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第一章
第2話 過ぎたるは及ばざるがごとし
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1時間目の授業は体育のバレーボールだった。
普段身体を動かさないから球技って苦手なんだよなあ……。
俺は自分と同じくらい運動神経が悪い一樹とペアを組んで、力を入れずにダラダラ喋りながらレシーブやトスの練習をしていた。
「聖也、この練習の後は試合をやるってよ」
「マジかー。試合の時はこっちにボールが飛んでこないで欲しいよな」
「だよなー」
「次、ペアで交代しながらスパイクの練習!! おい、そこの二人!! もっと真面目に練習しろ!!」
体育教師の田村が、気の抜けた練習をしている俺と一樹を見て怒鳴ってくる。
「あちゃー。田村に目を付けられたぞ」
「しょうがない、少し真面目にやるか。俺からスパイクするから一樹はレシーブを頼む」
俺がボールを軽く上に投げ、強くスパイクをした瞬間。
ボールが風船でも割れたかの様にパアン!! と音を立てて粉々に破裂した
「な、何だ!?」
一樹が驚きの声を上げる。
俺は飛び散ったボールの破片をただぼうぜんと眺めていた。
ボールが割れた?
いや違う、今のは……。
「おい聖也、大丈夫か!?」
一樹があまりの出来事に動けずにいた俺の身体を揺さぶる。
「あ、ああ…」
一樹に返事をしたが、心の平穏は取り戻せなかった。
血の気が引いているのが自分でも分かる。
「何だ? 今のでかい音」
ボールの破裂音を聞きつけて他の皆も集まってきた。
「え、これボール!? さっきのはボールが割れた音だったのか!?」
「マジか!! バレーボールってこんな粉々に割れるのかよ!?」
ボールの破片を見た生徒が騒ぎ始めてさらに人が集まり、騒ぎがどんどん大きくなってゆく。
「し、静かに!! 破れたボールを片付けたら試合を行う!! ここに固まっていないでグループごとにまとまれ!!」
ボールの破片を見た田村があっけにとられていたが、我に返って指示を出した。
「吉村、顔色が悪いが大丈夫か?」
青ざめている俺の顔を見て田村が声を掛けてくる。
「……すみません。気分が悪くなったので授業を見学にさせて下さい」
× × ×
授業の見学中、俺はバレーの試合もロクに目に入らず、ひたすら考え事をしていた。
さっきのはボールが割れたんじゃない。
俺がボールを割ったんだ。
俺がスパイクをした瞬間、ボールにもの凄い力が加わったのが確かに感じ取れた。
あの時はボールが破れてくれたからまだ良かったが、そうじゃなければ……。
あれだけの力だ、とんでもない勢いで一樹にボールが直撃しただろう。
そうなったら、良くて病院送り、最悪の場合は……。
そう考えただけで全身に悪寒が走る。
でもどうしてあんな桁外れの力を出せるようになった? 一体、何がきっかけでこんなことに……。
思い出した!!
セレスが俺を生き返させる時に『間違えた!!』って叫んでいた。
今まで何を間違えたのか分からなかったが、俺が常識外れな力を出せるようにしたのが間違いだったってことか!?
……それ以外考えられない。
異世界に行かないで生き返らせるだけなら、こんな能力を俺に与える必要なんてないからな。
この力ってずっと続くのか?
そうだとしたら、この力をまともに扱えるのか?
そもそも発動条件は何なんだ?
異世界にいるわけでもないのに俺は見知らぬ世界に放り込まれた気分になった。
× × ×
体育が終わった後、俺は突然能力が発動しやしないかとずっとビクビクしていたが、幸い能力は発動することなく無事昼休みを迎えた。
「ふー……」
弁当を食べ終わった後、俺は自販機で買ったジュースを飲み終えたところでようやく気分が落ち着いてきた。
そういえば、バレーボールをスパイクした瞬間にもの凄い力が出たけど、その前に一樹とダラダラ練習してた時は何ともなかったんだよな……。
でも何が発動条件に引っかかったんだ?
……ダメだ。考えてみても答えが出てこない!!
