【R18】何度生まれ変わっても、必ず幸せにすると決めたんだ

葛葉

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無自覚

第五話 ※

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「羽宮さん、大丈夫ですか?」
「へ、あ、はい。大丈夫です、すみません……」
 光留が次の本の打ち合わせ中に、ぼーっとしていると担当編集である笹嶺が覗き込んでくる。
「心なしか顔が赤いようですが……」
「あー、ちょっと微熱があるくらいなんで、いつもと変わらないですよ」
 ここは月夜の通う大学近くの喫茶店だ。
 レトロな雰囲気があって落ち着いた空間が居心地いい。彼女との打ち合わせは大概ここで行われる。そして光留が微熱のまま外出するのも体質的なところもあるので珍しくはない。
 月夜は渋い顔をするが、月夜の大学の近くということで大目に見てもらっている。
「羽宮さんの平均体温が高いのは知ってますが、あまり無理なさらないでくださいね。次の話もある程度まとまりましたし、今日はこの辺りにしましょう。またプロットが出来たらメールでもチャットでも連絡いただければ大丈夫ですので」
「はい、ありがとうございます」
 笹嶺と別れた光留は、月夜に迎えに来てもらうことにした。
 笹嶺がタクシーで送ってくれると言ってくれたが、あと30分もすれば月夜も本日最後の講義が終わる頃だ。
 光留の双子の兄である月夜には笹嶺も会っているし、大丈夫だろうということで。
 光留は喫茶店を出て、近くの公園で待つことにした。
 平日の午後のせいか、あまり人は多くなく、子どもたちの声も聞こえない。
(平和だなぁ……)
 風も心地良くて、微熱で気怠いせいか、眠くなってくる。
(そういや、最近、熱があんまり下がらないな)
 今朝も月夜に霊力を調整してもらって、朝は調子が良かった。
 熱が出始めたのは、大学の近くに来てからだ。
 月夜が手を抜いているとは思わない。いくら月夜の霊力が少なくても、今まで経験や知識から不可視の事象に関しては月夜の方が詳しいはずだ。
 光留は、”槻夜光留”としての記憶はあるが、”月夜”の記憶はぼんやりとしか思い出せない。
 魂が別れた時に、光留の魂を守る為に、記憶のほとんどを月夜に渡したせいだと言っていた。
 代わりに、制御の出来ない霊力が光留に渡ってしまい、それが身体を蝕んでいる。
 落神に遭遇したり、霊的な何かを探知すると、短時間で霊力が乱れることがあるのだが。
(落神も悪霊も見てないんだけど、暴走しやすくなってるし、なんなんだろう。兄弟だからか?)
 月夜が来るまでの数十分。考えながらうとうととしていると不意に人の気配を感じた。
「へえ、随分小奇麗な兄ちゃんだなぁ」
 明らかにガラの悪い感じの30代くらいの男だった。
「何か?」
 光留が怪訝そうに問えば、男は下卑た笑みを浮かべる。
「そう怖い顔すんなよ。せっかくの綺麗な顔が台無しだぜ?」
 顔を近づけられ、光留が距離を取る。
(うっわ、酒くさっ、こんな真っ昼間から飲んでるのかよ……)
 呆れながらも、微熱で動きの鈍くなっている光留は立ち上がろうとしてふらつく。
「おっと、ふへへ、兄ちゃん、誘ってるのか?」
 男に寄りかかっている際に、下半身が僅かに反応しているのに気づかれた。
 月夜が言うには、今の光留の霊力は性欲と結びついているらしい。性欲が満たされれば自然と落ち着くが、家の中ならともかく、外出先で発情するのは少し困るし、本当に勘弁してほしいのだが、なかなか身体は言うことを聞いてくれない。
「んなわけあるか。放せよ」
 光留は押しのけようとするも力が入らない。それが余計に男を煽る。
「助けられておいてその言い草は無いだろう。ちょっとくらい礼でもしてくれよな」
 そういうと男は光留を公衆トイレへと連れ込んだ。
(やばっ、月夜早く来て!)
 さすがに自力で対処できないが、月夜は公園で光留が待っているのを知っているはずだし、大して広くもない公園だ。姿が見えなければ探してくれるはず。
 抵抗したくても出来ない光留を便座に座らせ、ズボンを勝手に降ろす。
「おお、おお。綺麗な顔しててもやっぱ男だなぁ。意外と立派なもんが付いてるじゃねえか」
「っ、この変態がっ」
 僅かな抵抗として足を閉じるが簡単に割り開かれてしまい、霊力が暴走し始めているせいか緩く立ち上がった光留の男根を握る。
「んんっ、や、めろ……」
 軽く扱いてやれば、顔を真っ赤にして小さく喘ぐ。
「エッロ……。もしかしてこっちも感じるのか?」
 光留のベストをたくし上げ、シャツをはだけさせる。
 ピンク色の乳首が艶めかしい。指で捏ねると芯を持って主張する。
