40 / 101
本編●主人公、獲物を物色する
ぼくがドキドキさせた所為
しおりを挟む
「じゃあ尚更、どうして一人でいたんだ。」
ぼくは単純に、アレックの行動に疑問を感じた。
アレックが一人でいると、それを見た相手が誤解していやらしい奉仕をしようとする事が多い。
その行為に痛みや怪我等の、性的じゃない暴力が伴っていなければ犯罪ではない上に、彼のような『エロエロしい』のタイプは常に相手を問わず性的な交渉を求めていると認識されている。
だから性的に襲われている現場を見られても、誰も助けてはくれない。
それを分かっているなら、どうしてアレックは側妃様の元を離れたりしたんだろう。
しかも一人きりで。
「それは……。」
言い淀むアレック。
一旦ぼくから視線を逸らし、また、ちらりと窺い見て来る彼に、ぼくは微笑みで返答を促した。
確かに、行為が同じでも相手が違えば、受け取り側がそれをどう感じるかも違って来るだろう。
拒否するのも受け入れるのも、相手によって対応を変えるなんてよくある事だ。
偶然でも好みな相手なら、そのまま続ければ良い。とは言え……自分が良いと思えない相手から無理矢理される可能性が高いだろう。
現にアレックは、良いと思えない相手に弄られて嫌がっていたじゃないか。
「今回はたまたま、ぼくが見掛けたから良かったが……。」
さり気なく……いや、これは少々あからさまかな……助けたという事を持ち出すぼく。
ぼくは性犯罪を撲滅させる実力も、そこまでしようという正義感も持ち合わせていない。
今回は……。ぼくが発見した事も偶然だが、『エロエロしい』に対する偏見を目の当たりにしたのが初めてだったり、相手の男二人の態度が気に入らなかったりと……そうした事が重なった為、アレックを助けようという気持ちになっただけだ。
単純にアレックの顔が気に入ったというのもある。
今回は、ぼくの顔面偏差値による威圧だけで相手が退いたから、結果的に無傷で彼を助ける事が出来たんだ。
もちろん、ぼくには勝算があったが、開き直った相手が暴力で対抗して来る可能性もあったから。
「いつも通りなら誰も、止めてはくれないんだろう?」
「……ひ、一人に。なり、たかった……から……。」
アレックは言いながら、自分の膝を抱えている腕に力を入れた。
ぼくを見詰める目が揺れて、潤んで来ている。
「アドルの……所為、だ。」
予想外の言葉を聞いて、ぼくは目を瞬かせた。
「アレックとはこの場で会うのが初めてだと思うんだが、ぼくが何かしただろうか。」
「……ガーデンハウスにいた時、ヴェールを着けてなかった。」
呟いたアレックは自分の膝に顔を寄せ、小さくなる。
「遠かったけど……。アドルの、顔を見たら……。何だか凄く、ドキドキして…」
まさか……。まさか、この流れは。
「身体が、熱くなって。……一人になりたかったんだ。」
そうまで言われたら、流石にぼくも理解した。
アレックに起こった一連の出来事を。
遠目に見たぼくの顔面にドキドキして、身体が火照ってしまい、その所為でその場から逃げ出して、一人でいる所を襲われた。……なるほど。
そんな事を聞いちゃ、ぼくとしても興奮するね。
ぼくは心からにやけながら、膝を抱えているアレックの手に自分の手を添えた。
少しだけ身体を寄せてみるが、彼も離れようとはしない。
「同じ事でも相手が違えば……。さっきぼくが言った事だ。覚えているかな?」
「……あぁ。覚えてる。」
アレックの手を、ぼくは優しく握った。
「アレック……。今、ぼくに手伝える事……ある?」
ぼくの意図が伝わっているだろうか。
「……ある。アドルになら、手伝って……欲しい。」
アレックは……ぼくの手を握り返した。
「ぼくとしては、出来れば場所を変えたいな。アレックの身体が土や草むらで汚れるのは嫌だよ?」
「俺も……。アドルの肌を他の者に見られるのは嫌だな。」
どちらからともなく立ち上がったぼく達は、手を繋いで歩き出す。
世野悟を思い出してから、初めてのそういう雰囲気だ。
アドル的なぼくもサトル的なボクも、気分はかなり高揚していた。
その気分が、あんな形で打ち砕かれるなんて……この時のぼくは予想もしていなかった。
ぼくは単純に、アレックの行動に疑問を感じた。
アレックが一人でいると、それを見た相手が誤解していやらしい奉仕をしようとする事が多い。
その行為に痛みや怪我等の、性的じゃない暴力が伴っていなければ犯罪ではない上に、彼のような『エロエロしい』のタイプは常に相手を問わず性的な交渉を求めていると認識されている。
だから性的に襲われている現場を見られても、誰も助けてはくれない。
それを分かっているなら、どうしてアレックは側妃様の元を離れたりしたんだろう。
しかも一人きりで。
「それは……。」
言い淀むアレック。
一旦ぼくから視線を逸らし、また、ちらりと窺い見て来る彼に、ぼくは微笑みで返答を促した。
確かに、行為が同じでも相手が違えば、受け取り側がそれをどう感じるかも違って来るだろう。
拒否するのも受け入れるのも、相手によって対応を変えるなんてよくある事だ。
偶然でも好みな相手なら、そのまま続ければ良い。とは言え……自分が良いと思えない相手から無理矢理される可能性が高いだろう。
現にアレックは、良いと思えない相手に弄られて嫌がっていたじゃないか。
「今回はたまたま、ぼくが見掛けたから良かったが……。」
さり気なく……いや、これは少々あからさまかな……助けたという事を持ち出すぼく。
ぼくは性犯罪を撲滅させる実力も、そこまでしようという正義感も持ち合わせていない。
