美醜感覚が歪な世界でも二つの価値観を持つ僕に死角はない。

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本編●主人公、外の世界に出て色々衝撃を受けたりしながら遊ぶ

奇跡ランクのぼくは逆に相手にされないらしい

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虚しいランチタイムを終えた後、午後の授業を一つ受けた。
授業をもう一つ受ければ、今日のカリキュラムは終了となる。

今は丁度、休憩時間だ。
教室内は所々に仲良しグループが寄り集まって、ひと時のお喋りを楽しんでいる。
こうした風景は、日本と大して変わらないものだね。
自分の席から眺めている限りでは、それぞれのグループはどうやら『タチ』又は『ネコ』同士で構成されているように見える。校内には混成グループもいるだろうが、ぼくの視界の中には入って来ていない。



……ふふっ、ふふふ。
そうだよ、ぼくは同級生を眺めているだけだよ。


入学式からは参加出来なかったものの、ここにいる生徒達とは僅か数日の差で、ぼくはこの学級に入って来たというのに。
ヴェールを着けていない状態のぼくが教壇に立ち、今日から宜しくと挨拶をした時には、同級生からの好意をひしひしと感じたのになぁ。おかしいなぁ。
ぼくの顔面を見て涙ぐむネコっぽい子や、息を呑んで頬を赤らめるネコっぽい子や……とにかく色々と好意的な反応があったんだが。おかしいなぁ。

せっかくだからと言う教師の計らいで、同級生全員の挨拶と自己紹介があったから、皆の名前程度は一応押さえる事は出来たものの。
その後、ぼくは誰からも話し掛けられていないんだ。
授業の合間の休憩中も、お昼のランチタイム前後も、そして……今も。

遠巻きに眺められて一挙手一投足を見守られているならば、話はまだ分かる。
だが現実は、何人かが時折こちらを向くが。それも、ぼくを見るというのではなく、視線の中に偶々ぼくが入り込んだレベルでだ。
同級生達は思い思いに休憩をし、同じ教室の中にぼくも居る。そんな感じだ。


休憩時間になった途端、大勢に取り囲まれる気でいた。
すっかり拍子抜けしたよ。
校長室に案内される途中で会った、あの暴走タチ野郎どもは幻だったのかと。言いたくなるような、放っておかれっぷりじゃないか。
ぼくは一応『格好良い』の奇跡ランクなんだが? こんなに空気扱いになる事があるか?
あぁ御免……あった、な。何回かあった。うん。




仕方がないから、次の授業が始まるまでの間、本でも読むか。
貴族と金持ちが多いからか、何処となく生徒達にも余裕があって、世野悟が通っていた学校のような『動物園』じゃないからな。本を読んでいても「なぁに本なんか読んでんだよ」とは言われない。
机に脚を乗せる乱暴者もいなければ、下品な会話も聞こえない。


「あと一つかぁ。はぁ~、ダルい……。」
「ん? どした?」

ぼくの前方、窓際近くにいるネコ三人組の一人が零した。
何の気無しにその声を聞いたぼくは、次の言葉に酷く驚かされる。

「昨日の帰り、レイプされてさぁ~。腰がシンドイんだよね。」

…………はい?

「あ、そーなんだ。嫌ンなっちゃうよねー。」
「今日は休めば良かったのに。」

いや、あの……。……えっ?


ちょっと、彼等が何を話しているのか理解に苦しむんだが。
場に出ている言葉を本気にすれば、レイプされた被害者と、その友人達の会話だ。
それが何だろう、あの雰囲気。
まるで単なる夜更かしをしたかのような被害者。友人二人の台詞もあっさりとしたもんだ。

「そんなに大きなチンポじゃなかったら平気かなって思ったんだけど。や~、こんだけ長く座ってると、やっぱシンドイ~。」
「なーんだ、租チンか。」
「なになに? 動きが凄かった? 良かった?」

レイプされて悲壮感が漂わないのは良い事だと思う。思うが、だ。
もう少し、声を潜めないかい?
いや……周囲にいる他の同級生も特に気にしない様子を見ると、コソコソするような事ではないのか?

「ん~な事、あるワケないじゃん。もし良かったら二人に紹介してるって。ただガツガツされただけ、だしぃ。」
「だ、よ、ねー。」
「気持ち良く出来る男がレイプとか……。そんな情報あったら、もっと広まってるよね。」

三人はうんうんと頷き合っている。
正直ぼくには、この光景が信じられない。

学校の休み時間に。教室で。
可愛らしいネコ達が、レイプの話で盛り上がっているなんて。



そう言えばアレックが言っていたな。
レイプされて不満を感じた被害者は色々と言いふらす……と。

そうか。……これが、それか。


  ※『ぼくはアレックをやっと追い出した。』参照。
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