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本編●主人公、獲物を物色する
ぼくの微妙な大作戦
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ぼくはアルフォンソの手を握って、ずかずかと廊下を歩く。
本来なら『格好良い』のぼくは、もっと颯爽と歩を進めるべきなんだろうが、そんな体裁にかまけている場合じゃないんだ。
もしまだリウイがパーティ会場にいるんなら、彼は大勢に囲まれている事だろう。
ぼくはてっきり、神子様であり『麗しい』の奇跡ランクであるリウイの人気が高いから、と思っていた。
だが……勝手にリウイに期待を掛けて勝手に失望して、更に不満を持つような輩がいると聞いてしまっては放っておけない。
そういう種類の人間には、ぼくが、顔面偏差値という権力を大いに笠に着てでも、釘を刺しておかなきゃね。
実際の所、ぼくがしゃしゃり出て行く事によって、嫉妬からリウイへの風当たりが強まる可能性が無いでもないんだが。『あるかも知れない』可能性を考えて遠慮していたって仕方ない。
会場の入り口まで辿り着いて、一旦ぼくは立ち止まった。
扉のそばで、手を繋いだままのアルフォンソに向き直る。
「ねぇ、アルフォンソ。ぼくの顔……どう?」
「もちろん……『格好良い』で、素敵だと思う……。」
繋ぎっぱなしの手が恥ずかしそうな様子で、アルフォンソが答えてくれる。
そういう意味で聞いたんじゃなかったが、褒められれば嬉しい。
「赤くなったり青くなったり、していないよね?」
「あっ、……そ、そういう意味だったか。……あー、…だ、大丈夫だ。と思う。」
すっかり治っているはずとは思うものの、ぼくは一応、リウイにぶたれた頬の様子を確認した。
自分の勘違いに気が付いたアルフォンソの、やや困り顔を堪能しながら、ぼくはそっと気合を入れ直す。
これからぼくは、ぼくが『格好良い』の奇跡ランクで……何だか知らないが『神の顕現』とかいう馬鹿馬鹿しい呼ばれ方をしている事もひっくるめて、力一杯に顔面偏差値の威力をお見舞いするんだからね。
会場内に足を踏み入れる、ぼく。
リウイの姿を探すまでもなく、彼が複数人に囲まれているのが分かった。
敢えてぼくはリウイにも他の誰にも近寄らず、その場で人だかりを観察する。
やっぱり何度見ても、リウイの容姿は抜きん出ているな。
さっき叩かれた事なんか幾らでも許せるぐらいだ。
寧ろ、怒った顔も美味しいご褒美だと思えてしまうんだから。リウイの『麗しい』が如何に危険な魅力であるか、分かって貰えるかな? まぁ分からなかったとしても、ぼくが分かっているから特に問題は無い。
やや少しの間、扉の近くに立っているぼくに、いい感じに人々の視線が集まって来た。
「……アルフォンソ。……行って、来る。」
僅かに緊張感もあるぼくは、御呪い代わりにアルフォンソの手を一度、ぎゅっとしてから離す。
周りを見渡して、ぼくは会場の中央へ堂々と足を進めた。
中央は少しだけ高くなっている。
ステージと呼ぶには低すぎるその部分は、ダンスを楽しむ為という目的で設置されたものだ。
そこを一人で歩くぼくの姿に、リウイを囲んでいた人達の視線も集まって来る。
中心位置で立ち止まって、リウイを招くように、ぼくは手を伸ばした。
「リウイ……いいかな?」
「……あぁ。」
ぼくが声を掛けた事で、リウイにも一層の注目が集まる。
となると、リウイは従うしか無い。
本当はまだ怒っていて顔を見たくないかも知れないが、大人しくリウイはぼくのそばへと来た。
少しだけ遠くて、もっと近くにおいでよと言いそうになったものの、どうにか堪えるぼく。
