美醜感覚が歪な世界でも二つの価値観を持つ僕に死角はない。

左側

文字の大きさ
上 下
29 / 101
本編●主人公、獲物を物色する

ぼくと交流しようよ

しおりを挟む
ぼくが対面の美形三人を眺め回している間に、王妃様と母は、着々とぼくの社交界デビューについての話を打ち合わせて行く。
さり気なく話に耳をそばだててみれば、どうやらぼくがデビューする夜会で、王族が正式な立ち合いの下、ぼくの顔面偏差値について貴族達に発表する……という所まで進んでるようだ。

この世界でのデビューは通常、成人年齢である十六歳になる誕生日が属する季節に行うのが慣例となっている。
例えば五月生まれなら春の間に行う、という感じだ。

侯爵以上の貴族は、各家が主催して行われる。
伯爵以下の貴族も各家で主催しても良いんだが、伯爵以下は家の数が多い。
その為、パーティが重なって招待客が出席先の事で頭を悩ませないよう、国王陛下と神殿が、季節ごとにデビュー用の夜会を主催してくれるらしい。
そこに参加すれば良いんだから、ある意味、省エネみたいだね。

ぼくは『格好良い』の奇跡ランクだから、それは出来ないだろうが。
一緒にデビューする他の子が可哀想な事になるからな。


さて、打ち合わせはもう少し続きそうだ。
たっぷり美形オーラも浴びさせて貰った事だし、ぼくはそろそろ、王子様達やアルフォンソさんと交流を図ろうかな。



あぁそうそう。
王族に対するぼくの態度をどうするか、についてだが。

ぼくの顔面偏差値はまだ、国王陛下に正式報告されていない。
だからぼくはまだ、公式には奇跡ランク扱いじゃない。
何かを意見するとなると、また少し微妙な問題になるんだが、王子様達と雑談をする分に限ってはエイベル兄さんと同等ぐらいで良い……という、暫定的な扱いになった。
兄は成人だがぼくはまだ成人前、というのも考慮されたように思う。


よしよし、これでようやく、あまり心配せずに話し掛けられるぞ。
このまま黙っていろ、なんて事にならずに安心したよ。


「良かった。これで、王子殿下お二人やアルフォンソさんと、ちゃんとお話が出来ますね。」

ぼくは本音を、割と綺麗な形に飾り付けて吐露した。
ホッとしたぼくに、向かい側から三人の視線が集まる。

せっかく集まったのに。
ぼくがあからさまに微笑んでみせたら、三人とも視線を逸らしてしまった。

一度会った事のあるアルフォンソさんが、かろうじて頷き返してくれたように見えたものの、彼は微妙に目線を下げてしまい。
年下の割に色っぽいアンドリュー王子は助けを求めるように、自分の隣にいる兄を振り返り。
助けを乞う視線を浴びながら、知的可愛いアリアノール王子は、瞬きをして俯いてしまう。


これは失敗したんだろうか。
丁寧に話したのが『格好良い』じゃないと、ガッカリさせてしまったか。

それとも、ぐいぐい押し過ぎか。
顔面偏差値に差があるぼくから話し掛ける事で、彼等を緊張させてしまっただろうか。
どちらかの王子が口を開くのを待つべきだったのか。


いや、ここでぼくが引いてどうする。


「ぼく達は年齢も割と近い様に思いますし……。」
「「「 ……。 」」」

誰か。誰か、同意してくれないか。


「ぼくは、学校に通っていないので、同じ世代の人とあまり交流が無くて……。」

アンドリュー王子が、流し目をくれるように、ちらっと見てくれた。
アリアノール王子もぼくの様子を窺っているように感じる。


「……そう、言えば。エイベルが……言っていた、覚えがある。」

アルフォンソさんが、話してくれた!
まだ顔は、微妙な角度でぼくとは合ってないが、それでも話してくれた!
一度会っただけだが、初対面とはこれ程までに違うものなんだな。
本当に……。この場にアルフォンソさんがいてくれて、本当に良かった。

