【R18】何度生まれ変わっても、必ず幸せにすると決めたんだ

葛葉

文字の大きさ
上 下
19 / 47
廻る魂

第十九話

しおりを挟む
 人間、誰しもが「もしも」を考える。
 たとえば、あの時ああすれば良かった、こうすれば良かった……。
 あの時、あんな事が起きなければ……今とは違った結果になっていたのかもしれない。
 後悔と期待と理想に苛まれながら、もしもを想像して、自分の心を守りながら生きていく。


 羽宮月夜には光留という名の双子の弟がいる。
 元はひとつの魂だったが、ある時分裂して此度の転生で双子として生まれた。血も肉体も魂までも、文字通り半身とも言える存在を、月夜は溺愛している。
 だけど、時々ふと思う。
 光留は本当に、月夜の魂から別れた存在なのだろうか――。

「……月夜?」

 名前を呼ばれて声のする方を見れば、自分と瓜二つの顔が月夜を心配そうに覗き込む。
「悪い、考え事をしていた」
「いいけど、もしかして、俺風邪移した?」
 光留の手が月夜の額に触れる。
 先週まで風邪で寝込んでいた光留は、申し訳無さそうに眉尻を下げる。
「いや、大丈夫だ。むしろお前の方が体温が高いな」
「ん、ちょっと怠い……」
 光留が素直に自己申告する。
 こういう時、甘えたいというサインだ。
 霊力の流れを視ても、案の定暴走一歩手前、というところだ。
「素直に言えて偉いな」
「子ども扱いするな」
「子ども扱いじゃなくて、弟扱いだ」
 月夜がくすくすと笑いながら頭を撫でる。光留も口で文句を言いながらも跳ね除けることはしない。
「ほら、もっとこっち来い。霊力が暴走しかけている」
「うん」
 月夜が手を広げれば、光留も大人しく抱きしめさせる。唇を撫でられて口を開けば月夜が唇を重ねる。
 ぬるりと入ってきた舌。平熱の時は熱く感じるのに、今は微熱があるせいか、ちょっとだけ冷たく感じる。
 舌の裏や上顎を擽られ、舌が絡まるのが気持ちいい。
 唾液と一緒に月夜の霊力が光留の身体に染み渡り、発熱していた身体が落ち着いていくのがわかる。
(気持ちいい……)
 月夜とは、5歳の時からこうして口を通して霊力の暴走を抑えてもらっている。
 最初は唇が重なるだけの可愛いものだったのが、徐々に深いものへと変わっていき、今ではすっかり口のナカが性感帯になってしまった。
「ん、ふぁ……ふ、はぁ……んむ……」
「気持ち良さそうだな」
「知ってるくせに……」
 光留の身体をそういうふうに作り変えたのは月夜だ。
 月夜は溢れた唾液を舐め取って、光留の中に戻すように再び唇を重ねる。
「はむ、ん、ん……ちゅ、は、ぁ……もっと……」
 ちゅくちゅくと音を立てながら口のナカを蹂躙される。
 気持ち良くて頭がふわふわする。
「可愛いな、光留」
 額や鼻先にもキスされて、光留は「ん」と吐息を溢す。
 光留がこんなにも甘える相手は双子の兄である月夜だけだ。
 たとえ前世の自分が死んだ原因だとしても、月夜を恨んだことも、憎んだこともない。
 ただ、別れた半身が欠けたままで寂しい、と感じる。
 それは月夜も同じなのか、互いに抱き締めあうと満たされていくような気がする。
「ん、ありがと」
 しばらく互いの体温を分け合って満足すると、光留は月夜から離れる。
「もういいのか?」
「うん。月夜はまだダメそう?」
「いや、せっかくだからと」
 月夜が光留をベッドに押し倒せば、光留はジト目で月夜を見る。
「昨夜も散々花月としてただろうが」
「なんだ、嫉妬か?」
「そうだよ、悪いか」
 花月とは月夜と光留の前々世である“月夜”の恋人の生まれ変わりだ。
 3人とも記憶があるため、今では3人で恋人として過ごしている。
「光留も一昨日花月としてただろ」
「いいだろ。俺だって花月とシたい」
「ダメだとは言っていない。花月に敵わないのは“月夜”の頃からだ。お前がそうなのもわかるからな」
「じゃあ今はしなくてもいいだろ」
 そもそも花月と再会する前から月夜と光留には肉体関係がある。兄弟だとか、恋愛感情よりももっと深い繋がりを求めるかのように。
「意地っ張りめ」
「違う」
 光留はきっぱりと月夜に言えば、月夜はきょとんとする。
「……うまく言えるわけじゃないけど、なんか、悩んでる? てか、ビビってる?」
「悩みはともかく、何にビビると言うんだ。お前じゃあるまいし」
「怒るぞ」
 光留がイラっとしたように言えば、月夜は光留の鼻を摘む。
「そんな顔しても可愛いだけだぞ」
「……お前、ほんと俺に甘すぎだろ」
「好きな相手を甘やかしたいと思うのが俺だからな。光留も十分俺達に甘いだろ」
「否定はしないけど、そういうことじゃなくて。……俺にも言えないこと?」
 双子だからか、長い間一緒にいるからか、もともと同じ魂だったからか、お互いの感情はなんとなくわかる。
 光留は甘えたがりだが、好きな人達には頼ってもらいたいし、話聞くくらいはしたいと思う。
 光留の指摘に月夜は「敵わないな」と呟く。
「前回の転生で、何故俺が弾かれたのかを考えていた」
「あー、あの時は俺が本体だったんだっけ?」
「そうだ。だから余剰分である俺が使える力は限られていた」
「じゃなきゃ乗っ取るなんて回りくどいことしないしな」
「ああ。結果としてお前を道連れにした」
「何度も言うけど、俺はちゃんと納得していたし、月夜達を恨んでたりしないよ。じゃなきゃ甘えることも、えっちもしない」
 月夜が光留の頬を撫でる。すりっとその手に押し付けて、もっと撫でろと無言の要求をする。
「俺が死んだ時、月夜達はずっと謝ってくれただろ。それで、今度は3人で幸せになろって」
