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本編●主人公、獲物を物色する
ぼくの話題は乏しいので助けて
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ぼくの中に、異なる二つの美醜感覚が備わってからというもの、ぼくが目にするのはアドル的な美形ばかり。
ここでせっかく、サトル的な美形に出会えたんだから、もっと親しくなりたいし、出来ればせめて友人ぐらいにはなりたいと思っている。
王子二人は初対面だし、アルフォンソさんとも先に一度会った事があるだけだ。
精一杯に愛想を振りまくぼくの努力の成果か、単なる時間の経過による慣れか。
二人の王子様とアルフォンソさんは、ぎこちないながらも、ぼくの方に顔を向けてくれるようになった。
会話の流れは大体、ぼくが話して、王子二人とアルフォンソさんは頷いたりしながら聞いている。
三人は、ぼくが問い掛ければ、どうにか応えてくれるぐらいにはなった。
良かった……少なくとも、ノーリアクションをずっと続けられるという事態だけは避けられた。
ぼくの話題なんか乏しいものなんだから、それを無言の中で話し続けるのは辛過ぎるから。
アルフォンソさんはエイベル兄さんと同じ学校に通っているが、王子二人は学校に通っていないらしい。
学校に行っていないのはぼくと同じだが、恐らくぼくとは理由が違う。
王子が生徒になるというのも、学校側にとっては、なかなか厳しい事なんだろう。
ぼくを含めて、四人中の三人が学校に通っていないとなると、それを話せるのはアルフォンソさん一人。
元々あまり自分から積極的にお喋りするタイプじゃないのか、それとも、他の三人が知らない事を話題の中心にするのを遠慮したのか、アルフォンソさんから学校の話として聞ける事は多くなかった。
多少の情報収集が出来るかと思っていたんだが、少し残念だな。
実はぼく、来春から……いや、途中からでもいい。
学校に通いたい、と思っているんだ。
ずっと引き篭もっていたぼくだから、同世代の友人がいない。
かろうじて最近、リウイという『麗しい』な人と友人になれたが、彼の場合は特別な理由があっての事だ。
お互いに前世の記憶があって、しかも、前世で友人だったという事情が。
それが無ければ、リウイとも友人になれたかどうか、怪しいからな。
だが学校に通えば、ぼくにも普通に友人が出来るんじゃないかと思う。
ぼくの『格好良い』な顔面を隠さずに通えるのであれば、恐らく、それなり以上に人が寄って来て、快適に過ごせるんじゃないかと。
この世界の美形が寄って来ても良いし、顔面偏差値の低い人が寄って来ても問題無い。
あわよくば、色々なタイプの美形と知り合いになって。
あわよくば、もう少し深い所まで知り合って。
今の所は未経験のアレやコレもしたいと思っている。
本当は成人前に経験したいんだが、出来れば最初は、ぼくの好みにマッチした相手がいい。
この場に出されている料理や紅茶の話、好きな食べ物の話、着ている服の話、動物の話に、ぼくが初めてちゃんと町に外出した時の感想などを話題にして。
それから少しだけ学校について、アルフォンソさんに質問したりした。
……好きなタイプは? なんて色っぽい話題に仕向けるような、そんなテクニックはぼくに無かった。
どうにか会話を続けていると。
アリアノール王子が躊躇いがちに、それでもしっかりとぼくを見詰めて口を開いた。
「あの……学校に、興味があるのですか?」
「えぇ、そうです。もし可能であれば、ですが……通ってみたいとも思っています。」
頷くぼくに、王子二人もアルフォンソさんも、驚いたように目を見開く。
そんなに驚くような事を言ったかな?
