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番外編
花月③
しおりを挟む僕達の交際は、一見順調に見えるけど、ひとつだけ問題があった。
光留君に起きている問題は、僕達にとって死活問題ともいえる。
「光留君、霊力の制御を出来るようにしましょう!」
光留君はきょとんとした後首を傾げる。可愛い。
「そりゃ、俺も考えてるけど……」
「お2人のことは聞いてますし、霊力の流れを見ていればだいたいわかります。今まで月夜様が抑えられていたのは、光留君ともともと魂が同じで相性が良かったのはもちろんそうですが、以前ならともかく、今の月夜様レベルなら本来であれば制御不可能なんです。今のままなら……厳しいことを言えば持ってあと5年です……」
捲し立てるように言えば、光留君は少し考え込むように唇に指を添えた。
「5年……まあ、そんなもんか……」
「光留君?」
「小さい頃からこんなんだから、長生きできないだろうな、っていうのはわかってた」
光留君は何処か諦めたように笑う。
「2人が俺の事考えていろいろしてくれてるのもわかってるし、ありがたいと思ってる」
それは本当なのだろう。
でも、光留君にとって今の状態はつらいはず。
優しい彼は、僕らが迷惑に思ってるんじゃないかって考えるはず。
「だからこそ、です! 光留君に死なれたら僕が困ります。また、“私”の目の前で大切な人がいなくなる瞬間をみろっていうんですか?」
光留君はハッとしたように俯く。
「僕だけじゃない。月夜様にも同じ思いをさせるんですか?」
卑怯な言い方なのはわかってる。
でも、彼にはこういった方が効果的なはず。伊達に千年分の記憶を引き継いでいるわけじゃないんだから!
「…………ごめん」
「謝るくらいなら練習しましょう。僕が師事しましすし、前世ほどではありませんが、僕の霊力は月夜様よりもずっと高いんです。失敗しても、僕が責任持ってお世話しますし!」
「? お世話って……」
「んふふ……もちろん、こっちの方です」
光留君の太腿を撫でると、彼は顔を真っ赤にしてさっと足を閉じた。
「っ、お前なぁ……」
「光留君だって嫌じゃないでしょう? 僕と光留君なら、どっちも出来ますし」
光留君はジト目で僕を見る。
「なんか、花月変わったな……」
“槻夜”君だった彼から見れば、確かに僕は変わったように見えるのだろう。
前の僕は、どちらかというと彼を遠ざけたかったけれど、今は押せ押せ状態。
引いていたら光留君はきっと遠慮してしまうし、何より僕らは3人で恋人同士だけど、3人ともそれぞれ向けている恋愛感情が違う。
多分、光留君の比重は、前ならともかく今は――。
「今は、“前”みたいなしがらみがありませんから、自分の気持ちに素直になっているだけです。言ったでしょう? 僕は光留君と月夜様、どちらか選べないって」
「月夜の為じゃなく?」
「そういうこと言うお口はこうです!」
光留君の頬を抓ると、思ったよりもちもちすべすべ肌に僕はびっくりする。
「光留君……美魔女ですね……」
「は? ひょ、はふき!」
むにむにと伸ばしてみると良く伸びる。これはずっと撫でていたくなる感触。月夜様でもこんなに伸びないのに!
思う存分光留君の頬を摘まんで撫でまわすと、光留君の目が据わる。
さすがに、あ、まずいと思って渋々離す。
「うう……女の僕が欲しかったものを光留君が持ってるなんて……」
「知らねえよ。てか、男に美魔女って言葉可笑しいだろうが」
「いえいえ、間違ってないです。お2人ともとてもモテるでしょう」
「月夜ならともかく、俺はそこまでじゃない」
不貞腐れたような光留君の表情。確かに、光留君は僕達の前ならそれなりに笑うけど、基本仏頂面。
前世とはまた違うけれど、中性的な綺麗な顔をしているおかげで、そこがクールでミステリアスだと図書館にいた女の子に聞いたことがある。
「……確かに、近寄り難さはあるかもです」
「ま、そういうこと。てか、話しがだいぶ脱線したな」
「そうでした」
光留君の美貌と美肌について考えていたらきっと悔しさのあまり光留君を虐めて鳴かせて喘がせて、悦ばせてしまう。
「とにかく、霊力制御の練習をしましょう! 制御できるようになれば健康にもなれますし、寿命も5年と言わず、数十年伸ばせます」
光留君に迫れば、光留君は「うっ」と仰け反る。
心なしか顔が赤い。ふふふ、光留君が僕の顔好きなの、ちゃんと知ってるんですからね!
