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第33夜 俺たちのBADエンド
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こんばんは。
枕崎純之助です。
夏が去っていき、朝晩は少し冷えるようになりましたね。
皆様いかがお過ごしでしょうか。
以前にこの『Pillow Talk』の『第13夜 こんな悪い子、見たことない!』でお話ししたままご紹介していないエピソードがあります。
先日、この話を読んで下さった方からそのお話をいただきましたので、今夜ここにご紹介したいと思います。
その名も『体育館マイケル・ジャクソン・ダンス事件』です。
あれは小学校5年生の時でした。
当時の担任の先生はアベ先生というベテラン女性教師でした。
このアベ先生、普段はとても優しいのですが、怒ると鬼になります。
怒ったときの表情と声がとにかく怖いんです。
ある日のホームルームで先生は生徒たちの態度が悪いとオカンムリでした。
こういう時は反省の態度を見せて、怒りの嵐が過ぎ去るのをひたすら待つのみです。
しかしそのピリピリとした空気のホームルームがようやく終わろうとしたその時、その空気の読めない友達D君が馬鹿をやりました。
D君はその日の日直でホームルームの〆の挨拶をします。
「それではこれでホームルームを終わります。さよオナラ」
……どうしたんだD!
今はそういう超絶くだらないギャグが許される雰囲気じゃないぞ!
まさかこのピリついたムードを和ませようとか思って勇気出しちゃったのか!
その男気は買うが今は違う!
今じゃないぞ!
「ふざけるんじゃない!」
案の定、アベ先生は鬼の形相になりました。
震え上がるほど怖いアベ先生の怒声に教室中が凍り付きます。
哀れなD君は皆の前でアベ先生に首根っこを掴まれると、廊下に放り出されました。
ピリついたホームルームは最後の最後に教室の空気を凍結させて幕を閉じることになったのです。
殺伐としたホームルームが終わって生徒たちが解放された後、僕が廊下に出ると、立たされていたD君は立ちすくんだままシクシクと泣いていました。
か、かける言葉が見つからないぜ……D。
そう思った僕ですが、そんな僕自身もそれから数日のうちにアベ先生から雷を落とされることになるのです。
その日は体育館掃除の日でした。
体育館の掃除は上級生にだけ許された特別な任務です。
僕も下級生の時、体育館の掃除をする上級生たちを見てなぜだかカッコよく見えて、うらやましかったのを覚えています。
そしてこの日、僕と一緒に体育館掃除をしていた友達の中に、仲良しだったN君がいました。
N君はちょっとマセた子供で、小学生なのに当時からマイケル・ジャクソンの曲などをよく知っていました。
そんなマイケルの曲で有名な『BAD』という曲があります。
今聞いてみてもカッコイイんですよ。
その曲のサビの部分に以下のような歌詞があります。
『Because I'm bad, I'm bad』 (俺はワルだから、ワルなんだよ)
『You know I'm bad, I'm bad. You know it』(分かるだろ? 俺はワルなんだ。分かるな?)
なんか和訳を見ると必死にイキッてる中学生みたいで微妙にダサイですが。
それはそれとして、YouTubeなどで聴いてもらえると分かると思いますが、上記のサビの歌詞で『I'm bad』を連呼する部分がありまして、そこが空耳でこう聞こえるんですよ。
『アベ、アベーッ!』
アベ先生の歌みたいだねって笑い合った僕とN君はアホなイタズラを思い付きます。
読者の皆さん。
嫌な予感がしてきたでしょ?
ここまで読んで下さっている読者の皆さんは、この枕崎純之助がいかにアホで分別のない子供だったのかをご存知のはずです。(偉そうに言うことか)
体育館のステージには舞台を彩る赤青黄色のライトが設置されています。
その操作パネルが舞台横にありまして、スイッチをカチカチすると3色のライトが色鮮やかに点灯するんですよ。
でもこれ、生徒は不必要にいじってはいけないんです。
そりゃそうですよね。
でもそれをいじるのが枕崎純之助という男です。(←アホですよ。アホがいます)
体育館での掃除中、N君が箒を手に颯爽とステージ中央に立ちます。
そんなN君と目を合わせて頷き合うと、僕はその3色ライトをカチカチカチカチと連続で点滅させます。
色とりどりの明かりに照らされたステージ上で、N君は箒を手に踊りながら歌い出しました……アベ先生の歌を。(そんな歌はない)
『アベ、アベーッ! アベーッ!』
半狂乱のステージに、見ている友人たちは拍手喝采で爆笑します。
イタズラ大成功です!
これです!
この高揚感!
生きてるって感じがします!(←この後、死ぬことになります)
そんな体育館での熱狂LIVEは唐突に終わりを告げることになりました。
鬼の形相をしたアベ先生の登場によって。
「こらぁぁぁぁっ! 何してんだ!」
ギャアアアアアッ!
鬼キタァァァァッ!
多分、同じく体育館掃除をしていたマジメ女子たちが、僕らの悪行を見かねて先生に言いつけたんだと思います。
この後、僕とN君はアベ先生にコッテリ絞られ、出汁を取り尽くされてシナシナになった煮干しみたいになって死にました。
『BADエンド』です。
以上が『体育館マイケル・ジャクソン・ダンス事件』の全容です。
いやぁ……思い返してみて自分でも思いますけど、僕の脳はどうかしてるぜ。
こんなことしたら怒られるって分かっちゃいるけどやめられない。
クレイジー・キャッツならぬクレイジー・キッズです。
このアベ先生。
怖いけどとてもいい先生でした。
でも5年生が終わった後、この学校を去ってしまいます。
きっと『アベ、アベーッ!』って歌われたのがショックだったんだと思います。
(違います。本当は他の学校で教頭職になる話があり、そちらに異動されました)
ごめんなさいアベ先生。
でも、真剣に怒って下さってありがとうございました。
先生に怒られて僕はまた少しマトモな人間になれた……はずでした。
しかし……このアベ先生が学校を去られた後、6年生になった僕らの新担任を受け持ってくれたT先生は、またしても僕とN君の巻き起こした騒動に愕然とすることになるのです。
『生徒会室立てこもり僕らの70分戦争事件』が巻き起こるのは、この『体育館マイケル・ジャクソン・ダンス事件』のおよそ1年後のことです。
おっと、そろそろ夜も更けてまいりましたね。
続きはまたいずれ。
それでは皆様。
またいつかの夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
今宵もいい夢を。
枕崎純之助です。
夏が去っていき、朝晩は少し冷えるようになりましたね。
皆様いかがお過ごしでしょうか。
以前にこの『Pillow Talk』の『第13夜 こんな悪い子、見たことない!』でお話ししたままご紹介していないエピソードがあります。
先日、この話を読んで下さった方からそのお話をいただきましたので、今夜ここにご紹介したいと思います。
その名も『体育館マイケル・ジャクソン・ダンス事件』です。
あれは小学校5年生の時でした。
当時の担任の先生はアベ先生というベテラン女性教師でした。
このアベ先生、普段はとても優しいのですが、怒ると鬼になります。
怒ったときの表情と声がとにかく怖いんです。
ある日のホームルームで先生は生徒たちの態度が悪いとオカンムリでした。
こういう時は反省の態度を見せて、怒りの嵐が過ぎ去るのをひたすら待つのみです。
しかしそのピリピリとした空気のホームルームがようやく終わろうとしたその時、その空気の読めない友達D君が馬鹿をやりました。
D君はその日の日直でホームルームの〆の挨拶をします。
「それではこれでホームルームを終わります。さよオナラ」
……どうしたんだD!
今はそういう超絶くだらないギャグが許される雰囲気じゃないぞ!
まさかこのピリついたムードを和ませようとか思って勇気出しちゃったのか!
その男気は買うが今は違う!
今じゃないぞ!