「ふ、ざけんなっ! ん、ふっ、く……ぁっ……、やだっ」
 高めの声も艶めいていていやらしくて、小さな口にむしゃぶりつきたくなる。
「やだって、かわいいなぁ。どれ、俺にも奉仕してもらおうか」
「誰がお前なんかに……」
 男は自身の陰茎を取り出すと、光留の口をこじ開け、無理やり口に咥えさせると腰を振り始めた。
「んぐっ、おごっ、ぅっ、おぇっ」
「くぅ~、口ん中柔らかくて、喉ちんこ痙攣してんの気持ちいいっ」
「あがっ、お、お、んむっ、げぇ……あ、あ゙あ゙っ!!」
 噛み千切ってやろうかと思ったが、知らない男の汚い血なんか浴びたくないし、いろんな意味で怖すぎる。
(気持ち悪いし、臭いし、不味いし、苦しい……やだ、月夜じゃないの怖すぎる……)
男の足を叩いて抵抗するけれど、掴まれた髪がブチブチと音を立てて引きに抜かれるだけで。あまり効果はなかった。
「んーっ、んーっ!!」
「あー、声だすとめっちゃいい。振動がいい感じじゃん」
「ん゙ーっ!!」
「あー、射精る射精るっ!」
「ん゙ん゙ーっ」
(バカバカ! 口の中はやめろっ! せめて外にっ!)
 光留の祈りは届いたのか、射精する直前、光留の口から抜け、顔面にぶっかけられる。
「げほっ、ごほっ、おぇ……な、んなんだよ……サイアク……」
「あー、気持ち良かった。てか、顔射エロ……」
「ああ?」
 口の中に入ってきた精液をぺっぺっと吐きながら光留は男を睨む。
「おいおい、そんな睨むなよ。可愛い顔が台無しだぜ?」
「お前に可愛いなんて思われたくない。てか、もう用は済んだろ、さっさと退けよ」
 光留が低い声で冷ややかに言えば、男は肩を竦める。
「連れないこと言うなよ~。せっかくだからもう少し楽しもうぜ」
「はぁ? っざけんな、このレイプ野郎」
「とか言いながらここはしっかり勃ってるみたいだけど?」
「ひっ! 触るなっ」
 さっきよりも芯を持った陰茎を握られ、光留は身を捩る。
 口腔内が敏感な己をこの時ほど恨んだことはない。
「硬いこと言うなって」
「そういう問題じゃ……ぃやっ、後ろはっ……」
 アナルに指を入れられる。慣らしても濡らしてもいないそこは固く閉ざされているが、そんなことはお構いなしにぐにぐにとナカを擦られる。
「いたっ! もっ、抜けっ、抜いてっ!」
 ジタバタと暴れるものの、熱で力が入らず、蹴り上げても簡単に往なされてしまう。
「っと、危ねえな。もう面倒くせぇから入れちまうか」
「ざけんなっ! 誰がお前なんかに、ひっ、やだっ、触るな、入れるなっ!」
 押し退けようとしても体格も体力も違う。
(怖い……)
 月夜だから許していた場所を知らない誰かに触れられる恐怖に、光留はボロボロと泣き出す。
「へえ、泣き顔は可愛いじゃん」
 男の欲望が、アナルに触れる。
「ぎゃっ!」
 突然男の頭上にカバンが落ちてきた。しかも四角いカバンの角があったった。あれは痛いだろう。
「てんめえ、何しやがる!」
 男が勢いのままトイレのドアを開けると、そこには今犯そうとしている相手と全く同じ顔の青年が、男を睨みつけていた。
「月夜!」
「何しやがるとはご挨拶だな。人の弟をレイプしておいて」
「あぁん? なんだ、お前も仲間に入りたかったのか?」
 男がニヤニヤと月夜に近寄る。
「ふへへ、弟ってことは兄弟か。いいねえ、嫌いじゃ……ごはぁっ!」
 月夜のストレートが男の顔面に入った。
「誰が貴様なんぞにやるものか。光留は俺のものだ」
 月夜が男の股間を踏みつける。
「ぎゃああああっ!」
「っ、兄さんっ!」
 光留が叫んで月夜に抱きつく。
「光留、大丈夫……じゃないよな」
 月夜に抱き締められ、光留はほっとする。
「ん。でも、まだ未遂、だから……」
「そういう問題じゃない。このゴミ屑、今処分しておかないと……」
「ストップストップ!!」
 月夜が汚物を見る目で男を見下し、股間を思い切り踏みつけられて痛みで悶絶している男を再び蹴ろうとするのを光留が止める。
「それ以上は過剰防衛だって! 兄さんが捕まるの、俺嫌だからな」
 熱もあってか、涙目の光留は色気がすごい。本人が無自覚なのもあって、余計に性質が悪い。
 月夜は手で目元を覆い、ため息を吐く。
「だからお前を外に出すのは嫌だったんだ……」
「何だよ、それ……」
 月夜は自分が着ていたジャケットを光留の頭に被せる。
「とりあえず警察は呼んだ。もうすぐ来るはずだから、お前は顔を隠していろ」
「うん、ありがとう、兄さん。助けてくれて……」
「当たり前だろう、お前は俺の大切な弟なんだから」
 それから間もなくして警察が来て、男は逮捕された。
 2人も事情聴取され、帰る頃には辺りはすっかり暗くなっていた。
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