「アルフォンソさんは、兄と同じ学校に通われているんですよね?」
「えっ、あ……あぁ。」

話を振ると急に緊張するようだ。
肯定するアルフォンソさん、視線が少し泳いでいる。


ぼくは、落ち着かないのに頑張って平静を保とうとしている二人の王子に、それと分かるように視線を向けた。
それからアルフォンソさんまで、目線を滑らせて行き。

「せっかくこうして、知り合う事が出来たんです。」

三人を視界に入れながら、なるべく落ち着いて聞こえるような声を出した。
それで一応、三人とも遠慮がちに、ぼくの方を見てくれたようだ。

「もっと話をしましょう。こんな素敵な場で出会えたんだから、ぼくは……出来れば今後も、皆さんと親しくしたい……。」

ぼくは本音を力一杯、綺麗な言葉で並べたてる。


皆、もっとぼくと交流しようよ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

もしかしてこの世界美醜逆転?………はっ、勝った!妹よ、そのブサメン第2王子は喜んで差し上げますわ!

結ノ葉
ファンタジー
目が冷めたらめ~っちゃくちゃ美少女!って言うわけではないけど色々ケアしまくってそこそこの美少女になった昨日と同じ顔の私が!(それどころか若返ってる分ほっぺ何て、ぷにっぷにだよぷにっぷに…)  でもちょっと小さい?ってことは…私の唯一自慢のわがままぼでぃーがない! 何てこと‼まぁ…成長を願いましょう…きっときっと大丈夫よ………… ……で何コレ……もしや転生?よっしゃこれテンプレで何回も見た、人生勝ち組!って思ってたら…何で周りの人たち布被ってんの!?宗教?宗教なの?え…親もお兄ちゃまも?この家で布被ってないのが私と妹だけ? え?イケメンは?新聞見ても外に出てもブサメンばっか……イヤ無理無理無理外出たく無い… え?何で俺イケメンだろみたいな顔して外歩いてんの?絶対にケア何もしてない…まじで無理清潔感皆無じゃん…清潔感…com…back… ってん?あれは………うちのバカ(妹)と第2王子? 無理…清潔感皆無×清潔感皆無…うぇ…せめて布してよ、布! って、こっち来ないでよ!マジで来ないで!恥ずかしいとかじゃないから!やだ!匂い移るじゃない! イヤー!!!!!助けてお兄ー様!

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

異世界の美醜と私の認識について

佐藤 ちな
恋愛
 ある日気づくと、美玲は異世界に落ちた。  そこまでならラノベなら良くある話だが、更にその世界は女性が少ない上に、美醜感覚が美玲とは激しく異なるという不思議な世界だった。  そんな世界で稀人として特別扱いされる醜女(この世界では超美人)の美玲と、咎人として忌み嫌われる醜男(美玲がいた世界では超美青年)のルークが出会う。  不遇の扱いを受けるルークを、幸せにしてあげたい!そして出来ることなら、私も幸せに!  美醜逆転・一妻多夫の異世界で、美玲の迷走が始まる。 * 話の展開に伴い、あらすじを変更させて頂きました。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

二度目の勇者の美醜逆転世界ハーレムルート

猫丸
恋愛
全人類の悲願である魔王討伐を果たした地球の勇者。 彼を待っていたのは富でも名誉でもなく、ただ使い捨てられたという現実と別の次元への強制転移だった。 地球でもなく、勇者として召喚された世界でもない世界。 そこは美醜の価値観が逆転した歪な世界だった。 そうして少年と少女は出会い―――物語は始まる。 他のサイトでも投稿しているものに手を加えたものになります。

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

転生したら美醜逆転世界だったので、人生イージーモードです

狼蝶
恋愛
 転生したらそこは、美醜が逆転していて顔が良ければ待遇最高の世界だった!?侯爵令嬢と婚約し人生イージーモードじゃんと思っていたら、人生はそれほど甘くはない・・・・?  学校に入ったら、ここはまさかの美醜逆転世界の乙女ゲームの中だということがわかり、さらに自分の婚約者はなんとそのゲームの悪役令嬢で!!!?

処理中です...