人形皇子は表情が乏しい自覚が無い

左側

文字の大きさ
上 下
4 / 60
定例の交流会にて

定例の交流会にて・3  ◇長男レオナルド視点

しおりを挟む
月に一~二度の頻度で皇帝が主催する『交流食事会』。

仰々しくも『交流食事会』なんて銘打っちゃいるし。他の臣下との食事会はどんなモンかは知らねぇが。
ウチに関しちゃ、皇帝陛下と、最も一緒に遊び回った仲である宰相と、一緒にメシでも食おうぜ。って話だ。
ついでに宰相、お前の家族も連れて来いよ。お互いの息子達は年齢も近いだろ。そいつらはそいつらで適当に交流させといて、久し振りに思い切り趣味の話に興じようぜ。……ってな。


ぶっちゃけて言わして貰えば、だ。
皇帝陛下と親父が延々と、釣りや馬の話を繰り広げてる場に、居たいとは思わねぇ。
食事会で出される料理は流石の絶品だがよ? 皇帝陛下と一緒に食うんだぞ? 寛いでなんて過ごせるわけ無ぇだろ。



……とかナントカ、言っちゃいるが。
結局オレは、今回も食事会に参加してる。
家族の全員が参加する必要も、絶対にオレが居なきゃならんわけでも無いのに、だ。




「    」
「    」

親父と皇帝陛下が釣りの話で盛り上がる中、オレは食事に集中する事も出来ず。
時々手を動かしながら、黙って一応は話を聞いてる素振りをしてた。

しちゃ居るが、全く、耳に入って来ねぇ。
親父の話はどうせ、こないだのユーフラ川での釣果についてだろ。そんで「今年は三回しか川釣りに行けてない」とか言って、さり気ないツモリで『もっと行きたいアピール』でもしてるんだろ。



畏れ多くも皇帝陛下の前で、決して褒められた態度じゃないのは分かっちゃいるが。
オレの注意は殆ど、向かい側で食事にばかり気を向けてる人物に向いてた。

ちっともコッチを見ようともせず。
かと言って、見たくないと言わんばかりに顔を背けられる程ではなく。
視界にオレが入っても入らなくても別に構わない、そんな態度の。

ジェフリー第二皇子、その人に。



今日も座席はいつもと同じ。
長い食卓の短辺に、皇帝陛下の席がある。
皇帝陛下から見て左側の長辺に、第一皇子であるクリスティ殿下。その隣に、第二皇子であるジェフリー殿下が並んで座ってる。
対面側には、皇帝陛下に近い席順に。宰相をやってる親父、オレ(レオナルド)、弟のレイ(レイモンド)だ。


楽しい話に花を咲かせるのが皇帝陛下と親父だけなのは、いつもの事だ。
その間、オレ達息子同士四人が会話する事が無いのも、いつもの事だ。

特にやる事も無いオレがジェフリー殿下を眺めて過ごすのも。
相手からはそれを全く、意に介されないのも。

どれも全部、いつもの事だった。


真向かいの席にいるジェフリー殿下が優雅に巻きパンを千切る。
少し大きめに千切ったソレに、ピーナッツバターをたっぷり塗り、一口で頬張った。
大きくない口の中に結構な大きさのパンを入れた所為で、咀嚼するのに時間が掛かってるようだ。
ややしばらく口元が動き、小さな咽喉仏が上下する。
ようやく飲み込めたらしい。
紺碧色の瞳が満足そうに細められた。


パッと見、表情は殆ど変わらん。
だがオレには、それが笑顔に見えてる。
決して、オレには向けられる事の無い表情だ。

普段は無表情ばかりのジェフリー殿下は。ほんの僅かな変化でもあれば途端に、こんなにも可愛らしくなるんだ。
それが分かるぐらい、オレはずっと、一方的にジェフリー殿下を見てる。
今もジェフリー殿下の小さな笑顔を目にしただけで、それを可愛いと思うぐらいには、オレはジェフリー殿下に好意を抱いてた。



ジェフリー殿下は相変わらず無関心な様子だ。
クリスティ殿下のように冷たい視線を流して来るでもなく、ただ黙々と食事を進めてる。
オレが見てるって事は分かってるだろうに、全く気にならないようだ。
ここまで無視されたらいっそ清々しいか。




……嫌われてるのは分かってるさ。学園時代からこうだったろ。今さら、だ。

いや、嫌うって程の、特別な意識も持たれてねぇか。
オレの事なんぞ、精々……関わると面倒な人物、ってぐらいの意識なんだろうなァ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・話の流れが遅い ・作者が話の進行悩み過ぎてる

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

皇帝の立役者

白鳩 唯斗
BL
 実の弟に毒を盛られた。 「全てあなた達が悪いんですよ」  ローウェル皇室第一子、ミハエル・ローウェルが死に際に聞いた言葉だった。  その意味を考える間もなく、意識を手放したミハエルだったが・・・。  目を開けると、数年前に回帰していた。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

龍神様の住む村

世万江生紬
BL
村一番の腕っぷしを持つ龍平は、龍神退治に向かいました。 本編は2話。後は本編のおまけと季節のお話です。

王道にはしたくないので

八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉 幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。 これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

【側妻になった男の僕。】【何故か正妻になった男の僕。】アナザーストーリー

selen
BL
【側妻になった男の僕。】【何故か正妻になった男の僕。】のアナザーストーリーです。 幸せなルイスとウィル、エリカちゃん。(⌒▽⌒)その他大勢の生活なんかが覗けますよ(⌒▽⌒)(⌒▽⌒)

処理中です...