54 / 101
本編●主人公、獲物を物色する
ぼくが常識知らずなのか
しおりを挟む
アンディ、だなんて。普段のアレックは呼んだりしていないだろうに。
ぼくがアンディと呼んでいるからか。
アレックはちょくちょく、ぼくの真似をするからな。
ぼくの目の前で、アレックはいきなりアンディの仮面に手を掛けた。
そして突然の事でアンディが反応出来ない内に、さっさと剥ぎ取ってしまう。
驚きとショックとで目を見開くアンディは、とても可愛くて色っぽかった。
だがアレックに感謝はしないぞ。
「なっ、何をするん…」
「今更になって隠すな。こんな物を着けたままで抱かれる気か?」
「……っ!」
抗議の声を上げ掛けたアンディの声を遮り、言い放ったアレックは、取り上げた仮面をテーブルの上に投げた。
言葉を詰まらせたアンディの頬が、羞恥で見る見る赤く染まって行く。
アレックは動けないアンディの顎を掴んだかと思うと、強引にぼくの方へと向かせる。
「アドルは、この顔でも平気なんだろ?」
「……う~ん。平気、と言うより……。寧ろ、好きだよ? 一緒にいる時は顔を隠さないで欲しい、と心から思うぐらいにはね。」
ぼくはアレックの動きに何となく面白くないものを感じ、わざと、彼の言葉に乗る以上の事を言った。
普通に答えるなら「平気だ」と言えば良いのだろうが。
その答えだとまるで、美味しいとは思えないが食べられない程じゃない、みたいじゃないか。
ぼくは別に、アンディの顔に我慢や妥協をしてはいないんだから。
「そう、か……。流石は奇跡ランクだな。」
一瞬だけ、何処か悔しそうな眼差しをぼくに向けたアレック。
だがすぐに表情を戻し、揶揄うような口調になる。
「だけどアドルは、本当に何も知らないんだなぁ?」
また何か、ぼくを馬鹿にする気か。
警戒するぼくの前で、アレックは何故か……アンディの顎を掴んでいた手を離し、彼を背後から抱き締めた。
ええぇっ? ……えっ、えっ? 羨ましいっ! いや、違う、何をしているんだっ?
アンディは悲鳴を上げるように口を開いたが、余りの驚きからか、声すら発せられないようだ。
ぼくも突っ立ったままの姿勢で、アレックをただ見ているしか出来なかった。
「どうやらアドルは、分かってて無視したんじゃなさそうだぞ? ……良かったな、ア ン ディ?」
「そ……なん、ですか?」
こら、そこ! ぼくに分からない会話を止めないか!
アンディ、何故に今! 今そこで恥じらうんだ!
「なぁアドル、この服……。随分と袖口や襟元、裾も広がってるだろ?」
「あぁ、そうだね。」
「それはな、つまり……。」
何かを説明し始めたはずのアレックは、おもむろにアンディの服の中へと片手を突っ込んだ。
アンディが声にならない悲鳴を上げるも、アレックは気にしない。
「こうやって、どっからでも手が入る。抱かれる時には、こういう服を着るもんなんだ。」
袖口から入れた片手がアンディの胸辺りまで入り込み、もう片手がワンピースとキュロットをたくし上げる。
アンディの足が露わになって、ぼくは目を奪われた。
「わざわざ『抱かれる服』を着て来たのに、お前が無反応だから。わざと無視したんだと思って、コイツは勝手に諦めてたとこだ。……せっかく、中途半端な勇気を出して、抱かれに来たのにな?」
「アンディ。……そうなのかな?」
「………。はい……。」
アレックを疑う気持ちは充分にあったが、念の為にアンディに問い掛けてみると。
顔を真っ赤にして、しかも涙目のアンディが。
恥ずかしそうに、小さく肯定した。
……そんな常識、知らないよ。
『友達』の話といい、『抱かれる服』の話といい。王族の常識とやらがオリジナリティに溢れ過ぎじゃないか。
ぼくがアンディと呼んでいるからか。
アレックはちょくちょく、ぼくの真似をするからな。
ぼくの目の前で、アレックはいきなりアンディの仮面に手を掛けた。
そして突然の事でアンディが反応出来ない内に、さっさと剥ぎ取ってしまう。
驚きとショックとで目を見開くアンディは、とても可愛くて色っぽかった。
だがアレックに感謝はしないぞ。
「なっ、何をするん…」
「今更になって隠すな。こんな物を着けたままで抱かれる気か?」
「……っ!」
抗議の声を上げ掛けたアンディの声を遮り、言い放ったアレックは、取り上げた仮面をテーブルの上に投げた。
言葉を詰まらせたアンディの頬が、羞恥で見る見る赤く染まって行く。
アレックは動けないアンディの顎を掴んだかと思うと、強引にぼくの方へと向かせる。
「アドルは、この顔でも平気なんだろ?」
「……う~ん。平気、と言うより……。寧ろ、好きだよ? 一緒にいる時は顔を隠さないで欲しい、と心から思うぐらいにはね。」
ぼくはアレックの動きに何となく面白くないものを感じ、わざと、彼の言葉に乗る以上の事を言った。
普通に答えるなら「平気だ」と言えば良いのだろうが。
その答えだとまるで、美味しいとは思えないが食べられない程じゃない、みたいじゃないか。
ぼくは別に、アンディの顔に我慢や妥協をしてはいないんだから。
「そう、か……。流石は奇跡ランクだな。」
