10 / 60
定例の交流会にて
定例の交流会にて・9 ◇第二皇子ジェフリー視点
しおりを挟む
リーヴェルト帝国の皇帝ルクルーゼは僕の父上です。
濃い紺色の瞳と、とても色の濃い金髪を持っていて、いかにも威厳に満ちた皇族といった風貌をしていますが、若い頃の父上はまるで人形のようだったと言われてもいます。
人形のように……顔立ちが整っている、という意味でしょうか。それとも、無反応で面白味がなかった、という意味でしょうか。そこまで詳しくは、僕の耳には入っていません。
この身体に流れる血の半分は父上のものですから、いずれ成長すれば僕も、父上のような容貌になれるのでしょうか。
僕の目は紺碧色です。髪の毛は明るい金髪。緩やかなウェーブが掛かっています。
何人かいる兄弟姉妹の中で、最も父上に近い色合いをしているのが僕でした。
王妃である僕の母は、結婚後しばらく子供が授からず。必要に迫られて側妃が迎えられました。第一皇女である姉ディアーネを産んだのはその人です。
皮肉な事に、それから少し経って。側妃が二人目の子を宿した事が分かった後、僕の母も子を授かったのです。
側妃の二人目の子が、第一皇子であるクリスティ。……誕生日の関係で僕が弟になりましたが、僕達の年齢は一緒なので、兄の事をクリスと呼びます。
クリスは薄水色の目で、白金色の髪は細い縦ロールです。線が細い印象な事も相まって、密かに『人形皇子』と呼ばれているらしいですね。
クリスが『人形』……とはねぇ。人形は簡単に表情を崩したりはしませんが?
確かにクリスの顔は綺麗です、それは間違いありません。
ただ、それを台無しにするぐらい、すぐ油断してヘラヘラ、ニヤニヤしてしまう悪い癖があるんですよ。
これからもうすぐ『交流食事会』が始まります。
父上が定期的に開催している、臣下及びその家族との食事会です。
しかも今日の参加者は、宰相閣下とその子息二名だと聞けば。
いつものように、またクリスが饒舌にお喋りをする事でしょう。
普段から緩々なクリスの表情筋が壊れぬよう、僕はそっと祈るしかありません。
* * *
テーブルを挟んで、あの人が僕をじっと見詰めています。
とても熱っぽく、男らしい眼差しで、僕の全てを包み込むように。
視線で絡め捕られたように、僕は動けなくなってしまいました。
思い切ってそっと視線を投げ返せば、あの人は凄く優しく瞳を細めるのです。
…………という妄想をしながら過ごしていました。
材料は目の前にいるので容易なものです。
黙々と食事を摂りながら、ぼくは本人に気取られぬよう巧みに、そのお姿を視界の中に捉えていました。
僕の真向いの席にいるのは、今回も宰相閣下の長男レオナルド様でした。
脳内では『レオ様』と呼んでいます。
暗いヘーゼル色の目は彫りの深い顔立ちを、より男らしく引き立てて。黒に近い暗灰色の髪がサラリと揺れる様子は、とても大人っぽくて……色気が溢れていて。
暇そうに正面を向いているだけでも、凄く絵になる人です。
レオ様の視界に入っているんだから、と。
僕は頑張って、自分の顔面を……表情を整えています。
あの人の目に映っている時は絶対、変な顔はしたくないので。
クリスの表情筋が緩い、と言いました。
それは僕も、同じなんです。
僕の笑顔はどうやら、ゼロか百か、どちらかしか無いらしくって。
大口を開けて下品に笑っている自覚は無いのですが、クリスから「ジェフは黙ってる方が絶対、可愛いよ」と言われるぐらいには。無表情でいる方がまだ綺麗……、……すみません、見栄を張りました……まだマシなようですから。
緊張して、レオ様を直視する事は出来ません。
でも、いいんです。
お互いがお互いの視界内に入っている。それだけで充分にドキドキしているんです。
これがもし、目が合ったりしてしまったら。
僕は、自分の表情筋がおかしくなってしまうだろうという自信があります。
濃い紺色の瞳と、とても色の濃い金髪を持っていて、いかにも威厳に満ちた皇族といった風貌をしていますが、若い頃の父上はまるで人形のようだったと言われてもいます。
人形のように……顔立ちが整っている、という意味でしょうか。それとも、無反応で面白味がなかった、という意味でしょうか。そこまで詳しくは、僕の耳には入っていません。
この身体に流れる血の半分は父上のものですから、いずれ成長すれば僕も、父上のような容貌になれるのでしょうか。
僕の目は紺碧色です。髪の毛は明るい金髪。緩やかなウェーブが掛かっています。
何人かいる兄弟姉妹の中で、最も父上に近い色合いをしているのが僕でした。