今回は……。ぼくが発見した事も偶然だが、『エロエロしい』に対する偏見を目の当たりにしたのが初めてだったり、相手の男二人の態度が気に入らなかったりと……そうした事が重なった為、アレックを助けようという気持ちになっただけだ。
単純にアレックの顔が気に入ったというのもある。
今回は、ぼくの顔面偏差値による威圧だけで相手が退いたから、結果的に無傷で彼を助ける事が出来たんだ。
もちろん、ぼくには勝算があったが、開き直った相手が暴力で対抗して来る可能性もあったから。
「いつも通りなら誰も、止めてはくれないんだろう?」
「……ひ、一人に。なり、たかった……から……。」
アレックは言いながら、自分の膝を抱えている腕に力を入れた。
ぼくを見詰める目が揺れて、潤んで来ている。
「アドルの……所為、だ。」
予想外の言葉を聞いて、ぼくは目を瞬かせた。
「アレックとはこの場で会うのが初めてだと思うんだが、ぼくが何かしただろうか。」
「……ガーデンハウスにいた時、ヴェールを着けてなかった。」
呟いたアレックは自分の膝に顔を寄せ、小さくなる。
「遠かったけど……。アドルの、顔を見たら……。何だか凄く、ドキドキして…」
まさか……。まさか、この流れは。
「身体が、熱くなって。……一人になりたかったんだ。」
そうまで言われたら、流石にぼくも理解した。
アレックに起こった一連の出来事を。
遠目に見たぼくの顔面にドキドキして、身体が火照ってしまい、その所為でその場から逃げ出して、一人でいる所を襲われた。……なるほど。
そんな事を聞いちゃ、ぼくとしても興奮するね。
ぼくは心からにやけながら、膝を抱えているアレックの手に自分の手を添えた。
少しだけ身体を寄せてみるが、彼も離れようとはしない。
「同じ事でも相手が違えば……。さっきぼくが言った事だ。覚えているかな?」
「……あぁ。覚えてる。」
アレックの手を、ぼくは優しく握った。
「アレック……。今、ぼくに手伝える事……ある?」
ぼくの意図が伝わっているだろうか。
「……ある。アドルになら、手伝って……欲しい。」
アレックは……ぼくの手を握り返した。
「ぼくとしては、出来れば場所を変えたいな。アレックの身体が土や草むらで汚れるのは嫌だよ?」
「俺も……。アドルの肌を他の者に見られるのは嫌だな。」
どちらからともなく立ち上がったぼく達は、手を繋いで歩き出す。
世野悟を思い出してから、初めてのそういう雰囲気だ。
アドル的なぼくもサトル的なボクも、気分はかなり高揚していた。
その気分が、あんな形で打ち砕かれるなんて……この時のぼくは予想もしていなかった。
0
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
もしかしてこの世界美醜逆転?………はっ、勝った!妹よ、そのブサメン第2王子は喜んで差し上げますわ!
結ノ葉
ファンタジー
目が冷めたらめ~っちゃくちゃ美少女!って言うわけではないけど色々ケアしまくってそこそこの美少女になった昨日と同じ顔の私が!(それどころか若返ってる分ほっぺ何て、ぷにっぷにだよぷにっぷに…)
でもちょっと小さい?ってことは…私の唯一自慢のわがままぼでぃーがない!
何てこと‼まぁ…成長を願いましょう…きっときっと大丈夫よ…………
……で何コレ……もしや転生?よっしゃこれテンプレで何回も見た、人生勝ち組!って思ってたら…何で周りの人たち布被ってんの!?宗教?宗教なの?え…親もお兄ちゃまも?この家で布被ってないのが私と妹だけ?
え?イケメンは?新聞見ても外に出てもブサメンばっか……イヤ無理無理無理外出たく無い…
え?何で俺イケメンだろみたいな顔して外歩いてんの?絶対にケア何もしてない…まじで無理清潔感皆無じゃん…清潔感…com…back…
ってん?あれは………うちのバカ(妹)と第2王子?
無理…清潔感皆無×清潔感皆無…うぇ…せめて布してよ、布!
って、こっち来ないでよ!マジで来ないで!恥ずかしいとかじゃないから!やだ!匂い移るじゃない!
イヤー!!!!!助けてお兄ー様!
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
異世界の美醜と私の認識について
佐藤 ちな
恋愛
ある日気づくと、美玲は異世界に落ちた。
そこまでならラノベなら良くある話だが、更にその世界は女性が少ない上に、美醜感覚が美玲とは激しく異なるという不思議な世界だった。
そんな世界で稀人として特別扱いされる醜女(この世界では超美人)の美玲と、咎人として忌み嫌われる醜男(美玲がいた世界では超美青年)のルークが出会う。
不遇の扱いを受けるルークを、幸せにしてあげたい!そして出来ることなら、私も幸せに!
美醜逆転・一妻多夫の異世界で、美玲の迷走が始まる。
* 話の展開に伴い、あらすじを変更させて頂きました。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

二度目の勇者の美醜逆転世界ハーレムルート
猫丸
恋愛
全人類の悲願である魔王討伐を果たした地球の勇者。
彼を待っていたのは富でも名誉でもなく、ただ使い捨てられたという現実と別の次元への強制転移だった。
地球でもなく、勇者として召喚された世界でもない世界。
そこは美醜の価値観が逆転した歪な世界だった。
そうして少年と少女は出会い―――物語は始まる。
他のサイトでも投稿しているものに手を加えたものになります。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる