フリー台本と短編小説置き場

朗読台本

奇跡みたいな恋の話

恋をしました。
初恋でした。

名前も、顔も知らない人だけど
好きに、なってしまいました。

彼の優しくて明るい性格にひかれて
誰にも内緒で2人で連絡をとるようになりました。

お互いの好きな物、好きな場所、その日にあったこと
そんな何気ない事を話すだけなのに

毎日が楽しかった。


そんなある日、彼からの連絡が途絶えた…

一日目は、忙しいのかと少し心配ながらも連絡を待っていた。

それから…
2日、3日…1週間経った。

彼のいない生活はすごく寂しくて、胸が痛かった。
分かっていたはずなのに…
彼とは、SNS上だけの関係。

恋人でもなければ、会ったことすらない
私にとっては特別で大好きな人だったけれど
彼にとってはきっとただの暇つぶしの相手だったのだと、勝手に落胆しては、涙が溢れた。

話したい
声が聞きたい
1度でいいから、会って話がしたかった……大好きだった。

人に話せば笑われるかもしれない。
それでも、私は
会ったこともない、彼に。

恋を、していました。
でも、そんな初恋は儚く散ってしまいました。

そんな初恋の話。
この話にはまだ続きがあって………………

それから何年かの月日が経ち、私は転勤先で出会った人と結婚しました。
少し年上の、優しい彼です。
彼との生活は毎日が楽しくて幸せで溢れていました
そんなある日。
いつものような、たわいない会話の中で初恋の話になりました。

もう何年も前の話なので、私は彼にsnsで知り合い
会うことも無く終わってしまった、初恋の人の話をしました。

「もう、何年も前のことなんだけどね」っと冗談交じりに笑いながら彼を見ると、彼の頬には一筋の涙が伝っていて

突然、私を抱きしめたかと思うと彼の口から思いがけない言葉がこぼれた。

それは初恋が散った、あの日から使っていなかったニックネーム。

突然の事に困惑しましたが、すぐに分かりました。

彼は"彼"だと…

彼は連絡が取れなくなった事を、何度も謝ってくれました。
SNSにログイン出来なくなり、連絡が取れずにそのまま時が過ぎてしまったそうです。

それでも、ずっと忘れられずに後悔していたそうです。

でも、私にとってはそんなことよりも
大好きだった初恋の彼が、今は生涯を誓った最愛の人として目の前にいてくれた事がとても嬉しかった…。

運命の人がいるのなら
それはきっと彼なんだろう…。

愛しています。
そしてこれからも、私は貴方を愛し続けます。