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しおりを挟む唇を奪われる。絨毯の床に尻餅をついた。雪崩れ込むように、菫は私の上に覆い被さる。
「…んぅっ……!?」
黒髪がさらりと流れ、甘やかな香りが、鼻孔を掠める。
唇が少し離れたかと思えば、また重なり、何かが口移しされた。小さな固形物だった。同時に真っ赤な舌が口内に侵入した。それは私の舌に絡まる。咽そうになり咄嗟に固形物を飲み込めば、菫が小さく笑ったような気がした。
角度を変えて、何度も何度も唇が重なる。息が出来ない。菫の胸を押して、ようやく空気を吸い込むことができた。菫は香水をつけているのだろうか。花のような香りが頭をくらくらさせた。
同時に、胸がざわつく。この香り。最近、どこかで嗅いだような気がしたのだ。
―…ラブホテルで会った女性と、同じ香りじゃないか……?
「はぁ…お父さんって、お母さんが大好きだよね」
菫はそう言って、極上の甘味を味わうかのように、緩やかな動きで私の下唇を食む。
「……っ……」
「嫉妬しちゃう。でも僕…顔は似てるでしょう?」
暗い声だった。ぼんやりと視線を上げる。菫は子供とは思えぬ妖艶な笑みを浮かべて言った。
「僕をあれだと思って、犯してよ」
ひっ、と小さく声を上げた。触られてるのだ。私の性器を。ズボン越しではあるが、指でくるくると円を描くように刺激される。
「でも。挿れるのは、僕ね?」
「な、な、何を…言ってる……菫……正気か……?」
「ふふふ、頭がおかしいと思う?ねえ、“息子と子作り”ってゾクゾクしない?僕、お父さんのこと孕ませたいな……」
「やっ、やめろ……!!」
絡みつく腕を振り払った。しかし菫は離れない。むしろ床に押さえつけられ、密着される。そのまま「お父さんお父さん」と甘い声色で首筋に頬ずりをされる。
愕然とした表情で呟いた。
「どうして…そんな…いきなり……」
「…あはは。いきなり?僕は昔からお父さんが好き。お父さんだけが好き。伝わってなかった?」
「…」
「お父さん、最近、デリヘルがお気に入りだよね。お父さんが予約してたから僕も使ったよ。お父さんと一緒の“穴”に挿れてるんだって思ったら興奮しちゃった」
冷や汗がどっと噴き出す。呼吸が浅くなった。
「なん…っ、なんで…、デリヘ……知って…っ…」
「全部知ってるよ。お父さんの次の客、ぜーんぶ僕だったんだ。今日もね。見て。お父さんの精液。勿体無いから持って帰ってきた」
「……はっ…?」
「お父さんの匂いがいっぱいするよ。…興奮する」
美少年は顔を赤らめた。
菫の手にあるのは使用済みのコンドームだ。小さな水風船のように膨れたそれの中には白濁液が入ってる。私が使ったものだと菫は言った。信じられない。ゴミ箱に捨てたはずだ。わざわざ部屋に入って持ち帰ってきたというのか。胃の中のものを全て出したくなる衝動に駆られた。
気持ちが悪い。
「ねぇ…あの“穴”のこと気に入ってる理由ってさ、やっぱりお母さんに似てるから?わざわざ似てるのを選ぶくらいなら、もう僕で良いんじゃないかな」
「気持ち良くするよ」と耳朶に口付けをされる。カチャカチャと音がした。嫌な予感がした。視線を下ろし目を見開く。菫が私のベルトを緩め、チャックを下ろしていたのだ。下着を緩く突き上げる男根に、菫は嬉しそうに息を吐いた。
「お父さん勃起してる」
「ぁっ…や、やめ……何をっ」
「はぁ…最高…。すっごくそそる。んっ……」
冷水を浴びせられたような感覚だった。目の前の光景に、目を見開いて、固まった。菫の美しい唇が、私の陰茎を咥えているのだ。陰毛を掻き分け、根本から形を確かめるようにゆっくりと舐め上げ、エラの張った先端を口に含む。目が合って気付く。菫の瞳は恍惚に蕩けていた。
「んぅ…、お父さんの、おいしいぃ……」
「ぁあ…っ、そんな、やめなさ…っ」
菫の頭が上下する。じゅぷじゅぷ…という卑猥な水音がリビングに響いた。目を逸らしたい。しかし与えられる快感がそれをさせてくれなかった。びくびくと腰が痙攣する。徐々に下部に血液が集まっていき、陰茎の芯が硬さを増すのが分かった。
「はあ、お父さ…、んぅ」
「す、みれっ…あぁ、あああ」
親子で何をしているのか。こんなのおかしいだろう。今すぐに菫を引き剥がして逃げないといけない。そう思っているのに体が言うことを聞かない。視界が朧げだ。思考が、鈍い。手足が思うように動かない。
何かが、おかしい。
「んっ、……ふぁ、あ、お父、さんっ、気持ち良い?僕のフェラ、好き?」
