美醜感覚が歪な世界でも二つの価値観を持つ僕に死角はない。

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本編●主人公、獲物を物色する

ぼくとアルフォンソは未だに立ち話だよ

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「……ほほぅ? それなら、ぼくは? 後ででも、パーティ会場に顔を出すべきかな?」

ぼくは首を傾げながら、アルフォンソに問い掛けた。
ふむ……と考え込むアルフォンソ。真正面にある端正な顔が、真剣さを帯びるのは実に目の保養になる。


「そう……だな。パーティが完全に終わるまでには、まだ時間がある。未だ会場に残っている者達のお目当ては、確実にアドルだから…」
「あれ? ぼくがいなくても、リウイはまだ会場にいるんじゃないのか?」

お目当てがぼく、だなんて、そんな……ねぇ?
どうせ単なる『格好良い』の奇跡ランクなだけのぼくよりも、『麗しい』の奇跡ランクな上に『神子様』でもあるリウイがいれば。
彼さえいれば客は満足するんじゃないかと。


「それとも、もうリウイは下がっちゃった? それなら、ぼくが『代わりに』、皆の相手をするというのも必要かも知れないね?」

心の中で拗ねているぼくが、そんな言葉を口に出させた。

ぼくよりもリウイの方が、顔面偏差値の報告及び認定の時も、お披露目の時も、何ならパーティが始まる時も。周囲の人間達のリアクションが大きかったからね。
その事をぼくはまだ覚えている。
ぼくは遺恨は後に残さない主義だが、根に持つ事はしつこく根に持ち続ける事もあるんだよ。



「アドルが、誰かの代わりだなんて……っ! ……そんな事は、無い!」
「あ、ルフォンソ……?」

珍しく声を張るアルフォンソ。
彼が大声を出すイメージがあんまり無かったぼくは、少しだけ驚いた。

アルフォンソがぼくの両肩を掴む。
大胆な所作だが、恐らくアルフォンソは無意識なんだろう。
ぼくは彼が正気に戻らないよう、出来るだけ身じろぎしないよう心掛ける。


「本当は皆……アドルとの交流を希望しているんだ。」
「そう、かなぁ……。」

チラリとソファの方を確認する。
今ぼく達が立っている場所からは、距離がやや離れている為、ぼくは移動する事を諦めた。


本当は会話を続けながら、もう開き直ってソファ席に導こうと考えた所だったんだが。
とりあえず今は、彼と触れ合いを続ける方が重要だ。

何だかんだ、こうやってボディタッチを増やして行き、ぼくがアルフォンソに触れる事も、アルフォンソがぼくに触れる事も『普通』という状態に持って行くのが。
それがぼくの真なる目的だからね。


「こんな事を言うのは……。」
「言って。是非。」

僅かな逡巡も見逃さないよ。それだけアルフォンソの顔を注視しているんだ。
言い難いのであれば、ぼくが無理に聞き出せばいい。


「ウェラン司祭からは、わざわざアドルに話す程の事ではないと、言われていたんだが…」
「アルフォンソ、話して。」
「会場に来ている者達は……神子様に対してももちろんだが、アドルと交流を持ちたいと願っている者ばかりだと思っていい。」

頷きながら聞いているが。
それならそれで、もう少し積極的に来てくれても良いだろうに。
人々の輪から「休憩する」と言って逃げ出したのはぼくだが、様子を見て近付くぐらいの努力をするべきだろう。
……自分の事を棚に上げるのは、ぼくは得意だよ。


「アドルと話したくても、そうそう簡単に声を掛けられない。大勢でならともかく、一人で話し掛けられる者はいないだろう。」
「……そんなものかな。」
「あぁ。それに、アドルは……休憩していただろう? 声を掛けるだなんて、そんな無礼を働く者は普通、いない。」

建前は無礼講パーティでも、流石に本気で無礼オッケーだと考える人はいない。
という事か。

「それで、皆……神子様に頼ろうとしていたんだ。神の寵愛がある神子様を通して、神の顕現であるアドルとの場を設けて貰おうとして…」
「なん…っ! …だと?」
「神子様は全ての者に対して、にこやかに応対なさっていたが……。一向にアドルを呼び寄せてくれない事に、若干の不満を持っている者も……。……僅かだろうが、存在するようだ。」


何と言うか、今……色々と聞き捨てならない事を聞いてしまったよ?

生身の人間である事に間違いないだろう、このぼくが。
神の顕現とか……いや、まぁ、それも酷いが。

ぼくと話したいが為に、あんなに大勢の人間がリウイに群がっていたのか。
しかも、その上……リウイに不満を抱くとか……。


巫山戯るんじゃないよ……?
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