もどかしくなって、飲み終わったジュースの空き缶を握る手に思わず力が入る。
すると空き缶がグシャッと大きな音を立てた。
ん? 握っただけにしちゃ随分音が大きい気が……。
握りしめていた手を開いて空き缶を見てみると、握った部分が信じられないくらいの小ささに圧縮されていた。
「ひえっ!?」
思わず悲鳴がもれてしまい、慌てて口を閉じて辺りをうかがう。
幸い不審に思った生徒はいないようだった。
もしかして俺が強く力を入れた時に能力が発動するのか!?
1つの仮定が頭をよぎる。
よし、空き缶をゴミ箱に捨てる前に確かめてみよう。
俺は握りつぶした空き缶を隠しながら、人がいない屋上の階段まで移動した。
さて……。
人目が無くなったところで、空き缶のまだ潰れていない部分を今度は意識して強く握ってみる。するとさっきと同じく、握った部分が素手でやったとは思えない程の細さになった。
やっぱり考えた通り、強く力を入れると能力が発動するんだ!!
能力の発動条件が分かったことで、少しほっとした気分になるが、すぐに別の問題に気づいた。
……この力ってどうやったら加減できるんだ?
ひとまず、握り潰されてすっかり細くなった空き缶を押し潰すように、上下から少しづつ力を加えてみる。最初は空き缶に変化がなかったが、ある程度の力を入れたところで、一瞬で空き缶がぺしゃんこになった。
……ねえ、能力を2割とか、3割ぐらいに抑えて発動させることってできないの?
ゼロか10割にしかならないんだけど。
こんな状態で人の肩をつかんだりでもしたら、相手の肩を砕きかねないぞ。
――こんな能力をみんなが知ったら、俺を化け物扱いするんじゃないか?
ぞっとする考えが頭をよぎった。
いや、落ち着け。
要は能力が発動しないようにすればいいんだ。
そう、普段から力を入れずに行動して、体育の時だろうとそれを継続する。
そして不意の出来事にも注意しないといけない。
もし、つまづいた時にとっさに何かをつかんだりしたら、絶対に力が入って握り潰すだろう。これを防ぐには反射的に身体が動くのを意識して止めないとダメだ。
……これメッチャ難しくないか?
学校生活がいきなりハードモードに突入したぞ、オイ。
普段身体を動かさないから球技って苦手なんだよなあ……。
俺は自分と同じくらい運動神経が悪い一樹とペアを組んで、力を入れずにダラダラ喋りながらレシーブやトスの練習をしていた。
「聖也、この練習の後は試合をやるってよ」
「マジかー。試合の時はこっちにボールが飛んでこないで欲しいよな」
「だよなー」
「次、ペアで交代しながらスパイクの練習!! おい、そこの二人!! もっと真面目に練習しろ!!」
体育教師の田村が、気の抜けた練習をしている俺と一樹を見て怒鳴ってくる。
「あちゃー。田村に目を付けられたぞ」
「しょうがない、少し真面目にやるか。俺からスパイクするから一樹はレシーブを頼む」
俺がボールを軽く上に投げ、強くスパイクをした瞬間。
ボールが風船でも割れたかの様にパアン!! と音を立てて粉々に破裂した
「な、何だ!?」
一樹が驚きの声を上げる。
俺は飛び散ったボールの破片をただぼうぜんと眺めていた。
ボールが割れた?
いや違う、今のは……。
「おい聖也、大丈夫か!?」
一樹があまりの出来事に動けずにいた俺の身体を揺さぶる。
「あ、ああ…」
一樹に返事をしたが、心の平穏は取り戻せなかった。
血の気が引いているのが自分でも分かる。
「何だ? 今のでかい音」
ボールの破裂音を聞きつけて他の皆も集まってきた。
「え、これボール!? さっきのはボールが割れた音だったのか!?」
「マジか!! バレーボールってこんな粉々に割れるのかよ!?」
ボールの破片を見た生徒が騒ぎ始めてさらに人が集まり、騒ぎがどんどん大きくなってゆく。
「し、静かに!! 破れたボールを片付けたら試合を行う!! ここに固まっていないでグループごとにまとまれ!!」
ボールの破片を見た田村があっけにとられていたが、我に返って指示を出した。
「吉村、顔色が悪いが大丈夫か?」
青ざめている俺の顔を見て田村が声を掛けてくる。
「……すみません。気分が悪くなったので授業を見学にさせて下さい」
× × ×
授業の見学中、俺はバレーの試合もロクに目に入らず、ひたすら考え事をしていた。
さっきのはボールが割れたんじゃない。
俺がボールを割ったんだ。
俺がスパイクをした瞬間、ボールにもの凄い力が加わったのが確かに感じ取れた。
あの時はボールが破れてくれたからまだ良かったが、そうじゃなければ……。
あれだけの力だ、とんでもない勢いで一樹にボールが直撃しただろう。
そうなったら、良くて病院送り、最悪の場合は……。
そう考えただけで全身に悪寒が走る。
でもどうしてあんな桁外れの力を出せるようになった? 一体、何がきっかけでこんなことに……。
思い出した!!
