13 / 71
2章 城壁都市アドラーブル
13話 大人の階段を登るらしい
しおりを挟む
ゾボッーー!
いきなり水中に落ちた。オーガが倒れた衝撃で、女隊長さんと俺は一緒に崖を落ちていった。岩山の向こうは崖、その下には川。高さ五~六メートルの河原も無く切り立った崖のすぐ下に勢いのある流れの川だった。
深みに落ちたので助かったのか、冷たすぎる水温で目が覚めたのか、俺は下流へ流されつつも水面に顔を出す。
必死で息継ぎをしながらシルビアさんを捜す。
いない!
俺は着の身着のままだがシルビアさんは軽鎧を着てたはず。泳げるのか?
息継ぎもそこそこに潜って当たりを捜す。ええい、リュックが邪魔だ。息が持たずに水面に顔を出そうとするといきなり後ろから流れてきたものがぶつかってくる。
わっと思って溺れそうになるが、それが何とシルビアさんだった。
とにかく考えるのは後、俺はシルビアさんの身体を掴み水面へ。
顎に片手を当てて上向きにホールドし、横泳ぎで河岸へ泳ぎつこうとするが……お、重い!全力で泳がなければ浮力を維持できない。邪魔だと思ったリュックがフロートの代わりになっている。水中で鎧を脱がす訳にもいかず、出来るだけ水面にシルビアさんの顔が出るようにして河岸へ泳いだ。が、氷河の流れでえぐられたのか地殻の裂け目なのかわからないが、川は切り立った崖の間を蛇行しながら流れている。
ようやく河原があるところを見つけ必死で泳ぎつく。
何とかシルビアさんを引っ張り上げ河原に大の字に倒れる。
キツかったあ……とか言ってる場合ではない。慌ててシルビアさんのそばまで行き声を掛ける。
水から引き上げたままの姿。銀髪がべっとり体に張り付いてる。
「シルビアさん! 大丈夫ですか! シルビアさん!」
返事がない、ただのしか……などと言ってる場合じゃない。
息をしていない。どうする? どうする!
こういう時は反応を確認する。揺すって声を掛ける。
「ダイジョーブですかあーー」
……反応はない。
脈は? 耳の下の頸動脈で調べるんだろうけどやったことない。仕方ないので手首で調べる。ある! 脈はある。 でも弱い、消えそうだ。
救急車を呼ぶ……無理。
誰かAEDを……ってそんなものあるわけない。せっかく大学で講習を受けたのになんの役にも立たないって当たり前か。
やっぱりあれなのか、あれしかないのか。
次は気道の確保。
俺はシルビアさんの横へ座り、首の下に手をいれて持ち上げ気道を確保する。
呼吸はしていない。
そして……ややぽっちゃりとした唇へ、甘い……じゃなくてえ! 人工呼吸だ!
おもむろに口を付けて、ままま、まうすつうまうす。
ゆっくり息を吹き込む…ふふふふふふふ、笑ってるんじゃない、緊張のしすぎでガタガタ体が震えてまともに息が吹き込めない。歯がガチガチ当たる。何をやってるんだ俺は!
必死で空気を送り込む。肺に届いてるのか?胃は膨らんでいない。それを何度も繰り返す。
ええい次は胸骨圧迫だ。
確か人工呼吸はこの二つを繰り返したはず。
む、胸をあっぱくう?
しかしシルビアさんの胸は軽鎧で固められてる。鎧の外し方なんてわからない。
どうしたら!!
「そうだ」
俺はシルビアさんの身体にまたがり肋骨の下、軽鎧の胸当ての切れ目に両手を当て、えいっと力をいれて突き上げる。何回か繰り返すと、ゴフッっとシルビアさんが、水を吐いた。
高校一年の体育の時間は柔道だった。クラスの柔道部のやつが面白がって絞め技を使った。被害にあったクラスメートが落ちた。(気絶した)
もちろん俺じゃない。その時はもういじめられっ子じゃなかったので。
慌てた柔道部がこの方法でクラスメートの息を吹き返えらせた。喝を入れたんだそうな。柔道の練習中に寝技で落ちた奴にいちいちマウストゥマウスなんてしない。気持ち悪いだろう男同志で。あ、女性の柔道部もいるのか、などと考えている場合ではない。
ゲホゲホッ、なおも水を吐くシルビアさん。
大丈夫ですか?と水が逆流しないようにうつ伏せにして背中を叩く。
呼吸が戻ったシルビアさんがいきなり剣を俺に向かって振り抜く。
「わっ!」
俺は慌てて後ろへ飛ぶ。
危なかったあ!
