【R18】何度生まれ変わっても、必ず幸せにすると決めたんだ

葛葉

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再会とこれから

第十話

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 夏休み。
 月夜と光留と花月で付き合うようになって、初めての長期休暇ということもあり、3人で出かける運びとなった。
「やっぱり人が多いですね」
「夏だからね」
「二人とも、ちゃんと日焼け止め塗ったか? 光留、お前は日傘の下にいろ。暑さで倒れる前に休んでおけ。花月も首元が赤くなってる、この辺りサボったな?」
「このブラコン」
「なんだと?」
「光留君、それブーメランですよ」
 根っからの世話焼き気質な月夜は、過保護すぎて時々うざったくなる。しかし、このうざったさも好ましく思っているのだから自分に呆れるしかない。
 光留は渋々日傘の下にレジャーシートを敷いて三角座りで海を眺めていると、隣に花月が座る。
「泳がなくていいのか?」
「月夜様が浮き輪を持ってくるので、待っていろと……」
「ああ」
 その光景が目に浮かぶ。人の世話をするのが好きなのだろう。月夜は光留も花月も溺愛しているが、小さな子どもにも案外優しい。
「……ここ、痕になっちゃいましたね」
 花月が光留の首筋にある引き攣れたような切り傷の痕に触れると、ビクリと肩を震わせる。
 皮膚が薄くなっているから余計に敏感になっているのだろうが、そうでなくとも光留は首が“弱い”のだ。
「っ……! 遠目に見ればわからないからいいよ」
「確かに」
 赤くなった光留に、花月の好奇心が擽られる。
「ちょ、そこは、今はっ……」
「光留君は本当に首が”弱い”んですねぇ。気持ちいいんですか?」
 花月が首筋を撫で、喉仏を軽く押すとひくりと動く。ゾクゾクして口の中に唾液が溜まる。
 光留の様子を見て、花月もぞくぞくする。
 犬猫にするように撫でれば「ぁ……」と小さく喘ぐ。
「可愛い、光留君」
 頬に手を添えて口付ければ、光留もそれに応えるように口を開く。
「ちゅ、ん……はっ、ん……」
 舌が擦れ合うのも、口の中を撫で回されるのも気持ちいい。
「ふ、気持ち良さそう……ん、くちゅ……はっ、んんっ!?」
 光留に後頭部を掴まれ、主導権を奪われると、荒々しく口内を弄られる。舌を甘噛みされ、唾液を啜られ、歯列や上顎をなぞられると気持ちいい。
「花月も可愛い」
 光留の低く掠れた声にドキリとする。
「おい、お前達、戯れるなら部屋に戻るぞ」
 いつの間にか月夜が戻って来ていた。
「羨ましいのか?」
「そうだが?」
 光留のからかいに月夜はしれっと答えると、花月の顎を掴んでキスをする。
「ふぁ……んっ、ぁ……はぁ……」
 近くにいるせいか、波の音よりもくちゅくちゅと湿った音が頭に響く。
 ずくりと下肢が疼いてしまう。
 花月から口を離した月夜は、今度は光留の方に顔を近づける。
「ん、はっ……ぁっ!」
 月夜の長い舌が、光留の喉奥を擽る。
「んんっ、へぁ、ぁ……う、あ、んん~~~ッ!!」
 光留の肩がビクンと震える。
 とろんと蕩けた表情。下肢を膝で軽く押せば、まだ海に入っていないのに濡れていた。
「もしかして、光留君イッちゃいました?」
「そのようだ。海パンで良かったな」
「っ、良くない! 洗ってくる」
 光留は月夜から浮き輪を奪うと前を隠しながら更衣室へ向かう。


