄に対しては、クリスティ殿下への対応の冷たさに文句を言いたい気持ちも抱いた。
見詰め合う二人の様子に私は、学園時代に耳にした下らない話を思い出してしまう。
思い出し、即座に否定する。
こうやってクリスティ殿下から話し掛けられながら、碌な返事もしない兄が殿下とお似合いなどと……そのような事があるものか。
「そうだろう? ジェフ。」
「……はい、兄上。」
隣の第二皇子へと声を掛けるも、彼は興味が無さそうだ。
たった一言の返事をした後は食事に戻ってしまった。
私の兄と、自分の弟。二人ともから会話に付き合って貰えなければ、クリスティ殿下も口を閉ざさざるを得ない。
それは流石に可哀想だろう。
クリスティ殿下は意外とお喋りが好きなのだから。
ならば。
私が………。
私が話し相手でも、……良いだろう?
「ほぉ? クリスティ殿下は、我が姉と……そのような良い思い出が?」
私は充分待った。
実に素晴らしい忍耐力を以って。この時を。
父親達の雑談に耳を傾ける振りをする時間は終わりだ。
ここからは、私達『息子同士』で好きなように会話して構わないだろう?
クリスティ殿下に微笑み掛けた。そのつもりでいたのだが。
私の唇は知らぬ内に歪んで吊り上がっていた。
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