美醜感覚が歪な世界でも二つの価値観を持つ僕に死角はない。

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本編●主人公、獲物を物色する

ぼくが知る限りの顔面偏差値について

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あぁそうだ。
顔面のランクが、各タイプの神にどれだけ似ているかによって『高・中・低』ランクに分けられるという事は、前にも説明したと思うが。

顔面偏差値を数値化したものとは別に、ランクの中でも更に、フィーリングで分けられている。
フィーリングと言うと非常に曖昧なもののように感じるだろうが、この世界のぼく達の美醜感覚は神から、ほぼ絶対的な価値観として与えられたものだ。
……というのは、ぼくが世野悟の事を思い出したから言えるんだが。

この世界の人間は基本的に。
何の特徴も無い世野悟(ヨノサトル)の姿を『格好良い』と感じるように、神による明確な意思を以って作られている。
他のタイプも同様に、里村や他の友人達の姿を、素晴らしいものだと感じるようになっている。
だから美醜感覚に関してだけは、割と同じになるんだ。
例えば『麗しい』な人物は、この世界の誰が見ても『麗しい』だと感じる事になる。

もちろん、何にでも例外やイレギュラーはあるし、『麗しい』だからといって、それに好意を抱くかどうかは別だが。



少し話が逸れてしまったかな、戻そう。
『高・中・低』ランクが、更に細かく分かれるという話だったよね。


エイベル兄さんのいる高ランクは、人数がかなり少ないから、実はあまりはっきりとは分かれていないんだ。
と言うのも、高ランクに所属している人も、その殆どはぎりぎりでのランクインだから。
高ランクな人を掴まえて、わざわざ「ぎりぎり」だの「かろうじて」だのと、正面から言う人はいない。

……悪口としてなら、あるんだろうな。
まぁエイベル兄さんに関して言えば、ぎりぎりなんかじゃない、まるっと完全な高ランクだから、そんな事を言われるわけが無いがね。


母のいる中ランクは、最も人数が多いようだ。
この世界にいる大体の人は中ランクだと、顔面偏差値がそこそこの家庭教師から聞いた事がある。

まぁまぁ『麗しい』な母は、中ランク内でも上の方なんだ。
中ランクはおよそ三つに分かれ、上から順に、まぁまぁ、それなり、そこそこ……となる。
似ているかどうかで言うと、『割と似ている』レベルから段々と下がって行き、『ちょっと似ている』レベル、そして『なんとなく似ている』レベルまで、という感じか。

世野悟の記憶があるぼくだから、思う事なんだが。
恐らく、中ランクの人は、殆どがそこそこレベル……せいぜいそれなり、なんじゃないだろうか。

考えてもみて欲しい。
ランクとは、どれだけ神の姿に似ているか、を評価したものだ。
そして神とは……全員、日本人なんだ。
この世界の顔面は基本的に西洋人顔だから、そんなに似るわけがない。
むしろ、似ている顔の方が少なくて当たり前だろう。


それを考えれば、中ランクの人が多いというのは判断基準が甘いんじゃないかと感じるが……。
この世界の平均的な顔立ちが『低ランク』という状況は、流石に神様も悲し過ぎると考えたんだろうな。
平均が中ランクになるよう、何かしらの調整をしたのかも知れない。


さてさて。
低ランクも、結構人数は少なくないようだ。二つに分かれている。

大体の人達は、普通に『低ランク』と呼ばれる事が多いが、その中でも誤差レベルで上の方の人達は「マシな方」と呼ばれる事もあると言う。
いずれにしろ、似ている部分がある、というレベルだ。
低ランクの下の人達は、ぎりぎり、と称されるぐらい、神に似ていない。
そのタイプに分類されているんだろうなと、かろうじて分かるようなレベルだ。


顔面偏差値が無し、というのは滅多に無い。らしい。
誰でも何処かに、何かしら、神と似ている部分を備えているからだ。


だから、アルフォンソさんのような顔面偏差値の無い人は……。
それもある意味では、稀と言えるだろう。




――― あぁ、そろそろアルフォンソに会いたいなぁ。


ぼくが世野悟を思い出して以降、思い返せば今までずっと、サトル的な美形を見ていない。

アドル的には既に、母と兄が充分に『麗しい』だ。
……二人とも家族だという点が、実に残念だが。
それ以外にも、ウェラン司祭もそれなりな『凛々しい』の中ランクだから、目で見て楽しむには充分な相手だ。

それに、何と言っても今日は……リウイという奇跡ランクの『麗しい』を目にする事が出来た。
……自分でも気が付いていなかった初恋を認識したり、あっという間に失恋(?)したりもあったが。
あの後、ぼくは少々強引にだが「改めてよろしく」したので、彼と友人になる事も出来たんだ。


この世界に『麗しい』の人数は多めなのかも知れないが。
恐らく『麗しい』に関して、ぼく以上に恵まれている人はいないだろうね。
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