王妃である僕の母は、結婚後しばらく子供が授からず。必要に迫られて側妃が迎えられました。第一皇女である姉ディアーネを産んだのはその人です。
皮肉な事に、それから少し経って。側妃が二人目の子を宿した事が分かった後、僕の母も子を授かったのです。
側妃の二人目の子が、第一皇子であるクリスティ。……誕生日の関係で僕が弟になりましたが、僕達の年齢は一緒なので、兄の事をクリスと呼びます。
クリスは薄水色の目で、白金色の髪は細い縦ロールです。線が細い印象な事も相まって、密かに『人形皇子』と呼ばれているらしいですね。
クリスが『人形』……とはねぇ。人形は簡単に表情を崩したりはしませんが?
確かにクリスの顔は綺麗です、それは間違いありません。
ただ、それを台無しにするぐらい、すぐ油断してヘラヘラ、ニヤニヤしてしまう悪い癖があるんですよ。
これからもうすぐ『交流食事会』が始まります。
父上が定期的に開催している、臣下及びその家族との食事会です。
しかも今日の参加者は、宰相閣下とその子息二名だと聞けば。
いつものように、またクリスが饒舌にお喋りをする事でしょう。
普段から緩々なクリスの表情筋が壊れぬよう、僕はそっと祈るしかありません。
* * *
テーブルを挟んで、あの人が僕をじっと見詰めています。
とても熱っぽく、男らしい眼差しで、僕の全てを包み込むように。
視線で絡め捕られたように、僕は動けなくなってしまいました。
思い切ってそっと視線を投げ返せば、あの人は凄く優しく瞳を細めるのです。
…………という妄想をしながら過ごしていました。
材料は目の前にいるので容易なものです。
黙々と食事を摂りながら、ぼくは本人に気取られぬよう巧みに、そのお姿を視界の中に捉えていました。
僕の真向いの席にいるのは、今回も宰相閣下の長男レオナルド様でした。
脳内では『レオ様』と呼んでいます。
暗いヘーゼル色の目は彫りの深い顔立ちを、より男らしく引き立てて。黒に近い暗灰色の髪がサラリと揺れる様子は、とても大人っぽくて……色気が溢れていて。
暇そうに正面を向いているだけでも、凄く絵になる人です。
レオ様の視界に入っているんだから、と。
僕は頑張って、自分の顔面を……表情を整えています。
あの人の目に映っている時は絶対、変な顔はしたくないので。
クリスの表情筋が緩い、と言いました。
それは僕も、同じなんです。
僕の笑顔はどうやら、ゼロか百か、どちらかしか無いらしくって。
大口を開けて下品に笑っている自覚は無いのですが、クリスから「ジェフは黙ってる方が絶対、可愛いよ」と言われるぐらいには。無表情でいる方がまだ綺麗……、……すみません、見栄を張りました……まだマシなようですから。
緊張して、レオ様を直視する事は出来ません。
でも、いいんです。
お互いがお互いの視界内に入っている。それだけで充分にドキドキしているんです。
これがもし、目が合ったりしてしまったら。
僕は、自分の表情筋がおかしくなってしまうだろうという自信があります。
10
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
・作者が話の進行悩み過ぎてる

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

皇帝の立役者
白鳩 唯斗
BL
実の弟に毒を盛られた。
「全てあなた達が悪いんですよ」
ローウェル皇室第一子、ミハエル・ローウェルが死に際に聞いた言葉だった。
その意味を考える間もなく、意識を手放したミハエルだったが・・・。
目を開けると、数年前に回帰していた。


王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

【側妻になった男の僕。】【何故か正妻になった男の僕。】アナザーストーリー
selen
BL
【側妻になった男の僕。】【何故か正妻になった男の僕。】のアナザーストーリーです。
幸せなルイスとウィル、エリカちゃん。(⌒▽⌒)その他大勢の生活なんかが覗けますよ(⌒▽⌒)(⌒▽⌒)

もういいや
senri
BL
急遽、有名で偏差値がバカ高い高校に編入した時雨 薊。兄である柊樹とともに編入したが……
まぁ……巻き込まれるよね!主人公だもん!
しかも男子校かよ………
ーーーーーーーー
亀更新です☆期待しないでください☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる