美醜感覚が歪な世界でも二つの価値観を持つ僕に死角はない。

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本編●主人公、獲物を物色する

ぼくの顔面偏差値が公式になったが

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ぼくの画面偏差値の形式的な測定は程なくして終了した。
部屋で待ち構えていた神殿長以下御付きの人々に見守られて、恙なく。

それから短い休憩を挟んで、国王陛下へのご報告だ。

休憩中にぼくはリウイと少しでも話したかったんだが、残念ながら、リウイの方が何やら忙しそうで。
ぼくの測定が終わった後、彼はすぐにぼくが見られる場所から姿を消した。
結果。ぼくは母と兄と一緒に、大人しく休憩室にいるしかなかった。




少し経って、ぼくは謁見の間にやって来た。
いよいよ国王陛下への報告だ。


陛下、王妃殿下、側妃様に王子様達、それから大臣等々のお偉い方々に見られる中。
ぼくは玉座の下から少し離れた定位置で、ヴェールを被ってスタンバイしている。

この場でやる事も話す事も、全て予定通り。
神殿長が陛下にお口添えをして、合図を待ってぼくは玉座に少し近付き、自分の顔面を隠しているヴェールを捲り上げる。
ぼくの顔面を確認した陛下が、これを正式に認定する旨と、各国にも知らせるという趣旨の話をした。
これで正式認定は完了だ。

この後は、午後から開かれるお披露目会の話を聞かされて、また一時解放される流れのはずなんだが……。


陛下が、お披露目会の話を言い出さない。
言い出してくれないと、ぼくは下がれない。

元いた位置で立ったまま困惑するぼく。
誰も寄って来ないんだが……こんな放置はあんまりじゃないか。



長く感じたが、恐らくこの時間は数十秒ぐらいだったろう。
沈黙の時間はウェラン司祭の呼びかけにより、打ち消された。

「陛下……。もう御一人、報告を差し上げますので……。どうか、認定をお願い致します。」
「うむ。」


……はい? 聞いてもいない話が始まったんだが?



ぼくは表情を固めたまま、陛下と司祭のやり取りを見守る。
司祭に応じる陛下のご様子からして、司祭が突然言い出したわけじゃないらしい。

この場でもう一人、ぼく以外の人が顔面偏差値の報告をする、という事ならば。
ぼくがここにいて良いんだろうか。

せめて少し下がるべきかと周囲の様子を窺ったぼくに、陛下自ら、そのままで良いと言われた。
注目を集める場所に立たされたままで居心地が悪いんだが。


謁見の間から一旦姿を消したウェラン司祭が、ヴェールで顔を隠した一人の男を連れて戻って来る。

俯き加減で謁見の場……ぼくの方へと歩いて来る男が。
それがリウイだという事はすぐに分かった。

奇跡ランクなぼくの報告・認可の場にぶつけようと言うんだから。
余程の場合じゃないと有り得ない。


リウイは、朝に見掛けた桃色の生地に赤と白の糸で刺繍を施された祭服に、その上からも桃色の、豪華な丸い布をそのまま被るような上着を纏っている。
喜びの色を身に着けていたのは、リウイ自身の顔面偏差値に正式認定を貰うから。だったのか。


ぼくが行った時と同じやり取りが、もう一度繰り返された。
後は陛下が、リウイの顔面偏差値を正式に認定する旨と、各国にも知らせるという趣旨の話をすれば終わり。

自分の事じゃないからと、ぼくは単なる見物人の気分でそれを見守っていたが。
儀式がそろそろ終わりそうな気配を感じ、気を引き締める。


「では、此処に。この時を以って……。」

ぼくの時と同様に、陛下が重々しく口を開く。


「神子リウイの顔面偏差値を、奇跡ランクであると認可する。」


陛下の宣言が終わった後もややしばらく、その場は静寂に包まれる。
突っ込み所のある言葉に、ぼくもポカーンとしてしまった。



そして。

その場にいる者達から漏れる感嘆の声が、さざ波のように謁見の間で広がって行く。




リウイが、神子。……巫女さんじゃなくて。……神子。


あ、うん、まぁ……それは良いんだが……。



皆さん……。ぼくの時よりもリアクション、大きくないですかね?
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