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59・オレは積極的かつ都合良く考えることにした。 (タスク視点)

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なぁ、ちょっと聞いてくれよぉ~。
なんかキョウタがすげぇ可愛いんだけどぉ~。

どうもオスカーとサイラスがヤッてる現場に居続けたことを、なんか誤解したみてぇだけどさ。
見てて何とも思わなかったのか、って聞く時のキョウタがさ。
拗ねてるような、悔しがってるような声の調子とか、表情とか。
都合良く考えたら、まるで嫉妬してるみてぇな……。


オレは表面上の冷静さを取り繕いながら、キョウタに言い訳……じゃなくて、説明した。
あの二人の絡みを見ても興奮してねぇし。
ホントは他の部屋に逃げたかったくらいだし。
キョウタのことが大事だし。

そしたらキョウタが。
ちょっと顔を赤らめて、恥ずかしそうに視線逸らしてさ。

急にそんなデレ見せられたら、調子に乗っちゃうだろっ。
待て待て、落ち着けオレっ。
スーハースーハー。


けど、キョウタのデレ顔を見てられる時間はすぐに終わった。
キョウタが、寝ている間の自分にヤラシイコトをしてないかって、オレに聞いて来たからだ。

してない、って言えなかったオレ。

続くキョウタの言葉を聞くと、オスカーに、エッチなことをしてねぇかの確認だったっぽい。
そんなことするワケねぇから、自信を持ってすぐに否定した。けど。
キョウタじゃなくてオスカーとのことを聞いてるって気付く前、オレがすぐに答えなかったから、キョウタは尋問モードに入っちゃたみたいで。

「……し、た、ん、だ、な?」
「オスカーにはしてねぇよ。」
「サイラスにはした、のか?」
「サイラスにもしてねぇよ!」

それからジ~ッと見て来るキョウタの圧に抵抗できなくて、やっぱり白状するハメになった。
オレが、意識の無いキョウタにチューしたってこと。

それを聞いたキョウタは、何か言い掛けたけど唇をちょっと開いただけで声は出さなかった。

怒ってるよな……。むしろ、呆れてるかな……。

怒らせたかなって思ったのに、なかなかキョウタの怒り台詞が聞こえて来ない。
それどころか……それどころか!
かなり上等な笑顔を見せて来る始末!
白髪赤目で中二病っぽいけど美少年な容姿のキョウタだから、破壊力がすげぇ半端ねぇ。

この状況で微笑って、逆に怖いんだけど。
前にキョウタ、「次は普通に起こせ」って言ってたじゃん。
明らかに『普通』には起こしてねぇんだけど、怒ってねぇのか?
や、そんなワケねぇよな。

「まぁ……あの時と違って今回は俺も、普通に眠っていたわけじゃない……ようだからな。」

あ、オレが思ってたより怒ってなかった。

けど、文句を言われなきゃ言われねぇで、なんかシックリ来ねぇ。
オレは謝り倒す気になってたんだけど、そんな雰囲気でもねぇから、どうしたらいいか分かんなくて戸惑った。

「だが……そう、だな。」

それはキョウタも同じみたいだ。
ちょっとずつ言葉を探すみてぇに喋ってる。
とりあえず黙って聞いてる…

「出来れば、俺の意識が、ある時にして…」
「する、分かった、意識がある時にする。」

…ツモリだったのに、気付いたらオレはガッツリ宣言してた。
台詞も食い気味に重なるくらいの必死っぷり。

だって、だってホラ!
意識があるときにして欲しい、なんて言われたらテンション上がるだろ!
オレが遮っちゃったから、全部は言い切ってねぇけどな!

それならもう、するじゃん。するしかねぇじゃん。

オレは勝手に嬉しくなる。
ニヤニヤすんのが我慢出来ねぇ、っつ~か絶対してる。

「絶対するから、オレ、メッチャするからな。」

キョウタの頬っぺたが見る見る赤くなってった。
自分で言ったことが恥ずかしくなったんだろう。

「え、あ、ぃや……違っ、そういう……つもり、じゃ……。」

ボソボソ言い訳してる様子が可愛くて、思わずギュッて抱き締めたくなったけど、キョウタが恥ずかしがってる姿を見たいからグッと我慢した。

「だから……意識の無い時に、されても……。困る、という、か……。」


……つ~か、……っていうかさ。
オレの誤解っつ~か、自惚れてるだけかも知れねぇけどさ。

これ、さ……。キョウタさ、オレのこと……スキだろ?

