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一章
3b
しおりを挟むふらふらと歪んだ視界の中、鞄から鍵を探す。
マンションの鍵が見当たらない。うんうんと唸ってるとエントランスの扉が開いた。
『おかえり。ヒロ』
俺が住むマンションはオートロックだ。俺の部屋は3階。わざわざ1階のエントランスまで降りてきたのか、まさかずっと待ってたのか、目の前にはナオが佇んでいた。携帯で一日中ショタバージョンのナオを見てたから変な感じだ。「おっきくなったなぁ」と親戚のおっさんみたいな事を言いながら、ナオの頭を撫でた。
「ナオが作ってくれた資料大活躍だったぜ!初めてあの本部長にも褒められりゃんだ!神様仏様ナオ様~~~!!まじかんしゃ~~~!!」
『ヒロ、酔ってるね』
広げられた腕の中に飛び込む。ぎゅっと抱き締められた。アンドロイドに体温はない。が、服を着てるからそこそこ温もりを感じる。
『可愛いヒロ、可愛い可愛い』と頬ずりをされる。人工皮膚の冷たい感触に酔いが醒めてきた。
あれ、そういえば、どうやって帰ってきたんだっけ。
本部長と上司と3人で料亭に行って、呑んで、呑まされ続けて、気が付いたらタクシーに乗ってたな…
ぼんやり半目になってると突然、ひょいと体が浮遊する。ナオに横抱きにされたのだ。所謂、お姫様抱っこ。ふらふらな俺を部屋まで運んでくれるんだろう。まさか30を超えてお姫様抱っこを経験できるとは思わなかった。酒臭いサラリーマンをお姫様扱いか。世も末だなぁ、なんて考えながらへらへらする。
「おろせよ~。さすがに恥ずかしい―」
『ヒロ』
「―ぞ~、って……ぇ?」
『捕まえた』
口を開けたまま、顔を上げる。部屋に入って、ぱたり、と扉が閉まる音が響いた。
部屋は真っ暗だ。
「ぉ……?」
『ヒロ、僕を無視して楽しそうに笑ってたね』
「……う、…うん?」
『今日は14人と目を合わせてた。そのうち4人と身体的接触有り。僕が傍に居たのに堂々と浮気』
「う、浮気……!?」
『浮気の原因は僕に魅力がないから?』
ナオの瞳は、危険信号のように、真っ赤に点滅していた。
「な、なに……?何の話―」
『分析した。どうしたらヒロが僕に夢中になるか』
息を飲んだ。しゅるしゅると音が聞こえる。暗くてよく見えない。しかしナオの背後に薄っすらと影が見える。
「ぇ……?」
天井に向かって伸びていく細い影を目で追った。ナオの背部から管のようなものが伸びているのだ。それが俺の手足に巻きつく。
『分析結果、ヒロを夢中にさせるには“快楽”が必要』
「ひっ……」
『怖がらないで。癖になるくらい、僕の愛で溢れた快楽をあげる』
アンドロイドに性欲はない。
機械だからその筈だ。しかしナオの瞳は熱く蕩ける。瞳の奥には情欲のような光が揺れていた。
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