 光留が戻ると浮き輪を持って3人で海へ繰り出した。
(あ、悪霊……)
 浮き輪の上でうつ伏せになって海の底を見ていると、黒い触手のような手が何本も光留に向かって手招きしている。
 近づかなければ引きずり込まれることはないし、花月のおかげで今のところ霊力が暴走する気配もないが、なんだか様子がおかしい。
「光留君、そっちはダメですよ」
 花月に呼ばれ振り返る。
「うん」
 気にはなったが、今世の光留は制御出来ない霊力を持っているだけで、退治する力もない。
 ある意味落神や悪霊にとっては格好の餌食だが、花月が抑制してくれているおかげで、熱を出さずいられ、遊びに行くことも許された。
 光留が方向転換しようと海水に手を付けると、ぐいっと何かに腕を引かれた。
「っ! 落神っ!?」
 悪霊達に紛れていたのか、黒い軟体動物のような触手が光留の腕を掴んで海へ引きずり込む。沈んで行くと悪霊達が今か今かと手を伸ばす。
(やばっ……)
 抑制されている霊力を解放することはできるが、制御出来ない光留にとって死活問題になる。
 どのみち、水の中では呪文を唱える事も出来ない。せめて掴まれた触手を引き剥がそうとするが、ぬるぬるしているせいで上手く掴めない。
(くっそ、こういう時触手系は最悪なんだよ! ひっ、何処触って……)
 触手の一本が、光留の海パンの裾を辿って侵入してくる。太腿に絡みついて、徐々に中心へと這っていく。
(あ、バカッ! そんなとこ触られたら……)
 尻の間を撫でられ、入口にぐにぐにと太い触手が押し付けられる。陰茎にも巻き付いて締め付けられると痛いのになんだかおかしな気持ちになってくる。
 息を止めるのもだんだんキツくなってきていて、ごぽりと酸素を吐き出す。
 開いた口にずぽっと触手が入り込んできて、喉の奥へと入り込む。
 苦しくて呼吸も出来なくて、藻掻くと体力だけが奪われる。
(てか、こいつまさか体内突っ切ろうと……)
 口に入り込んだ触手は赤子の腕ほどの太さがある。それが喉から食道、胃へと向かっていくぞわぞわした気持ち悪さ。吐き出したいのに吐く事も出来ない。胃へと到達すると、ぶしゅっと何かが吐き出される悍ましさに慌てるも、やがて意識は朦朧としてきて、身体も重く沈んで行く。
 落神がニタァと大きな口を開けて光留を飲み込もうとする直前、誰かに腕を掴まれた。
(つ、くよ……?)
 隣には花月もいて、安心した光留は気を失った。
 花月は印を組み、霊力の塊を落神にぶつける。
 眩い光が落神を包み、縄の形となって拘束する。
 ギチギチと締め上げられた落神は、痛みのあまり光留に絡みついていた触手がいくつか離れるが、口から入った触手は深くまで入り込んでいるせいかなかなか抜けない。
 下手に抜けば内臓を傷付ける。
(この程度なら、今の俺でも出来るか)
 月夜は左手で刀印を組み、口から伸びる触手にあてると、スパッと切れる。そのまま光留を連れて海面に上がり、光留の口に残っている触手を慎重に抜き取る。
「ぷはっ、月夜様!」
「大丈夫だ。あと少し……」
 ずるりとすべての触手が抜き取られる。一メートル以上あるものが入っていたのだから、相当苦しかっただろう。
「げほっ、おぇっ……げぇ……はっ、げほっ、ぁ……気持ち悪……うぷ……おぇ……」
 急激に入ってきた酸素に噎せつつ、胃の中にまで入り込んでいたせいか、光留は嘔吐する。
「はぁ、全く。肝が冷えたぞ」
「まさかあんなに早く掴まるなんて……」
「うっ、ごめ……うぷっ……」
 月夜が背中を擦ってやりながら海岸へ戻る。
 陸に上がってから光留は月夜と花月を見る。
「はぁ、はぁ、マジ最悪……」
「光留君、他に痛いとか、気持ち悪いとかないですか?」
 花月が心配そうに光留の身体をペタペタと触る。
「うん、気持ち悪いけど、痛くはない。あとさ、一応聞くけど、落神って産卵しないよな?」
「聞いたことありませんね」