セレスが俺を生き返させる時に『間違えた!!』って叫んでいた。
今まで何を間違えたのか分からなかったが、俺が常識外れな力を出せるようにしたのが間違いだったってことか!?
……それ以外考えられない。
異世界に行かないで生き返らせるだけなら、こんな能力を俺に与える必要なんてないからな。
この力ってずっと続くのか?
そうだとしたら、この力をまともに扱えるのか?
そもそも発動条件は何なんだ?
異世界にいるわけでもないのに俺は見知らぬ世界に放り込まれた気分になった。
× × ×
体育が終わった後、俺は突然能力が発動しやしないかとずっとビクビクしていたが、幸い能力は発動することなく無事昼休みを迎えた。
「ふー……」
弁当を食べ終わった後、俺は自販機で買ったジュースを飲み終えたところでようやく気分が落ち着いてきた。
そういえば、バレーボールをスパイクした瞬間にもの凄い力が出たけど、その前に一樹とダラダラ練習してた時は何ともなかったんだよな……。
でも何が発動条件に引っかかったんだ?
……ダメだ。考えてみても答えが出てこない!!
もどかしくなって、飲み終わったジュースの空き缶を握る手に思わず力が入る。
すると空き缶がグシャッと大きな音を立てた。
ん? 握っただけにしちゃ随分音が大きい気が……。
握りしめていた手を開いて空き缶を見てみると、握った部分が信じられないくらいの小ささに圧縮されていた。
「ひえっ!?」
思わず悲鳴がもれてしまい、慌てて口を閉じて辺りをうかがう。
幸い不審に思った生徒はいないようだった。
もしかして俺が強く力を入れた時に能力が発動するのか!?
1つの仮定が頭をよぎる。
よし、空き缶をゴミ箱に捨てる前に確かめてみよう。
俺は握りつぶした空き缶を隠しながら、人がいない屋上の階段まで移動した。
さて……。
人目が無くなったところで、空き缶のまだ潰れていない部分を今度は意識して強く握ってみる。するとさっきと同じく、握った部分が素手でやったとは思えない程の細さになった。
やっぱり考えた通り、強く力を入れると能力が発動するんだ!!
能力の発動条件が分かったことで、少しほっとした気分になるが、すぐに別の問題に気づいた。
……この力ってどうやったら加減できるんだ?
ひとまず、握り潰されてすっかり細くなった空き缶を押し潰すように、上下から少しづつ力を加えてみる。最初は空き缶に変化がなかったが、ある程度の力を入れたところで、一瞬で空き缶がぺしゃんこになった。
……ねえ、能力を2割とか、3割ぐらいに抑えて発動させることってできないの?
ゼロか10割にしかならないんだけど。
こんな状態で人の肩をつかんだりでもしたら、相手の肩を砕きかねないぞ。
――こんな能力をみんなが知ったら、俺を化け物扱いするんじゃないか?
ぞっとする考えが頭をよぎった。
いや、落ち着け。
要は能力が発動しないようにすればいいんだ。
そう、普段から力を入れずに行動して、体育の時だろうとそれを継続する。
そして不意の出来事にも注意しないといけない。
もし、つまづいた時にとっさに何かをつかんだりしたら、絶対に力が入って握り潰すだろう。これを防ぐには反射的に身体が動くのを意識して止めないとダメだ。
……これメッチャ難しくないか?
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