美醜感覚が歪な世界でも二つの価値観を持つ僕に死角はない。

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本編●主人公、獲物を物色する

ぼくは司祭と神子様との関係を疑う

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今回の一連の儀式の間中、ぼくとリウイはちょくちょく一緒にはいたものの、楽しい会話なんて一ミリも出来ないでいた。
ぼくは話したいと思っていたから、リウイもそう思ってくれていたのは単純に嬉しい。


パーティ会場に舞い戻ったぼくは早速、手近にいた人からリウイの居場所を聞き出した。
実を言うと『格好良い』の奇跡ランクであるぼく自身から、特定の誰かに話し掛けるという事は出来れば避けていたかったんだが。こればっかりは仕方ないと、ぼくは自分に甘く判定した。
リウイが休憩室にいるという事は、忌々しいが『エロエロしい』なアレックから聞いていたから、そのまでの道順を聞くだけで良いんだ。さほど多くの言葉を交わさなくても大丈夫だ。

だが……休憩室にはリウイだけでなく、ウェラン司祭も一緒にいると聞いた。
聞いたぼくは急に心配になる。
言い方を変えるとつまり、リウイとウェラン司祭が二人きり。という事だ。ふ、ふ……二人きりで、個室に。




ぼくは長い廊下を風のよう……否。超強風のように移動する。
一刻も早くと思うのに、気が急くばかりで思うように進めていない気がして、焦るばかりだ。


落ち着け、落ち着くんだ。
今更になって焦る必要は無い、まだ焦る時間じゃ……焦る時間だよ!

ウェラン司祭と言えば、まぁまぁ『麗しい』な母さんに対する、丸出しな下心っぷりに……ぼくの中では……定評のある人じゃないか。
その人が、奇跡ランクの『麗しい』なリウイと、黄昏も暮れるような丁度良い時間帯に二人きりで、個室にいるというんだ。これが落ち着いていられるか。

あぁ……ぼくは今までどうして、気にならなかったんだ。

神殿内で見掛けた『麗しい』の神官達は皆、『それなりの中ランク』か『そこそこの中ランク』だった。
ウェラン司祭はその人達には普通の態度だったから、てっきりぼくは、司祭は母の事が特に好きなんだと思っていたが。
単に『それなり』以下が眼中に無いだけ、という可能性があるじゃないか。いや寧ろ、そう考えた方が自然だったはずだ。

ウェラン司祭が何故、そんなに選り好みが出来るのか。そこまで余裕があるのか。
それは……リウイという奇跡ランクを……奇跡の瑞々しい果実を、既に…、その手で…ああぁぁ~~~っ!

一刻も早く、リウイの無事を確認しなくては!




「リウイ……っ! リウイはっ?」

乱暴に開け放つとは、正にこの事。……という勢いで開けた扉の向こう側へ躍り入る。
部屋の内部を見回すまでも無く、ほぼ真正面の床上に、ぼくが求めていたリウイの姿があった。

だがリウイのすぐそばに、ウェラン司祭の姿もあった。
しかも司祭は、リウイの後ろから背中に、豊満な我侭ボディを密着させている。

思わずぼくは叫び出しそうになった、が……。


「あぁ、アド…ぅ、だ、アアアアアアッ! 痛い、痛い、痛っ、たたたたっ!」

ぼくの方へと顔を向けたリウイが叫んだ。
叫んで、背中に密着しているウェラン司祭の手をばしばしと叩く。


「おっと…押し過ぎましたかな。」
「ましたかな、じゃないって! 明らかに押し過ぎだろっ! いったぁ~……。」

涙目のリウイが文句を言いながら、床上で伸ばした自分の膝裏を必死に撫でた。
リウイの恨み言を綺麗にフルシカトしたウェラン司祭が、涼しい顔でぼくに「いらっしゃい、ご休憩ですかな?」なんて話し掛けて来る。
一気に毒気の抜けてしまったぼくは、アリーには絶対に聞かせられない間抜けな声で「あ、うん」なんて答えてしまう有り様だ。


ぼくは疑問を声に出す事にした。

「リウイ? どうして、今、床で、前屈を?」
「いやぁ~、身体が固まっちゃた感じでさぁ。……なんつーの? 普段から着慣れないようなイイ服、着ちゃってるからかなぁ~?」
「あぁ……身体を伸ばしていたんだね。そうか。」


要するにリウイは、床で足を伸ばして、上半身を折り曲げて前屈していたと。
恐らくウェラン司祭は、リウイの背中を容赦無く押していたんだろう。司祭の体重なら、割と冗談じゃない圧力が掛かっただろうね。

何故こんな、紛らわしいタイミングで紛らわしい事をしてくれたんだ。


力が抜けてしまったのか、ぼくはそばにあった適当な椅子に腰掛ける。

「何か飲まれますかな?」
「……何か冷たい物を適当にお願いします。」


ぼくに気を遣ってくれるのはウェラン司祭。
リウイの方は、いつまでも膝を痛がって転がっている。

「ねぇ……リウイ?」

飲み物を用意するために司祭が席を外した隙に、ぼくは早速リウイに話し掛けた。
リウイが一人で居る間に、聞いておかねばならない。


「リウイと、ウェラン司祭は…その……。どういう関係なんだ?」
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