「きさま! 何をする気だ! え? お前は……は! オーガはどうした? 部下は?
うっ……」
シルビアさんは立ち上がろうとしてうずくまる。
「落ち着いてくださいシルビアさん。大丈夫ですか? どこか怪我してませんか?」
「ここは……どこだ?」
やっと今の状態がわかったのか、ゆっくり周りを見ながらシルビアさんが俺に問いかけ た。
それにしても剣を落とさなかったのはすごいなあとよく見たら、ツバのところに紐が通してありそれを輪っかにして手首にはめている。手抜き紐だ。時代小説で読んだことがある。武士の鏡というか用心深いというか……。
剣先がこっちを向いたまま……睨んでる……あれ? ひょっとして俺疑われてる? 意識が戻ったら俺が覆いかぶさって身体をつかんでひっくり返して……あかん!。
「違います違います! 周りを見て、この切羽詰まった状況を確認してください」
俺はもう必死で状況を説明した。まあ、マウスツゥマウスのことは飛ばしたけど……
「オーガはみんなで倒したと……思います。オーガが倒れる衝撃で俺とシルビアさんは岩山から崖に飛び出して川に落ちました。何とかここに泳ぎ着いて……」
「泳ぐ……そうか、またお前に助けられたのか」
「イヤイヤ、必死で二人で泳ぎ着いてそのあと気絶して……」
「気を使うな。私は泳げない。お前がいなければ鎧と剣を身につけたまま川に落ちて生きていられる訳がない。それにしても……トーマは回復魔法まで使えるのか」
「はあ? 違います違います。魔法じゃないです。人工呼吸じゃなくて水を吐き出させただけで……」
「とにかく落ちたことは部下は知っているんだな。だったら救援がくる。むやみに動かん方がいいだろう。うっ……」
「……って動いてどうするんですか!」
立ち上がろうとしたシルビアさんが痛みに固まる。
「はは、どっちみち動けんみたいだ」
河原の乾いたところまでシルビアさんに肩を貸す。ただその先は数メートルの切り立った崖。川が運んできた砂利が大きく蛇行したこの場所に堆積して河原になったのだろう。しばらくここで助けを待つしかない。
剣は落としたが未だにリュックを背負っている俺。リュックの中身は、携帯食糧、薬、毛布など。もう少し時間がかかっていたら、リュックが水を吸いその重さで溺れていただろう。
二人ともガタガタ震えている。雪解け水かと思うほど冷たい川だった。大昔に氷河が流れてできた川なのかもしれない。
「火を起こさなければ……でも俺火を起す魔法知りません。シルビアさんはつかえますか?」
「私は不器用で水系統の魔法しか使えん。でも……魔法で起こさなきゃいけないのか? 火打石で起こしちゃいけないのか?」
「そんな都合よく火打ち石が転がってるはずないですし……あったとしても水に使って使いものにならないし……ああ、ライター持ってれば……って俺タバコ吸わないし」
シルビアさんは俺の話を無視して、リュックの底から油紙に包まれた火打ち石を出して俺の目の前でプルプルと振る。
河原に落ちている流木や、崖から垂れ下がる蔦が落ちて乾燥したやつとかを集めて火を起こす。
リュックは雨にも対応した撥水性の生地でできた優れもの。しかし密封性はないので中はかなり水浸しになっている。大量の黒パンは水でふやけてる。チーズみたいな携帯食は固形なので濡れても食べることができる。水浸しになった干し肉は干し肉と言えるのか?
毛布は固く巻いて入れてたので表面は濡れているが中の方は被害を受けていない。
焚き火の周りで毛布を乾かしながらシルビアさんと寄り添っている俺。
「やはり寒いな、もうすぐ日が落ちる。焚き火もあまり持ちそうにないか。トーマ、今のうちに服を脱いで乾かそう」
ふ、ふくをぬぐう?
