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二章

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『…ヒロ…全部入った……』


 おそらく数十分は経っただろう。ナオの肉杭はようやく根本まで収まったようだ。その拍子に肌のぶつかる生々しい音が聞こえ、余すことなくナオと繋がったことを実感してしまう。


「ぁ、っ……」
『ああ…ヒロと一つになってる…』


 ナオはニコニコと満足そうだ。

 対して俺はぐったりしていた。挿入されてる間に何度精を吐き出してしまったんだろうか。しゅるしゅると何かがシーツを這う音が聞こえる。もはや顔を上げて確認する気力もない。それに見なくても分かる。先程から陰嚢や乳首を刺激するものは、ナオの背部から伸びる管だろう。それが俺の腹部をべっとりと濡らした精液をぺろぺろと舐める。


『ヒロ…動いていい…?』
「…ぅん……」


 体中の性感帯を刺激された状態で、正気を保てる人間はどれだけいるだろうか。
 俺はナオに問われるまま、首を縦に振った。


 …それが天国であり、地獄の始まりだった。


「んぁああァッ……!?」


 甘い悲鳴を上げた。ズルズルと半ばまで抜かれた肉栓が、勢いをつけてバチュンッと最奥まで貫かれたのだ。その瞬間、目の前にバチバチと白い閃光が瞬く。


「や、あっ、ああっ…ぁ、ッ、ああ」


 内腿がビクビクッと痙攣した。

 生きていてこんな心地は初めてだった。どんな言葉でも言い表せない。そんな感覚が駆け巡る。痛いわけじゃない。どちらかと言えば“ようやく欲しいものを貰えた!”と下腹部はヒクヒクと嬉しそうに蠕動している。
 たった一突きでまたもや絶頂に大きく近づいてしまったようだ。半勃ちだった俺の陰茎は、ナオの腹部に裏筋を押し付けるように反り返る。


『ふふ…ヒロのおちんちん僕のお腹にちゅーしてて可愛い…』


 甘い囁きの裏で、ぱちゅんぱちゅんッと淫音が響き渡る。そんな音に合わせて体全体が揺さぶられる。


「ぁ、ん…っ、ぁ、あぁっ」


 ナオの腰使いは激しいが乱暴というわけじゃない。無駄がない計算された動きで、規則的に良いところを突く。
 俺が喜んでることを察知したんだろう。ナオは俺をジッと見つめながら、『ここが好き?』と腰を動かす。


「ぁ、あ……す、き…っ…」
『じゃあいっぱい突いてあげる』


 ナオの表情は相変わらず綺麗な笑顔を保っている。これだけ熱心に腰を動かし続けても、涼しい顔をしていられるのは流石アンドロイドというべきか。その美しい顔が歪むのはだいたい『可愛い』とか『好き』とか愛の言葉を囁くときだけだ。

 その時ふと思った。

 ナオに快感はないのだろうか。ナオは今まで自らの快楽を貪る素振りを見せたことがない。“アンドロイドはそういうもの”と言われればそれまでだが、この行為は一方的に俺に快感を与える儀式のようだ。俺が「良い」と言えば、ナオはそこを突く。その繰り返しだ。

 …俺だけ、気持ち良くなってないか………?

 …愛し合うって、そういうものなのか……?

 心の中で、わずかに残った冷静な自分がそう言った。

 

「あぁっ!」


 びくんっと仰け反る。ぼんやりしてる思考を見破られたのか。ひときわ激しく杭を打ち込まれ、耳朶をかぷりと喰まれる。


『何考えてるの?』
「…ぁぁっ」
『いきなり可愛い声を聞かせてくれなくなったね。まさか僕と繋がってるときに他の人間のことを考えた?』
「あぁあっ、そこ、ぐりぐりって、ゃ、ぁッ……」
『…へぇ否定しないってことは考えたんだ。誰?男?女?もしくは他のアンドロイド?愛し合う僕たちを邪魔するやつなんて許せない』
「ちっ、ちが…っ、」
『じゃあ何考えてた?』


 奥を先端でグリグリと押し潰すナオ。一体何を想像してるのか。その瞳の奥には嫉妬の炎がメラメラと揺れている。


「―…こ、これ、なお、も、きもちいい、のかなっ、て」


 何がそこまで逆鱗に触れたのか分からないが、揺さぶられながら必死に言葉を紡いだ。

 そうすればナオは面食らったように、目をしばたたかせた。


『……え?』
「おればっかり、きもちいいの、ずるい、だろ、っだから、なおも、きもちよくなって、欲しいな、て」


 「そうかんがえてた」と言い終わる頃にはナオの腰は止まっていた。シン…と静寂が広がる。ナオは俯いて黙ってしまった。

 …どうしよう。俺はまたナオを怒らせるようなことを言ってしまったのかもしれない。恐る恐る呂律の回っていない唇で「ナオ……?」と名前を呼ぶ。

 その時だった。ナオに唇を奪われた。食べるようなキスだった。あまりに勢いよくがっつかれたから、心の中で「ヒッ」と悲鳴を上げて、ぎゅっと目を閉じる。しかし、ぽたぽたと落ちてきた水滴に目を開けた。


「え……?」


 今度は俺が面食らったように目をしばたたかせる番だった。

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