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3・今世の俺の格好良い名前を考えようか。 (キョウタ視点)
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人里目指して、二人で適当に歩き出す。
ザッ、ザッ、ザッ。
舗装されてないわ真っ平でもないわで、少し歩き難い。
それでも草ぼーぼーの草原を歩くよりマシだが。
ここが森のど真ん中、とかじゃなくて本当に良かったな~。
樹海みたいに迷いまくって元の場所に戻る……なんてことも無さそうだし。
歩きながら俺は、自分の名前を考えていた。
せっかく、転生者と転移者が知り合ったわけだ。
しかも、俺もあっちも他に知り合いがいない。
じゃあ名前でも聞こうかなと思ったが……俺、記憶が無いだろう?
さっきも考えている途中だったが、今世の俺の名前。どうしようかな~。
一生懸命考えていたら声を掛けられた。
「な~あ? お前、名前なんつ~の?」
こっ、こいつ……。
俺が記憶喪失だと言ったのを忘れたのか?
こっちは今、この姿に合った新しい名前考えている所なんだ。
「ちょ、に~ら~む~な~よ~。お前、前世の記憶はあるんだろ?」
「今、新しい名前、考え中だから……。この見た目に合ったやつ。」
「あ、オレはタスク。さっきこの世界に転移してきたばっかりだ。よろしくな、異世界人。」
「聞けよ、マイペースかよっ。というかその名前、やっぱり日本人なんだなっ。」
「お前だってどうせ日本人なんだろ?」
「それは前世の話であって。今世の俺、ばりばり異世界の住人だ。」
言ってから俺は気が付いたんだが。
俺はきっとこの世界の住人で、タスクは日本からの転移者なわけだ。
という事はむしろ、この場合に異世界人なのはタスクの方じゃなかろうか。
よろしくな異世界人、じゃないだろオイ。
あ、しかもこいつ。
自己紹介するために俺が頑張って名前を考えているというのに、自分だけさっさと自己紹介したぞ。
しかもあれで終わりらしい。
……あ~、俺も早く名前を決めないと。
俺がまた一生懸命に考えていると。
タスクがいきなり自分のシャツの前を開けてバタバタし始めた。
「おい……前触れの無い変態やめろ!」
「だぁれが、下校途中のJCを狙った露出狂のオッサンだ!」
「……準備済みの突っ込みを置きに来るの禁止。」
「……こやってした方が早く乾くと思わねぇ?」
バタバタするのを維持したまま、タスクが俺の方を向く。
見せるな、見せて来るんじゃない。
「あんまり変わらんだろ? というかそれ、腕、疲れないか?」
「すげぇ疲れるし。」
「お前お馬鹿だし。」
こいつが黒いモヤモヤから出て来るのを見た時、主人公来たって思ったが。
間違いだな、うん。
俺が言うのもあれだが、こいつ馬鹿だもん。
外見だけならいかにもな黒髪黒目で細身で、割とイケているんだがな~。
もしタスクを召喚した王侯貴族とかがいたのなら、残念だがこれはもう諦めて別なのを召喚し直した方がいいぞ。
「ところでさ、マジお前の名前」
「今、考えていると言っただろ。ちょっと待てよ。」
着ていたシャツを完全に脱いで、頭上で振り回しながらタスクが聞いて来る。
お前それ、ライブ会場で盛り上がっちゃったアレかよ。
というか、両手でバタバタするのが疲れるって言ったのに、そっちの方が疲れないか?