シルビアさんは軽鎧を外した。胸当ての所は簡単に外れるのか。鎧を外し下に着ている布製シャツに鎖が編み込んでるインナーを脱ごうとしてまたうずくまるシルビアさん。
「ダメだ、あばらをやっているらしい。一人では……トーマ、ぬ、脱がしてくれ」
ぬ、ぬがすう?? 俺がシルビアさんの服を脱がす……
「何をしている、お前も服を脱いで乾かすんだ。体温が落ちると死ぬこともあるんだぞ。そ、その間、二人で、だ、抱き合っていれば……何を言わせるんだ、察しろ! 私もはずかしいんだぞ」
真っ赤になってうつむく可愛い女の子がそこにいた。誰これ?
見知らぬ男女が雪山で遭難してようやく無人の山小屋にたどり着いた時、裸になって身体を温め合うという。命がかかってるんだ。仕方ないんだ。察しました察しました。
俺は自分を納得させひょっとしてこの異世界で一気に大人の階段を登ってしまうのかと思いながらシルビアさんの服を脱がそうとした。
「隊長ーー!」
「どこですか隊長ーー!」
ガクッ!
大人の階段は登れなかった……。
兵士たちは崖の上から俺がシルビアさんを確保したのを見ていたらしい。すぐに川沿いに捜索隊を出し、河原でいる二人を見つけ、なんとあのなんちゃって宮廷魔導師のフラムのおばちゃんが回復魔法でシルビアさんの怪我を直し、オーガの解体も終わり、村へ帰り、みんなと合流して、今回の見習い仕事は終わりを告げた。
俺は精神的にこれでもか! というくらい疲れた。
でもあのタイミングで発見されて良かったのかもしれない。もう少しあとなら俺は兵士たちに袋叩きにあっただろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
冬馬の家計簿
入金
3シルド
支出
0
残金=18ゴルド6シルド20ペンド。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いきなり水中に落ちた。オーガが倒れた衝撃で、女隊長さんと俺は一緒に崖を落ちていった。岩山の向こうは崖、その下には川。高さ五~六メートルの河原も無く切り立った崖のすぐ下に勢いのある流れの川だった。
深みに落ちたので助かったのか、冷たすぎる水温で目が覚めたのか、俺は下流へ流されつつも水面に顔を出す。
必死で息継ぎをしながらシルビアさんを捜す。
いない!
俺は着の身着のままだがシルビアさんは軽鎧を着てたはず。泳げるのか?
息継ぎもそこそこに潜って当たりを捜す。ええい、リュックが邪魔だ。息が持たずに水面に顔を出そうとするといきなり後ろから流れてきたものがぶつかってくる。
わっと思って溺れそうになるが、それが何とシルビアさんだった。
とにかく考えるのは後、俺はシルビアさんの身体を掴み水面へ。
顎に片手を当てて上向きにホールドし、横泳ぎで河岸へ泳ぎつこうとするが……お、重い!全力で泳がなければ浮力を維持できない。邪魔だと思ったリュックがフロートの代わりになっている。水中で鎧を脱がす訳にもいかず、出来るだけ水面にシルビアさんの顔が出るようにして河岸へ泳いだ。が、氷河の流れでえぐられたのか地殻の裂け目なのかわからないが、川は切り立った崖の間を蛇行しながら流れている。
ようやく河原があるところを見つけ必死で泳ぎつく。
何とかシルビアさんを引っ張り上げ河原に大の字に倒れる。
キツかったあ……とか言ってる場合ではない。慌ててシルビアさんのそばまで行き声を掛ける。
水から引き上げたままの姿。銀髪がべっとり体に張り付いてる。
「シルビアさん! 大丈夫ですか! シルビアさん!」
返事がない、ただのしか……などと言ってる場合じゃない。
息をしていない。どうする? どうする!
こういう時は反応を確認する。揺すって声を掛ける。
「ダイジョーブですかあーー」
……反応はない。
脈は? 耳の下の頸動脈で調べるんだろうけどやったことない。仕方ないので手首で調べる。ある! 脈はある。 でも弱い、消えそうだ。
救急車を呼ぶ……無理。
誰かAEDを……ってそんなものあるわけない。せっかく大学で講習を受けたのになんの役にも立たないって当たり前か。
やっぱりあれなのか、あれしかないのか。
次は気道の確保。
俺はシルビアさんの横へ座り、首の下に手をいれて持ち上げ気道を確保する。
呼吸はしていない。
そして……ややぽっちゃりとした唇へ、甘い……じゃなくてえ! 人工呼吸だ!
