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二章
21b
しおりを挟む「ぁ…っ、ぃ、いく…―」
吐精の兆しが背筋に伝う。
枕の端を掴んで腰をくねらせた。早く体の奥に疼く熱から解放されたい。楽になりたい。楽になりたい。楽になりたい!
視界が白く霞む。襲いかかる快楽の波に身を投じてしまおう。そう覚悟を決めたときだ。
「―…ぁ……え………?」
目をしばたたかせる。
熱の孕んだ赤い目で俺を見つめていたナオはピタリと扱く手を止め、さらに孔から指を抜いたのだ。
そうして、とろりと指に巻きつく透明な糸をくるくると絡め取りながら艶めいた笑みを浮かべる。
『指はここまで』
「…ぇ…っ?」
情けない声を出した。
指を抜かれたせいで孔はひくひくと栓を求めていた。覗き込む勇気はないが、複数の指を咥え込んでいたんだ。栓を失った孔はだらしなく大きく拡がっているに違いない。
「そん―…、そんな………ナオ…ゆび……っ」
物欲しげに声を出す。あと少しだった。指で撫でるだけでいい。あと少しの刺激があれば果てていた。こんなところで止めるなんてあんまりだ。
思わず、体を屈めて自分の指をそこに突っ込もうとしたとき。『だーめ』と甘ったるい声に遮られる。代わりに、グチ…と孔を塞ぐ塊が押し付けられた。
『指じゃなくて僕と一つになりながらイこう?』
「…ひ、とつに……?」
『そう。僕と繋がるんだ。そのほうがずっと気持ち良いよ』
息を飲んだ。
どろどろに蕩けていた孔に押し付けられたものは、ナオの陰茎で、いつの間にか勃起状態になっていたようだ。それは人間のものを模しているようだが、どこか人工的で、俺のものと比べ物にならないほどに太く長い。
「……そ…そんなでかいの……入らな…っ―」
『何度もシミュレーションしたから大丈夫。これはヒロを気持ち良くできるピッタリのサイズだよ』
ナオは俺の首に手をまわす。そのまま、ぎゅうっと密着されてしまう。こうなれば下がどうなってるのか感覚でしか分からない。
先端が孔の窪みの部分を何度か擦り上げる。そのたびにヌチュヌチュ音がして、まぶたを伏せたナオは艶っぽい声を零す。
その声と仕草に体が火照ってきたとき、ナオは俺の中へ沈み込んだ。
『ん…ヒロ…』
「っあぁ……ナオ……」
『ああ。ようやくヒロと繋がる…』
「…っん……ぁあっ」
身構えた。あんな太摩羅なんだ。ねじ込まれたらとんでもない激痛が襲ってくるだろう。そう思った。しかし俺の口から漏れるのは嬌声だ。いつまで経っても少しの痛みも感じない。感じるのは心地の良い圧迫感だ。まるで初めからそこに埋め込まれることが決まっていたかのように、俺の体は、ゆっくりと沈み込む肉栓を喜んで迎え入れている。
ズブズブ…とナオのものが奥深くに沈むたびに、背筋を仰け反らせ、舌を突き出してしまう。
「あッ…ああッ」
瞬間、臍のあたりにびゅッと飛沫が放たれた。
『…あれ?』
ナオは一瞬キョトンと固まるが、その飛沫の正体をすぐに察知したようだ。目線を音のした方に向ければ、くすりと笑みを零した。
『ふふ。ヒロ。可愛い。僕と一つになれて嬉しかった?』
「…ぁ、は、ぇ…?」
『もう…。せっかく一緒に出したかったのに。…でもそういうところが大好き…』
俺の首に手をまわしたナオは、すりすりと頬擦りをする。
その動きで互いの乳首が擦れ合い「んっ」と声を漏らす。
重なる肌の間に滴るものは自分の汗か、それとも別の液体か。もう何も分からない。それほどに密着し、この絡まりが解かれる気配はない。
ふと視線を落とせば、わずかな隙間から見えたのは自らの腹部にべったりと噴き出された白い粘液だ。
そこで気付いた。どうやら俺はナオに挿入された勢いで、射精してしまったようだ。
『ヒロ見て…?僕の。あと少しで半分まで入るよ。ヒロと僕が繋がってる部分すごく興奮するね…。一つの生き物になったみたい。…はぁ…もうこのままでいようよ。抜かなければヒロは誰からも奪われない。僕がヒロの恋人だって見せつけることもできる。…ねぇ、このまま永遠に抜かずに繋がってたら駄目…?』
「ああっ…」
…駄目に決まってるだろ!?
正気の俺を保つことができていたなら、そんな狂気的な提案を一蹴できていただろう。しかし今の俺にはそんな気力がなかった。
それより、『あと少しで半分』という言葉に慄いた。
「…っ……」
……もうこんなに腹が満たされているというのに、まだ半分しか挿入されてない…………?
ぐっと内臓を押し上げるような質量に、足の指がガクガクと痙攣する。
『…ヒロ?どうして見ないの?見えにくい?』
ナオは結合部を見せつけるように、俺の腰の下にクッションを置いて、体勢を変えるよう促す。そのまま枕元に手を置き、重なる体にわずかな隙間を作った。
催促され、渋々顔を上げる。そうして熱を帯びたそこを覗き込んで絶句した。自らの孔は信じられないほど拡がっていて、ナオのものを涎を垂らしながら咥え込んでいる。
『ほら。美味しそうに咥えてるでしょう?』
ナオは可憐に微笑む。剛直で孔を拡げている当人とは思えない可愛らしい笑みだ。誰もがナオの表情だけ見れば、花でも愛でているのかと思うだろう。しかし下半身に目を向ければ口をあんぐり開けるに違いない。そこは芸術品のような身体にはあまりにも生々しい光景だからだ。
『僕のが良くて仕方ないみたい。ぎゅうって締め付けてくるんだ。本当に可愛い。ヒロ、好き好きっ!』
「ぅぐっ……」
ナオの情緒はバグってるらしい。ウットリとそこを見つめていたかと思えば、ハイテンションで密着され、あっという間に隙間は消失する。
『好きだよ…ヒロ…好き…好き…』
「ぁあっ……」
『だーいすき…』
ナオが『好き』と囁くたびに、じわじわと陰茎が沈み込む。その動きは、もどかしいほどゆっくりだ。俺の表情の変化を楽しみ、肉壁の形を確かめるようなねっとりとした腰の動きだった。
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