ぼくが引き篭もりだと知っていたとしても、その引き篭もり具合の酷さまでは知らないはずだろうに。
「……怖くは、ないのですか?」
「何か怖い事があるんでしょうか。すみません、ぼく、学校の事を何も知らなくて。」
「学校には様々な人がいると、聞きますから……。」
アンドリュー王子とアルフォンソさんが、心配そうに見つめる中。
アリアノール王子は少々口籠ったが、意を決したように続けた。
「貴方から見れば、顔面偏差値が底辺な者も、多くいるでしょう。平気なんですか……?」
今、話しているのは、学校での事だ。
だが、彼の辛そうな表情に、ぼくは気が付いた。
顔面偏差値が底辺な者とは……恐らく、自分の事を指しているんだ。
自分や、弟や、アルフォンソさんの事を。
ぼくから距離を……精神的な距離を……取っているのは、怯えていたから。
王子という重責を背負っている彼を敬いもせず、それどころか、……偏差値の低い彼の立場が高い事を逆に、嘲笑うような人物がいるんだろう。
その所為で、自分の偏差値にコンプレックスを抱いていたとしたら、奇跡ランクのぼくからどんな扱いをされる事かと、警戒したとしても無理は無い。
「勿論、平気ですよ?」
こんな言葉が少しでも慰めになるんなら、幾らでも言ってあげる。
唇に弧を描かせて、ぼくは何でもない事のように言い放つ。
リウイにも言った事のある、『格好良い』が奇跡ランクならではの、傲慢な台詞を。
「ぼくは、人の顔面偏差値が気にならなくなったから。」
ここでせっかく、サトル的な美形に出会えたんだから、もっと親しくなりたいし、出来ればせめて友人ぐらいにはなりたいと思っている。
王子二人は初対面だし、アルフォンソさんとも先に一度会った事があるだけだ。
精一杯に愛想を振りまくぼくの努力の成果か、単なる時間の経過による慣れか。
二人の王子様とアルフォンソさんは、ぎこちないながらも、ぼくの方に顔を向けてくれるようになった。
会話の流れは大体、ぼくが話して、王子二人とアルフォンソさんは頷いたりしながら聞いている。
三人は、ぼくが問い掛ければ、どうにか応えてくれるぐらいにはなった。
良かった……少なくとも、ノーリアクションをずっと続けられるという事態だけは避けられた。
ぼくの話題なんか乏しいものなんだから、それを無言の中で話し続けるのは辛過ぎるから。
アルフォンソさんはエイベル兄さんと同じ学校に通っているが、王子二人は学校に通っていないらしい。
学校に行っていないのはぼくと同じだが、恐らくぼくとは理由が違う。
王子が生徒になるというのも、学校側にとっては、なかなか厳しい事なんだろう。
ぼくを含めて、四人中の三人が学校に通っていないとなると、それを話せるのはアルフォンソさん一人。
元々あまり自分から積極的にお喋りするタイプじゃないのか、それとも、他の三人が知らない事を話題の中心にするのを遠慮したのか、アルフォンソさんから学校の話として聞ける事は多くなかった。
多少の情報収集が出来るかと思っていたんだが、少し残念だな。
実はぼく、来春から……いや、途中からでもいい。
学校に通いたい、と思っているんだ。
ずっと引き篭もっていたぼくだから、同世代の友人がいない。
かろうじて最近、リウイという『麗しい』な人と友人になれたが、彼の場合は特別な理由があっての事だ。
お互いに前世の記憶があって、しかも、前世で友人だったという事情が。
それが無ければ、リウイとも友人になれたかどうか、怪しいからな。
だが学校に通えば、ぼくにも普通に友人が出来るんじゃないかと思う。
ぼくの『格好良い』な顔面を隠さずに通えるのであれば、恐らく、それなり以上に人が寄って来て、快適に過ごせるんじゃないかと。
この世界の美形が寄って来ても良いし、顔面偏差値の低い人が寄って来ても問題無い。
あわよくば、色々なタイプの美形と知り合いになって。
あわよくば、もう少し深い所まで知り合って。
今の所は未経験のアレやコレもしたいと思っている。
本当は成人前に経験したいんだが、出来れば最初は、ぼくの好みにマッチした相手がいい。
この場に出されている料理や紅茶の話、好きな食べ物の話、着ている服の話、動物の話に、ぼくが初めてちゃんと町に外出した時の感想などを話題にして。
それから少しだけ学校について、アルフォンソさんに質問したりした。
……好きなタイプは? なんて色っぽい話題に仕向けるような、そんなテクニックはぼくに無かった。
どうにか会話を続けていると。
アリアノール王子が躊躇いがちに、それでもしっかりとぼくを見詰めて口を開いた。
「あの……学校に、興味があるのですか?」
「えぇ、そうです。もし可能であれば、ですが……通ってみたいとも思っています。」
頷くぼくに、王子二人もアルフォンソさんも、驚いたように目を見開く。
そんなに驚くような事を言ったかな?
ぼくが引き篭もりだと知っていたとしても、その引き篭もり具合の酷さまでは知らないはずだろうに。
「……怖くは、ないのですか?」
「何か怖い事があるんでしょうか。すみません、ぼく、学校の事を何も知らなくて。」
「学校には様々な人がいると、聞きますから……。」
アンドリュー王子とアルフォンソさんが、心配そうに見つめる中。
アリアノール王子は少々口籠ったが、意を決したように続けた。
「貴方から見れば、顔面偏差値が底辺な者も、多くいるでしょう。平気なんですか……?」
今、話しているのは、学校での事だ。
だが、彼の辛そうな表情に、ぼくは気が付いた。
顔面偏差値が底辺な者とは……恐らく、自分の事を指しているんだ。
自分や、弟や、アルフォンソさんの事を。
ぼくから距離を……精神的な距離を……取っているのは、怯えていたから。
王子という重責を背負っている彼を敬いもせず、それどころか、……偏差値の低い彼の立場が高い事を逆に、嘲笑うような人物がいるんだろう。
その所為で、自分の偏差値にコンプレックスを抱いていたとしたら、奇跡ランクのぼくからどんな扱いをされる事かと、警戒したとしても無理は無い。
「勿論、平気ですよ?」
こんな言葉が少しでも慰めになるんなら、幾らでも言ってあげる。
唇に弧を描かせて、ぼくは何でもない事のように言い放つ。
リウイにも言った事のある、『格好良い』が奇跡ランクならではの、傲慢な台詞を。
「ぼくは、人の顔面偏差値が気にならなくなったから。」
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