【R18】何度生まれ変わっても、必ず幸せにすると決めたんだ

葛葉

文字の大きさ
上 下
29 / 48
今の幸せをこの先も、来世も、ずっと

第二十九話

しおりを挟む
 光留は届いたメールを見ながら、腕を組んで頭を悩ませる。
(BLか……)
 担当編集から、今度会社で新しく立ち上げる小説投稿サイトに載せる短編が欲しいと依頼があり、提示されたテーマが「ボーイズラブ」だった。
 書くことに抵抗があるわけではない。
 男女の恋愛を同性に置き換えて、同性同士ならではの悩みや葛藤を交ぜる。ハマりそうなネタは幾つかあるから、それをプロットに落とし込めばいいのだが、光留の筆が進まないのは別の理由だ。
(結局、俺達ってなんなんだろうな……)
 物語の世界では、紆余曲折ありながらも恋人になってハッピーエンドで終わり。娯楽としてはそれで十分なのだろう。
 だけど、現実にはそうはいかない。
(子供か……)
 光留が参考用に手にしているのは、男性でも妊娠出来る世界観の作品。
 夫夫ふうふになって、子供が産まれてその成長を見守りながら愛を育んでいく。そんな王道な物語。
 現実にも同性婚を認めている条例がある地域も存在するが、光留達は結婚出来ない。
 自身の薬指に嵌まる指輪をそっと撫でる。
 花月が20歳の誕生日の日に3人で買った結婚指輪。形だけだが、3人を繋ぐ大切なものだ。
 自分達は気持ちの上では夫夫ふうふだが、本当の意味で恋愛感情とは言いにくい。
 特に月夜と光留は双子だ。物語のように実は血縁一切なかった、ということもない。
 そして、光留自身、月夜への感情を未だに持て余している。
 好きだが、それは兄として、半身として。愛しているし、身体も許せる。子供を産んでもいいと思えるくらいには情があるが、やっぱり恋とは少し違う。
 逆に花月と一生にいる時は、楽しくてドキドキして、甘い感情がある。
 複雑な感情が絶妙に絡んでいて、それでいてほんの少しの違いでバランスが崩れる。
(このままずっと、ずっと3人で……)
 今が幸せだから、来世なんて多くを望まない。
 月夜がいて、花月がいて、3人で愛し合って、寿命で別れる。
 望むのはそれだけだ。
 子供が産まれて、家族となることが必ずしも幸せとは限らない。月夜と光留は前世でそれを学んでいる。
 だから、月夜の葛藤もわかるのだ。
 逆に花月は欲しいのだろう。前世では自ら腹を痛めて産んだ子を、ひと目見ることもなく引き離されている。彼女が我が子に会えたのは、産んだ子供の転生体だった。自分で育てることも看取ることも出来なかった最愛の人の忘れ形見への思いは、母になったからこその感情だろう。
 今度こそ、あるべき姿の家族として、望んでしまう。
 光留は、どちらも尊重したいが、まだ答えは出ない。
 たた“羽宮光留”としては、男である自分が産むのはやっぱり違和感があるし、未知の体験に恐怖を感じる。
 以前、ひと昔前の中絶する様子を映像でみたことがあるのが若干トラウマになっているせいかもしれない。
(でも、俺にしか出来ないことだから……)
 月夜はいまだ悩んでいるようだし、花月にも月夜の気持ちは伝えているとはいえ、花月が望んでいる以上月夜は花月を優先しようとするだろう。
 光留は自分の腹を撫でる。
 先日の霊力制御の訓練でも下半身の女体化は成功したが、月夜がそれを無効にするように調整したから、翌日には元に戻ってしまった。
 どんなに中出しされても命が宿ることのない腹。
「知らなければ良かった……」
 知らないままなら、もっと話はシンプルだったはずだ。
「あー、くそっ! 仕事にならねぇ……」
 光留は出かける準備をすると、2人にしばらく家を開けると連絡した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。

riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。 召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。 しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。 別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。 そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ? 最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる) ※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

処理中です...