成金悪役令嬢なので莫迦でかわいい男の子としっぽり部活動(意味深)いたしますわっ!

かんのななな

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発情期の雌犬に訂正いたします

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 腕に籠を提げて、アイラは客間の扉を二度叩く。

「どうぞ」

 マリクの声に促されて入室する。
 籠をサイドテーブルに置き、寝台に腰かけて靴を脱ぐ。
 マリクは読みさしの教科書をぱたんと閉じる。

「勉強してたのね」
「うん、さっぱりなんだけどさ」

 教科書の表紙に『魔導数理学基礎・新訂第三版』とある。
 錬金術なかんずく魔道具開発における基礎理論書である。
 二十年前に初版が発売されて以来、改訂を重ねる良書である。

「魔導数理学は数学を援用するから抽象的で難解なのよね」
「やっぱりそうなのかあ。魔力代謝の形式化で詰まっちゃってさ、魔導論理に進めないんだ」
「初学時は読みとばしたほうがいいわよ」
「そんなんでいいんだ?」
「全体を把握してから戻ってきて再読なさい」
「ありがとう。希望が見えてきたよ」
「どういたしまして」

 アイラは微笑し、真剣な面持ちでマリクを見つめる。

「まじめな話があります」
「はい」

 マリクは居住まいを正す。
 アイラはサイドテーブルから籠を引きよせる。

「ファリ姐に定価で売りつけられた避妊具です。緊張して濡れにくいかもしれないからって、潤滑剤をおまけしてくれました」
「僕も買っておきました。避妊具だけですけど」

 マリクはサイドテーブルの抽斗を開けて、紙袋を取りだす。
 ふたりは顔を見合わせて笑みを交わす。

「僕たち、気が合うね」
「息も合っているわ」

 どちらからともなく服を脱ぎはじめる。
 全裸になり、肌を触れあわせ、口づけを交わす。
 あおむけになったマリクにのしかかる。
 かたく抱きしめられて吐息がもれる。

「重くない?」
「羽根のように軽いよ。飛んでいかないように抱きしめなくっちゃ」
「それも指南書に書いてあったの?」

 マリクは答えず、アイラの腰に手をやり、身体を浮かすように促してくる。
 アイラはマリクの頭を抱き、腹をまたいでおしりを浮かせる。
 乳房にたくさんキスされる。
 焦らすように乳首に息を吹きかけられる。

「下向きだとおっぱいっておおきくなるんだ」
勃然むかっ」

 乳輪ごと口に含まれる。
 ゆるく全体を吸いながら、乳首のまわりをなめてくる。
 左胸も乳輪をむにむにつままれる。
 マリクの頭を抱きしめる腕に力が入る。

「吸ってよぉ。きゃふっ、ひにゃぁ……あっ、ふーっ、ふーっ、はぅ……」

 乳首を唇でしごかれる。
 舌先でつんつんつつかれ、ぺろぺろなめられ、ちゅうちゅう吸われる。
 音を立ててしゃぶられると恥ずかしいけどうれしくなる。
 腰を支えていた右手が恥丘をさすりはじめる。

「じょりじょりしてる」
「あんたのために刈ったんでしょうがっ!」

 銃術奥義はアイラの陰毛のおかげで完成したのである。
 こめかみをぐりぐりと親指で押してやる。

「いたいいたい、ごめんなさい、ありがとう」
「そういえば、いたしちゃったら、乙女のおけけを供給できなくなるけれど」

 野外演習中に渡された陰毛を三十に分けて、マリクは強装弾をこしらえた。

「二十九包が残っている。使いきるまでに新しい奥義を考えるよ」
「たのもしい、のかしら」
「だって僕はアイラとしたいんだもの」
「あたしもよ」

 割れ目を指でゆっくりなぞられる。
 マリクをまたいでいるから脚を閉じようとして閉じられない。
 腰を遠ざけようとするとしりたぶをつかんで引きもどされる。

「とろとろがあふれてきた」
「いわないでいいよぅ。ひぅ……ぁん」

 そろえた指と掌がアイラの股間をぴったりおおう。
 ぎゅっぎゅっと押してきたり、ちいさく円を描くように動かされたりする。
 陰唇が割りひらかれて、添わせた中指の内側で浅くこすられる。
 すくいあげた愛液を陰核のまわりにまぶされる。

「ふぁっ、あぅっ、あーっ、あーっ、えぅ……やさしくなでなでするのだめぇ」

 クリトリスの周囲をそっと撫でながら、ときどきさきっちょに触れてくる。
 三本の指でくすぐるようになでられる。
 腰をゆらゆらと揺らしてしまう。
 耳元にささやく。

「ねぇ、マリク、もぉ、しようよぉ」
「うん。付けるね」

 アイラは半回転して身体をどかす。
 マリクは上体を起こし、サイドテーブルに手をのばす。
 潤滑剤の小瓶をアイラに渡し、ぎこちない手つきで避妊具を装着する。
 アイラは潤滑剤を局部に塗りこめる。

「残ったの、マリクにも塗っていい?」
「うん、おねがい」

 小瓶から指で掻きだした潤滑剤をマリクに塗りつける。
 手をぬぐい、あおむけに寝転がる。
 マリクが脚のあいだに割り入ってくる。
 おおいかぶさった背に手をまわす。

「好きだよ、アイラ」
「マリク、きて」

 入り口を探して、マリクの先端がうろうろさまよう。

「場所がわからないかも……」
「ここよ、きっと……」

 アイラは手を伸ばし、マリクをみちびく。
 マリクは先端をあてがい、ぐっと押しこんでくる。
 アイラは眉根を寄せ、身体をこわばらせる。
 押しひろげられ、痛みが立ちあがる。

「ぐっ、い゙っ……」
「アイラ、大丈夫?」
「かなり痛い」
「抜くね」
「いいから」

 アイラはマリクの肩をつかみ、爪をたてる。
 おおきく息を吸って吐く。
 マリクはなかばまで入れたところで止めて、心配げなまなざしで見つめてくる。

「ごめん……」
「あやまらないで。でも、突きとばしたいくらい痛い」
「突きとばしてくれていいよ」
「たぶん、そのうち鎮痛薬が効いてくるから」

 目を閉じてこらえる。
 息をながく吐いて痛みを追いだす。

「ふーっ、マリクは痛くないの?」
「ぎゅーっとされて痛いような気持ちいいような」
「もうすこし奥まできていいわよ……ゆっくりよ、ゆっくりね」
「アイラ、身体の力を抜ける?」
「むり……」

