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第28話 反転攻勢
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傭兵たちと戦いを繰り広げるジャスティーナが目にしたのは、プリシラがエミルを背負ってスルスルと背の高い木に登っていく姿だった。
一見すると奇行に見えるが、ジャスティーナはその意図を即座に読み取る。
(賭けに出やがった。だけど浅はかだよ)
案の定、プリシラはエミルを木の上の枝に置いて、自らは木から飛び降りた。
そして近くの木の枝から枝へと身軽に飛び移りながら地面に着地する。
その身のこなしに傭兵たちは目を丸くした。
そこからプリシラは水を得た魚のように林の中を駆け回り、敵に襲いかかっていく。
その動きにジャスティーナは目を見張った。
(とんでもない運動能力だ。あれがブリジットの系譜に伝わる力か)
プリシラは短剣で傭兵の肩辺りを鋭く切り裂くと、怯んだ傭兵の顔面を容赦なく殴りつける。
傭兵は大きくふっ飛ばされて背後の木の幹に激突し、一撃で気を失った。
怒声を上げて次々と襲いかかる傭兵たちだが、プリシラの動きを捉えられる者は1人もいない。
プリシラは木々の間を飛ぶように駆け抜け、短剣で敵の腕や肩を次々と斬りつけ、悲鳴を上げる相手を殴りつつ蹴り倒した。
その打撃の強さはすさまじく、傭兵たちは皆一様に一撃で失神してしまう。
攻撃の際にプリシラの腕や足の筋肉が大きく盛り上がる様子をジャスティーナは初めて見た。
ブリジットやクローディアの強さを目の当たりにしたことのないジャスティーナは記憶の中の忌々しい黒き魔女のことを思い返す。
かつてダニアの女たちの故郷である砂漠島を力と恐怖で支配した黒き魔女アメーリアも、ああして異常な筋力を誇っていた。
(あのお嬢ちゃん……あの若さであれほど強いのか)
ジャスティーナ同様、傭兵たちもプリシラの強さに目を剥いている。
その場の空気が変わる。
傭兵たちの間に困惑が広がっていく。
そんな空気に苛立った曲芸団の団長が金切り声を上げた。
「おい! 小娘1人押さえ込めないのか! 高い金を払っているんだぞ!」
その言葉に面子を潰された傭兵団の頭目が、苦虫を噛み潰したような顔で声を荒げた。
「木の上の小僧を先に捕まえろ! 引きずり下ろせ!」
頭目の言葉を受けてジャスティーナの周りから数人がエミルの確保に向かっていく。
そのおかげで周囲が手薄になったジャスティーナは一気に打って出た。
「うおおおおおお!」
それまでのらりくらりと緩い動きで敵をかわし防御主体の動きをしていたジャスティーナの突然の攻勢に、傭兵たちは動揺する。
そんな彼らに対し、ジャスティーナは先ほどまで防御用に持っていた円盾をいきなり投げつけた。
「うがっ!」
その円盾を側頭部に受けてのけ反る傭兵の首に向け、ジャスティーナは短剣を横一閃させる。
傭兵の首がザックリと斬り裂かれて血飛沫が飛んだ。
「いぎゃああああ!」
鮮血を舞い散らせて倒れ込む傭兵を尻目に、ジャスティーナは先ほど地面に突き立てた短槍を引き抜いた。
そして木々の間にいる敵に向かって突撃する。
敵はジャスティーナの短槍に突き刺されるのを恐れて木の陰に身を隠しながら短弓でジャスティーナを狙った。
だがジャスティーナは至近距離から放たれた矢を、地面を滑るようにして避ける。
「なっ……」
「そういう時は頭じゃなくて足を狙うんだ」
そう言うとジャスティーナはそのまま木を回り込むようにして体を反転させ、短槍の柄で傭兵の頭を打った。
強烈な一撃を浴びて傭兵は思わず倒れ込む。
「うっ……」
「覚えときな。まああの世で役に立つかは知らんが」
そう言うとジャスティーナは倒れている傭兵の首を容赦なく短槍の穂先で貫いた。
傭兵は目を見開いたまま口から血を噴いて絶命する。
「くそったれがぁぁぁ!」
仲間の死に逆上した別の傭兵が手斧を最上段に振り上げ、思い切りジャスティーナの脳天を目掛けて振り下ろす。
だがジャスティーナはそれよりも早く短槍の穂先を翻し、その傭兵の手斧を持つ腕を手首から斬り捨てた。
「うぎゃぁぁぁぁ!」
手首から先を失って悲鳴を上げる男の首を、ジャスティーナは短槍の穂先で斬り裂いた。
男は首から血を噴き出して倒れ込んだまま動かなくなった。
「こんな狭い場所でも槍は使いようなんだよ」
ジャスティーナは短槍の穂先近くの柄を握ってそう言った。
周囲にいる数人の傭兵が思わず怯む。
自分たちとこの女戦士との格の違いを悟ったのだ。
ジャスティーナはその隙に視線を転じる。
その視線の先ではプリシラを取り囲むようにしていた傭兵たちが次々と彼女に襲い掛かっていた。
