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本編●主人公、獲物を物色する
ぼくはなんとか合格したようだ
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「顔面偏差値が、気にならないなんて……そんな事が……。」
あるわけがない。
……とまでは口には出さなかったが。
アリアノール王子の表情が、そう語っていた。
恐らくぼく達よりも年上な分だけ、辛い事も多く経験しているんだろう。
ぼくを見るアリアノール王子の睫毛は頼りなく震えている。
その仕草。明らかに、美男子。
「あ、貴方程の人が……。」
「だからかも知れません。」
信じられない様子で呟かれた言葉に、ぼくは敢えて堂々と声を重ねた。
はっとしたように唇を閉じたアリアノール王子と視線を合わせて、ぼくはゆっくりと、だがしっかりと伝える。
「ぼくは、自分がこうだから……。他の人達の偏差値は、中ランクも低ランクも、大して気にならなくなったんですよ。同じだとは言わないが、ぼくにとってはさほど、問題にならない……という感じですね。」
いかん、いかん。
ついうっかり、『格好良い』で馴れ馴れしい口調になってしまう所だった。
確か、リウイにはこう話したはずだよな……。と、思い出しながら喋っていたから、尚更に気が散ってしまったのかも知れないな。
これで何とか納得してくれたら良いんだが。
と願いながら、三人の様子を窺う。
アリアノール王子は、今のぼくの言葉や表情なんかを検討しているようだ。
アルフォンソさんも黙っているが、考え込んでいるのが分かる。
アンドリュー王子が、「うん」と、納得したように頷いて。
労わるように、兄の手に、自分の手を重ねて言った。
「兄上。僕は……嘘じゃないと、思う。だって……。」
一旦、言葉を区切って。
顔を半分だけぼくに向けながら、視線を流して来るアンドリュー王子。
先に顔を動かしてから後追いで視線を投げるだなんて、年下なのに色気のある仕草だ。
「ここに来てから、ずっと……。アドルさんは一度も、嫌そうな顔をしたり、視線を逸らしたりしてないよ。」
逸らすわけないだろう。
寧ろ、ぼくが逸らされる側だったよ。
それはそれで寂しかったが……でもちゃんと分かってくれて良かったよ。
「なるほど。これは本当に……『奇跡』ランクのようですね。」
王妃様の声が、静かなガーデンハウス内に広がった。
「恐れ入ります、妃殿下。」
言葉で表した程には恐縮していない、ぼくのまぁまぁ『麗しい』な母の声。
そちらの方に顔を向けると、王妃様は感心したように、母は何処か誇らしげな様子に見える。
「アドル。王妃殿下は、お前の様子を確認されていたんだ。」
「……と、言うと?」
今の言葉でおおよその予想は付くが、聞けるものならば明確に聞いておきたい。
ぼくの問い掛けに母と、それから王妃様まで、簡単に説明してくれた。
予想した通り、ガーデンハウスでのぼくの言動は、周囲に待機しているメイドからも含めて、全て観察されていたようだ。
ぼくの顔面偏差値が、形式上の『奇跡』なのか、本質的に『奇跡』なのかを判断する材料とする為に。
……くっ、それならばもっと『格好良い』的な態度にすれば良かったか。
と一瞬思ったが、どうやら『格好良い』というタイプ的な態度じゃなく、『奇跡』というランク的な態度の方らしい。
というか、形式上とか本質的とかの意味が分からないのだが。
まぁ、必要な事であれば説明があるだろうし、そうでなければ、どうしても気になった時に聞けば良いか。
「アドル殿……。試すような事をして申し訳ありません。」
「王妃様、ぼくの事は、どうか呼び捨てにしてください。」
ぼくは少し慌てた。
ぼくの奇跡ランクの報告も、それに対する承認もまだなんだから。
「……分かりました。……アドル、貴方は私や、私の息子達を見ても平気なようですね。我慢をしている様子さえ、窺わせない。」
「我慢をしていませんから。」
正直に言えば眼福ですよ。視界のご馳走です。
「貴方はもしかすると、形式的に、サトゥルー神のご尊顔に合致するだけでなく……その精神までも合致しているのかも知れませんね。」
はい、その通りですよ、奥さん。
アドルの感覚があるので完全には一致しないが、ぼくは世野悟の転生体だからね。
当然の事だと、内心で頷いていたぼくは。
続く、王妃様の言葉で大いに首を傾げる事になる。