もしかしたら本人にはまだ、そ~いう意識は無いかも知んねぇけどさ。
たぶん、オレのこと好きだって。
それか、好きになりかけてる。…んだったらいいな。


腰掛けてるベッドの上を、ヘラヘラしながらキョウタの方ににじり寄ってみる。
キョウタの髪に手を伸ばしたら、ビックリしたように目を見開いたけど嫌がる様子は無かった。
晒した上半身を起こしたまま、言葉を切ってオレを見るキョウタ。

「なぁキョウタ、魔力譲渡……しよ?」
「えっ?」
「意識は取り戻したけどさ、量はあんまり補充出来てねぇと思うんだ。だから一応、念のため。」
「ぃ……今? ここで?」
「うん、今。……ダメ?」

髪を撫でてる手を少し下ろして、キョウタの頬に添えるようにした。
指先で耳をちょっと擽ったら、一瞬キョウタはピクッて震えてから。

「だ、駄目に決まっているだろうっ。タスクはここを何処だと思っているんだっ。」
「悪役娘の嫁ぎ先の家。」
「そうだ。つまりは他所様のお宅だ。そんな所で……すると思うなっ。」

そんな真っ赤な、テレ顔で言われたら。
なんか逆にムラムラするっつ~の。ねぇ?

「誰も見てねぇじゃん。」
「見てなくてもだ。タスクは、やっぱりそういう気で部屋を移ったんだな。オスカーじゃあるまいし、こんな場所でエッ……チとかしないからな。人んちのベッドを汚すとか最悪だぞ。」

一気に言い連ねてキョウタがオレを睨む。
睨むっつっても、メッチャ動揺してんのが丸分かりな表情だけど。
なんかオレ、どえらい誤解されてるな。

「うん、エッチはしねぇよ?」
「えっ?」

あ~、やっぱり~。
オレのイメージの所為かも知れねぇけど、オレの言った魔力譲渡がセックスのことだって思われてる~。

「流石にオレだって、それくらいは分かってるって。」
「でも、魔力を…」
「うん、だから口移しで。ちゃんとしたい。……それもダメ?」

自分の誤解に気付いたキョウタが、更にオロオロして目線を彷徨わせる。
顔を背けようとしたから、顎を摘んでしっかりオレの方を向けた。

「だ、駄目というか、そんな、急に……。」
「急に、じゃねぇよ。オレはしたいと思ってたし、キョウタのことがスキって言ってからは、そ~いうのあんまり隠して……っつ~か、隠せてなかったと思うんだけど。」
「そこは大人として、ある程度は隠して欲しいんだが。」
「だってスキなんだから、しょ~がねぇじゃん。……それにキョウタも、オレのこと、好きだよな?」
「え……? あ……。」

狼狽えてるキョウタが冷静さを取り戻す前に。
暗示でも掛けるみたいに、オレは言い聞かせるように言葉を重ねる。

「ハッキリした好き、じゃなくても、ちょっとはオレのこと好きじゃね? 違う? だってオスカーのこと、ヤキモチ妬いてたじゃん。面白くなかったんだろ?」
「それは……ぅん、まぁ……。」
「そっか、ヤキモチじゃん。……オレ、すげぇ嬉しいんだけど?」

キョウタが、ヤキモチだって認めるように小さく頷いた。
オレの喜びがもう、ハンパねぇ。顔が緩む。

「オレ、魔力渡すやり方って、まだよく分かってねぇし。イザって状況で出来なかったらヤバいし。だからさ、練習させて?」

キスする、だと恥ずかしいんだろうけどさ。
魔力を分けるため、ってんなら大丈夫だろ?

そ~いう言い訳付きでいいから、なぁ、しようよ。
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