「で、どんくらい待てばいい?」
「シャツが渇くぐらいかな~。」
俺がそう言うと、タスクは「もう乾いた~。」とか言いながらシャツを羽織った。
乾くかいっ。
そんなわけ無いだろ。
乾いたって言い張るつもりなら前ボタン閉めろよ。
というゼスチャーをしてみせた。
「なぁ、名前決まったか~?」
俺の無言のメッセージを無視して話し掛けて来た。
仕方なく俺は、考え途中の幾つかの候補を知らせる事にした。
もう、一緒に考えて貰おうかな。そっちの方が早そうだ。
「実は迷っててさ~。凛々しい系でいくか、可愛い系でいくか。今の俺さ、美少年じゃん? 見た目の印象と合わせて名付けるか、それとも意外性を狙ってみるか……。」
「ふ~ん。……やっぱまだ乾いてねぇや。」
タスクはいそいそとシャツを脱いだ。
そしてまた振り回し始めた。
聞く気が無いとなると、聞かせたくなるのが人のサガというもの。
「今の本命ネームは、クリスか、セシルか、シャルルか、ルイか、ジークか、ラファ」
「……そういやお前さぁ、良かったわけ? 自分が転生者だってこと、オレに言っちゃって。」
こいつ、本気で聞く気が無いな。
せっかく披露していたのを遮って心配する所がそこか。
タスクみたいな、あからさまに普通の人じゃないと分かる相手に隠す必要も無いだろう。
そもそも俺は今世の記憶が無いんだ。
頼られないように正直に言っておく方が賢明だと思うぞ。
「あ? 何で黙ってなきゃならないわけ? 自分以上に怪しい登場の仕方をしてきた奴に? そっちだって自分の事、転移して来たって言っただろ。」
「だってオレ、見られてるも~ん。お前は黙ってりゃ分かんなかったじゃん。」
「今世の記憶無いのに頼られても困るからな。」
「じゃ、前世の名前でいいや。教えてくれよ。」
……もしかして。
俺が名前を考えるの、待つのに飽きているのか?
「今世の名前さ、考えんの、まだ掛かるんだろ? それはジックリ考えといてい~からさ、とりあえず前世の名前でいいから~。」
シャツをぐるんぐるん振り回しながら言うのを聞いて、俺は確信した。
そう言われると確かに、これから付き合いが長くなるだろう今世の名前だ。
実は俺も、じっくり考えたかったから。
「日本人の頃はキョウタと呼ばれていたが?」
「キョウタ? バリッバリの日本人だな、おい。」
「だ~からっ。今、俺に合う新しい名前を考えている所だってば。」
キョウタ、キョウタ……と、タスクが俺の名前を覚えようと繰り返している様子を見ていると。
何となくだが。
……これ、このまま。
キョウタ、で定着するパターンじゃないか?
ザッ、ザッ、ザッ。
舗装されてないわ真っ平でもないわで、少し歩き難い。
それでも草ぼーぼーの草原を歩くよりマシだが。
ここが森のど真ん中、とかじゃなくて本当に良かったな~。
樹海みたいに迷いまくって元の場所に戻る……なんてことも無さそうだし。
歩きながら俺は、自分の名前を考えていた。
せっかく、転生者と転移者が知り合ったわけだ。
しかも、俺もあっちも他に知り合いがいない。
じゃあ名前でも聞こうかなと思ったが……俺、記憶が無いだろう?
さっきも考えている途中だったが、今世の俺の名前。どうしようかな~。
一生懸命考えていたら声を掛けられた。
「な~あ? お前、名前なんつ~の?」
こっ、こいつ……。
俺が記憶喪失だと言ったのを忘れたのか?