「知って……」
「夢現みたいな感じだったけどな。でも、嬉しかったから。だから、今もこうしている」
 光留の記憶は、月夜達のものと一致する。
 それでも、と思うのは光留が霊力過多になっている状態だ。
「……もしかして、“俺”が死ぬ時に憑けていたか?」
 あり得るかもしれない。
 処刑までの数日間はそれなりに酷い扱いを受けていた。心身ともに傷付いた状態であれば、霊の一体や二体取り憑いていても気付かない。
「そういうのって、普通死んだら剥がれない?」
「普通はな」
 光留が眉を寄せる。
「例外があるとするなら水子だ。あまりにも小さすぎて別の魂に入り込むことは稀にある」
「それって最終的にどうなる?」
「抜ける事もあれば、そのまま混ざり合ってひとつの魂になることもある」
 月夜の言いたいことは大体わかったが、気持ちは微妙だ。
「つまり、死ぬ前後で“月夜”の魂に水子が入り込んだから、転生時に月夜の人格と記憶が弾かれて、俺達の魂が別れたってこと? またややこしくしやがって……」
「そう言われてもな。だが、それなら納得いく部分もある」
「たとえば?」
「光留の甘えたがりなところや、淫乱なところ」
「いや、性格正反対の双子なら普通にありそうだけど。あとは、月夜の隠れた性癖とか」
 今度は光留が月夜を押し倒す。
「いつもヤられてばかりだと思うなよ」
「怖いな。俺は2人の可愛い姿を見たいだけなんだが」
「この変態。ひんひん言わせてやる」
「今日はしないんじゃなかったのか?」
「俺が抱く側ならいいよ」
 光留がニィと笑って月夜の服を脱がせようとした時だった。
「ただいま戻りました!」
 ガチャとドアを開けて花月が帰ってくる。
「あー! 光留君が月夜様を襲ってる! 光留君ばっかりズルいです!」
 月夜や光留が互いを押し倒す光景に見慣れている花月だが、光留が月夜を襲っているのは久しぶりだ。
 月夜に対しては抱かれる側である花月も便乗する。
「何がずるいと……」
「僕もお手伝いしますね!」
 花月が鞄を放りだしてベッドに乗り上げる。
「おかえり、花月。じゃあそっち抑えてて」
「了解です。ふふふ、今日こそ月夜様の処女、いただきますね」
 光留に指示され、花月は月夜の手を抑える。
「ちょ、待て待て待て、俺は光留と違ってそっちは……」
「大丈夫大丈夫」
「はい、僕達がとっても気持ち良くしてあげます」
 2人がかりで服を脱がされ素っ裸にされ、月夜は暴れる。
「いやだからっ……」
「俺達がいつも大人しくしてると思うなよ?」
「僕達だって月夜様が大好きですから、一緒に気持ち良くなりましょうね!」
 2人に迫られ、月夜はダラダラと冷や汗をかく。
「俺はそっちは……アーーッ!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

聖獣騎士隊長様からの溺愛〜異世界転移記〜

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)
BL
『ここ、どこ??』 蔵の整理中、見つけた乳白色のガラス玉。 手にした瞬間、頭に浮かんだ言葉を言った。ただ、それだけで…… いきなり外。見知らぬ深い森。 出くわした男たちに連れ去られかけた眞尋を助けたのは、青銀の髪に紺碧の瞳の物凄い美形の近衛騎士隊長、カイザー。 魔導と聖獣を持つ者が至上とされる大陸、ミネルヴァ。 他人の使役聖獣すら従えることができる存在、聖獣妃。 『俺、のこと?』 『そうだ。アルシディアの末裔よ』 『意味、分かんないって!!』 何もかも規格外な美形の騎士隊長の溺愛と、かっこよくて可愛いモフモフ聖獣たちに囲まれての異世界転移生活スタート!! *性描写ありには☆がつきます *「彩色師は異世界で」と世界観リンクしてますが、話は全く別物です

運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました

十夜 篁
BL
 初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。 そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。 「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!? しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」 ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意! 「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」  まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…? 「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」 「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」 健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!? そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり… 《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

処理中です...