古の巫女の物語

葛葉

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第三章

1話

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 夏休み中盤に差し掛かり、今日も今日とて凰鳴神社に行き、修業をしてきた光留は、家に帰るなりベッドに倒れ込んだ。
「あー、つっかれたー」
『みっちゃん、だらしなさ過ぎー』
「うるせえ。お前は暑さ感じてないからいいんだろうけど」
『えへへ、暑さ寒さを感じないのって、結構快適だよね~』
 勝ち誇ったように言う朱華に、光留はイラっとしたが相手は数十年も前に死んでいる。何を言ったところで気候に対しては生死関係なく、誰にもどうにもできないのだから、言うだけ無駄である。
「あっそう。とりあえず俺は寝る。夕飯になったら起こしてくれ……」
『いいけど、たまにはときちゃんのお手伝いしなよ~』
「気が向いたらな」
 そういうと光留は目を閉じて、すぐに寝息を立て始めた。
『んもう。ほんと男の子って……。あら? この気配……、みっちゃん?』
 光留の魂が唯――凰花の実兄である月夜の生まれ変わりであることは既に朱華も光留自身も知っていることだが、今まで彼の記憶は夢という形で受け取っていた。
 もともと光留の魂は彼が生まれた時から厚い壁のようなもので覆われていた。それが月夜の人格や記憶、霊力といったものを抑え込んでいたのだが、彼の実妹であり、恋人であった凰花――鳳凰唯と出会うことにより綻びが生じた。それにより光留は夢という形で月夜の生涯を垣間見ていたが、彼の人格が出てくることは今まで一度もなかった。
 無論、光留自身、彼の人格に乗っ取られる可能性を考えなかったわけではない。けれど、唯が望むなら、月夜に身体を渡してもいいとも思っていた。しかし当の唯がそれを拒んだ。
 月夜も自分も、結末はどうであれ、当の昔に死んでいるはずの人間で、現代を生きる光留がそれを背負う必要はないと。
 それから光留はそのことについて口にすることはなかったが、修業を始めて以降再び月夜の記憶を夢で見るようになっていた。それどころか、白昼夢で見ることもあるとか。
『月夜様の、気配――?』
 朱華は月夜についてほとんど知らない。唯の話を聞く限り、とても優しい良いお兄さんという印象だが、客観的に見れば妹に手を出したヤバいお兄さんだ。
 それでも、本人たちにとっては互いに互いを必要とした、生涯ただ一人と決めた相手。千年経っても褪せることのない恋心。
 朱華には羨ましくて妬ましい。望んでももう手に入らないもの。
 二人が再び愛し愛されるのを想像して、嫉妬で気が狂いそうだ。
『ダメだよ、月夜様は、もう目覚めちゃ……。みっちゃんは渡さない』
 朱華は光留の額に手を添えるが、突如パチッと手がはじかれる。
『きゃっ!』
 忘れそうになっていたが、光留の潜在能力は朱華以上なのだ。これは、本格的にヤバいものに手を出したのかもしれない。
『そもそも、月夜様って……』
 考え方が神様に近いのだろう。古代の人間であれば不思議ではないのだろうが、同母兄弟姉妹の婚姻は認められない中でも幼い頃から妹に執着し、成長した後は凰花を孕ませるほど深く愛した。霊力が異常に高いのも、もしかしたらと朱華は思う。
『神様の、生まれ変わり……?』
 日本に住む神様は八百万と言われるほど数が多い。人間に生まれ変わった神様の話もそこかしこに転がっている。不思議なことではない。そう考えれば納得する。けれど。
『みっちゃんに勝ち目無いんじゃ……』
 朱華の青白い顔が真っ白になる。