「サトゥルー神は、相手の容姿に関わらず全ての、求める者に愛を分け与えると言います。」
……え。……そう、かなぁ。
あるわけがない。
……とまでは口には出さなかったが。
アリアノール王子の表情が、そう語っていた。
恐らくぼく達よりも年上な分だけ、辛い事も多く経験しているんだろう。
ぼくを見るアリアノール王子の睫毛は頼りなく震えている。
その仕草。明らかに、美男子。
「あ、貴方程の人が……。」
「だからかも知れません。」
信じられない様子で呟かれた言葉に、ぼくは敢えて堂々と声を重ねた。
はっとしたように唇を閉じたアリアノール王子と視線を合わせて、ぼくはゆっくりと、だがしっかりと伝える。
「ぼくは、自分がこうだから……。他の人達の偏差値は、中ランクも低ランクも、大して気にならなくなったんですよ。同じだとは言わないが、ぼくにとってはさほど、問題にならない……という感じですね。」
いかん、いかん。
ついうっかり、『格好良い』で馴れ馴れしい口調になってしまう所だった。
確か、リウイにはこう話したはずだよな……。と、思い出しながら喋っていたから、尚更に気が散ってしまったのかも知れないな。
これで何とか納得してくれたら良いんだが。
と願いながら、三人の様子を窺う。
アリアノール王子は、今のぼくの言葉や表情なんかを検討しているようだ。
アルフォンソさんも黙っているが、考え込んでいるのが分かる。
アンドリュー王子が、「うん」と、納得したように頷いて。
労わるように、兄の手に、自分の手を重ねて言った。
「兄上。僕は……嘘じゃないと、思う。だって……。」
一旦、言葉を区切って。
顔を半分だけぼくに向けながら、視線を流して来るアンドリュー王子。
先に顔を動かしてから後追いで視線を投げるだなんて、年下なのに色気のある仕草だ。
「ここに来てから、ずっと……。アドルさんは一度も、嫌そうな顔をしたり、視線を逸らしたりしてないよ。」
逸らすわけないだろう。
寧ろ、ぼくが逸らされる側だったよ。
それはそれで寂しかったが……でもちゃんと分かってくれて良かったよ。
「なるほど。これは本当に……『奇跡』ランクのようですね。」
王妃様の声が、静かなガーデンハウス内に広がった。
「恐れ入ります、妃殿下。」
言葉で表した程には恐縮していない、ぼくのまぁまぁ『麗しい』な母の声。
そちらの方に顔を向けると、王妃様は感心したように、母は何処か誇らしげな様子に見える。
「アドル。王妃殿下は、お前の様子を確認されていたんだ。」
「……と、言うと?」
今の言葉でおおよその予想は付くが、聞けるものならば明確に聞いておきたい。
ぼくの問い掛けに母と、それから王妃様まで、簡単に説明してくれた。
予想した通り、ガーデンハウスでのぼくの言動は、周囲に待機しているメイドからも含めて、全て観察されていたようだ。
ぼくの顔面偏差値が、形式上の『奇跡』なのか、本質的に『奇跡』なのかを判断する材料とする為に。
……くっ、それならばもっと『格好良い』的な態度にすれば良かったか。
と一瞬思ったが、どうやら『格好良い』というタイプ的な態度じゃなく、『奇跡』というランク的な態度の方らしい。
というか、形式上とか本質的とかの意味が分からないのだが。
まぁ、必要な事であれば説明があるだろうし、そうでなければ、どうしても気になった時に聞けば良いか。
「アドル殿……。試すような事をして申し訳ありません。」
「王妃様、ぼくの事は、どうか呼び捨てにしてください。」
ぼくは少し慌てた。
ぼくの奇跡ランクの報告も、それに対する承認もまだなんだから。
「……分かりました。……アドル、貴方は私や、私の息子達を見ても平気なようですね。我慢をしている様子さえ、窺わせない。」
「我慢をしていませんから。」
正直に言えば眼福ですよ。視界のご馳走です。
「貴方はもしかすると、形式的に、サトゥルー神のご尊顔に合致するだけでなく……その精神までも合致しているのかも知れませんね。」
はい、その通りですよ、奥さん。
アドルの感覚があるので完全には一致しないが、ぼくは世野悟の転生体だからね。
当然の事だと、内心で頷いていたぼくは。
続く、王妃様の言葉で大いに首を傾げる事になる。
「サトゥルー神は、相手の容姿に関わらず全ての、求める者に愛を分け与えると言います。」
……え。……そう、かなぁ。
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