甘×恋クレイジーズ

枕崎 純之助

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最終章 モール・イン・ザ・ダーク・ウォーター

第5話 闇の商店街

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 恋華れんかは状況をうまく飲み込めずに目を白黒させて辺りを見回していた。
 そこは無人の商店街であり、先ほどまで空中を浮遊ふゆうしていた恋華れんかは、地面をみしめる感覚を確かめるように二度三度と足をみ鳴らした。

「あれ……?」

 突然現れて自分をここにみちびいた黒い人影はいつの間にか消え去っていた。
 見上げると頭上にはアーケードの屋根がかかっていて、一部がガラス張りになって薄暗うすぐらい空中を見上げることが出来た。
 その向こう側に漆黒しっこくの翼をはためかせるフランチェスカの姿が見える。

「フランチェスカ……そろそろ体の自由を取りもどすはず」

 先ほどの修正プログラムはフランチェスカを完全に修正するにはいたらず、おそらく消えてしまうだろうと思った恋華れんかはあらためて戦意をふるい立たせ、その襲来しゅうらいに備えた。
 恋華れんかの予想通り、フランチェスカは恋華れんか姿すがたを目にすると、一直線に急降下し始める。
 だが、フランチェスカ恋華れんかのもとまで到達とうたつすることが出来なかった。
 アーケードの屋根がその進行をはばんだためだ。
 フランチェスカはガラス張りの屋根を忌々いましましげにたたき割ろうとしたが、ガラス屋根はこれにえていた。

「フランチェスカは入ってこられない……?」

 そうつぶやき、恋華れんかはふとあることに気が付いた。
 先ほどまで空中をただよっていたときには息苦しいほどに感じられた魔気まきが、ここでは随分ずいぶんうすまっている。

神気じんき魔気まきのバランスが保たれている……ここは一体なんなの?」

 そこは平時の日本やアメリカと同等くらいに平均的へいきんてきな空気が保たれていた。
 そのせいか、あるいはフランチェスカから投与された抵抗ていこうプログラムがうすまって消えたせいか、恋華れんかの頭を支配しようとしていたするどい頭痛は消え去っていた。

「さっきの人影は何だったのかしら」

 フランチェスカを倒すため、自らの体を投げ打って修正プログラムを投与する覚悟だった恋華れんかだが、不思議ふしぎな黒い人影にはばまれてしまった。
 分からないことだらけだったが、恋華れんかはこれはチャンスだと思った。
 先ほどまでの不自由な浮遊状態とは違い、今は地に足がついていて体の自由もきく。

「これならフランチェスカと戦えるわ」

 フランチェスカは今もアーケードの屋根を破壊しようと幾度いくどするどつめをガラスにたたきつけている。
 いずれはそれも破られてここに侵入しんにゅうされるだろうと思った恋華れんかは、身をかくす場所を探すことにした。
 ここならばかくれられそうな場所はいくらでもある。
 フランチェスカと真正面から渡り合っても、勝てる見込みは少ない。

「入ってきたフランチェスカのすきをついて修正プログラムを投与するしかない」

 そう思い、周囲を見回しながら不思議ふしぎな商店街の中を移動し始めた恋華れんかだが、ほどなくして立ち止まった。

「ん?」

 視界のすみに何かが動くの見た恋華れんかは、視線をめぐらせる。
 商店街の間にいくつか通る細い路地ろじがあり、その角を小さな人影ががっていく。

「あ、あれは……子供? 何でこんなところに……」

 恋華れんかは思わずその後を追って走り出した。
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