 光留の様子を見ると苦し気な表情を浮かべていた。



 ――息が、苦しい……。
 喉を抑えられているような息苦しさに光留はうっすら目を開けると、無表情の自分そっくりの男が光留に乗り上げ、首を絞めていた。
「なっ……!」
 光留はそれがすぐに誰かわかった。名前を呼ぼうとすると締め上げる力が強くなる。
「ぅぐっ……」
「貴様ごときが、俺の名を呼ぶな」
 光留と同じ声で拒絶する。
「よくも、よくも俺の可愛い巫女姫を殺したな」
 いや、死んでないし……とは口が裂けても言えない。彼女が死んで無いのは彼――月夜にもわかっているが、そもそものところ唯が傷ついたことが許せないのだろう。守り切れない非力な光留ごと。
 気持ちはわかるが、だからと言って「はいそうですか」と殺されてやるわけにはいかない。
 話し合おうにも月夜は本気だ。
「っ、ぎぶ、ギブっ……!」
 光留が月夜の手を叩くが、当然力など入らない。逆に月夜の方は光留の首の骨を折ろうとさらに力を込めてくる。
 部活にも入っていない現代っ子の光留と、凰花を守る為に鍛えていた月夜では力の差がありすぎる。
 悲しいかな、どう足掻いたって自分は月夜には勝てない。わかりきっている。
 いっそ諦めて、このまま月夜に全て渡してしまえばいいのではないだろうか。
 そうすれば唯は想い人に逢えるし、月夜が本来の守り人として唯を――凰花を守る。あの悲痛な叫びを聞くこともなくなる。自分もこれ以上傷つかなくてすむ。
「ほう、いい心がけだ。なら、望み通り殺してやる」
 光留が諦めた時、不意に月夜の力が弱まった。
「ひゅっ、げほっ、げほっ……かはっ、はっ、は、はぁ……はぁ……な、んで……」
 月夜は忌々しげに自分の手を見る。
「なるほど。小僧、命拾いしたな。まだ枷が外れない故に、貴様を殺し損ねた」
 嬉しくはないが、一応助かったようだ。光留が周りから散々壁だか枷がどうのと言われていたが、本当に月夜から光留を守る為の物だったらしい。
 しかし、これで終わりだとは思っていない。
「今回は、だろ。あんたがここまで来てるなら、俺の役目はそろそろ終わりだろうし……」
「当然だ。俺の可愛い巫女姫を守るのは、俺だけの役目だ」
「知ってる」
 夢の中でも散々見せつけられたのだ。光留の恋は最初から叶わない。
「んで、そこまで力付けてんなら俺が消されるのも時間の問題だとして、何で焦って今出てきた?」
 月夜は相変わらず無表情で光留と視線を合わせない。
 夢で見ていた時との表情の落差が激しいが、彼の関心は終始凰花に向けられている。他はどうでもいいのだろう。
「意外と頭が回るようだな」
「そりゃどうも」
 しかし、凰花の事となれば話は別だ。今まで沈黙していたのは、十分な力が解放されていなかったのが理由だとしても、不完全な状態でも出てきたことに理由はあるはずだ。
「この間お前たちが遭遇した落神」
 先日、月夜の墓参りの帰りに遭遇した落神の群れ。ほぼすべてを唯が何度か死と再生を繰り返して撃退したが、一体だけ取り逃がした。
「あの幻覚見せる奴か?」
「あぁ。あれ自体はさほど強くはない。彼女が万全な状態ならまず負けることはない」
 あの時、唯は普通の人間なら即死レベルの致命傷を負っていた。しかし、不老不死という呪いのせいで死ぬことが出来ない。痛覚を残したまま、死と再生を繰り返せば心を壊したとしても不思議はない。唯も、痛みに泣いていた。
 弱っていたこともそうだが、落神は幻聴で月夜の声を唯に聞かせ、幻覚で自身を月夜に見せ、光留を殺そうとしたが、唯は巫女だ。どれほど弱っていても落神との区別はつく。無理心中まがいの事をしてでも倒そうとする。
