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エピローグ
第三十八話
しおりを挟む「うぅ……気持ち悪……」
花月が光留の腹に魂の揺らぎを見たのは、家族4人が揃った時だった。
「……光留君、妊娠検査薬です」
花月に渡されたそれ。光留も月夜もなんとなくそんな気はしていたが、花月が自信を持って渡してきた、ということは、そういうことなのだろう。
「花月の能力ってこういう時便利だよな」
ちょっと確認する、と言いながら光留はトイレに行き、しばらくすると戻ってきた。
「うん、してた」
月夜と花月の表情が徐々に上気する。
「っ、やりましたね光留君!」
「なら、早いうちに病院に行ったほうが早いな」
2人の興奮具合に、花月留が首を傾げる。
「何をしたの?」
花月が花月留を抱き上げる。
「花月留君の弟か妹が出来るんです!」
それを聞いた花月留は一瞬意味が分からなかったが、ゆっくりと言葉を飲み込んで、顔を輝かせる。
「ほんと? 僕に姉弟が出来るの!?」
「ああ。だが、まだ安定しないから、確かめる為に病院に行くんだ」
「僕も一緒に行っていい?」
「もちろん」
「やったぁ!」
花月留が大喜びする横で、光留は月夜と並ぶ。
「多分お前の子だよ」
「だろうな」
花月留を妊娠した時は、医者も首を傾げたほどありえない現象だと言われたが、出来てしまったものは仕方ない。光留の身体の状態も下半身だけが女性である以外は至って元気で、その事に誰よりも安堵していたのは月夜だった。
それから光留と花月の間に花月留が産まれ、そろそろ彼女の弟か妹を作ろうか、という話になったのは3年程前。
「……なぜ泣く」
気が付けば光留がポロポロと泣いていた。
「そりゃ、嬉しいからな」
花月が確信を持って、妊娠検査薬を渡してきたから、病院でも妊娠は確定だろう。
「やっと、やっと2人に恩返しが出来るんだ。月夜と花月がいてくれたから、俺は転生出来て、こんなに幸せにしてもらって……」
前世で月夜に一緒に死んでくれ、と言われた時、何の後悔も未練もないと言えば嘘になる。選択そのものは自分で納得して決めたことだから、月夜達を恨んだことも、憎んだこともない。
だけど、転生出来たのは、間違いなく2人が望んでくれたから。その事に気づいたのは花月に出会ってからだけど、ずっと、感謝していた。
だから、家族をつくる、という恩返しが出来ることが、無性に嬉しい。
「光留がいなければ、俺は月花とも会うことはなかった。感謝するのは、俺の方だ。お前がいてくれて良かった。これからは5人で、な?」
「っ、うん!」
きっと、来世は3人とも記憶はない。
だけど、もう一度出会う奇跡を起こせたら――。
「俺、こんなに幸せでいいのかな……?」
「良いに決まってます!」
「そうだ。でなければ意味がない」
「ありがとう、2人とも……」
ずっと、ずっと一緒に……。
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