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第28夜 怪奇! 深夜のゾーキンがけ男!
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皆さん、こんばんは。
枕崎純之助です。
警告しておきますが、今夜は怖い話です。
この話を聞いて恐ろしさのあまり眠れなくなったり、オシッコを漏らしてしまっても、それは自己責任ということで、ご容赦ください。
子供の頃、親に叱られた記憶ってよく覚えてますよね。
そういう時って皆さんは親からどんなお仕置きを受けましたか?
僕はよく家から閉め出されました。
定番と言えば定番ですね。
夜に家の外に閉め出されるのって、子供心にショックなんですよね。
暗くて心細いし、夜風が肌寒いし。
玄関の外に座り込んでうずくまっている時のミジメな気持ちったらありませんよ。
でもそれ以上にイヤだったことがあります。
僕の実家はマンションだったので僕がそうして玄関の外にうずくまっていると、同じマンションの住人の方々が廊下を通る際に見られるんですよね。
「枕崎さんちの純之助くん、また叱られて外に閉め出されてるよ。ププーッw」
という奇異の目を向けられて、それがとても恥ずかしいんです。
そんな恥ずかしい思いをするというのに、懲りずに悪さをして何度も閉め出される僕もアホなんですが。
そうして外に出される罰はたいていの場合、1時間程度で家に入れてもらえます。
まあ、そこからまたお説教が始まるわけですが。
そんなふうに夜に家の外に閉め出されることが続いたある夜、怖い怖い出来事が起こったのです。
今、思い出しても震えが止まりません。
あれは小学4年生の頃でした。
理由は忘れましたが、いつものように叱られて外に出された僕は思わずカッとなり、自分が悪いにも関わらず愚かにも逆ギレをして反抗を試みたのです。
「開けろ! 中に入れろ!」
そう叫びながらドアを手でバンバン叩き、足でドンドン蹴ります。
だけど、これが大間違いでした。
いきなりドアが開き、鬼の形相をした母親が洗面器を手に立っていました。
その洗面器には、なみなみと水が張られていて、母は「いい加減にしなさい!」と怒鳴りながらその水を僕にバシャーンと浴びせて再びドアをバンッと閉めました。
後に残されたのは全身ずぶ濡れのまま呆然と立ち尽くす僕だけです。
み、水かける?
普通そんなことするか?
あ、断っておきますが僕の母は決して虐待をする人ではありません。
悪ガキの僕を叱りつけながら愛情深く育ててくれた良き母です。
けど、この時は僕がドアを叩く蹴るという乱暴狼藉をはたらいたので、よっぽど頭にきたんでしょう。
アホな息子に制裁を加えるべく、水攻めを敢行したというわけです。
しばし呆然としていた僕ですが、家の外に閉め出された上に水までかけられたという事態に次第に怒りがこみ上げてきました。(注:自分が悪い)
そっちがそのつもりなら、こっちはこうしてやる!
湧き上がる怒りでカッカしていた僕は水の冷たさも忘れて、着ていたシャツを脱ぐと、それを廊下のコンクリートの床にベシャッと叩きつけました。
そして僕は床にしゃがむとそのシャツを四角く折り畳みます。
(読者の声「ま、まさか……」)
そしてそのシャツに両手をついて腰を上げ、クラウチング・スタートの構えを見せます。
(読者の声「オイやめろ!」)
そのまま僕は濡れた自分のシャツで、コンクリートの廊下を雑巾がけし始めました。
(読者の声「ああああっ! やりやがった!」)
「ダアアアアアッ!」
変態です!
変態がいます!
上半身裸の男子が自分のシャツでマンションの外廊下を雑巾がけしています!
異常です!
完全に異常者です!
何だコイツは!(オマエだ)
怖すぎるぞ!(オマエだ)
どうですか?
怖いでしょう?(僕が)
今思い出しても震えが止まりませんよ。(自分の馬鹿さ加減に)
幸いだったのは僕がこの狂気の奇行に興じている間、たまたま通りかかる人もなく、頭のおかしい僕の姿を誰にも見られることがなかったということでしょうか。
そんな姿を近所の人が見たら、恐怖のあまり腰を抜かすでしょう。
完全に異常者の行動ですから。
だけどこの時の僕に怖いものはありませんでした。
へん!
誰に見られたっていいもんね!
と破れかぶれになっていた僕は体力と怒りの続く限り、雑巾がけを続けました。
これは母親に対するある種の復讐行動だったんですね。(自分が悪いくせに)
買ってくれたシャツをボロボロにしてやろうという、実にくだらない復讐です。
その復讐は果たされました。
ひとしきり雑巾がけを終えて息が上がる頃にはシャツはすっかり汚れ、生地もガサガサになっていたのです。
僕は叱られて逆ギレした怒りが落ち着くのを感じ、どこかサッパリした気持ちでその濡れて汚れたシャツを着ます。
ほら。
さっきまで雑巾だったこれがシャツに早変わり。
世界広しと言えども、シャツと雑巾を兼用しているのはこの僕くらいでしょう。(アホ)
このシャツを見たら母はどう思うでしょうか。
怒りがぶり返して本日2度目の水攻めを繰り出してくるでしょうか。
そんなことを考えているとドアがガチャッと開き、母が顔を見せます。
「反省した?」
「……うん」
「もう馬鹿なことすんじゃないよ」
「……分かった」
といういつものやり取りを経て、僕はようやく自宅への帰還を果たします。
しかし、母からシャツについての言及は無し。
母は怒り疲れたような顔で僕に風呂に入るように言いました。
怒られるかもと思ってドキドキしていた僕はすっかり肩透かしを食いました。
あれ?
このシャツを見て何とも思わないのかな?
ここで僕の心に謎の顕示欲が湧き上がります。
濡れたシャツでマンションの廊下を雑巾がけしてやったと言いたい!
(読者の声「絶対にやめろアホ!」)
転んでもただでは起きない男だと言ってやりたい!
(読者の声「そのまま転んどけ!」)
そしてとうとう堪えきれなくなった僕は自分がしでかしたことを母に告げます。
「濡れたシャツで雑巾がけをした。マンションの廊下は綺麗になったがシャツが汚くなった」
と。
アホかー!
なぜせっかく鎮火した母の怒りを再び焚き付けるようなことをする!
そうお思いでしょうが、どうせ汚れて生地が傷んだシャツをじっくり見られたら何か言われるに決まってます。
それなら怒り疲れた母と怒られ疲れた息子というこの心理状況のどさくさに紛れてブチまけるべきなのです。
黙っていて明日になってまた怒られるのはショックですが、今この状況での追加叱責・延長戦ならまだマシですからね。
それにこの僕の逆ギレ行動に対する母の反応を見てみたいというバカな好奇心があったことも否めません。
いやあ、大人になった今考えてみても、子供時代の僕は筋金入りのアホでしたね。
しかし母は僕の愚かな自白を聞いても疲れた顔でため息をつくばかりで、それ以上は怒ることなく、早く風呂に入れとだけ言いました。
僕は何だか釈然としない思いを胸に、冷えた体を風呂で温めました。
よほど呆れて怒る気力も失ったんだな、と子供心に悪いことをしたと思いましたよ。
しかし今にして思えば母はこの時、息子を叱るためとはいえ感情的に水をかけて夜風の下に放置したことを悔いていたのではないでしょうか。
というのも僕が大人になってから母は言っていました。
「あんたのことはしょっちゅう怒ったけど、あんたが寝た後に寝顔を見ると、怒り過ぎちゃったな、とかわいそうになることがよくあった」
息子に水をぶっかけて閉め出した後、母はそうした自己嫌悪や後悔に苛まれていたのでしょう。
息子を叱らなきゃいけない。
でも叱りたくない。
そうした親としての躾と愛情の狭間で心を悩ませていたのでしょうね。
当の息子はその時ヤケクソになって外で雑巾がけをしていたわけですが。(アホ)
という怖いお話でした。
マンションにお住まいの皆さんはお気を付け下さい。
夜に上半身裸の子供が、白いシャツでマンションの廊下を雑巾がけしているかもしれませんよ。(そんな奴この世に2人といない)
さて、夜も更けてまいりましたね。
今夜はこの辺でお開きにしましょうか。
それでは皆さん。
また、いつかの夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
今宵も良い夢を。
枕崎純之助です。
警告しておきますが、今夜は怖い話です。
この話を聞いて恐ろしさのあまり眠れなくなったり、オシッコを漏らしてしまっても、それは自己責任ということで、ご容赦ください。
子供の頃、親に叱られた記憶ってよく覚えてますよね。
そういう時って皆さんは親からどんなお仕置きを受けましたか?
