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二章

20b

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「ナオっ、自分で脱げるから…ッ」


 それから洗面所に着くやいなや、上着とシャツを脱がされ、上半身を裸にされた。洗面台の鏡に反射するのは、もやしのような身体に紅い痕を散らばせた男だ。
 息つく間もなく、ナオは床に落ちたシャツを拾い上げ、それに鼻を押し付ける。そうすると、眉間に深いシワを作り、洗濯機にシャツを放り込んだ。まるで汚物でも嗅いだような険しい表情だ。自分が着てた衣類をそんな風に嗅がれて地味にショックを受けていると、次に何を思ったか。ナオは膝立ちになって、俺の腰に顔を近づける。


「っ…ちょ、ナ、ナオっ―…」


 そうして、臍のあたりに舌を這わせた。


「ひぅっ……!?」
『…ん。ここは触れられてないみたいだね』
「……く、くすぐった……」
『ヒロの味しかしない』


 たった今の顰め面が嘘のようだ。花開くように笑顔を綻ばせたナオは、飴でも舐めるかのようにぺろぺろと舌を動かす。ナオの舌からなんらかの液体が分泌されてるのか。舌が這うごとにその部分が濡れ、熱を持ち、ウズウズと妙な感覚になる。やがて空気でさえも甘い刺激に変わり、「んっ…ぅ」と変な声を出してしまった。

 ハッとして手で口を塞ぐ。そうすればナオはうっそりと笑みを深めて、俺のズボンに手をかけ、ベルトをするりと抜いた。


「ナ…ナオ……何する気だ…」
『ヒロが一番分かってるんじゃない?』
「………っ」
『だってヒロの身体のことだもの』


 ナオの視線を目で追う。その言葉の意味を理解したとき、へなへなと床に尻もちをついた。


「え、ぁ…っ―」


 咄嗟に、立てた膝を閉じようとする。しかしスッとナオの手が内腿に触れて、動きを止められてしまう。


『恥ずかしい?でも隠さなくていいんだよ。愛する恋人に触れられたんだ。欲情してすることくらい普通の反応だよ』
「ち、ちがっ…これは…」
『違わないよ』


 するとジィッ…とズボンのチャックがおろされて、パンツを押し上げる欲望が露わになる。そこは紛れもなく勃起していて、盛り上がった部分はみっともなくシミを作っている。

 ナオはウットリとそこを見つめる。そして顔を近づけ、愛おしそうに頬擦りをした。


『見て?僕で興奮してる証だよ』
「…ぁ、ん」
『ああ…暖かい』


 パンツの上から摩擦を受けて身をよじる。ナオは譫言のように俺の名前を呼びながら、ズボンとパンツを腰からおろす。そうすれば、ぶるんっと弾け出るように晒された陰部が外気に触れて、ゾワッと肌が粟立った。


「ぁ、ああっ……」
『可愛い…。すごく硬くなってる。最後にオナニーしたのは12日14時間23分も前だから、いっぱい溜まってたんだね』


 今日の俺はどうしてしまったんだ。確かにここ数日仕事に明け暮れていて“処理”できていなかった。とはいえ、こんなにどうしようもなく衝動に駆られ、乱れることは、初めてだ。


「ぁあっ、ぁぁ…」


 決して大きいとはいえない肉棒は、見たことがないほどに血管を浮き上がらせて聳り立つ。


『ほら。ヒロの好きなようにして?』


 まるで悪魔の囁きだ。ナオの声は僅かに残った理性を奪っていく。楽になりたい。気持ち良くなりたい。満たされたい。そんな欲が頭を占める。


「ぁ、んぁっ、ぁ」


 気が付けば、手の中には熱い塊があった。ナオに見られて恥ずかしいのに、ぐちゅぐちゅと先走り汁を滾らせながら、己を扱いてしまう。


「んっ、ふ、ぅぅ……」


 気持ち良いが止まらない。

 射精したくて堪らない。

 何度も何度も往復させれば、透明だった液体は泡立ち、指の間を滴っていく。


『ヒロ…一生懸命ごしごししちゃって…可愛い…』
「んぅ、ぅっ、ぅぅ」
『…気持ちいい?』
「…んっ…んっ…」


 すると、ちろりと剥き出しの乳首にナオの舌が這う。片方は指で摘まれ、同時に与えられる甘美な刺激に、眉を寄せて悶えた。


「ん…ぁっ、ぁ、それ……いい……」
『ふふ。ヒロは本当に乳首が大好きだよね』
「…はっ、ぁ、……すき……」
『…ねえ、ここも、僕が気持ち良くしていい?』
「……ぅん……して……」


