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定例の交流会にて
定例の交流会にて・3 ◇長男レオナルド視点
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月に一~二度の頻度で皇帝が主催する『交流食事会』。
仰々しくも『交流食事会』なんて銘打っちゃいるし。他の臣下との食事会はどんなモンかは知らねぇが。
ウチに関しちゃ、皇帝陛下と、最も一緒に遊び回った仲である宰相と、一緒にメシでも食おうぜ。って話だ。
ついでに宰相、お前の家族も連れて来いよ。お互いの息子達は年齢も近いだろ。そいつらはそいつらで適当に交流させといて、久し振りに思い切り趣味の話に興じようぜ。……ってな。
ぶっちゃけて言わして貰えば、だ。
皇帝陛下と親父が延々と、釣りや馬の話を繰り広げてる場に、居たいとは思わねぇ。
食事会で出される料理は流石の絶品だがよ? 皇帝陛下と一緒に食うんだぞ? 寛いでなんて過ごせるわけ無ぇだろ。
……とかナントカ、言っちゃいるが。
結局オレは、今回も食事会に参加してる。
家族の全員が参加する必要も、絶対にオレが居なきゃならんわけでも無いのに、だ。
「 」
「 」
親父と皇帝陛下が釣りの話で盛り上がる中、オレは食事に集中する事も出来ず。
時々手を動かしながら、黙って一応は話を聞いてる素振りをしてた。
しちゃ居るが、全く、耳に入って来ねぇ。
親父の話はどうせ、こないだのユーフラ川での釣果についてだろ。そんで「今年は三回しか川釣りに行けてない」とか言って、さり気ないツモリで『もっと行きたいアピール』でもしてるんだろ。
畏れ多くも皇帝陛下の前で、決して褒められた態度じゃないのは分かっちゃいるが。
オレの注意は殆ど、向かい側で食事にばかり気を向けてる人物に向いてた。
ちっともコッチを見ようともせず。
かと言って、見たくないと言わんばかりに顔を背けられる程ではなく。
視界にオレが入っても入らなくても別に構わない、そんな態度の。
ジェフリー第二皇子、その人に。
今日も座席はいつもと同じ。
長い食卓の短辺に、皇帝陛下の席がある。
皇帝陛下から見て左側の長辺に、第一皇子であるクリスティ殿下。その隣に、第二皇子であるジェフリー殿下が並んで座ってる。
対面側には、皇帝陛下に近い席順に。宰相をやってる親父、オレ(レオナルド)、弟のレイ(レイモンド)だ。
楽しい話に花を咲かせるのが皇帝陛下と親父だけなのは、いつもの事だ。
その間、オレ達息子同士四人が会話する事が無いのも、いつもの事だ。
特にやる事も無いオレがジェフリー殿下を眺めて過ごすのも。
相手からはそれを全く、意に介されないのも。
どれも全部、いつもの事だった。
真向かいの席にいるジェフリー殿下が優雅に巻きパンを千切る。
少し大きめに千切ったソレに、ピーナッツバターをたっぷり塗り、一口で頬張った。
大きくない口の中に結構な大きさのパンを入れた所為で、咀嚼するのに時間が掛かってるようだ。
ややしばらく口元が動き、小さな咽喉仏が上下する。
ようやく飲み込めたらしい。
紺碧色の瞳が満足そうに細められた。
パッと見、表情は殆ど変わらん。
だがオレには、それが笑顔に見えてる。
決して、オレには向けられる事の無い表情だ。
普段は無表情ばかりのジェフリー殿下は。ほんの僅かな変化でもあれば途端に、こんなにも可愛らしくなるんだ。
それが分かるぐらい、オレはずっと、一方的にジェフリー殿下を見てる。
今もジェフリー殿下の小さな笑顔を目にしただけで、それを可愛いと思うぐらいには、オレはジェフリー殿下に好意を抱いてた。
ジェフリー殿下は相変わらず無関心な様子だ。
クリスティ殿下のように冷たい視線を流して来るでもなく、ただ黙々と食事を進めてる。
オレが見てるって事は分かってるだろうに、全く気にならないようだ。
ここまで無視されたらいっそ清々しいか。
……嫌われてるのは分かってるさ。学園時代からこうだったろ。今さら、だ。