「なかなか落ち着いて話せるタイミングが無くて、気に掛かっていたんだ。今、少しだけ時間を貰っても良いだろうか?」
「それは…もちろん……。」
「リウイ、キミとぼくの認定が同じ日だなんて嬉しいよ。せっかくの縁だから、今後も親しくしたいと思っているんだ。」
少々わざとらしい気もするが良しとする。
ぼくとリウイとが、対等に近い立場で親しくなるんだという事を周囲にはっきりと分からせれば良い。
周囲の反応を窺いつつ、適度な頃合いまでそんな会話を続けた。
お互いの名前を呼び捨てにする所を、周囲に聞かせるのも忘れずに。
「ところで、リウイ。今日は随分と交流したようだね。神子としての責務もあるのに……疲れただろう?」
リウイを気遣う台詞を吐きつつ、ぼくは他の者達へと視線を向ける。
しっかりと聞いているから良し。
「ぼくとしては、精一杯の協力をしたいと思っている。もし、何か……リウイを煩わせているものがあれば、遠慮しないで話して欲しい。ぼくは『それ』を、ぼくの全力で叩き潰すと、約束するよ。」
「アドル……。」
リウイがぼくの名前を呼ぶ。その表情が眩しい。
ぼくは単に、周囲を威嚇しているだけなんだ。
そんな風に見られると逆に申し訳ないよ。
本当はリウイに不満を抱いている者を捕まえて、文句を言ってやりたいと思っていたんだが。
ぼくはアルフォンソに、その者達が誰なのか、名前を聞くのを忘れてしまったから。
見当違いな相手に絡んでしまわないように、こうやって皆に『芝居』を見せているんだよ。
あんなに気合を入れた癖に、何とも弱気な行動で申し訳ない。
こんなもんでいいか。と判断したぼくは。
リウイと共にさり気なく、中央から移動しようと…
「アドル。」
…したんだが。
リウイに服を引かれて立ち止まる。
振り返った瞬間、リウイがぼくに抱き付いて来た。
「お前、知ってたんだな。…あ、……ありがと。」
リウイの顔は見えないが、聞こえるのは間違いなく照れ声だった。
これは……! ラッキースケベかっ!(スケベじゃない)
本来なら『格好良い』のぼくは、もっと颯爽と歩を進めるべきなんだろうが、そんな体裁にかまけている場合じゃないんだ。
もしまだリウイがパーティ会場にいるんなら、彼は大勢に囲まれている事だろう。
ぼくはてっきり、神子様であり『麗しい』の奇跡ランクであるリウイの人気が高いから、と思っていた。
だが……勝手にリウイに期待を掛けて勝手に失望して、更に不満を持つような輩がいると聞いてしまっては放っておけない。
そういう種類の人間には、ぼくが、顔面偏差値という権力を大いに笠に着てでも、釘を刺しておかなきゃね。
実際の所、ぼくがしゃしゃり出て行く事によって、嫉妬からリウイへの風当たりが強まる可能性が無いでもないんだが。『あるかも知れない』可能性を考えて遠慮していたって仕方ない。
会場の入り口まで辿り着いて、一旦ぼくは立ち止まった。
扉のそばで、手を繋いだままのアルフォンソに向き直る。
「ねぇ、アルフォンソ。ぼくの顔……どう?」
「もちろん……『格好良い』で、素敵だと思う……。」
繋ぎっぱなしの手が恥ずかしそうな様子で、アルフォンソが答えてくれる。
そういう意味で聞いたんじゃなかったが、褒められれば嬉しい。
「赤くなったり青くなったり、していないよね?」
「あっ、……そ、そういう意味だったか。……あー、…だ、大丈夫だ。と思う。」
すっかり治っているはずとは思うものの、ぼくは一応、リウイにぶたれた頬の様子を確認した。
自分の勘違いに気が付いたアルフォンソの、やや困り顔を堪能しながら、ぼくはそっと気合を入れ直す。
これからぼくは、ぼくが『格好良い』の奇跡ランクで……何だか知らないが『神の顕現』とかいう馬鹿馬鹿しい呼ばれ方をしている事もひっくるめて、力一杯に顔面偏差値の威力をお見舞いするんだからね。
