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本編●主人公、獲物を物色する
ぼくは美形主催のお茶会で空気になる
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今日の『設定』は、『王妃様と王子様、王子の友人とその家族数名での、ささやかなお茶会』だった。
だが兄は、王子様の友人という『設定』なだけで、実際の所は友人ではないそうだ。
だから今日はてっきり、顔面偏差値がそれなりにある人ばかりだろうと思っていたから、アルフォンソさんの姿を見付けたぼくはとても嬉しかった。
これで、ぼくの中の……サトル的なボクも満足するからだ。
王城の広い庭にあるガーデンハウスの中。
淡い黄緑色の布を掛けられたテーブルの上には、アフタヌーンティーセットが用意されており、注がれたばかりの温かな紅茶がカップの中から湯気を立てている。
スタンドに並んだ三段の皿の、下段には、オープンタイプを含む数種類のサンドイッチが。
中段には、マッシュポテトやベイクドポテト、小さめのカボチャパイ等の暖かい料理が。
上段には、小さなカップケーキやタルト、マカロンに、ゼリー等のデザートが。
バスケットには焼き立てのスコーンが入っており、その脇にはクロテッドクリームと果物のジャムが小皿で置かれている。
紅茶は食事の邪魔をしないような、シンプルな味わいのものらしい。
簡単な挨拶を済ませて、ぼく達は席に着いた。
涼しい表情で着席しているぼくだが、内心は大騒ぎで喧しい。
大きなテーブルのホスト席には王妃様。
王妃様の前で、ぼく達家族は王子様達と、テーブルを挟んで向かい合った。
席順は、王妃様と一番近い位置から順に、ぼくのまぁまぁ『麗しい』な母、続いて『麗しい』が高ランクのエイベル兄さん、最後に『格好良い』が奇跡のぼく。
向かい側には、王子様が二人……そして、アルフォンソさん。
そう。アルフォンソさんは、ぼくの真正面にいる。
しかも、王妃様のご意向により、その場にいる全員がヴェール等の顔を隠す物を付けていない状態。
つまり、素顔のアルフォンソさんが見放題だ。
挨拶の時に聞いたんだが、アルフォンソさんは、辺境伯の息子だった。
辺境伯夫人……つまり彼の母が、国王の弟で、アルフォンソさんと王子様達は従兄弟という間柄になる。
王子じゃないアルフォンソさんが、何故この場にいるのかは……これも王妃様のご意向なんだが。
詳しい事は、王妃様の微笑みの裏側にまだ隠されていて、それを明かしてくれるのかどうかは不明だ。
ぼくは、涼しい顔という名の、実は緊張と過度な興奮による無表情で、アルフォンソさんの隣席にいる王子様二人に目をやった。
……途端。
「先に話を聞いてはいたが……。」
王妃様に会話の口火を切られたら、そちらを見ないわけには行かない。
「これ程までとは……内々に連絡を貰っておいて良かった。これは確かに、余程の事、ですね。」
「……恐れ入ります。」
ぼくの顔を見て、ほう……っと溜息を吐く王妃様。
恐縮する母と兄を真似て、ぼくも一緒に着席のままでお辞儀をした。
ここでのぼくは、基本的には会話に参加しなくて良い事になっている。
打ち合わせは王妃様と母とで進め、兄はその補佐的な立場で問われれば答える。
奇跡ランクのぼくからの、王族に対する態度をどうするかがまだ決まっていないから、下手な態度で会話に参加するわけには行かないからだ。
王位や爵位は国内の制度であるのに対して、顔面偏差値はこの大陸全体の制度だ。
それだけを考えれば、ぼくはオルビー先生から習ったような対応をすれば良いんだが……相手側にも面子や立場というものがある。
あるいは、頭では理解するべき事柄でも感情は別、という言い方でもいい。
……要するに。ぼくに、王族に対して何処まで『格好良い』の奇跡ランクらしい態度をさせるか。
それを決めなければ、ぼくが王妃様に返答する事も難しいんだ。
「その年齢にまでなっている以上は、やはり……デビューに合わせるのが自然でしょうね。」
「では、正式な報告は、その二か月前がよろしいでしょうか。」
「彼の場合には、もう少し早い方が良いように思います。三か月前にしましょう。」
愛想笑いを浮かべて話を聞いている自分の頬が、強張っているように感じる。
ぼくは、顔を王妃様に向けたまま……。
美しいものに心の癒しを求めて、視界の端に王子様二人の姿を捉えようと必死だった。
ここまで、王妃様や王子様二人の顔面偏差値に、一言も触れて来なかった。
王族に対する遠慮があるのはもちろんだが、実は。