一瞬だけ、何処か悔しそうな眼差しをぼくに向けたアレック。
だがすぐに表情を戻し、揶揄うような口調になる。
「だけどアドルは、本当に何も知らないんだなぁ?」
また何か、ぼくを馬鹿にする気か。
警戒するぼくの前で、アレックは何故か……アンディの顎を掴んでいた手を離し、彼を背後から抱き締めた。
ええぇっ? ……えっ、えっ? 羨ましいっ! いや、違う、何をしているんだっ?
アンディは悲鳴を上げるように口を開いたが、余りの驚きからか、声すら発せられないようだ。
ぼくも突っ立ったままの姿勢で、アレックをただ見ているしか出来なかった。
「どうやらアドルは、分かってて無視したんじゃなさそうだぞ? ……良かったな、ア ン ディ?」
「そ……なん、ですか?」
こら、そこ! ぼくに分からない会話を止めないか!
アンディ、何故に今! 今そこで恥じらうんだ!
「なぁアドル、この服……。随分と袖口や襟元、裾も広がってるだろ?」
「あぁ、そうだね。」
「それはな、つまり……。」
何かを説明し始めたはずのアレックは、おもむろにアンディの服の中へと片手を突っ込んだ。
アンディが声にならない悲鳴を上げるも、アレックは気にしない。
「こうやって、どっからでも手が入る。抱かれる時には、こういう服を着るもんなんだ。」
袖口から入れた片手がアンディの胸辺りまで入り込み、もう片手がワンピースとキュロットをたくし上げる。
アンディの足が露わになって、ぼくは目を奪われた。
「わざわざ『抱かれる服』を着て来たのに、お前が無反応だから。わざと無視したんだと思って、コイツは勝手に諦めてたとこだ。……せっかく、中途半端な勇気を出して、抱かれに来たのにな?」
「アンディ。……そうなのかな?」
「………。はい……。」
アレックを疑う気持ちは充分にあったが、念の為にアンディに問い掛けてみると。
顔を真っ赤にして、しかも涙目のアンディが。
恥ずかしそうに、小さく肯定した。
……そんな常識、知らないよ。
『友達』の話といい、『抱かれる服』の話といい。王族の常識とやらがオリジナリティに溢れ過ぎじゃないか。
0
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説

[完結]兄弟で飛ばされました
猫谷 一禾
BL
異世界召喚
麗しの騎士×捻くれ平凡次男坊
お祭りの帰り道、兄弟は異世界へと飛ばされた。
容姿端麗で何でも優秀な兄と何でも平均的な弟。
異世界でもその評価は変わらず、自分の役目を受け入れ人の役に立つ兄と反発しまくる弟。
味方がいないと感じる弟が異世界で幸せになる話。
捻くれ者大好きです。


異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます
野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。
得た職は冒険者ギルドの職員だった。
金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。
マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。
夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。
以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。

美醜逆転異世界で、非モテなのに前向きな騎士様が素敵です
花野はる
恋愛
先祖返りで醜い容貌に生まれてしまったセドリック・ローランド、18歳は非モテの騎士副団長。
けれども曽祖父が同じ醜さでありながら、愛する人と幸せな一生を送ったと祖父から聞いて育ったセドリックは、顔を隠すことなく前向きに希望を持って生きている。けれどやはりこの世界の女性からは忌み嫌われ、中身を見ようとしてくれる人はいない。
そんな中、セドリックの元に異世界の稀人がやって来た!外見はこんなでも、中身で勝負し、専属護衛になりたいと頑張るセドリックだが……。
醜いイケメン騎士とぽっちゃり喪女のラブストーリーです。
多分短い話になると思われます。
サクサク読めるように、一話ずつを短めにしてみました。
【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。
riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。
召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。
しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。
別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。
そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ?