 炎の中で自分と月夜の姿をした落神を殺そうとする唯の姿に、光留は自分の無力さを呪った。
 もしもあの場に月夜がいれば、きっと唯にあんな無茶はさせなかっただろう。
「そもそも、俺があの場にいれば、俺の可愛い巫女姫に傷を負わせることすらさせないがな」
「うっ……」
 思考を読まれ、光留は改めて自分の無力さを思い知る。
「とはいえ、あんな風にしてしまったのは俺だからな」
「……なんでそんなに嬉しそうなんだよ」
 好いた女が傷ついていて喜ぶ悪趣味さはなかったはずだが。と光留は怪訝そうに月夜を見る。
「好いた女だからこそ、だな。あれだけ執着されて喜ばない男はいないだろう」
 反論したいが、否定できない自分もいて光留はため息を吐く。
「はいはい。それで、あの落神がなんだって?」
「貴様の事だから気付いていないだろうと思って忠告してやる」
 随分と親切だな、と光留が思うと忌々しげに睨まれた。
「俺が出てもいいが、拗れるだろうからな。娘とは難しい……」
「は? どういう……」
 娘……? と光留は首を傾げる。否、心当たりがあった。
 月夜と凰花の間には娘が一人いた。月夜は子供が生まれる前に死んでいるし、凰花も出産後すぐに引き離されたと言われている。
 とはいえ、二人の関係がバレるきっかけとなったのが凰花の妊娠だ。子供の存在を知らないはずがない。
「娘って、まさかその娘も不老不死とか言わないよな……?」
「いや。あの娘は普通の人間の娘だ。此度の転生で……はて、何度目だったか……」
「知らないのかよ……」
「俺とて、かつて神の一端だとは言え全知全能というわけではない。そもそも、神に戻りたいとも思わないがな」
 光留は夢の中だというのに頭が痛くなってきた。
「何それ、俺の魂、大昔は神様だってこと? うわ、知りたくなかった……」
「そんなことはどうでもいい。それよりも問題なのは、あの落神は、俺たちの娘の加護を受けていることだ。アレも当然知っているだろう」
「加護……。つまり、巫女に守られた落神ってこと?」
「そうだ。母娘で巫女になること自体は珍しくないが、あの娘は、俺の可愛い巫女姫とは相性が悪い。そもそも、俺の可愛い巫女姫を殺す権利をあの娘だけが持っているのがおかしい」
「え……。鳳凰は、不老不死じゃないのか?」
「不老不死といっても呪いだ。神のかけた強力な呪いではあるが、ただの人間の娘である彼女が受けるにしては大きすぎる故に、完全なものではない。高位の神には無い痛覚なんてものが残っているのがいい証拠だ」
 体質や能力的なものである不老不死は痛覚が鈍くなるものらしい。そして、呪いであるがゆえに弱点も存在する。
「ってことは、鳳凰を殺すことができるのは、二人の娘の魂をもつ人間だけ。あんたは持ってないの? 元神様だろ」
「できるならとっくに俺が連れて逝っている。だが、鳳凰は俺よりも格上だ。外ツ国の神でありながら忌々しい……」
「まぁ、そうだよな……」
 月夜は周りが思っている以上に嫉妬深い。凰花に縁談話が来るたびにそのことごとくを潰してきた男だ。
 神にも嫉妬するし、彼女のモノが何一つ手に入らないのは我慢ならないのだろう。
 愛しているから、すべてを奪いつくしたい。なるほど、神らしい思考だと光留は呆れを通り越して感心すらする。
「でも、あの落神自身が鳳凰を殺せるわけじゃないんだろ?」
「当然だ。あと、俺の女をその名で呼ぶな。あれは俺の花だ」
「ほんとめんどくさいな、あんた……」
 唯はこんなめんどくさい男のどこが良かったんだろう……と光留はちょっと切なくなる。
「えっと、じゃあ……唯……さんは、その娘に狙われているってこと?」
「そう言っている。……娘を思えば殺されてもいいと思っているだろう。だが、自分を殺せば娘の魂は罪を背負う。俺の可愛い巫女姫は、それを良しとしないから逃げ回っている。此度もそうするつもりだろうが、それでは娘の魂が救われないし、そのうち本当に壊れる。それは、巫女にとって望ましくないし、彼女らの矜持を傷つける」
 誰も報われないことを、高潔な彼女たちが望むとは思えない。だが、唯が死んでも生き残っても、誰も傷つかないという未来はない。
 どうにもならない、八方塞がりだ。
 そんな状況を打開できる策を、残念ながら光留は持ち合わせていない。
「で、俺にどうしろって?」
 どうせ早く死ねとかそういう話だろうと、光留は投げやりに月夜に聞く。
 月夜はにんまりと不敵に笑う。
「お前が俺たちの娘――揚羽の守り人になればいい」
「は?」
 思わぬ展開に光留は目を見開く。
「その為に俺が出てきたのだから。最も、さっさと枷が壊れるか、お前が死ぬか、あるいはもっと早くアレの守り人になっていればこんな手の込んだことをしなくて済んだのだがな」
 皮肉を込めて言われると、光留には言い返す術はない。
 月夜の言うことはもっともで、光留がもっと早く守り人について知って、彼女の守り人になれていれば、唯が傷つくところを見なくて済んだのだから。
「あちらは俺がまだ寝ていると思っているだろう。守り人のいない今が好機だと思っているだろうし、狙われるとしたらお前だ。そこにつけ込めば簡単に守り人になれるだろうよ」
「でも、俺の魂は唯、さんに紐づいていて、彼女の守り人以外になれないって……」
「厳密には俺の魂と紐づいている。お前の霊力は俺から零れ落ちたものに過ぎない。それでもただの人間には有り余るだろうが、まぁ問題はあるまい。揚羽なら上手く乗りこなせるだろう。何せ俺たちの娘だからな」
 上から目線な上に謎のマウントを取られ、さらに自分と同じ顔しているというだけで正直腹立たしいが、全て事実だ。
 言い返すのも面倒になるほどに。
「それに、俺たちの娘である以上多少なりともお前ともつながりが出来ている。揚羽の守り人であれば魂の制約もそれほど影響は受けない」
「まぁ、そういうことなら……」
「その後揚羽には俺の可愛い巫女姫を殺してもらう」
「え……」
 月夜は艶然と微笑む。
「俺はお前と離れ、俺の可愛い巫女姫と共に逝く。揚羽の受ける罪はお前が肩代わりすることになるが、守り人とはそう言う者だ。なんの憂いも無いだろう」
 確かに、月夜の言う方法であれば、唯は不老不死という呪いから解放され、愛する月夜と共に神の世界に行く。その後はどうなるのかまでは光留にはわからないが、彼女の未練である娘の罪も光留が肩代わりすれば少なくとも二人の娘は守られることになるし、光留も月夜という爆弾から解放される。傷の浅いうちに普通の生活に戻れる。
 彼女の言う過去の決別と未来への道が拓かれる。
(あぁ、本当に、この人は彼女の事を愛しているんだな……)
 月夜であればもっと強引に事を運ぶことも出来ただろう。でも、最愛の女性の幸せを一番に考えての選択。本当なら、もっと早く光留から身体を奪うことも出来たはずなのに、今まで何もしなかったのは彼女の為だったのだろう。
 光留にはそこまでの覚悟は、恐らくない。悔しいけれど、想いの深さが違う。
「わかった。その、揚羽? って今どこにいる?」
「さぁな。そこまでは知らん。だが、近いうちに向こうから接触してくるだろう。なにせ揚羽には守り人がいない。そんなときに魂に傷がつくような危険は犯したくないだろう。何より、彼女に釣り合う守り人は俺くらいだろうからな」
