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異界の老騎士
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「読み書き78点。会話82点」
「よし!」
「………あれから半年、君って頭のネジ外れてるんじゃない」
「………かもな」
半年間、全く別の世界でたった2人(実質1人)としか関わってないくせに、普通に過ごしてた。普通に過ごせる時点で普通じゃないのかもしれない。
「そう言えば長い監禁生活は監禁者と被監禁者の間に共感性を生むって、君の世界の知識にあるね」
「ストックホルム症候群の事か。まあ、順応するって意味じゃ変わらないのかもしんないが……」
生存的戦略の一つで、監禁者を絆すのだったか?
本人はそんなつもり無いと聞くから、マコト自身そうなっていても自覚はないだろうが。
「まあ私の召喚者としての腕が良かったのもあるのかもね」
「………女神様だもんなあ」
きちんと元の世界に未練がないのを召喚できたのは被害者の立ち位置からしても素直に凄いと思える。
「まあ頭のネジが外れてるのは物語の主人公……英雄になるのに必要な要素だし、良かったね」
「良くねえよ。物語始めるにはゼレシウガルのおっさんと戦わなきゃ行けねぇじゃねえか」
流石に半年もあれば、彼にも慣れてきた。それが自分が異常だからなのか普通なのかは判断できないが。
「それに、あのおっさんは料理が美味い。どうせなら一緒に旅をしたいものだな」
「それは………楽しいだろうね。でも、無理さ。呪いが解ける時は、あの子が死者に戻る時だからね」
「……………俺みたいに不死に出来ないのか?」
「無理。そもそも法則外の生き物である君ならともかく、私達の世界の法則化のあの子には与えられる力に限度がある」
「世界の違いが、与えられる力に差を生むのか?」
転生、転移系小説も似たような理由だったりするのだろうか? 確かに中には世界の格が、とか言った設定もあった気がする。
「この世界の生き物は竜を除き全てに私達神々の恩恵が宿っている。大きな力を与えすぎると、それと混じって変調を来たす。その結果、壊れた人間も居たらしいよ」
「俺達の祖先もこの世界の被造物とまぐわった可能性があるんじゃなかったのか?」
「それこそ何万年も前だろ? 血は薄まり、私達の恩寵無き世で世代を積んできたんだ。魔力なんかはあっても、もう別物さ。それにそもそも、どんな世界でも知的生命体は似たような形を取るだろうし、魔力に関してだって推測の域を出ない」
基本的にどんな生物も手足は合わせて4本。昆虫などは神経節を多く持つことで6本の足を、蛸に至っては足一本一本に脳を持っている。
「その点を踏まえるなら、通常生命にとって丁度いい手足の数は4つ。脳が発達すれば、傷ついた時治るのに時間がかかる、あるいは治せない牙や爪より物を使うようになるだろうし、だったら2足で立ったほうが良い。住む場所を何時でも変えれるように毛皮を他の生物から奪うなら、自身の毛にこだわる必要もない。なら、最終的には似通った形になるでしょ」
「………進化の場合そうでも、この世界は神々に人間が作られたんだろ?」
「まあね。魔法とかを使わせずに発展させるなら、頭の良い生き物として脳を発達させその上で繁殖できるようにある程度の強さと食料を節約できる形を選ぶと、そうなるもん。まあ結局魔法の力とか自分達で目覚めてたけど」
と、マコトを指差すイーナ。ならば神々が人と似ているのは何故なのか。
「案外神も記憶がないだけで進化してきたのかもね」
「記憶がない?」
「気づけばそこにいたんだよね。そこに発生してた……それ以前何をしてたのか知らないし、未だに自分が生まれた理由だって解ってないんだ」
「そして最初の神は、暇だったから世界を創った」そう笑う。
その辺は、本当に神らしい。だからこそ、3万の時を無為に過ごせるのかもしれない。
「そういや、神様って基本的に人に正しく生きろって言うけどこっちの世界の神様達はどうなの?」
「正しさって言うのは君達を守る為のものだよ。人を殺してはいけません、傷つけてはいけません。全部人を守る為の法だ。人が好きならそれを守らせるし、人が欲望のまま暴れるのが好きな神なら推奨する。その辺は人それぞれならぬ神それぞれだね」
「正しく生きよ、って全ての神が思ってる訳じゃないのか。なら、地獄はないのか? あれは、神が罪人裁くべしって作ったところだろ?」
「あるよ。死してなお罰を与える事を人が願ったからね」
なのに生きてる間にも罪を償わせると称して拷問をする所もあるのだから不思議なものだ、と笑うイーナ。マコトからすれば笑い事じゃないのだけど。
「俺が死んだら、どうなるんだ?」
「そりゃあ、こっちの世界の輪廻に交じるだろうね」
「まあ、今はどうせ死なないから良いか。じゃ、勉強も終わったし、後でな」
「ああ、また体鍛えるの? 私から言わせれば成果の少ない鍛錬にしか見えないけどね」
「これでも筋肉ついてきたんだけどな」
「どんなに派手な筋肉をつけても、断面積に見合った出力しか出せないうちは、この世界では生きていけないよ。いや、不死だから生きてはいけるけど、死なないだけだね」
「よし!」
「………あれから半年、君って頭のネジ外れてるんじゃない」
「………かもな」
半年間、全く別の世界でたった2人(実質1人)としか関わってないくせに、普通に過ごしてた。普通に過ごせる時点で普通じゃないのかもしれない。
「そう言えば長い監禁生活は監禁者と被監禁者の間に共感性を生むって、君の世界の知識にあるね」
「ストックホルム症候群の事か。まあ、順応するって意味じゃ変わらないのかもしんないが……」
生存的戦略の一つで、監禁者を絆すのだったか?
本人はそんなつもり無いと聞くから、マコト自身そうなっていても自覚はないだろうが。
「まあ私の召喚者としての腕が良かったのもあるのかもね」
「………女神様だもんなあ」
きちんと元の世界に未練がないのを召喚できたのは被害者の立ち位置からしても素直に凄いと思える。
「まあ頭のネジが外れてるのは物語の主人公……英雄になるのに必要な要素だし、良かったね」
「良くねえよ。物語始めるにはゼレシウガルのおっさんと戦わなきゃ行けねぇじゃねえか」
流石に半年もあれば、彼にも慣れてきた。それが自分が異常だからなのか普通なのかは判断できないが。
「それに、あのおっさんは料理が美味い。どうせなら一緒に旅をしたいものだな」
「それは………楽しいだろうね。でも、無理さ。呪いが解ける時は、あの子が死者に戻る時だからね」
「……………俺みたいに不死に出来ないのか?」
「無理。そもそも法則外の生き物である君ならともかく、私達の世界の法則化のあの子には与えられる力に限度がある」
「世界の違いが、与えられる力に差を生むのか?」
転生、転移系小説も似たような理由だったりするのだろうか? 確かに中には世界の格が、とか言った設定もあった気がする。
「この世界の生き物は竜を除き全てに私達神々の恩恵が宿っている。大きな力を与えすぎると、それと混じって変調を来たす。その結果、壊れた人間も居たらしいよ」
「俺達の祖先もこの世界の被造物とまぐわった可能性があるんじゃなかったのか?」
「それこそ何万年も前だろ? 血は薄まり、私達の恩寵無き世で世代を積んできたんだ。魔力なんかはあっても、もう別物さ。それにそもそも、どんな世界でも知的生命体は似たような形を取るだろうし、魔力に関してだって推測の域を出ない」
基本的にどんな生物も手足は合わせて4本。昆虫などは神経節を多く持つことで6本の足を、蛸に至っては足一本一本に脳を持っている。
「その点を踏まえるなら、通常生命にとって丁度いい手足の数は4つ。脳が発達すれば、傷ついた時治るのに時間がかかる、あるいは治せない牙や爪より物を使うようになるだろうし、だったら2足で立ったほうが良い。住む場所を何時でも変えれるように毛皮を他の生物から奪うなら、自身の毛にこだわる必要もない。なら、最終的には似通った形になるでしょ」
「………進化の場合そうでも、この世界は神々に人間が作られたんだろ?」
「まあね。魔法とかを使わせずに発展させるなら、頭の良い生き物として脳を発達させその上で繁殖できるようにある程度の強さと食料を節約できる形を選ぶと、そうなるもん。まあ結局魔法の力とか自分達で目覚めてたけど」
と、マコトを指差すイーナ。ならば神々が人と似ているのは何故なのか。
「案外神も記憶がないだけで進化してきたのかもね」
「記憶がない?」
「気づけばそこにいたんだよね。そこに発生してた……それ以前何をしてたのか知らないし、未だに自分が生まれた理由だって解ってないんだ」
「そして最初の神は、暇だったから世界を創った」そう笑う。
その辺は、本当に神らしい。だからこそ、3万の時を無為に過ごせるのかもしれない。
「そういや、神様って基本的に人に正しく生きろって言うけどこっちの世界の神様達はどうなの?」
「正しさって言うのは君達を守る為のものだよ。人を殺してはいけません、傷つけてはいけません。全部人を守る為の法だ。人が好きならそれを守らせるし、人が欲望のまま暴れるのが好きな神なら推奨する。その辺は人それぞれならぬ神それぞれだね」
「正しく生きよ、って全ての神が思ってる訳じゃないのか。なら、地獄はないのか? あれは、神が罪人裁くべしって作ったところだろ?」
「あるよ。死してなお罰を与える事を人が願ったからね」
なのに生きてる間にも罪を償わせると称して拷問をする所もあるのだから不思議なものだ、と笑うイーナ。マコトからすれば笑い事じゃないのだけど。
「俺が死んだら、どうなるんだ?」
「そりゃあ、こっちの世界の輪廻に交じるだろうね」
「まあ、今はどうせ死なないから良いか。じゃ、勉強も終わったし、後でな」
「ああ、また体鍛えるの? 私から言わせれば成果の少ない鍛錬にしか見えないけどね」
「これでも筋肉ついてきたんだけどな」
「どんなに派手な筋肉をつけても、断面積に見合った出力しか出せないうちは、この世界では生きていけないよ。いや、不死だから生きてはいけるけど、死なないだけだね」
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