「ふざけるんじゃない!」
案の定、アベ先生は鬼の形相になりました。
震え上がるほど怖いアベ先生の怒声に教室中が凍り付きます。
哀れなD君は皆の前でアベ先生に首根っこを掴まれると、廊下に放り出されました。
ピリついたホームルームは最後の最後に教室の空気を凍結させて幕を閉じることになったのです。
殺伐としたホームルームが終わって生徒たちが解放された後、僕が廊下に出ると、立たされていたD君は立ちすくんだままシクシクと泣いていました。
か、かける言葉が見つからないぜ……D。
そう思った僕ですが、そんな僕自身もそれから数日のうちにアベ先生から雷を落とされることになるのです。
その日は体育館掃除の日でした。
体育館の掃除は上級生にだけ許された特別な任務です。
僕も下級生の時、体育館の掃除をする上級生たちを見てなぜだかカッコよく見えて、うらやましかったのを覚えています。
そしてこの日、僕と一緒に体育館掃除をしていた友達の中に、仲良しだったN君がいました。
N君はちょっとマセた子供で、小学生なのに当時からマイケル・ジャクソンの曲などをよく知っていました。
そんなマイケルの曲で有名な『BAD』という曲があります。
今聞いてみてもカッコイイんですよ。
その曲のサビの部分に以下のような歌詞があります。
『Because I'm bad, I'm bad』 (俺はワルだから、ワルなんだよ)
『You know I'm bad, I'm bad. You know it』(分かるだろ? 俺はワルなんだ。分かるな?)
なんか和訳を見ると必死にイキッてる中学生みたいで微妙にダサイですが。
それはそれとして、YouTubeなどで聴いてもらえると分かると思いますが、上記のサビの歌詞で『I'm bad』を連呼する部分がありまして、そこが空耳でこう聞こえるんですよ。
『アベ、アベーッ!』
アベ先生の歌みたいだねって笑い合った僕とN君はアホなイタズラを思い付きます。
読者の皆さん。
嫌な予感がしてきたでしょ?
ここまで読んで下さっている読者の皆さんは、この枕崎純之助がいかにアホで分別のない子供だったのかをご存知のはずです。(偉そうに言うことか)
体育館のステージには舞台を彩る赤青黄色のライトが設置されています。
その操作パネルが舞台横にありまして、スイッチをカチカチすると3色のライトが色鮮やかに点灯するんですよ。
でもこれ、生徒は不必要にいじってはいけないんです。
そりゃそうですよね。
でもそれをいじるのが枕崎純之助という男です。(←アホですよ。アホがいます)
体育館での掃除中、N君が箒を手に颯爽とステージ中央に立ちます。
そんなN君と目を合わせて頷き合うと、僕はその3色ライトをカチカチカチカチと連続で点滅させます。
色とりどりの明かりに照らされたステージ上で、N君は箒を手に踊りながら歌い出しました……アベ先生の歌を。(そんな歌はない)
『アベ、アベーッ! アベーッ!』
半狂乱のステージに、見ている友人たちは拍手喝采で爆笑します。
イタズラ大成功です!
これです!
この高揚感!
生きてるって感じがします!(←この後、死ぬことになります)
そんな体育館での熱狂LIVEは唐突に終わりを告げることになりました。
鬼の形相をしたアベ先生の登場によって。
「こらぁぁぁぁっ! 何してんだ!」
ギャアアアアアッ!
鬼キタァァァァッ!
多分、同じく体育館掃除をしていたマジメ女子たちが、僕らの悪行を見かねて先生に言いつけたんだと思います。
この後、僕とN君はアベ先生にコッテリ絞られ、出汁を取り尽くされてシナシナになった煮干しみたいになって死にました。
『BADエンド』です。
以上が『体育館マイケル・ジャクソン・ダンス事件』の全容です。
いやぁ……思い返してみて自分でも思いますけど、僕の脳はどうかしてるぜ。
こんなことしたら怒られるって分かっちゃいるけどやめられない。
クレイジー・キャッツならぬクレイジー・キッズです。
このアベ先生。
怖いけどとてもいい先生でした。
でも5年生が終わった後、この学校を去ってしまいます。
きっと『アベ、アベーッ!』って歌われたのがショックだったんだと思います。
(違います。本当は他の学校で教頭職になる話があり、そちらに異動されました)
ごめんなさいアベ先生。
でも、真剣に怒って下さってありがとうございました。
先生に怒られて僕はまた少しマトモな人間になれた……はずでした。
しかし……このアベ先生が学校を去られた後、6年生になった僕らの新担任を受け持ってくれたT先生は、またしても僕とN君の巻き起こした騒動に愕然とすることになるのです。
『生徒会室立てこもり僕らの70分戦争事件』が巻き起こるのは、この『体育館マイケル・ジャクソン・ダンス事件』のおよそ1年後のことです。
おっと、そろそろ夜も更けてまいりましたね。
続きはまたいずれ。
それでは皆様。
またいつかの夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
今宵もいい夢を。
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