 マリクがじりじりと腰を進めてくる。
 根本ちかくまで受けいれる。
 すこし痛みがやわらいできた気がする。

「アイラ?」
「なあに?」
「好きだ」
「あたしも好き」

 マリクがもぞもぞと腰を動かす。
 せつなそうな顔で訴える。

「なんか気持ちよくなってきて、もうでちゃいそう」
「だしちゃいなさい。あ、びくんってした?」
「でる、でちゃう、うぅっ」

 アイラのなかで肉棒がびくんびくんと脈打つ。
 ぎゅっと締めつけてみる。

「よくわからないんだけど、でたの?」
「うん」

 マリクは恥ずかしそうにうつむき、ゆっくりと引きぬいていく。
 はずした避妊具の先端部に精液がたまっている。

「僕だけきもちよくなっちゃってごめんね」
「いいじゃない」
「まだ痛いよね」
「うん、まだそれなりにね」

 客間の扉がすうっと開き、湯がはられた手桶がすっと差しいれられる。
 横木に手拭いがかかっている。
 音もなく扉が閉まる。

「あいつ、また覗いてたのね……」
「まあ、ありがたく使わせてもらおう」

 マリクは寝台をおりて、手桶を持ってくる。
 ふたりは手を洗い、種々の液体を拭い、身体を清める。
 マリクは桶のたがに挟まった紙片に気づく。

『少年、いちゃつきながら、まっぱで寝たりしちゃだめだゾ!』

 アイラも紙片に目をやり、眉を持ちあげる。

「服を着ておけってこと?」
「夜討ちの兆候をつかんだんじゃないかしら」

 なごり惜しそうに服を着る。
 寝台のあしもとに靴を置く。
 ふたりは手をつないで目を閉じた。

◇◇◇

 アイラは瞼を開く。
 夜半だというのに庭がさわがしい。
 マリクも覚醒している。
 靴をはき、鎧戸の隙間から庭を覗く。

 篝火がメイド服の女を照らしている。
 女の手に棍が握られている。
 エリザである。
 エリザは棒術の達人であった。

 三人の男たちが正座させられている。
 かぶいた髪型から貴族奴と知れる。
 定職につかず、侠客を気取って無頼をはたらく貴族子弟である。
 閑静な住宅地に男たちの悲鳴が響きわたる。

「お、おいらたちはただの博徒だよぅ」
「負けが込んでイライラして、つい……」
「痛っ、骨折れちゃったよぅ、ママぁ」

 エリザは男たちを打ちすえる。

「私が護る屋敷に討ち入りして、そんな言い訳が通じるか! とっとと主名を明かさんかい!」

 男たちは泣きわめきながら、なんとか白状せずに耐える。
 アイラは男たちを観察する。
 マリクは左手を『銃眼』に構えて闇を見透かす。
 銃士は隠身遣いの天敵なのである。

「敷地の外、街路樹の枝に狸一匹。監督役かな」
「なめられたものね、こんな三下しかよこさないなんて」
「さすがにイザヴェル嬢の独断専行じゃないかな」

 アイラは鎧戸を開けはなつ。
 ふたりは客間の窓から庭に降りたつ。
 侯爵家の手の者に聞かせるべく大声で話す。

「ねえねえ、マリク、仮に、仮にだけど、侯爵家の郎党が王都の目抜通りを全裸で疾走したら、噂雀はなんてささやくかしら」
「そうだね、アイラ、仮に、仮にだけど、武家の面子はまるつぶれだね。そうなったら、後は徹底的にやりあうしかなくなる」

 男たちに怯えの色が濃い。
 鬼が増えたのだから詮方ない。

「そんな、マリク、全面抗争だなんて、あたしこわいわ。弱兵ばかりで噛みごたえがなかったらどうしましょう」
「しかし、アイラ、たった四人で殴り込みカチコミかけてくるんだ。人材難は推して知るべしだよ」

 エリザも乗ってくる。

「お嬢様、首から名札をさげさせましょう。私の棒術をもってすれば、真名をさえずらせるのも余裕のよっちゃんでございます」

 アイラは闇に告げる。

「おーほっほっ、イザヴェル様にお伝えくださるかしら。今ならば、貸しひとつで収めてさしあげますわ。そうですわね、払暁まで猶予を差しあげましょう」

 男とも女ともしれぬ声が返る。

「承知つかまつった」

 街路樹から気配が消える。

「お嬢様、手ぬるうございます。色惚けしましたか」
「この盤面はこれでいいのよ。まだちょっと痛いわ」
「高い貸しになりそうだ。痛くしてごめん、アイラ」

 エリザは振りむいて、棍で地面を叩く。
 男たちに、にぃと笑いかける。

「とりあえず、脱ごっか?」

◇◇◇

 応接間に四人の人物が着席している。
 マリクの隣で、アイラは手に手を重ねる。
 正面に両親がかけている。

 アイラの父は冒険商人から身を興した立志伝中の人物である。
 アイラの母も冒険者であった。
 ともに旅をして、やがてねんごろになった。
 仕立ての良い服に身を包んでも、眼に迫力がある。