こっちは今、この姿に合った新しい名前考えている所なんだ。
「ちょ、に~ら~む~な~よ~。お前、前世の記憶はあるんだろ?」
「今、新しい名前、考え中だから……。この見た目に合ったやつ。」
「あ、オレはタスク。さっきこの世界に転移してきたばっかりだ。よろしくな、異世界人。」
「聞けよ、マイペースかよっ。というかその名前、やっぱり日本人なんだなっ。」
「お前だってどうせ日本人なんだろ?」
「それは前世の話であって。今世の俺、ばりばり異世界の住人だ。」
言ってから俺は気が付いたんだが。
俺はきっとこの世界の住人で、タスクは日本からの転移者なわけだ。
という事はむしろ、この場合に異世界人なのはタスクの方じゃなかろうか。
よろしくな異世界人、じゃないだろオイ。
あ、しかもこいつ。
自己紹介するために俺が頑張って名前を考えているというのに、自分だけさっさと自己紹介したぞ。
しかもあれで終わりらしい。
……あ~、俺も早く名前を決めないと。
俺がまた一生懸命に考えていると。
タスクがいきなり自分のシャツの前を開けてバタバタし始めた。
「おい……前触れの無い変態やめろ!」
「だぁれが、下校途中のJCを狙った露出狂のオッサンだ!」
「……準備済みの突っ込みを置きに来るの禁止。」
「……こやってした方が早く乾くと思わねぇ?」
バタバタするのを維持したまま、タスクが俺の方を向く。
見せるな、見せて来るんじゃない。
「あんまり変わらんだろ? というかそれ、腕、疲れないか?」
「すげぇ疲れるし。」
「お前お馬鹿だし。」
こいつが黒いモヤモヤから出て来るのを見た時、主人公来たって思ったが。
間違いだな、うん。
俺が言うのもあれだが、こいつ馬鹿だもん。
外見だけならいかにもな黒髪黒目で細身で、割とイケているんだがな~。
もしタスクを召喚した王侯貴族とかがいたのなら、残念だがこれはもう諦めて別なのを召喚し直した方がいいぞ。
「ところでさ、マジお前の名前」
「今、考えていると言っただろ。ちょっと待てよ。」
着ていたシャツを完全に脱いで、頭上で振り回しながらタスクが聞いて来る。
お前それ、ライブ会場で盛り上がっちゃったアレかよ。
というか、両手でバタバタするのが疲れるって言ったのに、そっちの方が疲れないか?
「で、どんくらい待てばいい?」
「シャツが渇くぐらいかな~。」
俺がそう言うと、タスクは「もう乾いた~。」とか言いながらシャツを羽織った。
乾くかいっ。
そんなわけ無いだろ。
乾いたって言い張るつもりなら前ボタン閉めろよ。
というゼスチャーをしてみせた。
「なぁ、名前決まったか~?」
俺の無言のメッセージを無視して話し掛けて来た。
仕方なく俺は、考え途中の幾つかの候補を知らせる事にした。
もう、一緒に考えて貰おうかな。そっちの方が早そうだ。
「実は迷っててさ~。凛々しい系でいくか、可愛い系でいくか。今の俺さ、美少年じゃん? 見た目の印象と合わせて名付けるか、それとも意外性を狙ってみるか……。」
「ふ~ん。……やっぱまだ乾いてねぇや。」
タスクはいそいそとシャツを脱いだ。
そしてまた振り回し始めた。
聞く気が無いとなると、聞かせたくなるのが人のサガというもの。
「今の本命ネームは、クリスか、セシルか、シャルルか、ルイか、ジークか、ラファ」
「……そういやお前さぁ、良かったわけ? 自分が転生者だってこと、オレに言っちゃって。」
こいつ、本気で聞く気が無いな。
せっかく披露していたのを遮って心配する所がそこか。
タスクみたいな、あからさまに普通の人じゃないと分かる相手に隠す必要も無いだろう。
そもそも俺は今世の記憶が無いんだ。
頼られないように正直に言っておく方が賢明だと思うぞ。
「あ? 何で黙ってなきゃならないわけ? 自分以上に怪しい登場の仕方をしてきた奴に? そっちだって自分の事、転移して来たって言っただろ。」
「だってオレ、見られてるも~ん。お前は黙ってりゃ分かんなかったじゃん。」
「今世の記憶無いのに頼られても困るからな。」
「じゃ、前世の名前でいいや。教えてくれよ。」
……もしかして。
俺が名前を考えるの、待つのに飽きているのか?
「今世の名前さ、考えんの、まだ掛かるんだろ? それはジックリ考えといてい~からさ、とりあえず前世の名前でいいから~。」
シャツをぐるんぐるん振り回しながら言うのを聞いて、俺は確信した。
そう言われると確かに、これから付き合いが長くなるだろう今世の名前だ。
実は俺も、じっくり考えたかったから。
「日本人の頃はキョウタと呼ばれていたが?」
「キョウタ? バリッバリの日本人だな、おい。」
「だ~からっ。今、俺に合う新しい名前を考えている所だってば。」
キョウタ、キョウタ……と、タスクが俺の名前を覚えようと繰り返している様子を見ていると。
何となくだが。
……これ、このまま。
キョウタ、で定着するパターンじゃないか?
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