利用できるものは最大限利用する。
前世で学んだことのひとつだ。
「……はぁ、花月には敵わないな」
光留君はそう言って苦笑する。
「俺も、自力で霊力制御は出来たほうがいいって前から思ってたし。外で倒れるのは嫌だからな。花月先生、よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
こうして週3回、光留君達のマンションか、僕の家に来るのが習慣となった。
光留君の霊力は魂の分裂により、制御する力を失った事で循環・発散出来ない状態だ。
月夜様も同じ状態ではあるものの、彼の場合は魂の傷自体が少ないことと、前々世の経験と記憶によって正常な状態にしている。
……本当は、光留君の分まで引き受ける余力はないはずだけれど、もともと同じ魂だったことから魂が自分のものだと誤認させているのだろう。
追いつかない分は性欲として発散させることで、少ない霊力でありながら光留君の過多状態を抑えていた。
(さすが月夜様だ。昔からあの方は繊細な霊力の扱いが上手かったな……)
光留君にもその記憶が引き継がれればよかったのだろうけど、そう都合よくはいかない。
今の僕は、光留君の霊力すべてを制御しきるのは不可能。
けれど、生存確率を上げる程度の制御は出来る。
留めるのは彼が生きるうえで必要な最小の霊力でいい。制御しきれなかった分は性欲に変換させて外に出す。
光留君に覚えてもらうのはこのふたつだけ。
それでも暴走する霊力は、僕が抑え込む。
それを繰り返していけば、いずれ身体が自然にやり方を覚える。根本的な解決にはならないけど、少なくとも死に直結するような発熱頻度は減るはずだ。
――少しでも長く、光留君達と生きるために、僕は僕にできることをする。
密かな決意を胸に、光留君と霊力制御の修業をすること数カ月。
まさかこんなことになってしまうのは想定外だった。
(光留君のおちんちんが、ない……)
「光留君、君、いつ去勢したんですか?」
僕はそんな重大なこと聞いてないっ!
……と、叱ろうとしたら本人も知らなかったのか、自身の下半身を見て卒倒しかけていた。
よくよく視れば霊力がお腹から下にかけて集中している。
(これは、もしかして……)
こんな現象は初めて見る。だけど、光留君の霊力の高さと、僕の陰の気と、彼らがもともと神様だったことを考えるとあり得るのかもしれない。
男性器の代わりに女性器が現れ、子宮が形成されるなんて……。
これは一時的なものだろう。
いくらドМの光留君でも、流石に男の象徴を失うなんて惨事は避けたいはずだ。
けど、もしも光留君がいいと言えば、僕は迷わず光留君を孕ませたい。
子どもがいれば、光留君の寂しさも少しは埋まるかもしれないし、何より今にも消えてしまいそうな彼を繋ぎ止めるための枷になる。
(酷い彼氏だな、僕は……)
でも、月夜様も同じ気持ちのはずだ。
僕らが最優先にしたいのは光留君で、彼と一緒に幸せになりたいのだ。
ま、それはそれとして、一時的な現象なら尚更この状況を楽しみたい。
光留君の顔もいやらしく蕩けている。
前世で女の子だったから、女の子の良い所は分かるつもりだ。
まさか光留君の処女を貰えるなんて!
男の子の処女はとっくに月夜様のものだったし、童貞は貰ったけど、やっぱり女の子のハジメテは特別だ。
「ああああっ!!」
光留君の気持ちよさそうな嬌声が可愛くて興奮する。
(というか、女の子のナカってこんなに気持ちいいんだ……!)
霊力が発散されているせいか、ナカはぐずぐずに蕩けてふわふわで、それでいてきゅうきゅうと締め付けてくる。
アナルは勝手には濡れないけど、こっちはどんどん蜜が溢れてて、僕のが奥へと簡単に入ってく。
「可愛い、光留君。好き……大好き……」
耳元で囁けば、きゅんきゅんとナカが吸い付いてくる。
堪らない。
このまま孕んでしまえばいいのに……。
月夜様が大学から帰ってきた後も3人で楽しんで、翌朝には戻ってしまったけれど今回の感覚は覚えたから、再現はできる。
もちろん、光留君や月夜様が望むのなら、だけど。
けれど、光留君を孕ませるのは月夜様にとってはトラウマに触れるようなものだったのだろう。
光留君の許可が下りて、月夜様も同意したのに、光留君に女性器と子宮がなかなか定着しない。
原因は、月夜様にあると光留君に教えられたのは、僕が運転免許の合宿に言っていた時だった。
「やっぱり、“月夜”様は後悔してるのかな……」
彼は前世で“私”と“私達の間に出来た子供”を守る為に、自ら悪役を演じて処刑された。
それで終わるはずだったのに、希望を失った“私”は自殺しようとして、神様から不老不死にされた。それから千年以上もの長い時を生きることになった。
そのことで彼を恨んだことはない。むしろ罪悪感しかなかった。
――私を愛さなければ、彼が死ぬことはなかった。
私達の娘に、親殺しの罪を犯させることもなかったし、槻夜君も、死ぬことはなかった。
今とは違った人生を歩めたはずだ。
月夜様は、今も自分を責めているのだろう。
元々とても優しい人だ。人に尽くすのが好きで、次期長として村の仕事を率先してやるくらい。処刑されるまで彼は、村人たちからとても慕われていた。大好きで、自慢の兄だった。
今でもあの頃を思い出すと胸が切なくなる。
でも、今の彼は“羽宮月夜”であって、”月夜”様じゃない。もう自分を責める必要はないのに、彼はまだ自分を許せないのだろう。
僕も光留君も、何度も彼を諭しているのに、彼にはまだ響かない。
だから、光留君の本当の気持ちにも向き合えないし、光留君自身もまだ、自分と向き合えていない。
「もどかしい。あの2人は本当に不器用だな。……ていうか、なんで僕がこんなに悩んでるんだ?」
月夜様が光留君に施した術を解除している理由は分かった。もちろん、今の僕であれば霊力の少ない月夜様の術をねじ伏せて強引に事を進められる。
でも、それは出来ない。
光留君自身が月夜様の気持ちを受け入れて、術を解いてしまっているから。
2人の絆が強いのは知ってたし、光留君が僕を好きだというのも嘘じゃないのだろう。
こういう時に思い知らされる。
何故、あの時“彼”の気持ちを受け入れてやれなかったのだろう……。
「“私”が素直に、“槻夜”君が好きって言えたら、彼は見てくれたのかな……」
光留君は恐らく、僕よりも月夜様の方が好きだ。
本人は否定するけどそれは多分、兄弟としての倫理観や道徳観からではなく、月夜様の気持ちがまだ現在に追いついていないから。
いつか光留君自身はちゃんと答えを出す。
ちゃんと、僕に恋をしたうえで、それ以上に月夜様を愛している。
月夜様も同じだ。
僕のことも大事だと言ってくれるけれど、多分月夜様も無意識下では光留君への気持ちが強い。
もともとひとつだった2人は、元兄妹だった僕よりも繋がりが強く、本能や魂がお互いを求めるのだろう。
不完全な形を元に戻そうとという自然の摂理。
それは本人達にしかわからない感覚で、傍目には双子の兄弟である2人の関係は、他者には異常に見える。
僕に抵抗がないのは、前世で実兄と恋仲にあったから。自分達がどれほど純愛を貫いても、それは周りには受け入れがたく、不安や辛さは分かるつもりだ。
「まあ、ぶっちゃけ僕の方が間男なんだよなぁ」
しかも本人達は無自覚だし、だからといって僕から身を引くなんてことも出来ない。
僕だって、2人が好きなんだから――。
「あーあ、やっぱりもっと早く出会えてたらなぁ……」
今更過去を振り返っても仕方ない。
そうとわかってても妬いてしまうのは、僕が2人を好きだから手放したくない。
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