最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる)
※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。
もしかしてこの世界美醜逆転?………はっ、勝った!妹よ、そのブサメン第2王子は喜んで差し上げますわ!
結ノ葉
ファンタジー
目が冷めたらめ~っちゃくちゃ美少女!って言うわけではないけど色々ケアしまくってそこそこの美少女になった昨日と同じ顔の私が!(それどころか若返ってる分ほっぺ何て、ぷにっぷにだよぷにっぷに…)
でもちょっと小さい?ってことは…私の唯一自慢のわがままぼでぃーがない!
何てこと‼まぁ…成長を願いましょう…きっときっと大丈夫よ…………
……で何コレ……もしや転生?よっしゃこれテンプレで何回も見た、人生勝ち組!って思ってたら…何で周りの人たち布被ってんの!?宗教?宗教なの?え…親もお兄ちゃまも?この家で布被ってないのが私と妹だけ?
え?イケメンは?新聞見ても外に出てもブサメンばっか……イヤ無理無理無理外出たく無い…
え?何で俺イケメンだろみたいな顔して外歩いてんの?絶対にケア何もしてない…まじで無理清潔感皆無じゃん…清潔感…com…back…
ってん?あれは………うちのバカ(妹)と第2王子?
無理…清潔感皆無×清潔感皆無…うぇ…せめて布してよ、布!
って、こっち来ないでよ!マジで来ないで!恥ずかしいとかじゃないから!やだ!匂い移るじゃない!
イヤー!!!!!助けてお兄ー様!
転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!
ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
異世界転生をするものの、物語の様に分かりやすい活躍もなく、のんびりとスローライフを楽しんでいた主人公・マレーゼ。しかしある日、転移魔法を失敗してしまい、見知らぬ土地へと飛ばされてしまう。
全く知らない土地に慌てる彼女だったが、そこはかつて転生後に生きていた時代から1000年も後の世界であり、さらには自身が生きていた頃の文明は既に滅んでいるということを知る。
そして、実は転移魔法だけではなく、1000年後の世界で『嫁』として召喚された事実が判明し、召喚した相手たちと婚姻関係を結ぶこととなる。
人懐っこく明るい蛇獣人に、かつての文明に入れ込む兎獣人、なかなか心を開いてくれない狐獣人、そして本物の狼のような狼獣人。この時代では『モテない』と言われているらしい四人組は、マレーゼからしたらとてつもない美形たちだった。
1000年前に戻れないことを諦めつつも、1000年後のこの時代で新たに生きることを決めるマレーゼ。
異世界転生&転移に巻き込まれたマレーゼが、1000年後の世界でスローライフを送ります!
【この作品は逆ハーレムものとなっております。最終的に一人に絞られるのではなく、四人同時に結ばれますのでご注意ください】
【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』『Pixiv』にも掲載しています】

私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜
朝比奈
恋愛
年齢=彼氏いない歴な平凡かつ地味顔な私はある日突然美的感覚がおかしい異世界にトリップしてしまったようでして・・・。
(この世界で私はめっちゃ美人ってどゆこと??)
これは主人公が美的感覚が違う世界で醜い男(私にとってイケメン)に恋に落ちる物語。
所々、意味が違うのに使っちゃってる言葉とかあれば教えて下さると幸いです。
暇つぶしにでも呼んでくれると嬉しいです。
※休載中
(4月5日前後から投稿再開予定です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる