【R18】何度生まれ変わっても、必ず幸せにすると決めたんだ

学祭の前と後

第十二話

　それは、光留にとって災難だったとしか言いようがなかった。
　光留は月夜に頼まれて、彼が忘れていたという資料を大学に届けに行った時だった。
「羽宮君、つーかまーえた！」
「へ？」
　正面玄関で月夜を待っていると、突然見ず知らずの女子大生に横からタックルを食らわされる。
　光留は思わず尻餅をついてしまう。
「いったたた……」
「んふふ、今年こそ逃がさないぞ！」
　何のことかわからず、打ち付けた腰を擦りながら光留は戸惑う。
「えっと……、もしかして、月夜を探してる……？」
「はい？　何言ってるの、羽宮君は、羽宮月夜君しか……」
「光留！」
「へ？」
　彼女の後ろから焦ったような声が聞こえた。
「月夜……」
「ありゃ？　羽宮君がもうひとり……？」
　自分が抱きついている男と月夜を見比べる。どう見ても同じ顔だし、聞いている限り声もそっくりだ。
「悪いけど、俺の弟を解放してくれないか？　塩川」
　さすがに女の子相手に強くは出られないのか、月夜も困った顔をしている。
「弟……？」
　塩川と呼ばれた女子大生はもう一度光留を見る。
「えっと、はい。羽宮月夜の弟の、羽宮光留です」
「ええっ！？　何、超そっくりじゃん！」
「ちょ、塩川、声が大きい！」
　周りが僅かにざわついた。そろそろ光留を救ってやらねばと月夜が手を伸ばすより先に、塩川が光留をぐいっと引っ張る。
「え、何？」
「ふ、ふふ……ちょっとびっくりしたけど、ご兄弟なら尚更都合がいいわ。羽宮君、弟さんを返してほしければ、今年こそ出てくれるわよね？」
「うっ……」
　光留はよくわからず首を傾げるが、月夜があんなに動揺しているのは珍しい。
「さぁ、行きましょう！　君、何年生？　羽宮君の弟さんってことだけど、双子？」
「えっと、あの……」
　光留は塩川にずるずると腕を引かれながら月夜に助けを求めるものの、月夜の動きが鈍いことに気付いて、ちょっとだけ不安になる。
　そのまま彼女にサークル活動で使っているという部屋に押し込まれた光留は、なんだかよくわからないまま気が付けば着替えさせられていた。