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今の幸せをこの先も、来世も、ずっと
第三十二話 ※
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光留はホテルの一室で、持ち込んだ仕事道具であるノートパソコンとにらめっこをしていた。
「うーん、こっちの展開は王道すぎるか? でも変に変えると2人の関係拗れるからな……。とりあえず、両方書いておくか……」
後から見直した時に自然に見える流れを採用すればいいし、それでも悩んだら担当編集に相談しようと光留はひとまず気の向くままに書き進めた。
家で執筆活動は出来るが、今回のテーマである「ボーイズラブ」は光留達にとって現在とても繊細な問題である。
作品と現実を切り離して考えたかった光留は、執筆活動に集中するために家を出たが、正解だったと思う。
「はぁ……一応目処はついたけど、セックスの描写……なんか物足りない……?」
普段から男同士で近親相姦、3P、潮吹き、首絞め、SMとアブノーマルなプレイをしているせいか普通のプレイがわからなくなっている。
いや、今更ピュアなセックスをしたところで光留の身体は満足出来ない。手遅れである。
しかし、ボーイズラブはわりとストーリー重視で読まれるし、官能小説ではないのであっさりとしている方がいいのかも、と光留は思い直す。
(あ、ヤバ……)
セックスシーンを書きながら、いつも自分たちがするセックスを思い出したら、身体がずくりと疼いた。
ホテルに籠もって数日。家にいる時は3日と経たずにどちらかに相手してもらっていたせいか、欲求不満に陥っている。
自分で書いた文章を読み直しながら、光留の手は自身の陰茎に触れていた。
「は、ぁっ……ッ……」
自分で慰めるなんていつ以来だろうか。
自分の文章では先走りがわずかに溢れるばかりで、全然気持ち良くない。
「ん、ぅ……ふっ……」
アナルは慣らさなくても指一本は簡単に入るけれど、自分の指では思った場所に届かない。
おかしい。月夜との身長差は2センチ。体格も大きく離れていないはずだ。なのに前立腺に届かない。半ば意地になってナカを搔き回してみるが、濡れていないせいか引き攣った痛みにしかならない。
仕方ない、と光留は自身の先走りで濡れた指を口に含んで唾液で濡らす。
「ふぁ……ぁ、ん……おぇ……んぐ……」
二本の指を奥まで突っ込んで、指で舌を擽るとゾクゾクした。
口のナカを熱い肉棒で突かれるのを想像すれば、腹の奥がずんっと重くなる。
気持ちいい……、けど物足りない。
光留は、渋々口から指を抜いてアナルに再び入れる。
くちゅくちゅと水音がして、さっきよりは奥に入る。
身体を丸めて、もっと奥にと指を押し込む。
「あ、ふ……ん、ぁ……玩具、持ってこれば、良かった……」
そうすれば、もっと奥を犯せる。
2人の熱には負けるが、それでももう少し気持ちよかったはずだ。
陰茎を扱きながらアナルを搔き回して、前立腺を擦ると射精感が迫り上がってくる。
「ん、く、ぁっ……!」
そのまま射精すれば、3人でする時よりも全然少ない量だった。
手に着いた精液を舐めてみる。
「……不味。やっぱ月夜や花月の方が美味しい」
同じ味なはずなのに、自分のものだと思うとこうも違うのか、と逆に感心する。
「わかってたけど、全然足りない……」
いつも理性なんて残らないほどシているからだろう。
家に帰れば、2人は光留の相手をしてくれるだろうが、それだと夫婦というよりただのセフレだ。だからといって知らない人間とするのは怖いし、嫌悪しかない。
結局、光留はあの2人じゃないと嫌なのだ。
あの2人だから身体を許せるし、アブノーマルなプレイも、2人の子を孕むのも嫌じゃない。
結論なんて最初から出ている。
ただ、世間体だとか、血の繋がりだとかを気にしすぎているだけで。
物語のようには上手くいかない。
でも、と光留は自分の腹を撫でる。
今は本来の男の身体だから、命が宿ることはない。
だけど、3人で愛し合っているという確かな繋がりが欲しい。
花月は子どもが欲しいと思っている。月夜も、ああ見えて案外子ども好きだ。じゃなければ前世から光留を見守るなんてことはしなかっただろう。
光留は、ふと顔をあげると水子の魂がふよふよと浮いていた。
「お前、この間の……」
手を差し出せば水子の魂は、光留の手の上に乗る。
――お父さん。
そう呼ばれている気がした。
「うちに来たいのか?」
水子の魂は、頷くように光留の手にすり寄る。
この子に人の肉体をあげられるのは、3人の中で光留しかいない。母体となる光留は父であると同時に、母にもなるのだ。
「うちじゃ苦労すると思うけど、それでもいいのか?」
確かめるように光留が聞くと、水子の魂はまたすりすりと光留の手の中で動く。
「そっか。ありがとうな、心配してくれて。ちゃんと覚悟を決めるから、もう少しだけ、待ってて」
水子の魂は、わかった、と言うように光留の中に入っていく。
いつかのために待機しているつもりだ。
「気が早いなぁ……」
でも、可愛いと思う。
この子をちゃんと産むには花月の協力が不可欠だ。
そして、光留と月夜は双子。顔も声も見分けがつかないと言われるほど似ている。遺伝子的にも大きな差異はない。ということは、光留と月夜の遺伝子も継ぐことになる。
結果として3人の子どもと言えなくもない。
「出来れば月夜との子も欲しいけどな……」
月夜にその気がなければ意味がない。
仮にあったとしても、血が近すぎて長生き出来ないかもしれない。
花月と月夜に向ける愛情に違いはあっても、それは形が違うだけで、光留にとってはどちらもかけがえのない存在だ。
2人がいたから、光留が生きることを望んでくれたから、今も生きていられる。
そんな2人に、少しでも何か返せるなら、男の象徴を失うくらい耐えられる。なくなったとしても、2人が受け入れてくれるなら、大丈夫だと思いたい。
「でも、やっぱりちょっと怖いな」
これだから花月に意気地なし! と罵られるのだが、怖いものは怖い。
「……とりあえずシャワー浴びよ」
まだ時間はあるが、仕事の納期は待ってくれない。
光留はひとまず自分の問題を横に置いて、目の前の問題を片付けることにした。
「うーん、こっちの展開は王道すぎるか? でも変に変えると2人の関係拗れるからな……。とりあえず、両方書いておくか……」
後から見直した時に自然に見える流れを採用すればいいし、それでも悩んだら担当編集に相談しようと光留はひとまず気の向くままに書き進めた。
家で執筆活動は出来るが、今回のテーマである「ボーイズラブ」は光留達にとって現在とても繊細な問題である。
作品と現実を切り離して考えたかった光留は、執筆活動に集中するために家を出たが、正解だったと思う。
「はぁ……一応目処はついたけど、セックスの描写……なんか物足りない……?」
普段から男同士で近親相姦、3P、潮吹き、首絞め、SMとアブノーマルなプレイをしているせいか普通のプレイがわからなくなっている。
いや、今更ピュアなセックスをしたところで光留の身体は満足出来ない。手遅れである。
しかし、ボーイズラブはわりとストーリー重視で読まれるし、官能小説ではないのであっさりとしている方がいいのかも、と光留は思い直す。
(あ、ヤバ……)
セックスシーンを書きながら、いつも自分たちがするセックスを思い出したら、身体がずくりと疼いた。
ホテルに籠もって数日。家にいる時は3日と経たずにどちらかに相手してもらっていたせいか、欲求不満に陥っている。
自分で書いた文章を読み直しながら、光留の手は自身の陰茎に触れていた。
「は、ぁっ……ッ……」
自分で慰めるなんていつ以来だろうか。
自分の文章では先走りがわずかに溢れるばかりで、全然気持ち良くない。
「ん、ぅ……ふっ……」
アナルは慣らさなくても指一本は簡単に入るけれど、自分の指では思った場所に届かない。
おかしい。月夜との身長差は2センチ。体格も大きく離れていないはずだ。なのに前立腺に届かない。半ば意地になってナカを搔き回してみるが、濡れていないせいか引き攣った痛みにしかならない。