僕はよく家から閉め出されました。
定番と言えば定番ですね。
夜に家の外に閉め出されるのって、子供心にショックなんですよね。
暗くて心細いし、夜風が肌寒いし。
玄関の外に座り込んでうずくまっている時のミジメな気持ちったらありませんよ。
でもそれ以上にイヤだったことがあります。
僕の実家はマンションだったので僕がそうして玄関の外にうずくまっていると、同じマンションの住人の方々が廊下を通る際に見られるんですよね。
「枕崎さんちの純之助くん、また叱られて外に閉め出されてるよ。ププーッw」
という奇異の目を向けられて、それがとても恥ずかしいんです。
そんな恥ずかしい思いをするというのに、懲りずに悪さをして何度も閉め出される僕もアホなんですが。
そうして外に出される罰はたいていの場合、1時間程度で家に入れてもらえます。
まあ、そこからまたお説教が始まるわけですが。
そんなふうに夜に家の外に閉め出されることが続いたある夜、怖い怖い出来事が起こったのです。
今、思い出しても震えが止まりません。
あれは小学4年生の頃でした。
理由は忘れましたが、いつものように叱られて外に出された僕は思わずカッとなり、自分が悪いにも関わらず愚かにも逆ギレをして反抗を試みたのです。
「開けろ! 中に入れろ!」
そう叫びながらドアを手でバンバン叩き、足でドンドン蹴ります。
だけど、これが大間違いでした。
いきなりドアが開き、鬼の形相をした母親が洗面器を手に立っていました。
その洗面器には、なみなみと水が張られていて、母は「いい加減にしなさい!」と怒鳴りながらその水を僕にバシャーンと浴びせて再びドアをバンッと閉めました。
後に残されたのは全身ずぶ濡れのまま呆然と立ち尽くす僕だけです。
み、水かける?
普通そんなことするか?
あ、断っておきますが僕の母は決して虐待をする人ではありません。
悪ガキの僕を叱りつけながら愛情深く育ててくれた良き母です。
けど、この時は僕がドアを叩く蹴るという乱暴狼藉をはたらいたので、よっぽど頭にきたんでしょう。
アホな息子に制裁を加えるべく、水攻めを敢行したというわけです。
しばし呆然としていた僕ですが、家の外に閉め出された上に水までかけられたという事態に次第に怒りがこみ上げてきました。(注:自分が悪い)
そっちがそのつもりなら、こっちはこうしてやる!
湧き上がる怒りでカッカしていた僕は水の冷たさも忘れて、着ていたシャツを脱ぐと、それを廊下のコンクリートの床にベシャッと叩きつけました。
そして僕は床にしゃがむとそのシャツを四角く折り畳みます。
(読者の声「ま、まさか……」)
そしてそのシャツに両手をついて腰を上げ、クラウチング・スタートの構えを見せます。
(読者の声「オイやめろ!」)
そのまま僕は濡れた自分のシャツで、コンクリートの廊下を雑巾がけし始めました。
(読者の声「ああああっ! やりやがった!」)
「ダアアアアアッ!」
変態です!
変態がいます!
上半身裸の男子が自分のシャツでマンションの外廊下を雑巾がけしています!
異常です!
完全に異常者です!
何だコイツは!(オマエだ)
怖すぎるぞ!(オマエだ)
どうですか?
怖いでしょう?(僕が)
今思い出しても震えが止まりませんよ。(自分の馬鹿さ加減に)
幸いだったのは僕がこの狂気の奇行に興じている間、たまたま通りかかる人もなく、頭のおかしい僕の姿を誰にも見られることがなかったということでしょうか。
そんな姿を近所の人が見たら、恐怖のあまり腰を抜かすでしょう。
完全に異常者の行動ですから。
だけどこの時の僕に怖いものはありませんでした。
へん!
