美醜感覚が歪な世界でも二つの価値観を持つ僕に死角はない。

左側

文字の大きさ
上 下
86 / 101
本編●主人公、外の世界に出て色々衝撃を受けたりしながら遊ぶ

ぼくはすぐ気が散るので本題に入れない

しおりを挟む
目の前にいる二人……『麗しい』が高ランクなエイベル兄さんと、顔面偏差値が『無い』も同然なアルフォンソが心配そうな目でぼくを見ている。
うっかり迂闊に卑猥な妄想をしてしまいそうになるが、そんな事で時間を潰している場合じゃない。

今回のぼくの通学は、一応、明日が最終日。そう、もう慌てるような時間なんだ。
妄想なんかは一人で自室にいる時にでもしたらいい。


ぼくは先程、二人に言おうとした「明日の昼は同級生と一緒にランチしたい」という希望を伝えるべく、『格好良い』の微笑みを……作ろうとして止めた。
作り笑いを向けた所で、二人の本物の色気微笑に撃沈されるだけだ。
学習したぼくは、顔面の表情筋を放っておく事にして、これからの話の展開に神経を集中させる。


だって、この二人は……特にエイベル兄さんは割と本気で……ぼくが同級生、又は同じ学校の誰かにレイプされるんじゃないかと心配しているからね。
だが現実は、レイプところかナンパすら無いがね。
同級生からどうにかこうにか、挨拶だけはして貰えているレベルだよ。

恐らく兄は、通学初日の阿呆なタチ共の事が頭から抜けないんだろう。
ぼくだって「あぁ、そういう所なんだな」と思ったよ。
でもそれっきりだよ、あいつ等は何処に行ってしまったんだろうね。きっとアレだね。毎日登校している生徒じゃないんだね。
今なら遭遇しても、全然平気なんだがなぁ。残念だよ。



「……アドル? 本当に大丈夫…」
「もちろんだよ、エイベル兄さん。」



この数日でぼくはだいぶ、この世界の下ネタ事情も分かって来た。
だからもしも、あの阿呆なタチ共から襲われたとしたら。逆に襲い返しても問題無い、という事も分かったんだ。

未だタチもネコも経験の無い、初回はタチ役で、と決めているぼくだが……。
可愛いネコ同級生達になかなか声を掛ける事が出来ないのは、もしかすると自分は下手糞なんじゃないか、という恐れがあるからだ。
もうね、実はいっそ、懐いてくれているエドガーを押し倒そうかとも思ったよ? でもね? この世界のネコ達は、どうやらタチに厳しいみたいじゃないか。
タチらしくない言動に厳しかったアリーとか。満足いかないセックスを友達に喋るネコ同級生とか。

だからもしぼくとの行為に不満があったとしたら、それは恐らく瞬く間に知れ渡ってしまうに違いない。
ぼくが『格好良い』の奇跡ランクである事がアダとなる。外見による期待が大きいだけに、ガッカリ感が半端ないだろう。


あぁ、だからつまり、何が言いたいか……それは。
ネコに襲われる。又は、襲って来たタチを襲い返す。そんな非常事態的な状況下でのセックスであれば、多少ぼくが不慣れでも、出来が今一つだったとしても大丈夫なんじゃないか。……という事だ。

そうだ、それが良い。そこそこ見た目の良い子にレイプされよう!




結論を出したぼくは再び現実世界に戻って来た。
……あれ? 同級生と昼食を摂りたい、という話をする為に集中していたはずなんだが。全然違う事を考えちゃったな。
まぁいいよね。これから二人に話せば良いんだから。

ぼくはぼくに甘いよ。


「ねぇ、兄さん。アルフォンソ。……二人は、毎日ぼくとランチを一緒に摂っているんだが…」
「それは当たり前だろう? 明日も当然、一緒の予定だ。」
「俺も……アドルが嫌でなければ、明日も三人で一緒に食べたい。」

明日の昼食について話そうとした、ぼくは。
兄とアルフォンソの二人が纏めて視界に入っている、それは『ぼく得』な情景だが、ふと疑問が浮かんだ。


「ぇーと……。兄さんとアルフォンソは、その……付き合っているのか?」
「………。」
「………。」


ぼくの問い掛けに。

二人。無言。


チラッ。ちらっ。


お互いに窺い合ってから、咳払いをしたアルフォンソが口を開いた。


「そんな事があるはず無いだろう、アドル。こんなに『麗しい』なエイベルと、顔面偏差値の無い俺が……。友達でいられるのさえ、不思議なくらいなのに…」
「アルフォンソっ。友達である事に、顔面偏差値なんか関係ないだろうっ。」

良かった。兄の言う『友達』は、普通の友達なんだね。
少々頬を染めたように見えるんだが、本当に、二人の間に『そういう気持ち』は無いと思って良いのかな?


