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本編●主人公、外の世界に出て色々衝撃を受けたりしながら遊ぶ

ぼくの兄の『麗しい』が大暴発

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「そうか。では二人とも……お互いに友人という事で、恋愛感情は無いんだね?」
「あぁ勿論だ、アドル。アルフォンソは大切な友人だよ。」
「何故アドルがそう考えたかは分からないが、友情だと思って欲しい。」

二人揃って言う事だし、お互いの言葉でそれぞれが傷付いたりもしていない様子を見ると、確かにその通りなんだろうね。
取り敢えずは二人が言う事を信じるとしようか。
恋人同士ではなく、今後もそうなる予定が無いんだったら、これ以上の追及は不要だね。


……あれ? そう言えば。
何となく今、急に思い出したんだが。
母さんが前に言っていた、エイベル兄さんか弟のアンセル……そのどちらか、又は両方がウェラン司祭の事を好きだという話があったよね。
あれは……兄さん的にはどうなんだろう。

今こうして思い出したのも何か意味がある事なのかも知れないし。
さり気なく、そういう話題に持って行こうかな。


別な話題に興味を惹かれてしまったぼくは、兄とアルフォンソに「明日のランチは同級生と一緒したい」と言おうとしていた事など、頭から追い出してしまっている事に気付きもしなかった。
それよりも今は、どういう風にさり気なくウェラン司祭の事を話そうかと…

「それはそうと……兄さんは、ウェラン司祭の事が好きなの?」
「……っ! っな……、何を……っ!」

あのね? ぼくなりに色々と、話の切り出し方を考えようとはしていたんだよ?
でもその考えが纏まる前に、口からつい、聞きたい内容がはみ出したんだ。


その結果として、呆れるぐらい直球質問になってしまったが。
これはこれで良かったかも知れない。


実に分かりやすいぐらい、兄は恋をしていた。間違いない。


何か返答する気だったんだろう兄だが、言葉を詰まらせたまま、急速に頬を桃色に染めていく。
唇を戦慄かせ、じわりと瞳を潤ませ、視線を揺らす兄。
普段から高ランクの『麗しい』顔が更に、恥じらいを纏った超・高ランクに上昇する。
その変化に、もう兄を見慣れているはずのアルフォンソやぼくも、思わず見惚れてしまう。

ぼく達でさえそうなんだから、離れた位置から見ている者達なんて一溜まりも無い。
気付けば周囲は、水を打ったように静まり返っていた。
理由なんて考えなくとも明らかだ。
誰もが兄の、容赦なく限界点を突破した『麗しい』に釘付けになっている。



誰も……ぼくも、アルフォンソも、周囲の雑談すら聞こえない状況に。
流石に兄も、自分が激烈に注目されていると気付いたようだ。
兄は恥ずかしさに耐えられず、とうとう真っ赤になった頬を両手で挟んでしまう。
真っ直ぐに細い眉を、困った時のように垂らして。首を横にふるふるさせる兄。

しかし、その仕草はとても可愛らしい。
寧ろ、皆を煽っているのかと言いたくなるよ?

「ぁ……。っさ……、ぃや……。」
「兄さん、可愛い……。」
「あっ、……アド、…っ。」

思わず呟いちゃったぼくの声は、しっかりと兄に聞かれたようだ。
兄は、キッッとぼくを睨んで……当たり前のように全く怖くないが……わなわなと全身を震わせた。


そして。


「も……、もうっ、今日は帰るっっ。」
「おいっ、エイベル! 一人で…」
「従者がいるっ。ついて来るな、アルフォンソ!」

おもむろに立ち上がり、走り出す兄。
殺人級に『麗しい』を振り回す兄を心配したアルフォンソが、慌てて追い掛けようとしたのを、珍しく大声で遮ってまで、その場から一人で逃げ出して行く。
その魅力に引き寄せられた者が多数いたものの、兄はやや乱暴な口調で「退いてくれ」と言って、通路を開けさせた。

その様子は、さながら、可憐な姫。……いや、本当だって。男だが。
あんな状態で一人になるなんて大丈夫かと心配ではあるが、侍従がいるから大丈夫だろう。きっとね。



……それにしても。あんな兄さん、初めて見た。……本当に、好きなんだな。

――― それにしても、地蔵が埴輪になるみたいだったな。良い意味で、だぞ。

……あ、久々のサトル的な感覚だ。良い意味で、と付ければセーフみたいな言い方やめろ。
ぼくはせっかく兄さんの、嵐のような『麗しい』を堪能していたのに、台無しだよ。



急に現れた世野悟的なボクの所為で、気分が殺がれたぼくは。
兄が去った後の、未だ何処かざわざわしたレストランの雰囲気と、唇を小さく噛んで俯いたアルフォンソに気付くのが遅くなってしまった。
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