アドル的な期待に反して……逆に言えば、サトル的な欲望を満たしてくれるように。
王妃様も、王子様二人も、顔面偏差値が極めて低いんだよ。
だが兄は、王子様の友人という『設定』なだけで、実際の所は友人ではないそうだ。
だから今日はてっきり、顔面偏差値がそれなりにある人ばかりだろうと思っていたから、アルフォンソさんの姿を見付けたぼくはとても嬉しかった。
これで、ぼくの中の……サトル的なボクも満足するからだ。
王城の広い庭にあるガーデンハウスの中。
淡い黄緑色の布を掛けられたテーブルの上には、アフタヌーンティーセットが用意されており、注がれたばかりの温かな紅茶がカップの中から湯気を立てている。
スタンドに並んだ三段の皿の、下段には、オープンタイプを含む数種類のサンドイッチが。
中段には、マッシュポテトやベイクドポテト、小さめのカボチャパイ等の暖かい料理が。
上段には、小さなカップケーキやタルト、マカロンに、ゼリー等のデザートが。
バスケットには焼き立てのスコーンが入っており、その脇にはクロテッドクリームと果物のジャムが小皿で置かれている。
紅茶は食事の邪魔をしないような、シンプルな味わいのものらしい。
簡単な挨拶を済ませて、ぼく達は席に着いた。
涼しい表情で着席しているぼくだが、内心は大騒ぎで喧しい。
大きなテーブルのホスト席には王妃様。
王妃様の前で、ぼく達家族は王子様達と、テーブルを挟んで向かい合った。
席順は、王妃様と一番近い位置から順に、ぼくのまぁまぁ『麗しい』な母、続いて『麗しい』が高ランクのエイベル兄さん、最後に『格好良い』が奇跡のぼく。
向かい側には、王子様が二人……そして、アルフォンソさん。
そう。アルフォンソさんは、ぼくの真正面にいる。
しかも、王妃様のご意向により、その場にいる全員がヴェール等の顔を隠す物を付けていない状態。
つまり、素顔のアルフォンソさんが見放題だ。
挨拶の時に聞いたんだが、アルフォンソさんは、辺境伯の息子だった。
辺境伯夫人……つまり彼の母が、国王の弟で、アルフォンソさんと王子様達は従兄弟という間柄になる。
王子じゃないアルフォンソさんが、何故この場にいるのかは……これも王妃様のご意向なんだが。
詳しい事は、王妃様の微笑みの裏側にまだ隠されていて、それを明かしてくれるのかどうかは不明だ。
ぼくは、涼しい顔という名の、実は緊張と過度な興奮による無表情で、アルフォンソさんの隣席にいる王子様二人に目をやった。
……途端。
「先に話を聞いてはいたが……。」
王妃様に会話の口火を切られたら、そちらを見ないわけには行かない。
「これ程までとは……内々に連絡を貰っておいて良かった。これは確かに、余程の事、ですね。」
「……恐れ入ります。」
ぼくの顔を見て、ほう……っと溜息を吐く王妃様。
恐縮する母と兄を真似て、ぼくも一緒に着席のままでお辞儀をした。
ここでのぼくは、基本的には会話に参加しなくて良い事になっている。
打ち合わせは王妃様と母とで進め、兄はその補佐的な立場で問われれば答える。
奇跡ランクのぼくからの、王族に対する態度をどうするかがまだ決まっていないから、下手な態度で会話に参加するわけには行かないからだ。
王位や爵位は国内の制度であるのに対して、顔面偏差値はこの大陸全体の制度だ。
それだけを考えれば、ぼくはオルビー先生から習ったような対応をすれば良いんだが……相手側にも面子や立場というものがある。
あるいは、頭では理解するべき事柄でも感情は別、という言い方でもいい。
……要するに。ぼくに、王族に対して何処まで『格好良い』の奇跡ランクらしい態度をさせるか。
それを決めなければ、ぼくが王妃様に返答する事も難しいんだ。
「その年齢にまでなっている以上は、やはり……デビューに合わせるのが自然でしょうね。」
「では、正式な報告は、その二か月前がよろしいでしょうか。」
「彼の場合には、もう少し早い方が良いように思います。三か月前にしましょう。」
愛想笑いを浮かべて話を聞いている自分の頬が、強張っているように感じる。
ぼくは、顔を王妃様に向けたまま……。
美しいものに心の癒しを求めて、視界の端に王子様二人の姿を捉えようと必死だった。
ここまで、王妃様や王子様二人の顔面偏差値に、一言も触れて来なかった。
王族に対する遠慮があるのはもちろんだが、実は。
アドル的な期待に反して……逆に言えば、サトル的な欲望を満たしてくれるように。
王妃様も、王子様二人も、顔面偏差値が極めて低いんだよ。
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