おもむろに口を付けて、ままま、まうすつうまうす。
ゆっくり息を吹き込む…ふふふふふふふ、笑ってるんじゃない、緊張のしすぎでガタガタ体が震えてまともに息が吹き込めない。歯がガチガチ当たる。何をやってるんだ俺は!
必死で空気を送り込む。肺に届いてるのか?胃は膨らんでいない。それを何度も繰り返す。
ええい次は胸骨圧迫だ。
確か人工呼吸はこの二つを繰り返したはず。
む、胸をあっぱくう?
しかしシルビアさんの胸は軽鎧で固められてる。鎧の外し方なんてわからない。
どうしたら!!
「そうだ」
俺はシルビアさんの身体にまたがり肋骨の下、軽鎧の胸当ての切れ目に両手を当て、えいっと力をいれて突き上げる。何回か繰り返すと、ゴフッっとシルビアさんが、水を吐いた。
高校一年の体育の時間は柔道だった。クラスの柔道部のやつが面白がって絞め技を使った。被害にあったクラスメートが落ちた。(気絶した)
もちろん俺じゃない。その時はもういじめられっ子じゃなかったので。
慌てた柔道部がこの方法でクラスメートの息を吹き返えらせた。喝を入れたんだそうな。柔道の練習中に寝技で落ちた奴にいちいちマウストゥマウスなんてしない。気持ち悪いだろう男同志で。あ、女性の柔道部もいるのか、などと考えている場合ではない。
ゲホゲホッ、なおも水を吐くシルビアさん。
大丈夫ですか?と水が逆流しないようにうつ伏せにして背中を叩く。
呼吸が戻ったシルビアさんがいきなり剣を俺に向かって振り抜く。
「わっ!」
俺は慌てて後ろへ飛ぶ。
危なかったあ!
「きさま! 何をする気だ! え? お前は……は! オーガはどうした? 部下は?
うっ……」
シルビアさんは立ち上がろうとしてうずくまる。
「落ち着いてくださいシルビアさん。大丈夫ですか? どこか怪我してませんか?」
「ここは……どこだ?」
やっと今の状態がわかったのか、ゆっくり周りを見ながらシルビアさんが俺に問いかけ た。
それにしても剣を落とさなかったのはすごいなあとよく見たら、ツバのところに紐が通してありそれを輪っかにして手首にはめている。手抜き紐だ。時代小説で読んだことがある。武士の鏡というか用心深いというか……。
剣先がこっちを向いたまま……睨んでる……あれ? ひょっとして俺疑われてる? 意識が戻ったら俺が覆いかぶさって身体をつかんでひっくり返して……あかん!。
「違います違います! 周りを見て、この切羽詰まった状況を確認してください」
俺はもう必死で状況を説明した。まあ、マウスツゥマウスのことは飛ばしたけど……
「オーガはみんなで倒したと……思います。オーガが倒れる衝撃で俺とシルビアさんは岩山から崖に飛び出して川に落ちました。何とかここに泳ぎ着いて……」
「泳ぐ……そうか、またお前に助けられたのか」
「イヤイヤ、必死で二人で泳ぎ着いてそのあと気絶して……」
「気を使うな。私は泳げない。お前がいなければ鎧と剣を身につけたまま川に落ちて生きていられる訳がない。それにしても……トーマは回復魔法まで使えるのか」
「はあ? 違います違います。魔法じゃないです。人工呼吸じゃなくて水を吐き出させただけで……」
「とにかく落ちたことは部下は知っているんだな。だったら救援がくる。むやみに動かん方がいいだろう。うっ……」
「……って動いてどうするんですか!」
立ち上がろうとしたシルビアさんが痛みに固まる。
「はは、どっちみち動けんみたいだ」
河原の乾いたところまでシルビアさんに肩を貸す。ただその先は数メートルの切り立った崖。川が運んできた砂利が大きく蛇行したこの場所に堆積して河原になったのだろう。しばらくここで助けを待つしかない。
剣は落としたが未だにリュックを背負っている俺。リュックの中身は、携帯食糧、薬、毛布など。もう少し時間がかかっていたら、リュックが水を吸いその重さで溺れていただろう。