仕方ない、と光留は自身の先走りで濡れた指を口に含んで唾液で濡らす。
「ふぁ……ぁ、ん……おぇ……んぐ……」
二本の指を奥まで突っ込んで、指で舌を擽るとゾクゾクした。
口のナカを熱い肉棒で突かれるのを想像すれば、腹の奥がずんっと重くなる。
気持ちいい……、けど物足りない。
光留は、渋々口から指を抜いてアナルに再び入れる。
くちゅくちゅと水音がして、さっきよりは奥に入る。
身体を丸めて、もっと奥にと指を押し込む。
「あ、ふ……ん、ぁ……玩具、持ってこれば、良かった……」
そうすれば、もっと奥を犯せる。
2人の熱には負けるが、それでももう少し気持ちよかったはずだ。
陰茎を扱きながらアナルを搔き回して、前立腺を擦ると射精感が迫り上がってくる。
「ん、く、ぁっ……!」
そのまま射精すれば、3人でする時よりも全然少ない量だった。
手に着いた精液を舐めてみる。
「……不味。やっぱ月夜や花月の方が美味しい」
同じ味なはずなのに、自分のものだと思うとこうも違うのか、と逆に感心する。
「わかってたけど、全然足りない……」
いつも理性なんて残らないほどシているからだろう。
家に帰れば、2人は光留の相手をしてくれるだろうが、それだと夫婦というよりただのセフレだ。だからといって知らない人間とするのは怖いし、嫌悪しかない。
結局、光留はあの2人じゃないと嫌なのだ。
あの2人だから身体を許せるし、アブノーマルなプレイも、2人の子を孕むのも嫌じゃない。
結論なんて最初から出ている。
ただ、世間体だとか、血の繋がりだとかを気にしすぎているだけで。
物語のようには上手くいかない。
でも、と光留は自分の腹を撫でる。
今は本来の男の身体だから、命が宿ることはない。
だけど、3人で愛し合っているという確かな繋がりが欲しい。
花月は子どもが欲しいと思っている。月夜も、ああ見えて案外子ども好きだ。じゃなければ前世から光留を見守るなんてことはしなかっただろう。
光留は、ふと顔をあげると水子の魂がふよふよと浮いていた。
「お前、この間の……」
手を差し出せば水子の魂は、光留の手の上に乗る。
――お父さん。
そう呼ばれている気がした。
「うちに来たいのか?」
水子の魂は、頷くように光留の手にすり寄る。
この子に人の肉体をあげられるのは、3人の中で光留しかいない。母体となる光留は父であると同時に、母にもなるのだ。
「うちじゃ苦労すると思うけど、それでもいいのか?」
確かめるように光留が聞くと、水子の魂はまたすりすりと光留の手の中で動く。
「そっか。ありがとうな、心配してくれて。ちゃんと覚悟を決めるから、もう少しだけ、待ってて」
水子の魂は、わかった、と言うように光留の中に入っていく。
いつかのために待機しているつもりだ。
「気が早いなぁ……」
でも、可愛いと思う。
この子をちゃんと産むには花月の協力が不可欠だ。
そして、光留と月夜は双子。顔も声も見分けがつかないと言われるほど似ている。遺伝子的にも大きな差異はない。ということは、光留と月夜の遺伝子も継ぐことになる。
結果として3人の子どもと言えなくもない。
「出来れば月夜との子も欲しいけどな……」
月夜にその気がなければ意味がない。
仮にあったとしても、血が近すぎて長生き出来ないかもしれない。
花月と月夜に向ける愛情に違いはあっても、それは形が違うだけで、光留にとってはどちらもかけがえのない存在だ。
2人がいたから、光留が生きることを望んでくれたから、今も生きていられる。
そんな2人に、少しでも何か返せるなら、男の象徴を失うくらい耐えられる。なくなったとしても、2人が受け入れてくれるなら、大丈夫だと思いたい。
「でも、やっぱりちょっと怖いな」
これだから花月に意気地なし! と罵られるのだが、怖いものは怖い。
「……とりあえずシャワー浴びよ」
まだ時間はあるが、仕事の納期は待ってくれない。
光留はひとまず自分の問題を横に置いて、目の前の問題を片付けることにした。
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