だが、プリシラは八面六臂の活躍を見せ、林の中にはすでに10人以上の傭兵が倒れて動かなくなっていた。
一見すると奇行に見えるが、ジャスティーナはその意図を即座に読み取る。
(賭けに出やがった。だけど浅はかだよ)
案の定、プリシラはエミルを木の上の枝に置いて、自らは木から飛び降りた。
そして近くの木の枝から枝へと身軽に飛び移りながら地面に着地する。
その身のこなしに傭兵たちは目を丸くした。
そこからプリシラは水を得た魚のように林の中を駆け回り、敵に襲いかかっていく。
その動きにジャスティーナは目を見張った。
(とんでもない運動能力だ。あれがブリジットの系譜に伝わる力か)
プリシラは短剣で傭兵の肩辺りを鋭く切り裂くと、怯んだ傭兵の顔面を容赦なく殴りつける。
傭兵は大きくふっ飛ばされて背後の木の幹に激突し、一撃で気を失った。
怒声を上げて次々と襲いかかる傭兵たちだが、プリシラの動きを捉えられる者は1人もいない。
プリシラは木々の間を飛ぶように駆け抜け、短剣で敵の腕や肩を次々と斬りつけ、悲鳴を上げる相手を殴りつつ蹴り倒した。
その打撃の強さはすさまじく、傭兵たちは皆一様に一撃で失神してしまう。
攻撃の際にプリシラの腕や足の筋肉が大きく盛り上がる様子をジャスティーナは初めて見た。
ブリジットやクローディアの強さを目の当たりにしたことのないジャスティーナは記憶の中の忌々しい黒き魔女のことを思い返す。
かつてダニアの女たちの故郷である砂漠島を力と恐怖で支配した黒き魔女アメーリアも、ああして異常な筋力を誇っていた。
(あのお嬢ちゃん……あの若さであれほど強いのか)
ジャスティーナ同様、傭兵たちもプリシラの強さに目を剥いている。
その場の空気が変わる。
傭兵たちの間に困惑が広がっていく。
そんな空気に苛立った曲芸団の団長が金切り声を上げた。
「おい! 小娘1人押さえ込めないのか! 高い金を払っているんだぞ!」
その言葉に面子を潰された傭兵団の頭目が、苦虫を噛み潰したような顔で声を荒げた。
「木の上の小僧を先に捕まえろ! 引きずり下ろせ!」
頭目の言葉を受けてジャスティーナの周りから数人がエミルの確保に向かっていく。
そのおかげで周囲が手薄になったジャスティーナは一気に打って出た。
「うおおおおおお!」
それまでのらりくらりと緩い動きで敵をかわし防御主体の動きをしていたジャスティーナの突然の攻勢に、傭兵たちは動揺する。
そんな彼らに対し、ジャスティーナは先ほどまで防御用に持っていた円盾をいきなり投げつけた。
「うがっ!」
その円盾を側頭部に受けてのけ反る傭兵の首に向け、ジャスティーナは短剣を横一閃させる。
傭兵の首がザックリと斬り裂かれて血飛沫が飛んだ。
「いぎゃああああ!」
鮮血を舞い散らせて倒れ込む傭兵を尻目に、ジャスティーナは先ほど地面に突き立てた短槍を引き抜いた。
そして木々の間にいる敵に向かって突撃する。
敵はジャスティーナの短槍に突き刺されるのを恐れて木の陰に身を隠しながら短弓でジャスティーナを狙った。
だがジャスティーナは至近距離から放たれた矢を、地面を滑るようにして避ける。
「なっ……」
「そういう時は頭じゃなくて足を狙うんだ」
そう言うとジャスティーナはそのまま木を回り込むようにして体を反転させ、短槍の柄で傭兵の頭を打った。
強烈な一撃を浴びて傭兵は思わず倒れ込む。
「うっ……」
「覚えときな。まああの世で役に立つかは知らんが」
そう言うとジャスティーナは倒れている傭兵の首を容赦なく短槍の穂先で貫いた。
傭兵は目を見開いたまま口から血を噴いて絶命する。
「くそったれがぁぁぁ!」
仲間の死に逆上した別の傭兵が手斧を最上段に振り上げ、思い切りジャスティーナの脳天を目掛けて振り下ろす。
だがジャスティーナはそれよりも早く短槍の穂先を翻し、その傭兵の手斧を持つ腕を手首から斬り捨てた。
「うぎゃぁぁぁぁ!」
手首から先を失って悲鳴を上げる男の首を、ジャスティーナは短槍の穂先で斬り裂いた。
男は首から血を噴き出して倒れ込んだまま動かなくなった。
「こんな狭い場所でも槍は使いようなんだよ」
ジャスティーナは短槍の穂先近くの柄を握ってそう言った。
周囲にいる数人の傭兵が思わず怯む。
自分たちとこの女戦士との格の違いを悟ったのだ。
ジャスティーナはその隙に視線を転じる。
その視線の先ではプリシラを取り囲むようにしていた傭兵たちが次々と彼女に襲い掛かっていた。
だが、プリシラは八面六臂の活躍を見せ、林の中にはすでに10人以上の傭兵が倒れて動かなくなっていた。
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