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本編●主人公、獲物を物色する
ぼくの無礼講パーティは終わった
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* * * * * *
無礼講パーティは終わった。
会場にはまだ参加客達が残っているから完全なお開きじゃあないが、少なくとも、ぼくにとってのパーティは終わったんだよ。
……え? ラッキースケベ相手のリウイはどうしたのか? アルフォンソは?
リウイはねぇ~。
ぼくに抱き付いて礼を言った後、ウェラン司祭と一緒に下がってしまったよ。
神子様としての活動とか色々あって忙しいんだろうね、きっとね。
アルフォンソかいぃ~?
彼はぼくの芝居を見守ってから、ぼくに挨拶をして帰ってしまったよ。
辺境伯のご子息も色々と忙しいんだろうね、きっとね。
ついでに言っておくと、アリーとアンディもね~。
宴会にいつまでも偉い人がいるのは良くないという理屈なのか、ある程度の所で下がってしまったよ。
あぁそもそも、アンディとは皆が見守る中で挨拶を交わしたっきりだ。
アレックの事は知らないな。
リウイもアルフォンソも、アリーもアンディもいないパーティ会場で、他にぼくの心が浮足立つ対象が特にいない状況じゃあ、そりゃぼくだって下がりますって。
という事で、ぼくと母さん、エイベル兄さんは、用意されている宿泊部屋に戻って来ていた。
一夜明けてから、国王陛下に挨拶して、家に戻る予定。
面倒だからもう自宅に戻りたいよ。そうも行かないとか……面倒だね。
「ふぅ……これでしばらくは一安心、か。」
しどけなく長ソファに身体を預けるのは、まぁまぁ『麗しい』の母。
水を一口だけ飲んだコップを、近くにあるローテーブルに置くと、また横たわる。
疲れているのにベッドに入らないのは、パーティ会場での飲食が胃の中で落ち着くタイミングを待っている、らしかった。
奇跡ランクはともかく、会場に集まっている中ではかなりの美貌だから、相当に飲まされたようだ。
ちなみに『麗しい』が高ランクの兄は、部屋に着くなり早々に寝室へと入ってしまっている。
「母さん、お疲れ様。……しばらくは、と言うと?」
ぼくは向かい側のソファに腰掛ける。飲み物は要らない。
同じソファに、というのは流石に……。抱き合って寝そべる事になるから、止めておくよ。
「次は夜会デビューがあるからな。」
「あぁそれ……。」
「ウチでやるには流石に、招待すべき客が多過ぎる。かと言って、招待する相手を絞り込むというわけにも行かぬし……。やはり王妃殿下にお願いする事になるだろう。」
「今回のお披露目に、ぼくのデビューを兼ねるという…」
「それは出来ない。」
案外と名案かと思ったんだが、それは母にきっぱりと否定された。
疲労困憊の眉間に皺が寄る。
「お披露目はお披露目。デビューはデビュー、だ。……それでなくとも、今回のお披露目は急だったからな。各領地に赴いており、参加出来なかった貴族達もいる。」
「はぁ……はい。」
「せめてデビューの夜会で顔を合わせておかねば。ないがしろにされていると、その方達が感じるだろうし。他の貴族からも、アドルが彼等の事を全く気にしていないのだと、誤解を受けるかも知れないぞ。」
話している内に、その辺りの事を想像しちゃったんだろう。
母の眉間の皺が深くなって行く。
一仕事終えた後の、親子の会話でも。と思ったのは、やっぱり藪蛇だったようだ。
ぼくは話題を変える事にした。
「ところで……ウェラン司祭は清廉潔白な方ですねぇ。」
彼に感心させられる事もあったし、少しぐらいは母からの対応が優しくなっても良いんじゃないかと。
そう思ったから、司祭の名を出した。
だが母からすれば、急な話題変換だから。
「いきなりどうした。まさか……お前まで好きになったのか?」
さっきとは違う意味で眉を顰める母。
ぼくは慌てて否定する。
「そうじゃなくて。ただ、何人も『麗しい』が近くにいて、尚且つ奇跡ランクのリウイもいて。誰にも手を出していないのは偉いなぁ……と。」
「そういう話か。別にあいつは我慢していない。……子供に手を出さないのは偉い、とは思うが。」
安心したような母。
それにしても、ウェラン司祭を『あいつ』呼ばわりとは……。
「えーと……どういう事?」
「あいつは、四十歳を超えた『麗しい』にしか興味が無い。」
「えっ、そうなの? 本当に?」
「あぁ本当だ。もしあいつが若い『麗しい』を対象に出来ていたなら、俺はあいつと結婚していたはずだ。アドルは生まれなかったかも知れないぞ?」
えぇーーーっ、そうなのっ?
驚き過ぎて相槌も打てないよっ。
「俺が四十越えた途端、掌を返して来たって……遅いっ。」
あらぬ方向を見ながら文句を言う母。
ぼくは話題を変える事にした。
「ところで……お前まで、とは…」
「兄弟の好みは似ると言う事だ。」
母の短い返事。
つまりそれは……エイベル兄さんか、弟のアンセル。
そのどちらか又は両名が、ウェラン司祭の事が好き……だと。そういう事か。
ぼくは話題を……これ以上は変えられないので寝る事にした。
最初からそうすれば良かった。
無礼講パーティは終わった。
会場にはまだ参加客達が残っているから完全なお開きじゃあないが、少なくとも、ぼくにとってのパーティは終わったんだよ。
……え? ラッキースケベ相手のリウイはどうしたのか? アルフォンソは?