会場内に足を踏み入れる、ぼく。
リウイの姿を探すまでもなく、彼が複数人に囲まれているのが分かった。
敢えてぼくはリウイにも他の誰にも近寄らず、その場で人だかりを観察する。
やっぱり何度見ても、リウイの容姿は抜きん出ているな。
さっき叩かれた事なんか幾らでも許せるぐらいだ。
寧ろ、怒った顔も美味しいご褒美だと思えてしまうんだから。リウイの『麗しい』が如何に危険な魅力であるか、分かって貰えるかな? まぁ分からなかったとしても、ぼくが分かっているから特に問題は無い。
やや少しの間、扉の近くに立っているぼくに、いい感じに人々の視線が集まって来た。
「……アルフォンソ。……行って、来る。」
僅かに緊張感もあるぼくは、御呪い代わりにアルフォンソの手を一度、ぎゅっとしてから離す。
周りを見渡して、ぼくは会場の中央へ堂々と足を進めた。
中央は少しだけ高くなっている。
ステージと呼ぶには低すぎるその部分は、ダンスを楽しむ為という目的で設置されたものだ。
そこを一人で歩くぼくの姿に、リウイを囲んでいた人達の視線も集まって来る。
中心位置で立ち止まって、リウイを招くように、ぼくは手を伸ばした。
「リウイ……いいかな?」
「……あぁ。」
ぼくが声を掛けた事で、リウイにも一層の注目が集まる。
となると、リウイは従うしか無い。
本当はまだ怒っていて顔を見たくないかも知れないが、大人しくリウイはぼくのそばへと来た。
少しだけ遠くて、もっと近くにおいでよと言いそうになったものの、どうにか堪えるぼく。
「なかなか落ち着いて話せるタイミングが無くて、気に掛かっていたんだ。今、少しだけ時間を貰っても良いだろうか?」
「それは…もちろん……。」
「リウイ、キミとぼくの認定が同じ日だなんて嬉しいよ。せっかくの縁だから、今後も親しくしたいと思っているんだ。」
少々わざとらしい気もするが良しとする。
ぼくとリウイとが、対等に近い立場で親しくなるんだという事を周囲にはっきりと分からせれば良い。
周囲の反応を窺いつつ、適度な頃合いまでそんな会話を続けた。
お互いの名前を呼び捨てにする所を、周囲に聞かせるのも忘れずに。
「ところで、リウイ。今日は随分と交流したようだね。神子としての責務もあるのに……疲れただろう?」
リウイを気遣う台詞を吐きつつ、ぼくは他の者達へと視線を向ける。
しっかりと聞いているから良し。
「ぼくとしては、精一杯の協力をしたいと思っている。もし、何か……リウイを煩わせているものがあれば、遠慮しないで話して欲しい。ぼくは『それ』を、ぼくの全力で叩き潰すと、約束するよ。」
「アドル……。」
リウイがぼくの名前を呼ぶ。その表情が眩しい。
ぼくは単に、周囲を威嚇しているだけなんだ。
そんな風に見られると逆に申し訳ないよ。
本当はリウイに不満を抱いている者を捕まえて、文句を言ってやりたいと思っていたんだが。
ぼくはアルフォンソに、その者達が誰なのか、名前を聞くのを忘れてしまったから。
見当違いな相手に絡んでしまわないように、こうやって皆に『芝居』を見せているんだよ。
あんなに気合を入れた癖に、何とも弱気な行動で申し訳ない。
こんなもんでいいか。と判断したぼくは。
リウイと共にさり気なく、中央から移動しようと…
「アドル。」
…したんだが。
リウイに服を引かれて立ち止まる。
振り返った瞬間、リウイがぼくに抱き付いて来た。
「お前、知ってたんだな。…あ、……ありがと。」
リウイの顔は見えないが、聞こえるのは間違いなく照れ声だった。
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