「兄さん。アルフォンソ。……ぼくに気を遣わなくて良いんだよ? 本当に、付き合っていない?」
「アドル、誤解だ。俺にとってアルフォンソは、信頼出来る友人だ。……肉体関係になる事は無い。」
「俺もエイベルを好ましいと思っているが、あくまで友人として、だ。」

キッパリと否定する二人。ぼくは少しニヤけそうになってしまう。
何故なら、アルフォンソがまるで、ぼくに誤解されたくないと思って必死になっているような、そんな表情をするからだ。
こんなん見せられたら嬉しくなっちゃうよね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

もしかしてこの世界美醜逆転?………はっ、勝った!妹よ、そのブサメン第2王子は喜んで差し上げますわ!

結ノ葉
ファンタジー
目が冷めたらめ~っちゃくちゃ美少女!って言うわけではないけど色々ケアしまくってそこそこの美少女になった昨日と同じ顔の私が!(それどころか若返ってる分ほっぺ何て、ぷにっぷにだよぷにっぷに…)  でもちょっと小さい?ってことは…私の唯一自慢のわがままぼでぃーがない! 何てこと‼まぁ…成長を願いましょう…きっときっと大丈夫よ………… ……で何コレ……もしや転生?よっしゃこれテンプレで何回も見た、人生勝ち組!って思ってたら…何で周りの人たち布被ってんの!?宗教?宗教なの?え…親もお兄ちゃまも?この家で布被ってないのが私と妹だけ? え?イケメンは?新聞見ても外に出てもブサメンばっか……イヤ無理無理無理外出たく無い… え?何で俺イケメンだろみたいな顔して外歩いてんの?絶対にケア何もしてない…まじで無理清潔感皆無じゃん…清潔感…com…back… ってん?あれは………うちのバカ(妹)と第2王子? 無理…清潔感皆無×清潔感皆無…うぇ…せめて布してよ、布! って、こっち来ないでよ!マジで来ないで!恥ずかしいとかじゃないから!やだ!匂い移るじゃない! イヤー!!!!!助けてお兄ー様!

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

異世界の美醜と私の認識について

佐藤 ちな
恋愛
 ある日気づくと、美玲は異世界に落ちた。  そこまでならラノベなら良くある話だが、更にその世界は女性が少ない上に、美醜感覚が美玲とは激しく異なるという不思議な世界だった。  そんな世界で稀人として特別扱いされる醜女(この世界では超美人)の美玲と、咎人として忌み嫌われる醜男(美玲がいた世界では超美青年)のルークが出会う。  不遇の扱いを受けるルークを、幸せにしてあげたい!そして出来ることなら、私も幸せに!  美醜逆転・一妻多夫の異世界で、美玲の迷走が始まる。 * 話の展開に伴い、あらすじを変更させて頂きました。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

二度目の勇者の美醜逆転世界ハーレムルート

猫丸
恋愛
全人類の悲願である魔王討伐を果たした地球の勇者。 彼を待っていたのは富でも名誉でもなく、ただ使い捨てられたという現実と別の次元への強制転移だった。 地球でもなく、勇者として召喚された世界でもない世界。 そこは美醜の価値観が逆転した歪な世界だった。 そうして少年と少女は出会い―――物語は始まる。 他のサイトでも投稿しているものに手を加えたものになります。

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

転生したら美醜逆転世界だったので、人生イージーモードです

狼蝶
恋愛
 転生したらそこは、美醜が逆転していて顔が良ければ待遇最高の世界だった!?侯爵令嬢と婚約し人生イージーモードじゃんと思っていたら、人生はそれほど甘くはない・・・・?  学校に入ったら、ここはまさかの美醜逆転世界の乙女ゲームの中だということがわかり、さらに自分の婚約者はなんとそのゲームの悪役令嬢で!!!?

処理中です...