 エリザは茶を配膳した後、扉の脇でひかえている。

「アイラの父、トレッドです」
「母のタヴィアでございます」

 マリクは頭を下げる。
 腰を浮かし、右手を前に出して、トレッドの顔を見る。

「お言葉ごていねいにござんす。申しおくれましては高うござんすが、ごめんをこうむります。手前生国と発しますは麦州でござんす。麦州と申しましても広うござんす。麦州はリグナンの郷にござんす。貧乏郷士の家におぎゃあと発しまして、姓はなく名はマリク、人呼んで唯銃のマリクと申します。学業昨今駆けだしの若い者にござんす。色恋縁もちまして、お嬢様にぞっこん惚れてございます。面体お見知りおきのうえ、向後万端よろしくおたのもうします」

 エリザがぱちぱちと拍手する。
 トレッドも腰を浮かせ、仁義を切る。

「行末永くご昵懇に願います。お引きなさい」
「ありがとうございます。お引きください」
「いやいや、唯銃のがお引きなさい」
「いえいえ、親分さんよりお引きください」
「そちらこそお引きなさい」
「それでは困ります」
「では、ご一緒に」
「ありがたくぞんじます」
「ありがたく」

 たがいに礼をして腰をおろす。
 エリザがふたたび拍手する。
 トレッドが口火を切る。

「マリクくんは三男と聞いたが、婿入りしてもらえるのだろうか?」
「ちょっと、パパ! 気が早すぎるわよ! あたしたち、昨日、交際を始めたばかりなのよ」
「冗談だよ、アイラ」

 誰も笑わない。
 エリザが帳面に書きつける。

「当主様、減点でございまーす」

 タヴィアが口を開く。

「伯爵家の坊をこてんぱんに延したそうですね、マリクさん」
「アイラさんに刀を向けたものですから、やむなく」
「あら、良いお返事ですこと。でも、対手が抜いた瞬間に撃つべきでしたね」

 この母にして、この娘ありである。

「奥方様、減点でございまーす」
「僕はおくゆかしい性分なのです」
「そうよ、マリクは奥手ジェントルなのよ。なかなか手を出してこなかったし」

 アイラとしてはとりなしたつもりである。
 エリザが宣言する。

「お嬢様も減点! 少年以外の三者に減点が入りました。入居審査の行方やいかに!」
「僕を下宿させてください。護衛犬のかわりと思っていただければ」
「あんたには狩猟犬のほうが似合うんじゃないかしら」
「狂犬と猟犬でお似合いでございますね、お嬢様」
「エリザ、あたしが狂犬だって言いたいの!?」
「発情期の雌犬に訂正いたします」
「むきーっ!」
「エリザ、待てステイ。減点」

 タヴィアがたしなめる。
 トレッドが告げる。

「表向きは書生ということでどうだろう」
「拝承」

 タヴィアが話を継ぐ。

「帝国の近衛戦略龍兵の活動が活発になっており、帝都上空に哨戒龍を上げつづけています。来月には王国国境付近で軍事演習が予定されています。どう見ますか?」
「帝国の内か外か。講和条約の期間が残り二年、くわえて龍兵を王国に当てることはまずない。ならば、内です」
「続けてください」
「単純な想定のもとでは、政変または叛乱です。演習参加部隊の構成がわからないことにはなんとも」
「よく見ましたね、マリクさん」
「アイラさんのご指導よろしきを得まして」

 アイラが胸を張る。
 エリザも胸を張る。

「なんであんたが偉ぶるのよ」
「お嬢様に謀略の手ほどきをしたのは私でございます。なれば、お嬢様が育てた少年は私が育てたと言って過言でないかと」

 タヴィアは無視して続ける。

「マリクさん、裏向きには信用調査班に属していただきます」
「拝承しました、ご母堂様」
「あら、義母上と呼んでもよいのですよ」
「はい、おかあさま」
「少年、百点追加! 入居審査はこれにて終了でございます」

 エリザが宣言し、帳面をぱたんと閉じた。
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