いや、嫌うって程の、特別な意識も持たれてねぇか。
オレの事なんぞ、精々……関わると面倒な人物、ってぐらいの意識なんだろうなァ。
仰々しくも『交流食事会』なんて銘打っちゃいるし。他の臣下との食事会はどんなモンかは知らねぇが。
ウチに関しちゃ、皇帝陛下と、最も一緒に遊び回った仲である宰相と、一緒にメシでも食おうぜ。って話だ。
ついでに宰相、お前の家族も連れて来いよ。お互いの息子達は年齢も近いだろ。そいつらはそいつらで適当に交流させといて、久し振りに思い切り趣味の話に興じようぜ。……ってな。
ぶっちゃけて言わして貰えば、だ。
皇帝陛下と親父が延々と、釣りや馬の話を繰り広げてる場に、居たいとは思わねぇ。
食事会で出される料理は流石の絶品だがよ? 皇帝陛下と一緒に食うんだぞ? 寛いでなんて過ごせるわけ無ぇだろ。
……とかナントカ、言っちゃいるが。
結局オレは、今回も食事会に参加してる。
家族の全員が参加する必要も、絶対にオレが居なきゃならんわけでも無いのに、だ。
「 」
「 」
親父と皇帝陛下が釣りの話で盛り上がる中、オレは食事に集中する事も出来ず。
時々手を動かしながら、黙って一応は話を聞いてる素振りをしてた。
しちゃ居るが、全く、耳に入って来ねぇ。
親父の話はどうせ、こないだのユーフラ川での釣果についてだろ。そんで「今年は三回しか川釣りに行けてない」とか言って、さり気ないツモリで『もっと行きたいアピール』でもしてるんだろ。
畏れ多くも皇帝陛下の前で、決して褒められた態度じゃないのは分かっちゃいるが。
オレの注意は殆ど、向かい側で食事にばかり気を向けてる人物に向いてた。
ちっともコッチを見ようともせず。
かと言って、見たくないと言わんばかりに顔を背けられる程ではなく。
視界にオレが入っても入らなくても別に構わない、そんな態度の。
ジェフリー第二皇子、その人に。
今日も座席はいつもと同じ。
長い食卓の短辺に、皇帝陛下の席がある。
皇帝陛下から見て左側の長辺に、第一皇子であるクリスティ殿下。その隣に、第二皇子であるジェフリー殿下が並んで座ってる。
対面側には、皇帝陛下に近い席順に。宰相をやってる親父、オレ(レオナルド)、弟のレイ(レイモンド)だ。
楽しい話に花を咲かせるのが皇帝陛下と親父だけなのは、いつもの事だ。
その間、オレ達息子同士四人が会話する事が無いのも、いつもの事だ。
特にやる事も無いオレがジェフリー殿下を眺めて過ごすのも。
相手からはそれを全く、意に介されないのも。
どれも全部、いつもの事だった。
真向かいの席にいるジェフリー殿下が優雅に巻きパンを千切る。
少し大きめに千切ったソレに、ピーナッツバターをたっぷり塗り、一口で頬張った。
大きくない口の中に結構な大きさのパンを入れた所為で、咀嚼するのに時間が掛かってるようだ。
ややしばらく口元が動き、小さな咽喉仏が上下する。
ようやく飲み込めたらしい。
紺碧色の瞳が満足そうに細められた。
パッと見、表情は殆ど変わらん。
だがオレには、それが笑顔に見えてる。
決して、オレには向けられる事の無い表情だ。
普段は無表情ばかりのジェフリー殿下は。ほんの僅かな変化でもあれば途端に、こんなにも可愛らしくなるんだ。
それが分かるぐらい、オレはずっと、一方的にジェフリー殿下を見てる。
今もジェフリー殿下の小さな笑顔を目にしただけで、それを可愛いと思うぐらいには、オレはジェフリー殿下に好意を抱いてた。
ジェフリー殿下は相変わらず無関心な様子だ。
クリスティ殿下のように冷たい視線を流して来るでもなく、ただ黙々と食事を進めてる。
オレが見てるって事は分かってるだろうに、全く気にならないようだ。
ここまで無視されたらいっそ清々しいか。
……嫌われてるのは分かってるさ。学園時代からこうだったろ。今さら、だ。
いや、嫌うって程の、特別な意識も持たれてねぇか。
オレの事なんぞ、精々……関わると面倒な人物、ってぐらいの意識なんだろうなァ。
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