誰に見られたっていいもんね!
と破れかぶれになっていた僕は体力と怒りの続く限り、雑巾がけを続けました。
これは母親に対するある種の復讐行動だったんですね。(自分が悪いくせに)
買ってくれたシャツをボロボロにしてやろうという、実にくだらない復讐です。
その復讐は果たされました。
ひとしきり雑巾がけを終えて息が上がる頃にはシャツはすっかり汚れ、生地もガサガサになっていたのです。
僕は叱られて逆ギレした怒りが落ち着くのを感じ、どこかサッパリした気持ちでその濡れて汚れたシャツを着ます。
ほら。
さっきまで雑巾だったこれがシャツに早変わり。
世界広しと言えども、シャツと雑巾を兼用しているのはこの僕くらいでしょう。(アホ)
このシャツを見たら母はどう思うでしょうか。
怒りがぶり返して本日2度目の水攻めを繰り出してくるでしょうか。
そんなことを考えているとドアがガチャッと開き、母が顔を見せます。
「反省した?」
「……うん」
「もう馬鹿なことすんじゃないよ」
「……分かった」
といういつものやり取りを経て、僕はようやく自宅への帰還を果たします。
しかし、母からシャツについての言及は無し。
母は怒り疲れたような顔で僕に風呂に入るように言いました。
怒られるかもと思ってドキドキしていた僕はすっかり肩透かしを食いました。
あれ?
このシャツを見て何とも思わないのかな?
ここで僕の心に謎の顕示欲が湧き上がります。
濡れたシャツでマンションの廊下を雑巾がけしてやったと言いたい!
(読者の声「絶対にやめろアホ!」)
転んでもただでは起きない男だと言ってやりたい!
(読者の声「そのまま転んどけ!」)
そしてとうとう堪えきれなくなった僕は自分がしでかしたことを母に告げます。
「濡れたシャツで雑巾がけをした。マンションの廊下は綺麗になったがシャツが汚くなった」
と。
アホかー!
なぜせっかく鎮火した母の怒りを再び焚き付けるようなことをする!
そうお思いでしょうが、どうせ汚れて生地が傷んだシャツをじっくり見られたら何か言われるに決まってます。
それなら怒り疲れた母と怒られ疲れた息子というこの心理状況のどさくさに紛れてブチまけるべきなのです。
黙っていて明日になってまた怒られるのはショックですが、今この状況での追加叱責・延長戦ならまだマシですからね。
それにこの僕の逆ギレ行動に対する母の反応を見てみたいというバカな好奇心があったことも否めません。
いやあ、大人になった今考えてみても、子供時代の僕は筋金入りのアホでしたね。
しかし母は僕の愚かな自白を聞いても疲れた顔でため息をつくばかりで、それ以上は怒ることなく、早く風呂に入れとだけ言いました。
僕は何だか釈然としない思いを胸に、冷えた体を風呂で温めました。
よほど呆れて怒る気力も失ったんだな、と子供心に悪いことをしたと思いましたよ。
しかし今にして思えば母はこの時、息子を叱るためとはいえ感情的に水をかけて夜風の下に放置したことを悔いていたのではないでしょうか。
というのも僕が大人になってから母は言っていました。
「あんたのことはしょっちゅう怒ったけど、あんたが寝た後に寝顔を見ると、怒り過ぎちゃったな、とかわいそうになることがよくあった」
息子に水をぶっかけて閉め出した後、母はそうした自己嫌悪や後悔に苛まれていたのでしょう。
息子を叱らなきゃいけない。
でも叱りたくない。
そうした親としての躾と愛情の狭間で心を悩ませていたのでしょうね。
当の息子はその時ヤケクソになって外で雑巾がけをしていたわけですが。(アホ)
という怖いお話でした。
マンションにお住まいの皆さんはお気を付け下さい。
夜に上半身裸の子供が、白いシャツでマンションの廊下を雑巾がけしているかもしれませんよ。(そんな奴この世に2人といない)
さて、夜も更けてまいりましたね。
今夜はこの辺でお開きにしましょうか。
それでは皆さん。
また、いつかの夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
今宵も良い夢を。
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