「あぁ…ぁ、あ、あぁぁ…いい…」
「あは…素直だね…。薬が効いてきたかな……ふふ」
頭の中がふわふわする。質問に対して肯定しかできない。自分が自分でなくなってしまった感覚だ。涎を垂らしながら口を開閉させた。滲んだ視界に映るのは、愛おしそうに、私の陰茎を頬張る息子だ。
「お父さん…一緒におかしくなろうね……」
「ぁあっ…あ、んぅ、…っ」
「僕だけ狂ってるなんて寂しいもの」
太腿に熱くて硬いものが押し当てられた。菫のものだろう。彼は腰をゆっくりと揺らし、私の太腿にそれを擦り付けながら、陰茎を夢中で咥え込む。
先端からくぷりくぷりと透明な液体が溢れ出るのが分かった。
菫はそれを舌を使って愛おしそうに舐め取る。どこでそんな技を覚えたのだろうか。咥え方、吸い込み方、舌使い、全ての動きが淫らで、手慣れた様子だった。陰茎は両手で支えられて、輪を作って上下に擦られる。その度に快楽の波が襲ってきて、腰がびくびくと跳ねる。
…気持ちが良いッ
「あっ、ぁあ…ああ…ああああっ!!」
手と口で刺激され我慢ができなかった。目の前が真っ白に染まり、絶頂に達した。背を大きく仰け反らせれば、菫は精液を搾り取るように先端を吸う。あまりの気持ち良さに菫の頭を掴んで、先端を咽喉へ押し付けてしまった。途端、歓喜のような高い声が上がる。
我に返って手を離す。「す、すまなっ……」と肩で息をしながら、言葉を零す。
菫は悶絶したように打ち震えていて、白濁液で汚れた舌をべっと突き出して言った。
「ぁぁ、嬉しいっ、お父さんに口内射精されちゃったっ…」
ごくっ、と喉仏が上下する音が聞こえた。
「はぁ…おいしい…っ…」
ちろりと舌を出し、唇についた私の精液を舐めとる。はぁはぁ、と全身で呼吸をしながら、そんな菫を見上げた。彼は絨毯に零れた精液までも指で掬い、ちゅぱちゅぱと飴玉を舐めるように味わう。その仕草は子供のようだが表情は妖艶でアンバランスな感じだ。
心臓がどくりと跳ねた。
咄嗟に目を逸らす。今すぐに逃げないといけない。この状況はまずい。
菫は華奢で私と身長が同じくらいだ。力尽くで振り払えば、私の上から退けることができるだろう。しかし何故だ。指、手首、脚、全てに力が入らない。
「お父さん、動けないよね…。じゃあ見てて…。お父さんに見られながらオナニーするから」
息を飲んだ。私に跨って腰を下ろす菫は、見せつけるように、制服のズボンのチャックをゆっくりと下ろす。下着から溢れ出たのは可憐な容姿から想像もできない雄々しいもので、それは腹部に触れてしまいそうなほど屹立していた。
「んっ、お父さんっ、ぁ、見てぇ」
指で輪を作ってじゅぽじゅぽと上下に擦り上げる。私のことを見下ろし、腰をくねらせる菫。顔は上気して赤らんでいる。なんて淫靡な光景なのだろう。顔が熱くなり、肌が粟立った。
「あっ、ん、お父さん、に、見られながら、気持ち良いよぉ…っ」
自分の呼吸が荒く乱れてると分かった。見てはいけない。実の息子だ。赤ん坊の頃から成長を見守った子だ。情欲を持ってはいけない。いけないんだ。しかし目が離せない。
「あ…っ、ぁ~っ、ぅんっ」
息子が快楽を貪る姿は、背徳的で美しい。
ぽたり、と菫の汗が顎を伝って落ちてきた。黒髪は艶やかに濡れていて白い肌にぺったりと張り付いている。凝視してる私に機嫌を良くしたのか、形の良い唇は弧を描いた。
「ぁぁ…ああ…達してしまいそう…。ふふ。でもまだ我慢する。お父さんのナカで達したいもの」
くてん、と力なく抱きつかれる。唇、耳、首筋に触れるだけの口付けを幾度となく繰り返された後「挿れていい?」と甘えるような声が小さく響いた。
「ぁ…、菫…、待っ……」
尻の窪みに亀頭を押し当てられた。入り口をゆっくりとなぞるように擦られる。
「お父さん…お願い……」
「………っ」
「大丈夫。痛くならないようにローションを用意したよ」
こめかみに唇を落とされる。
絨毯の上に放り捨てられていた通学鞄から取り出されたのは小さな桃色のボトルだった。目を疑った。ボトルのラベルには卑猥な用語が並んでいるのだ。
「これ、温感タイプなんだ」
一体どこからそんなものを手に入れたんだ。
菫は新しい玩具を自慢するようにそう言って、「これで気持ち良くなろう?」と蓋を開けた。
「ふふ、ぬるぬる…」
慣れた手つきでローションを自身の手のひらに垂らす。そうして私の窪みに指を這わせた。
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