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第二章 クレイジー・パーティー・イン・ホスピタル
第23話 八重子の奮闘
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談合坂家では夜も更けた時間だというのに、一室だけ煌々と明かりの灯っている部屋がある。
「甘太郎の奴。上手くやれたかしら……」
机の上に置いたケータイを気にしながら八重子はつぶやいた。
すでに時刻は深夜を迎えていたが、甘太郎からの連絡はない。
今回は護衛の仕事ということで、よほど急を要することでもなければ八重子から連絡はしないこととなっていた。
机の上には父・幸之助から借りた酒々井甘枝についての資料が並べられていた。
貿易士でありながら『隠し屋』という裏稼業を持っていた甘枝。
彼女について持っている全ての資料に目を通し、父に聞いた話から総合的に判断すると、八重子の頭の中にある一つの推論が浮かんだのだ。
「暗黒炉と隠し場所。きっとこの2つは何らかの形で繋がっているはず」
今ある資料だけでは、分かることはそれが精一杯だった。
「結局、甘太郎がああやって体から黒煙を噴き出すことについては分からずじまいね」
そうつぶやくと八重子はフゥッと息を吐いて少し疲れた表情を見せた。
だが、何も手がかりを得られなかったわけではない。
資料の中には甘枝が隠し屋として取引をしていた顧客のリストが残っていた。
その中には今現在も甘太郎の顧客として取引のある人物の名前もある。
その人物であれば、隠し屋としての甘枝の当時のことを何か知っているかもしれない。
八重子はそうにらんだ。
「彼女に聞けば何かが分かるかも」
すでに日付が変わった後の深夜の時間帯ではあったが、その顧客はこの時間にこそ起きて活動しているような職種の人間であるため、八重子はためらうことなく連絡を取る事にした。
恋華のように甘太郎と共に現場に出向くことは出来ないが、八重子は自分だからこそ出来る方法で甘太郎をサポートするべく、疲れと眠気を振り切ってケータイを手に番号をコールした。
「もしもし。守谷貴子様でしょうか。夜分遅くにすみません。私、酒々井甘太郎の関係者で……」
そうして八重子は自らを紹介すると、電話の向こうの気だるそうな女性に自分の目的を告げた。
「甘太郎の奴。上手くやれたかしら……」
机の上に置いたケータイを気にしながら八重子はつぶやいた。
すでに時刻は深夜を迎えていたが、甘太郎からの連絡はない。
今回は護衛の仕事ということで、よほど急を要することでもなければ八重子から連絡はしないこととなっていた。
机の上には父・幸之助から借りた酒々井甘枝についての資料が並べられていた。
貿易士でありながら『隠し屋』という裏稼業を持っていた甘枝。
彼女について持っている全ての資料に目を通し、父に聞いた話から総合的に判断すると、八重子の頭の中にある一つの推論が浮かんだのだ。
「暗黒炉と隠し場所。きっとこの2つは何らかの形で繋がっているはず」
今ある資料だけでは、分かることはそれが精一杯だった。
「結局、甘太郎がああやって体から黒煙を噴き出すことについては分からずじまいね」
そうつぶやくと八重子はフゥッと息を吐いて少し疲れた表情を見せた。
だが、何も手がかりを得られなかったわけではない。
資料の中には甘枝が隠し屋として取引をしていた顧客のリストが残っていた。
その中には今現在も甘太郎の顧客として取引のある人物の名前もある。
その人物であれば、隠し屋としての甘枝の当時のことを何か知っているかもしれない。
八重子はそうにらんだ。
「彼女に聞けば何かが分かるかも」
すでに日付が変わった後の深夜の時間帯ではあったが、その顧客はこの時間にこそ起きて活動しているような職種の人間であるため、八重子はためらうことなく連絡を取る事にした。
恋華のように甘太郎と共に現場に出向くことは出来ないが、八重子は自分だからこそ出来る方法で甘太郎をサポートするべく、疲れと眠気を振り切ってケータイを手に番号をコールした。
「もしもし。守谷貴子様でしょうか。夜分遅くにすみません。私、酒々井甘太郎の関係者で……」
そうして八重子は自らを紹介すると、電話の向こうの気だるそうな女性に自分の目的を告げた。
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