 花月は知らないらしく、首を傾げる。
 だが、月夜は少し考え込んでいる様子だ。
「…………産卵かどうかはわからないが、稀に液体を吐き出すやつはいる。効果は汚染水みたいなのから、溶解液までいろいろだが、まさか、中に吐き出されたのか!?」
 月夜が確かめるように光留の海パンに手を突っ込むのを慌てて止める。
「ちょ、ケツ触んな! そっちじゃない! ……なんか、俺も焦ってて記憶曖昧だけど、胃のあたりに何か、ビシャッて。胃もたれしてる感じ?」
 光留がお腹の辺りを擦りながら、感触を確かめていると月夜も花月も青褪める。
「コテージに戻るぞ」
 月夜が光留を抱き上げ、花月と共に急ぐ。
「え、ちょ、自分で歩ける!」
「ダメですよ。もし卵とかだったら、光留君が歩いた拍子に割れるかも」
 なんて花月が脅すから、もとより青かった光留の顔が白くなる。大人しく月夜に抱きかかえられたまま、宿泊予定のコテージにある浴室へ光留を運ぶと、月夜は容赦なく光留の口に指を突っ込み、喉奥を弄る。
「んんっ! おえっ、げほっ、おえぇぇ……」
「そら、全部吐け」
「うう……げぇ、はっ、ぅ、くるし……おえぇ」
 何度か嘔吐を繰り返していると、塊のようなものが胃からせり上がってくる。
「うぷっ……お、あ、がっ、げえぇぇ、おえぇっ……」
 光留の口から昼に食べたものの未消化食材と共に、ぼとりとビー玉サイズの黒い物体が出てきた。
「っ、落神の気配っ! すぐに封印します!」
「任せた。光留、まだ残ってるか?」
「わ、かんな……でも、まだ、変な感じする……」
「よし、吐け」
 花月が落神の卵らしきものを滅している横で、月夜が再び光留の口に指を入れる。
「おえぇぇ……うぷっ、げえぇぇ……」
 それから何度か嘔吐を繰り返し、胃液しか出なくなる頃、五個目の黒い物体が出てくる。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……うっ、吐きすぎて気持ち悪い……」
「まだ吐くものはあるか?」
「ないと、思う……」
「はい。もう光留君から落神の気配はないので、大丈夫かと」
「そうか」
 月夜は光留の背中をポンポン叩く。
「口の中最悪……」
「まあ、あれだけ出せばな」
「最後ら辺はほとんど胃液でしたからね。後で胃腸薬飲んでおきます?」
「うぷっ、いらない……。水……」
 吐きすぎて口の中が胃液や落神から出てきた何やらで、舌が麻痺している。少しでも洗い流したい。
「はい、お水です」
 落神から出されたものが何かわからなかった以上、最悪下剤を飲ませるつもりで用意していたミネラルウォーターが役に立った。
 光留はそれを受け取り、うがいと水分補給をする。
「はぁー、はー……やっとスッキリしてきた……」
「全く、世話の焼ける……」
「でも、光留君が無事で良かったです」
「2人とも、ありがと」
「だが、ここは跡になっているな」
 月夜は光留の腕を取ると、手首から肘の辺りまで紐が巻き付いたような真っ赤な跡がある。
「でも、これなら数日で消えるだろ」
「確かに、落神の残滓のようなものは感じますが、光留君の言う通り、数日で無くなりそうですね。それはそれとして……」
 花月の視線が光留の下半身に向く。
「それ、辛くありません?」
「へ?」
 光留も下を向くと、陰茎が海パンを押し上げ半勃ちしていた。
「!!」
 慌てて手で隠すももう遅い。
「光留、喉が好きなのは知っているが、さっきまで気持ち悪いと言いながら、勃たせていたのか」
「ちがっ」
「光留君は案外、エッチなんですね。……まあどうせそのつもりでしたし、光留君が大丈夫ならベッドへ行きましょうか」
 花月が光留の喉を撫でる。さっきまであんなに気持ち悪かったのに、悦ぶようにひくり、と喉が動く。
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