美醜感覚が歪な世界でも二つの価値観を持つ僕に死角はない。

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本編●主人公、獲物を物色する

空腹を抱えながら学ぶぼく

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一通りの紹介と挨拶が済むと、ようやく本題だ。
ぼくは『愛くるしい』のステル先生から……欲を言えばオルビーと、名を呼びたい……顔面偏差値に関わる礼儀や決まり事を教わるんだ。



始めは、顔面偏差値というものについての説明を受けたんだが。
過去話でぼくが言った事と重なっている部分は割愛するよ。

ステル先生はまず、ぼくの顔面偏差値についての知識を確認した。
ぼくは知る限りでの六大顔面タイプとランクの事、ランクの中でのフィーリングによるレベル分けの事を話す。
これにはステル先生からお褒めの言葉をいただいた。
どうやら先生は、ぼくが引き篭もりだという事を知っているらしく、そんなぼくが顔面偏差値についてちゃんと知識を持っている事自体、やや感心したらしい。

……どれだけぼくの予想点数が低かったんだか。

それから、この国や近隣諸国では顔面偏差値が貴族の爵位と同じぐらい重要視されている、という話をしたんだが。

実はこの辺りの知識を、ぼく……アドルはあまり詳しくは持っていない。
同じ爵位なら顔面ランクが高い方が上。
顔面ランクに差があれば、爵位が少し高くても同等になる。
……ぐらいの知識だ。

何故かと言うと。
ぼくの家庭教師は、そこそこの顔面偏差値だった。
つまり、この世界での普通レベルだったんだが、それでもその頃のアドルの目にはやや不気味な物に見えていて。
正直言うと、あんまり話を聞いていなかった。
いや、聞けていた時もあれば、聞けていなかった時もある。と言った方が正解だな。

だからぼくの知識には偏りがある。



話を戻そう。


顔面偏差値と貴族の爵位について、ステル先生が言うには。

参考書に載っている書き方だと……基本的には、顔面ランクの一つ差が、爵位一つ差以上だ。
この法則によれば、低ランクの伯爵と、中ランクの子爵は同等という事になる。

だが実際は、ちょっとした事情により少し異なっている。

この世界の平均的な顔面は、中ランクのそこそこ……下のレベルだ。
だからか、伯爵、子爵、領地持ちの男爵は、同じランク内で争う事が多い。
低ランクの人の事は、まぁ置いておくとして。
同じ中ランク内の『まぁまぁ』、『それなり』、『そこそこ』の差で、爵位の差を埋められるんだ。
具体的に例えれば、そこそこレベルの伯爵と、まぁまぁレベルの領地持ち男爵は同等、という事になる。

ぼくの母はまぁまぁレベルの子爵夫人だから、それなりの伯爵夫人とは同等、そこそこの伯爵夫人より格上、という事だ。
ただ、母はあくまでも中ランクだから、同じ中ランクの侯爵夫人が『そこそこ』でも同等にはならない。


さて、ここで『エイベル兄さん問題』だ。
しっかり『麗しい』の高ランクである兄は、どのような扱いになるでしょうか。

正解は……相手も高ランクでない限り。公爵よりは下、侯爵よりも上、だ。
勿論、そんな爵位は無いがね。
筆頭侯爵扱い、と言うのが一番しっくり来るかな。
侯爵の前に伯爵がいるが、伯爵は同じランク内で争う相手だから、ランクが違うなら相手にならない。

普通なら、高ランクの子爵は中ランクの侯爵と同等扱いだ。
だが兄はぎりぎりなんかじゃない、極めて稀なばりばりの高ランクだから、侯爵や辺境伯よりも上という……実に微妙な扱いになるらしい。


あぁそうだ、顔面偏差値が影響を及ぼすのは個人単位だ。
『家』全体には及ばない。

例として挙げると。
ぼくの兄は高ランクだが、侯爵と同等以上に扱われるのは兄個人。
カーネフォード家がそのように扱われる事は無い。



それじゃあ、ここで『ぼくの奇跡問題』だ。
顔面タイプが『格好良い』の奇跡ランクなぼくは、どのような扱いになるかな?
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