リウイはねぇ~。
ぼくに抱き付いて礼を言った後、ウェラン司祭と一緒に下がってしまったよ。
神子様としての活動とか色々あって忙しいんだろうね、きっとね。
アルフォンソかいぃ~?
彼はぼくの芝居を見守ってから、ぼくに挨拶をして帰ってしまったよ。
辺境伯のご子息も色々と忙しいんだろうね、きっとね。
ついでに言っておくと、アリーとアンディもね~。
宴会にいつまでも偉い人がいるのは良くないという理屈なのか、ある程度の所で下がってしまったよ。
あぁそもそも、アンディとは皆が見守る中で挨拶を交わしたっきりだ。
アレックの事は知らないな。
リウイもアルフォンソも、アリーもアンディもいないパーティ会場で、他にぼくの心が浮足立つ対象が特にいない状況じゃあ、そりゃぼくだって下がりますって。
という事で、ぼくと母さん、エイベル兄さんは、用意されている宿泊部屋に戻って来ていた。
一夜明けてから、国王陛下に挨拶して、家に戻る予定。
面倒だからもう自宅に戻りたいよ。そうも行かないとか……面倒だね。
「ふぅ……これでしばらくは一安心、か。」
しどけなく長ソファに身体を預けるのは、まぁまぁ『麗しい』の母。
水を一口だけ飲んだコップを、近くにあるローテーブルに置くと、また横たわる。
疲れているのにベッドに入らないのは、パーティ会場での飲食が胃の中で落ち着くタイミングを待っている、らしかった。
奇跡ランクはともかく、会場に集まっている中ではかなりの美貌だから、相当に飲まされたようだ。
ちなみに『麗しい』が高ランクの兄は、部屋に着くなり早々に寝室へと入ってしまっている。
「母さん、お疲れ様。……しばらくは、と言うと?」
ぼくは向かい側のソファに腰掛ける。飲み物は要らない。
同じソファに、というのは流石に……。抱き合って寝そべる事になるから、止めておくよ。
「次は夜会デビューがあるからな。」
「あぁそれ……。」
「ウチでやるには流石に、招待すべき客が多過ぎる。かと言って、招待する相手を絞り込むというわけにも行かぬし……。やはり王妃殿下にお願いする事になるだろう。」
「今回のお披露目に、ぼくのデビューを兼ねるという…」
「それは出来ない。」
案外と名案かと思ったんだが、それは母にきっぱりと否定された。
疲労困憊の眉間に皺が寄る。
「お披露目はお披露目。デビューはデビュー、だ。……それでなくとも、今回のお披露目は急だったからな。各領地に赴いており、参加出来なかった貴族達もいる。」
「はぁ……はい。」
「せめてデビューの夜会で顔を合わせておかねば。ないがしろにされていると、その方達が感じるだろうし。他の貴族からも、アドルが彼等の事を全く気にしていないのだと、誤解を受けるかも知れないぞ。」
話している内に、その辺りの事を想像しちゃったんだろう。
母の眉間の皺が深くなって行く。
一仕事終えた後の、親子の会話でも。と思ったのは、やっぱり藪蛇だったようだ。
ぼくは話題を変える事にした。
「ところで……ウェラン司祭は清廉潔白な方ですねぇ。」
彼に感心させられる事もあったし、少しぐらいは母からの対応が優しくなっても良いんじゃないかと。
そう思ったから、司祭の名を出した。
だが母からすれば、急な話題変換だから。
「いきなりどうした。まさか……お前まで好きになったのか?」
さっきとは違う意味で眉を顰める母。
ぼくは慌てて否定する。
「そうじゃなくて。ただ、何人も『麗しい』が近くにいて、尚且つ奇跡ランクのリウイもいて。誰にも手を出していないのは偉いなぁ……と。」
「そういう話か。別にあいつは我慢していない。……子供に手を出さないのは偉い、とは思うが。」
安心したような母。
それにしても、ウェラン司祭を『あいつ』呼ばわりとは……。
「えーと……どういう事?」
「あいつは、四十歳を超えた『麗しい』にしか興味が無い。」
「えっ、そうなの? 本当に?」
「あぁ本当だ。もしあいつが若い『麗しい』を対象に出来ていたなら、俺はあいつと結婚していたはずだ。アドルは生まれなかったかも知れないぞ?」
えぇーーーっ、そうなのっ?
驚き過ぎて相槌も打てないよっ。
「俺が四十越えた途端、掌を返して来たって……遅いっ。」
あらぬ方向を見ながら文句を言う母。
ぼくは話題を変える事にした。
「ところで……お前まで、とは…」
「兄弟の好みは似ると言う事だ。」
母の短い返事。
つまりそれは……エイベル兄さんか、弟のアンセル。
そのどちらか又は両名が、ウェラン司祭の事が好き……だと。そういう事か。
ぼくは話題を……これ以上は変えられないので寝る事にした。
最初からそうすれば良かった。
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