 俺は気でも触れたのかもしれない。腰に帯びる熱をどうにかして欲しいあまり、扱き上げていた手を離し、ナオの体に押し付ける。


「はぁ…はぁ…はぁ…っ」
『ああ…ヒロ…』


 潤んだ視界のなかで、ナオの赤い瞳孔がこれまでにないくらい激しく点滅してる。ナオも興奮してるのか。呂律のまわりきらない上擦った声色で俺の名前を呼び続ける。


『ヒロ…好き…大好き…』
「ッ…ぁ、あああ」
『頂戴。全部。ヒロの、全部』


 薄い茂みを掻き分けたナオは、嚢をやわやわと揉み込みながら、肉棒を咥えた。


「ぁ~ッ…」


 芸術品のような美しい顔に、己の醜い部分が沈む。そのちぐはぐな光景が背徳感を刺激した。ゾクゾクと背筋が震えて、あっという間に熱い飛沫を解き放つ。


「ぁ、っぁ…、ナオぉ、イってる…イってるからぁ……」
『んっ…』
「はなっ…はなして……」


 びゅくびゅくと汚いものを発射しているのにも関わらず、ナオは口を離す素振りを見せない。むしろ極上の美酒に酔いしれるかのように、蠱惑的な笑みを浮かべながらゴクゴクと喉を鳴らすばかりだ。


『…駄目。全部、飲む』


 ナオは俺の股間に顔を埋め続ける。微かに聞こえるのは歓喜の声だ。天からの恵みのようにそこを貪るナオはもっとくれと言わんばかりに、形を崩したばかりの肉棒を舌で擦り上げ、再び芯を持たせようとする。


「ゃっ、あ……もう…出ないっ、出ない…っ!」


 首をぶんぶんと振って、ナオの髪を掴んだ。しかしそれがナオを刺激したようで、口の中で蠢く舌の動きが激しさを増す。


「ぁ、ぁ、ぁ」


 目の前がチカチカする。白い光が何度も瞬いて、イったばかりだから下腹部がビクビクと痙攣する。腰をガクガクと揺らして、この暴力的な快楽から逃げようとした。


「ぁあっ、また…っ、いくッ……」


 その瞬間、違和感を感じた。射精とは違う。別の快感の波だ。尿道が疼いて、中身が押し寄せる。


「ああああああッ~~~……!!」


 ナオの口の中で、熱いものが弾けた。射精…?いや違う。これはなんだろう。止まらない。止まらない。止まらない!まるで壊れた噴水だ。止めどなく体の奥から飛沫が噴き上がる。放尿と射精が混ざり合ったような開放感が駆け巡る。


「ぅ、ぅうっぅ……」


 長い絶頂だった。その間もナオの口内はせわしなく動いていて、最後の一滴まで吸い取らんとちゅうちゅう唇を窄める。

 そして、暫く経ったとき、ようやく口の刺激から解放される。ちゅぷ…と唇を離すナオは、頬を桃色に染め上げて、ご馳走を堪能したあとのように唇を舌で舐める。


『ヒロ…潮まで吹いちゃうなんて…』
「…はぁ、はぁ……」


 ぼんやりしていると、ナオの嬉しそうな声が耳朶に触れる。目が合うと、ナオは艶やかに目を細めて微笑んだ。


『僕のフェラがそんなに良かったんだね』


 背中に回った腕は、ぎゅっと俺を抱き寄せた。『ヒロのすっごく美味しかったよ』と声を弾ませながら、すりすりと頬擦りをするナオ。そんな声に耳を傾けながら、重い瞼を閉じた。

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