二人ともガタガタ震えている。雪解け水かと思うほど冷たい川だった。大昔に氷河が流れてできた川なのかもしれない。
「火を起こさなければ……でも俺火を起す魔法知りません。シルビアさんはつかえますか?」
「私は不器用で水系統の魔法しか使えん。でも……魔法で起こさなきゃいけないのか? 火打石で起こしちゃいけないのか?」
「そんな都合よく火打ち石が転がってるはずないですし……あったとしても水に使って使いものにならないし……ああ、ライター持ってれば……って俺タバコ吸わないし」
シルビアさんは俺の話を無視して、リュックの底から油紙に包まれた火打ち石を出して俺の目の前でプルプルと振る。
河原に落ちている流木や、崖から垂れ下がる蔦が落ちて乾燥したやつとかを集めて火を起こす。
リュックは雨にも対応した撥水性の生地でできた優れもの。しかし密封性はないので中はかなり水浸しになっている。大量の黒パンは水でふやけてる。チーズみたいな携帯食は固形なので濡れても食べることができる。水浸しになった干し肉は干し肉と言えるのか?
毛布は固く巻いて入れてたので表面は濡れているが中の方は被害を受けていない。
焚き火の周りで毛布を乾かしながらシルビアさんと寄り添っている俺。
「やはり寒いな、もうすぐ日が落ちる。焚き火もあまり持ちそうにないか。トーマ、今のうちに服を脱いで乾かそう」
ふ、ふくをぬぐう?
シルビアさんは軽鎧を外した。胸当ての所は簡単に外れるのか。鎧を外し下に着ている布製シャツに鎖が編み込んでるインナーを脱ごうとしてまたうずくまるシルビアさん。
「ダメだ、あばらをやっているらしい。一人では……トーマ、ぬ、脱がしてくれ」
ぬ、ぬがすう?? 俺がシルビアさんの服を脱がす……
「何をしている、お前も服を脱いで乾かすんだ。体温が落ちると死ぬこともあるんだぞ。そ、その間、二人で、だ、抱き合っていれば……何を言わせるんだ、察しろ! 私もはずかしいんだぞ」
真っ赤になってうつむく可愛い女の子がそこにいた。誰これ?
見知らぬ男女が雪山で遭難してようやく無人の山小屋にたどり着いた時、裸になって身体を温め合うという。命がかかってるんだ。仕方ないんだ。察しました察しました。
俺は自分を納得させひょっとしてこの異世界で一気に大人の階段を登ってしまうのかと思いながらシルビアさんの服を脱がそうとした。
「隊長ーー!」
「どこですか隊長ーー!」
ガクッ!
大人の階段は登れなかった……。
兵士たちは崖の上から俺がシルビアさんを確保したのを見ていたらしい。すぐに川沿いに捜索隊を出し、河原でいる二人を見つけ、なんとあのなんちゃって宮廷魔導師のフラムのおばちゃんが回復魔法でシルビアさんの怪我を直し、オーガの解体も終わり、村へ帰り、みんなと合流して、今回の見習い仕事は終わりを告げた。
俺は精神的にこれでもか! というくらい疲れた。
でもあのタイミングで発見されて良かったのかもしれない。もう少しあとなら俺は兵士たちに袋叩きにあっただろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
冬馬の家計簿
入金
3シルド
支出
0
残金=18ゴルド6シルド20ペンド。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
帝国の第一皇女に転生しましたが3日で誘拐されました
山田うちう
ファンタジー
帝国の皇女に転生するも、生後3日で誘拐されてしまう。
犯人を追ってくれた騎士により命は助かるが、隣国で一人置き去りに。
たまたま通りかかった、隣国の伯爵に拾われ、伯爵家の一人娘ルセルとして育つ。
何不自由なく育ったルセルだが、5歳の時に受けた教会の洗礼式で真名を与えられ、背中に大きな太陽のアザが浮かび上がる。。。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる