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定例の交流会にて
定例の交流会にて・1 ◇俯瞰視点
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大陸の東端に位置するリーヴェルト帝国。
皇城は非常に豪奢かつ堅牢な佇まいで、小高い丘から繁栄を誇る城下町を見下ろすように建てられている。
その城の一角。
皇族がプライベートで利用する食堂では、月に一~二度の『交流食事会』が開かれていた。
交流食事会というのは文字通り、皇帝が食事を通して臣下の者達と交流する会だ。
本日の交流相手は、臣下の中でも最も付き合いの長い一人である宰相閣下。その息子達が二名。
迎える皇帝も、何人かいる子供の内の、息子二名を同席させた。
長い食卓の短辺に位置する席に皇帝が着き。
皇帝から見て右側の長辺には、宰相、宰相の長男レオナルド、次男レイモンドの順に着席している。
左側の長辺には、第一皇子クリスティ、第二皇子ジェフリーが並んでいた。
食事会は、皇帝陛下と宰相閣下との間のみ、穏やかに始まった。
芳ばしい香りのするパンが入った綺麗な籠が幾つか置かれ、数種類のチーズが盛り付けられた皿と、ママレードの小瓶もテーブルに並んだ。
緊張した面持ちの給仕役が、各人へのサラダを運んで来る。
普段から皇族に仕えている彼等が今更緊張する理由は、この場に溢れる緊張感の所為だった。
リーヴェルト帝国の北・東・南側には他の国はなく、西側で接している小国連合とはそこそこに穏やかな関係を築けている為、今は他国が脅威となる可能性は低い。
最近の気候は特段の異常も無く、作物の収穫は安定しており、流行り病なども無く、何かしらの対策が必要となる懸案事項も見当たらない。
にも関わらず、また、公けの会議でもないというのに。
食卓を囲む者達の雰囲気は極めて硬いのだ。
緊張感の原因は二人の皇子と、宰相の二人の息子。
正確に言えば、それぞれの息子達の様子が。和やかに交流をしよう、という雰囲気からは程遠いのだ。
食事会が始まる前から四人は一切の会話をしていない。
皇子達二人は、宰相へ挨拶をする事で、それを宰相家族全員への挨拶としていた。
宰相の息子二人は、皇帝や皇子達への挨拶を、皇帝に注目しながら行っていた。
お互いに、相手へと話し掛ける事も無いままだ。
サラダを食べていた第一皇子が不意に、宰相の息子達の方を向いた。
視線の先では宰相の長男が今まさに、プチトマトにフォークを突きささんとしている所だった。視線を感じた長男が面を上げる。
一瞬、二人の眼差しが絡んだ。
だが次の瞬間。
第一皇子は冷ややかに眉を顰め、自分の隣に座る第二皇子へと視線を逸らす。
長男は顔を強張らせた後、どうにか持ち直しはしたが、第一皇子へと向ける視線はかなり強くなった。
忌々し気に第一皇子と、ついでとばかりに、彼が視線を向けた第二皇子とを睨み付ける。
二人から視線を向けられた第二皇子は、何の感情も表さない瞳で受け止めた。
サラダの方がよっぽど彼の興味を惹くらしい。
宰相の次男は、一番離れた位置からそれらの様子を眺めていた。
そして無意識なのか、意識的になのかは定かではないが。
心底から、呆れた様子で溜息を吐いた。
使用人達は、今日こそは何事も無く交流食事会が終わるよう願っていた。
このまま、雰囲気は良くないままでも言い争いが無く終わってくれれば良い、と。
皇城は非常に豪奢かつ堅牢な佇まいで、小高い丘から繁栄を誇る城下町を見下ろすように建てられている。
その城の一角。
皇族がプライベートで利用する食堂では、月に一~二度の『交流食事会』が開かれていた。
交流食事会というのは文字通り、皇帝が食事を通して臣下の者達と交流する会だ。
本日の交流相手は、臣下の中でも最も付き合いの長い一人である宰相閣下。その息子達が二名。
迎える皇帝も、何人かいる子供の内の、息子二名を同席させた。
長い食卓の短辺に位置する席に皇帝が着き。
皇帝から見て右側の長辺には、宰相、宰相の長男レオナルド、次男レイモンドの順に着席している。
左側の長辺には、第一皇子クリスティ、第二皇子ジェフリーが並んでいた。
食事会は、皇帝陛下と宰相閣下との間のみ、穏やかに始まった。
芳ばしい香りのするパンが入った綺麗な籠が幾つか置かれ、数種類のチーズが盛り付けられた皿と、ママレードの小瓶もテーブルに並んだ。
緊張した面持ちの給仕役が、各人へのサラダを運んで来る。
普段から皇族に仕えている彼等が今更緊張する理由は、この場に溢れる緊張感の所為だった。
リーヴェルト帝国の北・東・南側には他の国はなく、西側で接している小国連合とはそこそこに穏やかな関係を築けている為、今は他国が脅威となる可能性は低い。
最近の気候は特段の異常も無く、作物の収穫は安定しており、流行り病なども無く、何かしらの対策が必要となる懸案事項も見当たらない。
にも関わらず、また、公けの会議でもないというのに。
食卓を囲む者達の雰囲気は極めて硬いのだ。
緊張感の原因は二人の皇子と、宰相の二人の息子。
正確に言えば、それぞれの息子達の様子が。和やかに交流をしよう、という雰囲気からは程遠いのだ。
食事会が始まる前から四人は一切の会話をしていない。
皇子達二人は、宰相へ挨拶をする事で、それを宰相家族全員への挨拶としていた。
宰相の息子二人は、皇帝や皇子達への挨拶を、皇帝に注目しながら行っていた。
お互いに、相手へと話し掛ける事も無いままだ。
サラダを食べていた第一皇子が不意に、宰相の息子達の方を向いた。
視線の先では宰相の長男が今まさに、プチトマトにフォークを突きささんとしている所だった。視線を感じた長男が面を上げる。
一瞬、二人の眼差しが絡んだ。
だが次の瞬間。
第一皇子は冷ややかに眉を顰め、自分の隣に座る第二皇子へと視線を逸らす。
長男は顔を強張らせた後、どうにか持ち直しはしたが、第一皇子へと向ける視線はかなり強くなった。
忌々し気に第一皇子と、ついでとばかりに、彼が視線を向けた第二皇子とを睨み付ける。
二人から視線を向けられた第二皇子は、何の感情も表さない瞳で受け止めた。
サラダの方がよっぽど彼の興味を惹くらしい。
宰相の次男は、一番離れた位置からそれらの様子を眺めていた。
そして無意識なのか、意識的になのかは定かではないが。
心底から、呆れた様子で溜息を吐いた。
使用人達は、今日こそは何事も無く交流食事会が終わるよう願っていた。
このまま、雰囲気は良くないままでも言い争いが無く終わってくれれば良い、と。
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