「あっそう……。てか、あんた一応揚羽の父親だろう。娘が心配じゃないのか?」
「心配……まぁ、気にかけてはいるが、俺が優先すべきは俺の巫女姫だけだ。どちらを優先するかなど決まっている」
 それにしたって、娘に母殺しを画策する父親とは何とも薄情だ。
「神とは皆薄情だ。一つに固執すれば相手は不幸になる。巫女とは神に捧げられた生贄に過ぎない」
 月夜はサラッと答える。けれど、それは月夜にも当てはまる。
「俺が神だった前世を思い出したのは、俺が死んだ後だ。俺の可愛い巫女姫は知らない。知らなくていい」
 神に仕えることを誇りにしていた凰花が、最愛の月夜までも前世は神だと知れば、きっと心を揺らす。迷って迷って、それでも自身が仕えてきた神を裏切れない。代わりに月夜を裏切ってしまうことに傷つく。
 そうなる前に、あの神から彼女を攫わなくてはならない。
 彼女の死は、そのための布石だ。
 そして、月夜にはもう一つ秘めているものがある。
「なぁ、ずっと唯……さんのこと名前で呼ばないのは何で?」
 これは、光留の純粋な疑問だった。
 生前から月夜は「俺の可愛い巫女姫」と凰花の事を呼んでいたが、主祭神である鳳凰から貰った名前もちゃんと呼んでいた。しかしこの場にきて、彼女の名前を一度も口にしていない。
「貴様が知る必要ないものだからだ。それに、俺以外の男が俺の女の名を呼ぶなど虫唾が走る」
 心狭すぎだろ……と、光留は思ったが口には出さない。出さなくても伝わっているし、月夜にはその程度の悪態は響かない。
「さて、そろそろ頃合いだな。……もう一つ、貴様に忠告してやる」
「何?」
「朱華とかいう小娘に気をつけろ。あれは、女として俺の可愛い巫女姫に嫉妬している。先ほど、俺を強制的に眠らせようとしてきたから弾き飛ばしておいた。まぁ、あの程度で俺の可愛い巫女姫に何かできるとは思っていないが、あの小娘を友と呼んで気にかけていたようだからな」
 光留にとって朱華はちょっとお茶目で口うるさい幽霊だが、巫女や守り人の事を教えてくれる人生の先達でもある。
 最初に出会ったときから唯の事をお友達と呼んでいた朱華。実際二人の仲は同性の友達として良好な方だ。
 しかし、月夜の話が本当なら、何か彼女の心に変化があったのかもしれない。
「わかった。気を付けてみる」
「ふん、俺は貴様が死のうが全く困らないがな。それと、俺がこの話をしたことは俺の可愛い巫女姫には黙っておけよ」
 父親が娘に母殺しをさせようとしているなんて、とてもではないが言えるはずがない。
 光留も、唯の守り人になると言いながら、月夜の案が最善だとそう思ってしまった。彼女を裏切る行為に等しいことを、これからしなければならない。
「……言えるわけないだろ」
「その心がけに免じて、俺の女に口吸いしたことは目を瞑ってやる」
「なっ、見てたのか!」
 そもそもこの夢の世界で最初に殺されそうになった理由が、あの時の出来事だったのだから見ていても不思議ではないのだが、勢いに任せていたとはいえ、何とも恥ずかしい真似をしたものだと、後になって頭を抱えた。
 月夜は初心な光留を見て嘲笑する。
「その場で殺してやろうかとも思ったけどな。今ほど枷が緩くなかったゆえに手が出せなかっただけだ」
 それは本当だ。あの出来事から既に二週間近く経っているが、その間光留が無事だったのがその証拠だ。
「ではな、また必要があれば呼びだそう」
 主導権は完全に月夜だ。今生を生きているのは光留なのに、それほどまでに月夜の力は強いのだろう。
 光留が素直に頷けば、ふっと意識が落ちた。
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